9・15 アコーディオン弾きのセニョール (2016/09/15)
「おージャポネス。久しぶりだね~。元気かい!!」 路上のアコーディオン弾きの叔父さんと久しぶりに話した。何回か近くを通ったが、お金がなかったり、急いでいたりで話すことができなかったのだ。いつもは募金箱に2レアル札(約70円)を金入れにいれるようにしている。今日はポケットに小銭がある。 着ている服もこざっぱりしていたので何かいいことがあったのかな、と思っていると彼の方から話し始めた。 「ノベーラ(ドラマ)にアコーディオン弾きとして出演が決まってね。出演料に1000レアルもらったんだ。」 「へー、それは良かった」 握手していた手に力がはいった。 「今もまだホテル暮らし?」 「いや、今は田舎の一軒家に息子と暮らしているんだ。ホテルでは1か月1000レアル以上かかっていたのだけど、今は300レアルさ」 本当にうれしそうである。一時はホテルに払うお金もないといってぼやいていたものだが。最初にこのおじさんをみた時、枯れた雰囲気に強く惹かれた。テレビでうまくしたら売れるかもしれない。未だにここで弾いているということは、トントン拍子という訳にはいかなかったのであろう。映画「ピショット」や「シダージ・デ・デウス」のような話題になった映画でも主演の子供たちは若くして死んだ人間が多い。1回くらい映画やテレビに出ても難しいのだろう。それでも、おじさんは以前に比べいいかおになったし、何より声に力がある。 「いや~、家に女性も来るしね」 「えっ、女!」 パンタナールでもこのおじさんと同じくらいの年齢のやはりアコーディオン弾きのおじさんが、音楽家はもてるのだ、と言っていたことを思い出した。そのおじさんも60以上の老人であったが、19歳の娘とつきあっていた、と言っていた。だから、あながち嘘ではないだろう。 「24歳と19歳の娘さ。ビアグラ飲んで頑張っているよ」ちょっと誇らしげにホッホ笑っている。 「2人! ビアグラ! 」このおじさんは2人の女性との間に3人の子供がいる68歳という。女と麻薬にもおぼれたような話を以前聞いた覚えがある。 「80%の女性が金目当てだからね。気を付けないとだめだよ」僕も決して人のことは言えない。まるで自分に言い聞かせているような気になった。この国の人間は、日本以上に金目当てが多い。それは女性に限らず男性にも言えることである。金に、蠅のようにいろんな人間が群がってくる。麻薬もいくらでも簡単に手に入るから溺れる人間も多い。モデルや演奏家にも麻薬におぼれて墜ちてしまった人間はいくらでもいる。 久しぶりに話した彼はびっくりするほど喜んでくれた。順調に売れて行って欲しい。
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