6・10 約束 (2015/06/10)
路上ミュージシャンのアコーディオン弾きおじさんに写真をあげる約束をしていた。たいていリベルダーデで弾いているので、すぐ会えるだろうと思っていたが、いつもいる場所に、おじさんはなかなか現れなかった。約束をしたその日以来ぱたっと見なくなり、2週間以上その姿を見ることがなかった。 おじさんは、ぎりぎりの生活をしているようでガリガリにやせ細っていた。一度軽くポンポンと肩を叩いたことがあるが、直に骨に触れてびっくりしたことがある。健康的な生活を送っているようにはとてもみえないので、病気が心配であった。いつ遭っても渡せるように鞄に入れて写真を持ち歩いていたのでだんだん折れてきた。仕方なく写真をとりだして家においていた。 今日、久しぶりに会うことができたが、写真を持っていなかったので約束を果たすことはできなかった。しばらくいなかった理由を聞いたが、ぼやかしてあまり話したそうでなかったのでそれ以上何も聞かなかった。少し頬がふっくらしていたので、病気で臥せっていた訳ではなさそうだ。なにはともあれ元気そうだったので良かった。 「あの穴の開いたコインは、幸運を運んできてくれたんだけど、どこでなくしてしまっただよ」 数か月前に、5円玉を幸運のコインと言っておじさんに渡したことがあったのだ。 「今度、また持ってきてあげるよ」 「頼むよ」 街娼にしろ、路上ミュージシャンにしろ、ゲンを担ぐ人が多い。どちらも、幸運を呼ぶと言われるものをあげると非常によろこんでくれる。 「警官の取り締まりがきびしくて、ここでは弾いちゃいけない、と言われていろいろ移っているんだ」 そう言えば、駅の近くで演奏などをしていけない、という条例ができたことを去年新聞で読んだような気がする。たいして人に迷惑をかける訳でもないのに、こういう条例をつくるなんて、弱いモノいじめとしかいいようがない。路上ミュージシャンの取り締まりをする時間があるのなら、強盗を捕まえろ! と言いたい。 自転車道設置といい、看板禁止といい、サンパウロは訳の分からない条例が本当に多い。政治家の私利私欲を肥やすためにそういった条例が作られることが多いだけに腹立たしい。
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