4.10 アモー (2016/04/09)
仕事で一緒になった女性とバスの中で一緒になった。20代半ばほどの楚々とした感じの女性である。 携帯にかかってきて話し始めた。 「オイ・アモー(恋人にいう貴方)・・・・チ・アモー(愛してるわ)」別に耳を凝らして聞いているわけではないが、すぐ後ろに座っているので声が聞こえてしまう。 「アモー(貴方)」か。もう、何年前に言われた言葉か。しばらく誰にも呼ばれていない。日本人の僕にとってはこそばゆいような、気恥ずかしいような言葉である。それでもそう言われたときにはなんとなくうれしかったことを覚えている。もう、誰にもそう呼ばれることはないだろう。そう思うとちょっと寂しい気にもなる。自分と一生を添え遂げてくれるような女性に出会わなかったことは残念だが、仕方がない。女性と縁がなかったのだろう、そう思うことにしている。本当は気ままで孤独が好きな僕には他人と一緒に住むなんてことは無理だったのだろう 一生結婚なんかしない、と若いころから思っていた男が曲がりなりにも一時でもアモーと呼んでくれるような女性と出会えたことはラッキーだったかもしれない。今となってそう思う。
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