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南米漂流
     今日のブラジル 写真日記 (Photog...  (最終更新日 : 2023/01/16)
12・1 怖くなった顔

12・1 怖くなった顔 (2017/11/30) 今まで一度も日本がいいな、と思ったことはなかったのだが、今回の帰国で初めて、日本にいるのも悪くないな、と思ってしまった。それだけ歳をとってしまったということか? あるいは、ブラジルの治安悪化がそれほどひどいということか? あるいは、その両方か?
 よーく、自問自答してみると、確かに上記のこともあるが、今年は人に騙されたり、腹立たしいことが続いたりしたせいだと、ということに気が付いた。ブラジルの親戚ともいえるほどお世話になった方がぽっくりなくなったこともあるだろう。おそらく、そんな状態のブラジルに自分でも気が付かない間に嫌気がさしていたのだと思う。
 日本では、テレビもない風呂も入れない一軒家で、ブックオフで買った100円本を何も考えず、ひたすらマンガ代わりに読んでいた。お金の心配も、なんの心配もせずに、過ごした日々はなんとも幸福だった。あくまで一時帰国だったから、こうした幸せな時間を過ごせたのだと思う。もし、日本で暮らすようになったら、なったで、日々の暮らしのお金の心配は常にしなければならないだろう。下手をすれば、僕にはブラジルよりもっと稼ぎづらいかもしれない。そんな僕を見て友人が、「生活保護をもらったらいいよ」、と言った。僕の年代の人間は、生活保護をもらうということは、恥ずかしい、という気持ちがある。
あまりに簡単に言う友人に「じゃー、お前はもらえるか?」と胸の中でつぶやいたものだ。もしかしたら、今は生活保護をもらうということは、僕の時代ほど恥ずかしいことではないのかもしれないが、他人事のように気軽に言う友人に少しむっとした。
 日本で一番印象的だったことは、空港に迎えに来てくれた妹に、「顔が怖くなちゅう(怖くなってる土佐弁)」と言われたことである。サンパウロのセントロを歩いていて、自分でも顔が強張っていることにしばしば気づいたほどであるから、強張った怒った顔が知らぬ間に通常の顔になってしまっていてもおかしくない。鏡に映る自分の顔を見て、目つきが悪くなった、と自分でも思っていた。妹に言われて、日本にいる間は、腹を立てないことを決心した。そのおかげか、帰るころには大分柔らかな表情になったような気がする。どうだろう?


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