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紺谷君の伯剌西爾ぶらぶら
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【日本語教育機関の模索1】(2001年7月)

【日本語教育機関の模索1】(2001年7月) (2001/07/16) 生徒数十九人から二百人に発展
―バルゼン・グランデ・パウリスタ市―


 先月二十八日、日本語の有効的な普及を目的とする「日本語普及協議会」新設のための予備会議が、国際交流基金サンパウロ文化センター主催で、日本政府関係、コロニア団体、ブラジル公立学校、私立学校から十六団体が出席して行われた。近年、日本語教育機関は、生徒数減少、経営不振、先生不足という悪循環が発生、各地方文協や私立学校、公立学校でさえも存続の危機感を日増しに感じているからだ。同協議会では、一回目の設立予備会議という意味合いで「立場の異なる各機関が互いの状況を知り、協力体制を構築していこうという共通の意識を確認し、今後の方向性を確立した」。
 ―では、具体的にどのような方法が、日本語学習者を増加させ、効果的に普及できるのか。現在、運営方法の転換を模索し、実際に新しい動きを行っている日本語学校を紹介することで、今後の方向性を考える材料にしたい。(紺谷充彦記者)。


【コペラチーバ方式の学校を設立】
 バルゼン・グランデ・パウリスタ市の中心は、ラポーゾ・タバーレス街道が横切っている。その街道の脇に、元コチアのスーパーマーケットがあり、この裏に同市文協日本語学校がある。スーパーの前で一服していると、日系人の客が目立った。老夫婦に、日本語学校について尋ねてみた。
 「今年から、孫はコペラチーバの幼稚園に入った。ここの裏の日本語学校に入学させるように息子に言っていたのに。二世になったら言うことなんか聞きゃせんし、孫のことまで口出しできんから。孫に話し掛けても、『ケー、イッソ』なんて答えられて…」
 コペラチーバ方式の学校とは、九年前から、サンパウロ州が新しく取り入れた学校運営方式で、経営目的ではなく、社会貢献といった方針による学校運営が基本とされており、学校役員も選挙形式によって決められる。このため、税制面からの優遇措置がなされている。ただ、ムニシピオ(地域)に一カ所しか建てられないと定められており、現在、サンパウロ州には約六十校が設立されている。
 コベラチーバ・バルゼン・グランデ校は、九七年に学校法人などの登録を済ませ、九八年に個人住宅を借りて開始。当時、十九人の生徒だったが、翌年には九十人となった。さらに次の年には百四十人、手狭になったため教会の建物に移転。今年度は百九十六人となって急成長を遂げている。今年度の内訳は、幼稚園が十七人、小・中学校が百二十三人、高校が四十五人。来年度には、同市から土地を借りて、拡張することも検討している。ただ、現在のところ日本語の授業やコースはない。
 同コペラチーバ学校の役員は、十四人(日系人五人)、教師は二十二人(日系教師五人)、生徒の九割が非日系人である。授業料(月額)は、幼稚園が百五十レアル、小・中学校が百八十一レアル、高校百八十六レアル。入学費として三百五十レアル。私立の学校に比べて格段に安い。例えば、昨年度のサンパウロ市内私立学校の月謝平均は、幼稚園でも四百五十二レアル(九九年度グループ・エスコーラ・パルチクラー調査)。税制上の優遇措置もあり、利益を追求していないからころ、実現できる授業料なのである。同校教師の給与は、州立学校と同じ程度。私立学校なみの給与にするために、生徒数四百人程の規模まで発展させるというのが、今後の目標でもある。(つづく)


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