日本語教育機関の模索5 (2001/07/24)
CELプログラムによる日本語教育 ―レジストロ―
レジストロといえば、最も古い日本人植民地の一つである「桂植民地」、南米一の精米所を建設した「海外興業株式会社」などで日系社会に知られ、ブラジル社会にも「お茶の町」「灯篭流し」で知られている。現在、レジストロ市は人口約八万、このうち日系人が約一千二百家族で、人口の一割を占めている。 このレジストロ市に、州立学校の課外授業で外国語を勉強させることを目的に八八年から始まったCEL(セントロ・デ・エストード・デ・リングァ)プログラムによる日本語教育が実施されている。同システムで日本語教育を始めた最初の街で、同文協日本語学校と共存しているケースなのだ。 もともと州政府が実施している同プログラムを利用し、同公立校に無料の日本語のコースを導入させようと奔走したのが、当時、同文協役員でもあった故・墨田弘氏。官報に掲載されてあったCELプログラムの要綱を見て「外国語を州の教育によって行えるのであれば、日本語も可能であるはず」と、州政府にかけあった。「教室が必要」という州政府の返答に、教室建設のための寄付と署名を集めてまわった。公立学校の校長や日系政治家などの応援を得て、八九年に公立校の課外授業として初めて日本語の授業が行われることになったのだ。九四年からは、同市内の公立校と隣接する敷地に地元日系社会の援助を得て「外国語センター」を設立、日本語とスペイン語の授業を行っている。課外授業である同プログラムに独立したセンターを持っているのもレジストロのみ。 CELプログラムとはサンパウロ州教育庁で、八八年から開始された制度。同州教育庁では、メルコスールを意識してスペイン語を中心とする外国語教育に力を入れ、州立学校で週二時間、スペイン語もしくは、日本語、ドイツ語、イタリア語、ウクライナ語を選択して学ぶことができる同プログラムを設立。地域に日本語を学びたいという生徒が三十人以上いた場合には、同プログラムを授業に取り入れなければならないというもの。 現在、サンパウロ州では、コチア市やレジストロ市、サンジョゼ・ドス・カンポス市、アシス市など十二州立校で、約四百五十人が日本語を学んでいる。また、パラナ州でも八九年から同様のプログラム(CELEM)が実施されており、十一校で約四百人の生徒がいる。同プログラムは初歩からの一斉授業で三年間(三百時間)でコースが終了となるため、中級・上級へとは進まない。 同プログラムの実施機関として設立された「レジストロ外国語センター」では、日本語とスペイン語を教えており、現在、日本語の生徒が百四人、スペイン語は四百五十五人。スペイン語教師は四人、日本語教師が二人。授業は、六つのレベルに分け、半年を一学期、三年で終了する。非日系の生徒が七割を占めているが、日本語能力試験三・四級を目指し、日本語スピーチコンテストなどでも良い成績を上げている(九九年のペルー大会では、レジストロ出身の非日系人三人が入賞)。 さらに、生徒らは同市内だけでなく、ミラカツ(同市から五十キロ)やジュキア(三十キロ)、ジャック・ピランガ(二十五キロ)などの地域からも、わざわざ通っているほど。 同センターで教鞭をとる金子慶子先生は、文協日本語コースを担当しており、夫の国栄さんも同文協の広報部長を務め、夫婦二人三脚で地元の日本語普及に貢献している。金子先生によれば、「ここの授業過程である三年間を終了しても、さらに続けなければ、せっかく苦労して覚えたことも忘れてしまう。このため卒業したら文協の日本語学校へ行くようにすすめている」と言う。また、文協学校を止めて、CELで勉強したいという生徒にも、「両方で勉強して今までより、もっとできるようになる方よいでしょう」と説得しているという。(つづく・紺谷充彦記者)
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