5・3 火事現場 (2018/05/02)
今日を逃したら火事現場は変わってしまうだろう。 そう、思いまだ完全には治っていない身体に鞭うって出かける。そうはいっても80%ほどは治っているから、さほどのことはない。1週間ぶりに歩くセントロはなにもかもが目新しい。こんなに町は汚く、ごみごみした感じで溢れていただろうか。そう感じるのは、家にいる間中、日本のビデオを見ていたせいかもしれない。 目的の火災現場は家から歩いて20分ほどのところにある、セントロでも危ない地域に入る。アフリカ人が多い区域に入り、あたりの雰囲気はよりいっそうごみごみしてきた。通りの半分以上の店がシャッターをおろし「売ります」「貸します」の看板が並ぶ。ここは、こんなにシャッターが閉まっていただろか。しばらく見ない間に急変した通りを横目に通り過ぎる。アフリカ人の4人ほどの集団が何かを話している。その雰囲気に思わず、鞄に入れたカメラに手の力が入る。撮りたい! マリファナの匂いのする通りを通り抜けると目的の火事現場にでた。 火事現場に野次馬が入らないように現場から50m程離れて鉄柵が設けられている。たくさんの人々が手に手に携帯を持って撮影している。人ごみをかき分けてパイサンヅー広場を回りこんでみる。途中、焼け出された人々が各々がテントや家財道具を置いて休んでいた。女達や子供達は、あっけらかんとした様子でいそいそと何かをしていたが、男達の多くは、焼け出されたことが信じられないといった表情でぼーっと遠くを見ながら座っていた。まるで魂が抜けたようだ。はっきりいってセンテットの多くは追い出されることを前提にビルの不法占拠を行っているので皆あっけらかんとしているものと思っていた。それだけに彼らの表情が強く印象に残った。よこでは、彼らの飼い犬が疲れて横になっていた。 それを通り過ぎるとトロッカトロッカ(ブツブツ交換市、盗品も紛れ込んでいる)の人々が手に手に色んなモノを持ったり、地面に並べている。こんな時にもトロッカトロッカが行われているとは。いや、こんなときだからこそトロッカトロッカか・・・。 横に回り込んでやっと、火事現場をまともに見ることができた。もう火事が起きて1日以上が立っているのにいまだにぶすぶすと煙がくすぶっている。26階の建物の形は残っていない。瓦礫の山である。いかに火事がすさまじかったが解る。 センテット(家なし住人)は、不法占拠を繰り返し、お金もほとんど払わずに、交通の便の良いセントロにすみついているものと思っていた。確かのその通りである。しかし、途方に暮れている数人の男達の顔を見ているとセンテット暮らしも楽でないな、と思ってしまった。
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