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     ブラジルの日本移民  (最終更新日 : 2024/02/19)
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牛渡正治さん (2022/12/11)
2011年5月号牛渡正治さん.jpg
 パラナ州の州都クリチーバ市で、ブラジルでは珍しい有機コーヒー・ショップを開いている日系の親子がいる。牛渡正治(うしわた・まさはる)さん(77、福島県出身)と息子のクラウジオさん(42、2世)は、2000年から同市内ショッピング・センターに「TERRA・VERDI(青い大地)」を開店。コーヒーをはじめ、牛乳、砂糖やパンなどの軽食にも有機無農薬製品を取り入れるなど、「食の安全」に思いを寄せた生産者と消費者への対応が好評を得ている。
 父親の正治さんは、約75年前に渡伯。パラナ州にほど近いサンパウロ州サンタ・クルース・リオ・パルドに家族とともに入り、8歳まで過ごした。戦時色が濃くなりだした1941年頃、両親の意向で日本の親戚に預けられた。22歳になった戦後の54年、家族の居るブラジルへ再渡航。パラナ州のモレッテス、ジョアキン・タボラを経てクルゼイロ・ド・オエステに落ち着いた。
 自身もコーヒー栽培をしたことがある正治さんはその後、野菜づくりなどを行い、タペサリア(内装・張替え業)などにも従事した。90年代に2回、日本への出稼ぎ経験もあり、帰伯後の2000年にクラウジオさんからクリチーバ市内で有機コーヒー・ショップ開店の話を持ちかけられ、共同経営者として手伝うことに。「自分も農薬を使うことは好きじゃなかった」(正治さん)との思いもあったという。
 現在は、店舗にほど近い場所に夫人とともにアパート住まい。休日である日曜日以外は、午前8時の開店を前にした午前7時過ぎには毎日、店に来ている。店内の掃除をはじめ、その日に販売されるコーヒーの自家焙煎を行うことが、正治さんの大切な仕事だ。
 また、タペサリア時代に鍛えた手先の器用さを大いに発揮。生豆を入れる麻袋を利用して壁掛け、小物入れやスリッパのほか、竹細工などの民芸品を自分で作って販売するなど、店の売上に貢献している。
 クラウジオさんは店の経営の傍ら、以前は市内の大学で講師として有機生産物についての講義も行っていた。しかし、現在は市内にフランチャイズ店をもう1店増やしたこともあり、本業に専念している。
 クラウジオさんは「お父さんが毎日元気に店を手伝ってくれるので、本当に助かってます。自分は経営者というより、父の手伝いをしている感じ」と笑いながらも、スタッフの協力を得た親子の二人三脚の活動が続く。
 クラウジオさんが、有機コーヒー・ショップを開くきっかけになったのは、ミナスジェライス州マッシャード市にあるジャカランダ農場で有機無農薬コーヒーを生産販売する故カルロス・フランコ氏たちとの出会いだ。有機無農薬農法を通じて消費者と生産者が互いを信頼しあえる関係をつくり、地域の活性化を実践するフェア・トレード(公正な取引)のやり方に共感したという。
 同店では、パラナ州内のコーヒー生産者がつくる有機コーヒーを、一般消費者に販売するプロジェクトを実施。また、毎月第3金曜日の夜には、クラウジオさんが代表となってオーガニック・ワインを試飲するサークルも開いている。仲間たちと楽しみながら、それでいて真剣に有機製品の消費者への提供を考えている。
 「まず、自分が有機コーヒーを飲んで楽しむことが基本。有機生産物は今まで金の持っている人が中心に消費してきましたが、少しずつですが興味のある人も増えてきています。本当のフェア・トレードとして、ブラジルの一般の人にも良いコーヒーを広く提供していきたい」とクラウジオさん。良質の生産物が日本や欧米など海外に輸出され、伯国内では粗悪品が出回る傾向にある中、有機コーヒーの一般ブラジル人への拡販を目指し、活動を続けている。(2011年5月号掲載) 


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