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マツモトコージ苑
     2008年  (最終更新日 : 2018/10/25)
第3回異業種懇談、ミナス視察

第3回異業種懇談、ミナス視察 (2018/09/28)  JATAK(全国農業拓植協同組合連合会)が助成し、同サンパウロ(聖)事務所(馬場光男所長)が主催して行ってきた異業種交流懇談会。第3回目となる今年(2008年)は、ADESC(農協婦人部連合会、内海千代美会長)一行9人が、3月10日、11日にわたってミナス州ベロ・オリゾンテを訪問した。同地でジャムやリキュールなど加工品の生産販売を支援する食品関係専門組合のNUTRICOOP(エリッセ・サリーゾ組合長)との情報交換を実施。今回初めて非日系組合との交流を持ったADESCでは、「同じ組合でもシステムが違うと感じたが、すごく勉強になった」と、実際に見聞きしたことを自分たちの活動にも取り入れていく考えを示した。

(1)

 異業種懇談事業は、ADESCなど農業団体支援を主な目的にJATAKが同事業活動資金助成を行い、将来的な流通ルートの拡大など、消費者をはじめとする異業種関係者との意見を交換することが目的。これまで2回にわたってサンパウロで講演会などが開催されてきた。
 今回初めて地方の非日系組合の視察旅行が実現され、ADESC関係者8人が参加した。JATAKサンパウロ事務所員の櫛原ルシア瑠美子氏が同行し、本紙記者が取材を担当した。
 一行は、3月9日午後9時にサンパウロをバスで出発し、翌10日午前4時半にベロ・オリゾンテに到着。午前6時頃、同地組合員のヴォルネイ・ロペス・デ・アラウージョ氏(47)がバスターミナルに姿を見せ、同市内から南に約25キロ離れた最初の組合員の生産活動地へと運転手付きマイクロバスで案内してくれた。
 ヴォルネイ氏は昨年12月に来聖し、SBC病院前のADESCのフェイラ(青空市場)を見学していたこともあり、何人かとは顔なじみだった。
 途中、組合長のエリッセ氏も合流し、現場へと向う。約1時間ほどで着いた場所は、標高1350メートルの山間部で、眼下には雲海が広がっていた。
 同地で低カロリー(LITE)ジャムを自家生産しているマリア・イザベル・ルス・ダ・パイション・リベイロ・デ・オリベイラさん(58)は元々は建築技師だった。10年前に同じ建築技師だった夫のマルコス・カエタノ・デ・カストロさん(53)から手作りジャムをプレゼントされたことをきっかけに、2年間の研究を経てこのたび製品化に踏み切った。
 現在、ミカン、パイナップル、ジャブチカーバなど5種類のジャムがある。防腐剤を使用せず、「ハッパドゥーラ」と呼ばれる黒糖を混ぜて甘さをかなり控え、糖尿病予防など健康に配慮しているという。
 原料となる果実は、他の組合員から手に入れたり、山間部の傾斜地に広がる自分の土地で自然生産。特にジャブチカーボなど季節の果実は、収穫後に冷凍果肉として保存している。
 1回で作るジャムの量は、240グラムのもの60個ずつが3種類で計180個分。以前は台所で作っていたが、数年前から専用のジャム製造工場を庭の中に造りあげた。
 製品の商標は「ルス・ダ・パイション」と自らの名前を入れている。「手作り品(アルテザナイス)」の規格に従ったシールの明記など食品衛生上の認可を得て、これから商品としてHP(ホームーページ)サイトなどを通じて販売ルートを広げていく考えだ。
 訪問した一行は、山荘風の同家で朝食代わりに手作りパンとジャムをご馳走になった。ジャムは確かに甘さを押えてあったが、チーズを乗せて焼いたパンとよく合った。
 一行は同地での試食・情報交換のあと、再びベロ・オリゾンテへと向った。

(2)

