9・16 セントロの悪い治安 (2017/09/16)
やられた!! むくむくと怒りが自分自身の中で沸き起こっていくのが解った。それはアマゾンのスコール前の空にどす黒い雨雲が拡がる様だった。人々が行き交う夕のビアヅット・デ・シャ(コロニア日本語名御茶ノ水橋)の真ん中で、怒りで立ちすくんだ。ジーンズの右足部分は茶色い液体で濡れていた。また、ケチャップ泥棒に液体を振りかけられたのだ。いったいこれで何回目だろう。10回以上であることは確かである。 ケチャップ泥棒とは、一時期(今も?)ペルーやボリビアで流行った、数人が一組のひったくり強盗のことである。一人が信号待ちや歩いている人にケチャップを後ろから振りかけ、近くにいる仲間が被害者に「汚れているよ」などと声をかける。被害者が持っていた荷物をおろし汚れに気をとられている間に3人目の仲間が現れ荷物や持ち物を強奪する。ブラジルではケチャップの代わりに液体チョコレートを振りかけてくる。犯人グループは主にアンデス系インディオと白人のメスチソだ。ブラジル人にこの手の強盗のことを話してもほとんどしらないので、彼らは外国人旅行者を専門に狙っているようだ。おそらくブラジル人を狙わないのは、この犯罪がテレビ・ニュースなどで放映され警察が動き始めるのを恐れてのことだと思う。 怒りでギリギリしながらあたりを見回すと、一人の男がニコニコしながら片手をあげて数歩近寄ってきた。「汚れてるよ」スペイン語訛りのポルトガル語を口走った。 こいつはなんてバカな奴だ!! オマエラ一味がやったことを知らないとでも思っているのか!!! 「おまえはペル―人だろ!!!」と言葉を投げつけると、その男の顔から笑みが消え、僕の方に向かっていた足を停め、そのままセ広場の方に向かいはじめた。その後ろを数mつけたところで、ちょうど2人の警官が前方の橋の欄干に立っていた。つけていた男は警官の数m先で止って電話をかけ始めた。こいつは、僕のことを舐めきっているのだ! 完全に頭に来た。男は僕が警官に何も言わないと思ったのかもしれないし、例え言われても何も証拠がないことを解っているのだ。しかし、そんなことなど最初から解っていた。警官にあいつに液体をかけられた、と言っても案の定、「殴られたり、盗まれたりしない限り僕たちとしては何もできない」とまったくとりつく暇がない。しかし、それも最初から考慮済みだ。僕がしたかったことは、僕が訴えたこと、顔を警察に覚えられたことをあいつに知らしめたかったのだ。今後の彼らの行動に少しは躊躇する気持ちが起こるだろう。もしかしたら、しばらくはこの周辺で強盗はおこなわなくなる可能性もある。おそらく、この間抜けな警官は男の顔さえも覚えていないだろう。 少しは怒りが収まったものの、まだムカムカしながら歩いていると、歩行者や商店の人間が外にでて僕が行こうとしている方向をみていた。すぐ後ろから、3人の婦人警官が走り抜けて行った。何があったのだろうと思っていると、「カフェフールのミニメルカードに強盗が入って逃げたんだ」という声が聞こえた。さらに進むと、バスターミナルに停まっていたバスから白人系の青年が数人の警官取り押さえられて出てくるのが見えた。その男はとても強盗には見えない。今後のことがあるので、よーく男の顔を目に焼き付けた。ブラジルの場合、初犯だと即釈放なんてことも普通にあるので、この男がいつ襲ってくるかもわからないからだ。 セントロは驚くほどたくさんの警官が町中にいる。それこそ数百mも歩けば警官に出遭うほどである。セントロほど警官が多い地区はサンパウロではないだろう。犯罪が成功する確率は非常に低いと思う。セントロで犯罪するくらいなら、警官のほとんどいないちょっとはなれた地区の方がよっぽど簡単だと思うのだが、なぜかこの日は10数分の内に2件も犯罪に遭遇した。犯罪者はセントロだと逃げ切りやすいと思っているのだろうか? どんなに警官が多くてもやはりセントロの治安は悪いのだ。今日は身をもって実感した
 | ひったくり、強盗がいて治安が悪いことを知っていて、レプブリカ広場前で写真を数枚撮った。かなり気を配っていたがこの頃から付けられていたのかもしれない |
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