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     移民の肖像  (最終更新日 : 2019/06/13)
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金城徹さん (2019/03/22)
2009年7月号金城徹さん3.jpg
 「『世間を喜ばせて、自分も喜ぶ』という父親の教えを貫きたい」―。2009年4月で渡伯50周年を迎えた、サンパウロ市近郊サント・アンドレ在住の金城徹(かなしろ・てつ)さん(86、沖縄県国頭村出身)の思いだ。
 軍人だった父・徳四郎さんの影響を受け、19歳で沖縄食糧挺身隊で堤防修理などの活動を半年間続けた後、20歳で海軍に志願して入隊。人吉(熊本)海軍航空隊の分遣隊として、鹿児島の米ノ津(こめのつ)に派遣されたのが1944年6月だった。
 その4か月後に受験して予科連の教員助手として人吉航空隊に戻り、予科連生たちに飛行機の整備について教授していた。しかし、45年4月の沖縄戦の影響で、その数日後に鹿児島県串良(くしら)の特攻隊基地に整備兵として派遣命令を受けた。
 4月15日頃、基地内で徹さんが特攻機に燃料を入れていた時だった。米軍のグラマン機が滑走路に迫り、爆弾を投下。その爆風で吹き飛ばされた金城さんは肩を打撲して意識を失い、気付いた時は防空壕へと運ばれていたという。
 全治3か月の怪我を負い、霧島、佐世保、舞鶴を経て新潟の病院に船で搬送された。身体も回復し、人吉の本隊に戻ろうとした1日前に広島で原爆が投下。新潟から汽車を乗り継ぎ、人吉で終戦を迎えた。
 戦後、武装解除となったが沖縄に戻る術(すべ)がなく、戦友を頼って福岡県で8か月間を過ごした。その後、親戚のつてで兵庫県尼崎に移転。戦後、沖縄に残っていた徹さんの親戚が、同郷の国頭村出身の実業家・国場(こくば)幸太郎氏筋に託した手紙から、同村の家族のことを知らされ、46年に故郷へと戻った。国頭村では農業の傍ら、父親から受け継いだ家畜商を行い、戦後の沖縄で初めての家畜商の免許を取得。比較的裕福な生活を送ることができ、同地で結婚もした。
 55年頃、戦前にブラジルに渡っていた父親の兄にあたる金城徳さんが一時帰国。家族に渡伯を勧めた。徹さんは当初「ブラジルに行くつもりはなかった」が、父親が死に、母親のカナさんから「沖縄に1人で残ってどうするのか」と言われ渡伯を決意。59年1月、家族とともに「チサダネ号」で神戸港を出港した。
 同年4月にサントスに着いた徹さん家族は、伯父の長男が引受人となり、同じ沖縄県系の経営者から権利を渡され、ジュキア線イタリリにあったマカロン(スパゲティ)工場を経営することになった。イタリリには国頭村の隣村である羽地(はねじ)村出身者も多く、地元日本人会など「たくさんの人々の世話になった」(徹さん)という。
 その頃、「『マカロン』と言えば徹さん」というほど象徴的だったそうだが、63年頃から副業として輸出バナナの仲買商を始めたことが、商売繁栄に拍車をかけた。他の仲買商がバナナ生産者への金払いが良くない中で、徹さんは同じ沖縄県系の花城清安(はなしろ・せいあん)氏ら信用できる筋と仕事を行なったことで人気を集めた。
 さらに、当時は小麦の割当て制(コッタ)があり、業者などにとっては割当て以上の小麦を欲しがった。そこに目を付けた徹さんは、値段が高くなった時に戻してもらう契約で、自分の割当て分の小麦を一時的に貸し出し、儲けることを考えた。
 こうしたアイデアとともに、バナナの冷蔵輸送方法を南米で初めて導入。前述の花城氏が中心となって60年代半ばに創立した「イタリリ・バナナ生産者組合」の事業計画を徹さんが任され、サンパウロ、リオ、ベロ・オリゾンテなど各地の卸売り市場にバナナを輸送した。この冷蔵輸送システムは今も引き継がれ、称賛を得ている。
 その一方で徹さんは、70年代初頭に誕生した沖縄文化センター(ジアデーマ)の創立会員として尽力。同センター建設のために、母県の「沖縄ブラジル文化センター後援会」の資金協力があったことを今も有難く思っている。
 2009年8月15日に故郷の国頭村記念祭典に招待されているという徹さんは、「センターへの協力をいただいた先輩方にお礼を申し上げたい」と感謝の意を示す考えだ。
 70年にサント・アンドレ市に家族で転住。現在は同市内に海鮮レストランを2軒所有し、息子たちに経営を任せている。その間、沖縄県人会サント・アンドレ支部長、在伯国頭村人会長、沖縄文化センター相談役などを歴任してきた徹さんは、各団体への寄付など地域への貢献も果たしてきた。
 09年9月には、自身の渡伯50年を記念した沖縄各市町村対抗ゲートボール大会を開催することも決まっている。
 「ブラジルに来て一番感激したのは、豊かさとブラジル人の友好的な態度」と徹さん。地域社会への貢献を今後も続けていく考えを示している。(2009年7月号掲載)
 


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松本浩治 :  
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