 山から降りた一行は3月10日午前11時、NUTRI組合のはからいでベロ・オリゾンテ市内の中央市場を見学することに。市場にはミナス名産のカサッシャ(ピンガ)など、同組合員の加工品も販売されている。
 市場監督官であるルイス・カルロス・ブラガ氏の説明によると同市場は、1964年までは市が運営していたが、それ以降は個人経営者を集めた協会組織として管理しているという。
 正方形をしている市場内の総面積は2万3000平米で、約400店舗が軒を並べる。環状型をした通路の長さは累計で8キロにもおよぶ。1999年以降は「ミナス州で、もっとも訪問される場所」(ブラガ監督官)として、一日平均3万人が同市場を訪れ、土曜日ともなれば約5万5000人の人出で賑わうという。
 市場内の人気レストランでの昼食のあと、午後2時にNUTRI組合会館へと向う。
 同組合は98年、「モン・デ・ミナス(ミナスの手)」と呼ばれる手工芸品協会の中で、手作り食品部門として創立し、今年(2008年)10年を迎える。各種食糧加工品生産者の支援を主な目的として活動しており、現在の組合員は約180人。組合員は入会金(80レアル)以外に、月額36レアルの会費を納める必要がある。
 同組合の特徴の一つとして、組合員は自分の加工品などを組合を通さずに個人販売し、利益を自ら儲けることができる。その代わり、各組合員が所持するノッタ・フィスカル(領収証)に対して、3%を組合に納めることが義務付けられている。
 これらの話を聞いていたADESC関係者からは、「組合と言うと、自分の生産物を組合を通じて売ってもらうという意識がありますが、同じ組合でもこれだけシステムが違うものなんですね」との声も出ていた。
 また、同組合では自分たちで生産した品物を自ら加工している組合員はごくわずかで、原料となる生産物を他から購入している人も少なくないという。「自分たちの生産物を加工すること」を基本とするADESCにとっては、NUTRI組合のシステムに関心を示しながらも、違和感も少なからずあったようだ。
 同市内にある組合会館では、栄養師であるバニア・マギダ・リベイロ・マデイラ氏による加工食品に関する法律の講演をはじめ、各組合員がそれぞれ加工販売している商品類を紹介してくれた。 加工品は、無農薬栽培されたリンゴやバナナのチップをはじめ、リキュール、サラダ・ミスタ(フルーツ・ポンチ)など様々だ。
 ジャブチカーバやマラクジャ(パッション・フルーツ)をはじめ、クプアスー、アサイなどの熱帯果樹やカフェなどにピンガを混ぜてリキュールを作っているジョゼ・カルロス・メンドンサさん(46)は、組合員になって3年。80年代初頭には電気技師として、職業訓練学校で若手の育成を行っていたこともある。手工芸品協会の「モン・デ・ミナス」組合にも入っていたが、食料加工品により興味があったことからエリッセ組合長に入会を誘われたという。 「リキュール作りを始めた頃は、四か月間くらい研究期間に費やしても上手くいかずに全部捨ててしまったこともあるが、今は自信を持って商品を作っている。組合員同士での情報交換など、組合のお陰で助かっていることも多い」とジョゼさんは、充実した表情を浮かべていた。

(3)

