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南米漂流
     フェルナンド山本の「夜な夜な日記」  (最終更新日 : 2013/01/21)
夜話その16 悲しい現実

夜話その16 悲しい現実 (2009/03/14) ひさしぶりに風俗系のマッサージに行った。
この店は完全顔見せ制で、入り口近くにある待合室にいると、女性が一人一人やってきて挨拶してくれる。その際、女性たちは名前を言っていくのであるが、お気に入りの女性が多いと、あの女性も、この女性もということになってしまい、ポルトガル語の名前だけに覚えにくくすぐ忘れてしまう。数回いっているうちに慣れたが、最初の頃は、忘れてしまい、もう一度お願いすることも何回かあった。挨拶のときには、可愛く見えたのに二人っきりになると、あれっ、こんな女性だっけということもしばしばだ。
 今日、お願いしたのはマリアちゃん。23歳の目の青い、おっぱいの大きな白人系娘である。大学の学費を稼ぐために、この店で働き始めてもう6ヶ月になるという。ここ数年、ブラジルでも大学に行く人が増えた。大学を卒業しないと良い就職はなかなかできないらしい。しかし、学費は一般的な家庭からすればかなり高く、親の稼ぎがしっかりした家庭でなければなかなか学費を工面するのは難しい。だから学費を稼ぐために彼女のように風俗の世界に入り込む女性も多い。
 マッサージも終わり、時間があまったので、いろいろ話をしているうちに恋人の話になった。
「恋人はいるの?」
「前にいたけどわかれちゃった」
「へえ、どうして」
「それがね、つきっているときに、ここで働き始めたの。そしたら、どこか私の素振りがおかしかったのかしら、彼は何かに勘付いたらしく、私の後をつけてきてたらしいの。私は何もしらなくて、いつものように顔見せをしに出て行ったら、彼がソファに座っていたって訳。彼は何も言わずに帰っちゃったわ。もう、悲しくて悲しくて泣いちゃった。それっきり彼には会ってないわ」
 彼女の話を聞いて、以前聞いた移民の話を思い出した。
 『田舎に住んでいる人が、娘を働きにサンパウロに出した。たまたまサンパウロに行くことになり、都会に出てきて気も緩み、ついつい友人の誘いにのって娼館にいった。部屋で女性を待っていたら、なんと出て来たのは娘だった』という話である。最後はどうなったのか、聞きそびれたが、移民当時は結構こういった話があったらしい。
 金を稼ぐには身体を売るのが一番手っ取り早いのだろうが、自分の身体を切り売りしているようなものだから、風俗の仕事はいろいろ辛いことがたくさんあると思う。ブラジルでは、日本のようにアルバイト的な仕事、職自体が少ないだけに、風俗関係の仕事に落ちていく女性は多い。悲しい現実である。

 


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