イッペーの花の写真を撮っていると 「チウ（おちゃん）、チウ、俺らの写真も撮ってくれよ！」 向かいからやってきたちょっとだらけた格好の４，５人の若者の1人が声をかけてきた。さっさとカメラを鞄に入れ、完全無視をしてその場を立ち去る。 　完全無視した理由は、ひとつには、「チウ（おじさん）」と言う言葉にカチンときたこと、もうひとつは、ちょっと危なそうな雰囲気があったからである。 　もう50を過ぎてしまったのに、未だ学生気分が抜けきらない僕には、「おじさん」の自覚がまだできていないのだ。見かけばかりが年をとり、中身はまだ学生気分（昔の）。困ったものである。若者は若者らしく、大人は大人らしく、おじさんは、おじさんらしくするのが見苦しくなくて一番良い、と自分でも解っているのだが、まだ自分自身をおじさんと認めきれない。 　ブラジル人は4，5人の集団になると何をしでかすか解らない。「写真を撮ってくれ」といいつつ、カメラや鞄を盗っていくことは十分ありえる。実際、似たような話を何度も聞いている。本当は、気軽に撮ってあげたいのだが、危険度が高すぎる。見かけや、雰囲気、表情が危なそうであると、ましてや、である。こういう危ないご時世だからこそ、信頼して撮るべきなのだろうが、なかなかできない。 　この頃、こういうことにしょっちゅう出くわす。それだけ自分の中で人に対する信頼を失いつつあるということである。人を信頼できなくなるのは寂しい。 本当は階段から撮りたいのだが、この階段は人通りも少なく危ない人間しか使わない。危険度と良い写真を撮れるかどうかの％を考えると危険度がの方が高すぎる。

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