4・13アミーゴ (2018/04/12)
「オイ、アミーゴ、ボン、ジア(おはよう、友達)」 毎朝、出遭うゴミ回収人が声をかけてきた。彼と話したことは一度もない。 ブラジルでは一度も話したこともない人にもアミーゴと呼ぶのである。もっとも、日本でいう「友達」の意味とは異なり、名前を知らない人間に対して「アミーゴ」はよくつかう。ブラジルに来たばかりの頃、話したことも見たこともない人に「アミーゴ」と呼ばれ、「あんたとは友達でもなんでもないのだから、気安くアミーゴと呼ぶな!」と思ったものだ。 特にお店の従業員などが客に対してよく使う。従業員は客の名前をしらないので、「ヴォセ(あなた)」と呼びかけるわけにもいかず、別に何の深い意味もなく「アミーゴ」と言う言葉を使っているだけだ。それでも、きちんと礼儀をわきまえている従業員は、自分より年上の客に対しては「セニョール」を使う。たいてい呼ばれ方で、その従業員のレベルが解る。 そう言えば、随分前に、散髪屋の、日系のおじさんが、「アミーゴでもなんでもないのに、泥棒と解っている奴にも挨拶をしなければならない」とこぼしていたことを思い出した。襲われないために、会う度に声をかけて表向きのアミザージ(友情)を作らなければならないらしい。 僕は、アパートのエレベーターで住人に乗り合わしても、相手が挨拶したり、話しかけてこない限り一切何もいわない。嫌いな管理人などましてやである。そうした態度がよくないようで、アパートの住人の多くには嫌な奴だと思われているらしい。根がひねくれ者なので、嫌いな奴にもニコニコすることなどはできない。 見ていると、多くの住人は、管理人にも、門番にも挨拶をしている。日系人の友人に、「助けてもらわないといけないことがあるから、管理人や門番とはアミザージを作っていた方がいいよ」と忠告された。確かにそのとおりである。僕がおかしいことは解っているのだが、今更挨拶をする気はさらさらない。おそらく、建物の住人には愛想の悪い変な外国人だと思われているだろう。
(
|