移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
紺谷君の伯剌西爾ぶらぶら
     エッセイや翻訳記事  (最終更新日 : 2005/06/26)
うなぎ(?)の蒲焼に挑戦 前編 [全画像を表示]

うなぎ(?)の蒲焼に挑戦 前編 (2004/09/26) まず、読者の皆様に教えて頂きたい。
下記の写真は、うなぎなのでしょうか?( mkontani@nethall.com.br
うなぎ.jpg
購入したうなぎ?

 2004年9月11日に、カンタレーラ(サンパウロ中央市場)の魚屋で購入した。
 
 その魚屋では、「Enguia」と書いてあった。うなぎのことである。しかし……、灰色というか白いのだ。うなぎの印象は、黒光りしてヌルヌルしているものなのだが、こいつは、どう見ても日本で売られているようなウナギには見えなかった。
うなぎ2.jpg
頭部は6~7センチ



 種類が違うのか?
 それとも、あなごかもしれない。でも、あなごならばポルトガル語で「Congro」のはず。Enguiaと書いてあるので、うなぎのはず。
 全長80センチほど。頭の部分だけで6~7センチある。うなぎはそんなにデカイか?

 サンパウロでは最近、日本の物はなんでも手に入るが、それでも、うなぎだけは難しい。リベルダーデ(日本人街)の日本食料品で売っているのは、真空パックに入った冷凍のうなぎだけだ。それも輸入品で30~50レアル(1200~2000円)もする。何度か購入したことはあるが、身が軟らかく歯ごたえが全くなかった。
「ブラジルでも、20~30年前に日系人がうなぎの養殖をやっていた」という話を聞いた事があるが、現在ぜんぜん見かけないところを見ると「うまくいかなかった」のだろう。
 とにかく、我々日本人移住者にとって、うなぎの蒲焼は憧れの的で、大々ご馳走なのだ。そのうなぎが、魚屋の前に平然と並んでいたのだ。

 魚屋の前で腕組みしていた私は、店員のおいちゃんに尋ねてみた。
「この魚は、いつでもあるのか?」
「南の方(ブラジル南部サンタカタリーナ州)から来て、この頃は、いつも置いているぜ。それに、先週だったかな、ポルトガルから来た6キロのうなぎもあった」
「日本人は買うのか?」
「そうだなぁ、日本人もいるが、大体、中国人が買っていくよ」
 ブラジル人のおいちゃんは、黄色い歯をむき出しながら答えた。
 果たして、こいつであの蒲焼が出来るのだろうか?
 確かに中華料理では、ぶつ切りにしたウナギを揚げた料理を食べたような……
 1キロが5レアル(200円)だ。日本でうなぎを食べることを考えると、とにかく安い。別な魚屋でも置いていて、そこでは1キロ4レアルで売っていた。ただ、こちらの方が新鮮そうだ。
 立ち止まったまま悩んでいた。
「買うのか?」
 おいちゃんは、うなぎを取り出して見せ、量りに乗せる。
「こいつ1匹、1キロだ。ほらもう一匹どうだ。ほら! ほら!」
 量りに、2匹、3匹とうなぎを乗せていく。
「ほら、どうだ。ほら! これで3キロだ」
 量りの上にうなぎが盛り上がった。
「おいおい、1匹だ。1匹でいい」
「リンパ(内臓を取り除く)だけしてくれ」
 そう言うと、おいちゃんは不服そうに「1匹だけか」と言いながら、他の2匹を元に戻した。そして、まな板の上に白いうなぎを置いた。内臓を取り除いた後、包丁でガーンと頭を叩き落とす。その勢いで、ガーン、ガーン、ガーンと胴体部分までも切り分け始めた。
「やめろ! やめろ!」
 悲鳴のような叫び声をあげた。たぶん、ここ数年で一番大きな声だったと思われる。
「止めてくれ、リンパだけだ」
 おっさんは、「アッ そうか」といった感じで包丁を置いて、チラリと私を見る。ニッと黄色い歯を見せた。
 頭部の他に、10センチほどに切られた胴体部分が2つ。それでもまだ尻尾まで40~50センチはあろう。それらを一緒にビニール袋に入れる。おっさんは、別に謝りもしない。黙って手渡されたので、私は複雑な気分なまま黙って5レアルを支払った。
――果たして、うなぎの蒲焼はできるのでしょうか?
(つづく)


前のページへ / 上へ / 次のページへ

© Copyright 2024 紺谷充彦. All rights reserved.