 初日(3月10日)の夜、一行はNUTRI組合から食事の招待を受けた。単なるレストランではなく、店のオーナーは同組合員でもある。
 ベロ・オリゾンテ市から北に12キロ。小高い丘の一軒家に店はあった。「サーラ・ダ・ミスタ」と呼ばれる店内からは、ベロ市の夜景が見渡せる絶好のロケーションだが、表玄関には看板も出ていない。 
 「レストラン」というよりも「ブッフェ」スタイルで、同店で料理を振舞うこともあるが、主にはイベントでシュラスコ料理などの注文予約を受けることが多いという。
 オーナーのジュニオ・ガルシア・ローザさん(40)は、ブッフェを始めて7年。現在、料理は親戚の男性が担当しているが、ジュニオさんも15歳の時から料理を始め、シェフ(料理長)としての免許を保持している。NUTRICOOPの組合員になって4年が経つ。
 同ブッフェの大きな特徴は、顧客との契約をはじめ、収入・支払いなどの会計業務をすべて組合を通じて行っていることだ。組合側との余程の信頼関係がないと成り立たないシステムだが、エリッセ組合長も「どの組合員に対してでもやっていることではなく、特に彼(ジュニオ氏)を信用しているから、このシステムでやってもらっているのです」と話す。
 家族経営を行っているジュニオ氏の場合、組合員としてのメリットは、業者や顧客との契約に際しては組合を通じて行うため、騙されにくいという点がある。
 「組合があることで安心して商売ができる」と語るジュニオ氏によると、平日以外に週末のイベントでの出前が多い。地元のフッテボール大会のイベントで2200人の参加者を相手に、40人のガルソン(ウェイター)を使い、一日で700キロのシュラスコを用意した経験もある。
 以前はサルガド(塩味の軽食類)なども出していたが、「手で丸めたりと下準備に手間がかかるし、シュラスコなら一日で数軒のフェスタをこなせる」として、現在ではほとんどシュラスコでの注文を受けている。
 売上が少なくなる月には「コミーダ・デ・ボテッコ」と呼ばれる大衆料理など自ら企画を立て、ブッフェでの集客をはかることも行っている。
 夕食ではエリッセ組合長と同席し、組合のさらなる現状などを聞く機会を得た。
 自ら乾燥トマトやピメンタなどを加工生産している同組合長によると、約180人の組合員の中には別荘地などで趣味の範囲で何らかの生産活動をしている人はいても、本格的な農業生産を行っている組合員は皆無だという。その話を聞いていたADESC関係者からは、材料のコスト面を心配する声も挙がっていた。
 今年(2008年)3月下旬には、組合の役員改選(1期4年)が行われる。すでに対抗シャッパもなく、4年前に組合長になったエリッセ氏の次期続投は決定しているが、役員の何人かは入れ替わる予定だ。
 ミナス州の法令では、商品流通サービス税(ICMS)は、大きな工場での生産物よりも手作り生産物での税額が高く、組合の負担も少なくないという。
 同組合では月1回、会報も発行している。以前は書記理事を担当していたというエリッセ組合長自らペンを握り、こうした諸問題の提起や改善策などについて執筆することも少なくないようだ。
 「流通税面での格差を無くすためにも、組合のさらなる強化をはかっていきたい」とエリッセ組合長。手作り産品のメリットを今後もアピールしていく考えだ。

(4)
 
 2日目(3月11日)、午前8時にホテルを出発。2人の組合員の生産状況を視察する。
 NUTRI組合が用意したマイクロバスの乗り込み、ミネイロン蹴球場にほど近いサン・フランシスコ教会を見学した後、道に迷いながらも午前九時半に現場に到着。リンゴ酢とサラダ用のピメンタを加工生産しているロザンジェラ・ビッシャーラさん(52)が一行を出迎えてくれた。
 12年間にわたって託児所でボランティア活動をしていたというロザンジェラさん。託児所の活動を助けるためにサンパウロから来た知人に教えてもらったリンゴ酢作りを実践してみたところ、評判が良く、口コミで商品価値が広まっていったという。
 9年前に知人と共同でリンゴ酢作りを始め、2年前から現在の工場で従業員を雇い、1人で経営している。
 製造方法は、「ボンボーネス」と呼ばれるステンレス製の1000リットル入り樽(たる)に、リンゴの「ガラ種」の青いものと熟したものを半々に280㎏投入し、2回フィルターを通した水200リットルを入れるだけ。自然醗酵し、約90日で製品が出来あがり、防腐剤などは一切使用していないという。
 「ふじ」など他のリンゴの種類でも研究してみたが、「ガラ種」がもっとも適していることを発見した。初期の工場への設備投資は3万レアルだったが、現在では充分に元を取り、1人では生産活動が追いつかないほど人気がある。
 現在も託児所を支援し、加工品の寄贈などを行っているロザンジェラさんのリンゴ酢は、ペーハー(PH)値が2・4から2・6と、市販のもの(4・9PH)より低く設定している。弱アルカリ性で血を浄化する作用のほか、胃潰瘍や高血圧などにも効果があるとされている。
 「良い形でチャンスを掴んだね」とロザンジェラさんの生産活動に感心するADESC一行。梅酢や柿酢などを生産している会員もあり、「これなら自分たちでもできそうね」と熱心にメモを取る姿があった。
 午前10時半、2人目の組合員への生産場へとバスを走らせた。
 アントニオ・カルロス・マリーニョさん(57)は、リキュール、ジャムや乾燥果実などを加工生産している。元々は建築技師だったが、五年ほど前から「やってみたい」との考えを持ち、定年退職した昨年から本格的に活動を始めた。
 リキュールは、「父親が30年ほど前に購入した」(アントニオさん)シチオ(別荘)に植わっているジャブチカーバをはじめ、ジェニパブ、ピキー、レモンやバルーと呼ばれる栗の一種などにピンガ(カサッシャ)を入れて漬け込む。1リットルの果実に、2リットルのピンガを入れるのが基本だ。
 ジャムはジャブチカーバのほか、珍しいところではミナス産のピメンタを用いた甘辛い製品が目を引いた。
 「将来的には、なるべく自然なものを材料として作りたい」と意気込むアントニオさん。生産活動には息子たちも手伝っており、「(心身的に)家族の協力無しでは継続できない」と、絆の大切さも説いていた。
 一行は、アントニオさんに別れを告げ、最後の視察地である「ヴァーレ・ヴェルデ(緑の谷)」へと向った。

(5) 

 ベロ・オリゾンテの街を抜け、一行はベッチン市にある「ヴァーレ・ヴェルデ(緑の谷)」を目指した。
 午後1時に到着。レストラン施設もある同所で遅い昼食をとった後、支配人のラファエル・ゴンサルベス・オルタ氏(43)に話を聞く。
 ラファエル氏によると同施設は、1985年からカサッシャの製造工場として開業。2002年からは自然公園として、環境庁の認可を受けて営業を行っているという。元々は農場だった同地の総面積は120ヘクタール。その敷地内に30ヘクタールの自然公園を造成し、オウム、フラミンゴやツッカーノなど約150種類もの鳥類を保護している。
 レストランやラン園も設置し、週末には一日で約1000人の人出があるなど、同市の観光地の一つとなっている。
 園内には112人の従業員が働いているが、獣医経験のあるラファエル氏は、自ら鳥類の世話を行うこともあるという。
 「この施設では、野鳥動物、その中でも特に東北伯の鳥類の保護を大きな目的としている。一般的には、(野生の鳥類を)10匹捕獲したら1匹しか生き残らないが、ここでは9匹生きられるように管理している」(ラファエル氏)
 昼食後、園内のカサッシャ博物館を案内してもらう。館内には1500本のカサッシャが展示されているほか、樽に詰められたものが暗室に保管されている。樽には、伯国農務省認可のシールが貼られており、施設と同名の「ヴァーレ・ヴェルデ」という商標のカサッシャが同所のオリジナルだ。
 ラン園を見学した後、園内でしばしの休憩。ロケーションが良いためか、平日というのに数組のカップルがウェディングドレスとスーツ姿で来園し、本職のカメラマンが同行して撮影を行っている。
 視察旅行も最後となり、参加したADESC関係者がそれぞれ、感想とNUTRI組合への感謝の言葉を述べた。
 「組合員の皆さんは、自分の作っているものに自信を持っていると感じた」、「少しのチャンスを生かして、楽しみながらも自らの生活に生かしている」と言った意見をはじめ、「実際に加工品を作っている人の話を聞いて、自分たちもやればできるという勉強につながった」などの声も挙がっていた。
 ADESCの内海千代美会長は、「これまでにも様々な交流を行ってきましたが、純粋なブラジル人との交流は今回が初めてでした。今後、(生産販売の対象が)日系人だけでは限られ、他のグループとの交流がさらに必要になると思いました」と、同視察旅行の意義を実感していた。
 ADESC一行は感謝の意味を込めて、NUTRI組合関係者と手を取り合い、「今日の日はさようなら」を合唱。次の再会を誓い合った。(おわり)


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