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日本語教育機関の模索7

日本語教育機関の模索7 (2001/07/26) 日本語学習者が二千人
―公文教育研究会―


 パライーゾ区にある公文教育研究会本部の二階には、横四メートル、高さ二メートルほどもある棚が幾つも並べられてある。日本語、数学、ポルトガル語の棚があり、何百種類もの教材用プリントがレベルごとに仕切られ収めてある。
 日本語の最初のプリントを見ると、「し」の書き方から始まっていた。公文の日本語部門を担当する小宮陽(あきら)さんによれば、平仮名の「し」は、「あ」よりも簡単で一筆で書けるからという。棚の反対側にまわって後半のプリントには、夏目漱石「坊ちゃん」の一節。「応用コースとして国語もあります」と小宮さん。
 公文式の日本語学習課程は、大きく十五段階に分けられ、一段階の中にも課題ごとに幾つも分かれている。さらに、基礎コースの日本語を終了した生徒には応用として国語のコースを設け、細かく分類されたプリントが準備されているのだ。
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 ブラジルでの日本語学習者は一万六千人(九八年・日本語普及センター調査)。このうち二千人が公文式で学んでいる。公文では九十年代になってから本格的に日本語コースを開設、着実に生徒数を増やしている。今年二月にはベレン、マナウスなどの十教室、八月には七教室を新設する。
 「日本語学習者が減少傾向にある中、何故、公文式の生徒が増加しているのか?」。公文式学習の特徴や教育理念を紹介することで「効果的な日本語の普及」について考察したい。
 公文式とは、高校の数学教師を務めていた故・公文公(くもんとおる)氏が、小学生の息子に数学を教えるため考案した教授法。一九五八年に企業としてスタート。公文式で教室を開設したいとする教師に、教材や指導方法を教えるフランチャイズ方式として運営している。七七年に初めてブラジル(サンパウロ、ロンドリーナ)で教室を開設。八二年にブラジル駐在員子弟向けの国語クラスを開き、九四年からはブラジル人向けのポルトガル語のクラスも始めている。
 現在、日本では百四十八万人の学習者。ブラジル全土では、日本語は百二カ所の教室、生徒数約二千人。日本語の生徒は、中・高校生から大人が中心で、日系人、非日系人の割合は半々。七〇%の生徒が日本語を初級から学んでいる。また、ブラジルでの数学の生徒は約五万五千人、ポ語は一万八千人。合計二千五百教室で、七万人以上の生徒が公文式で学んでいる。現在、日本では百四十八万人の学習者がいる。
 公文式の特徴について担当の小宮さんは「自学自習の力を付けること」を強調する。学年や年齢にとらわれず、一人一人の学力に合わせてプリント教材を提供。できないことをムリに押しつけず、「自分で解ける」段階から始め、「できる喜び」を重視するという。
 教師の役割は、一般の学校のように一斉授業するというものではなく、プリントを評価し、次の教材を決めること。もちろん、分からない生徒には個々に指導する。週二回の決められた時間内で、自分の都合のよい時間に来室。与えられたプリントを生徒が解き、教師が採点、宿題を渡されるというシステム。
 また、間違えたプリントを、出来るまで何度も繰り返しやらせるのも特徴。同じプリントばかりで嫌になる生徒にも、「十分に説得し、どうして同じプリントなのかを説明する」という。日本語の授業料はサンパウロ市内で月々七十九レアル。
 公文式で教えている本橋英子先生の教室(パライーゾ区)では、日本語生徒六十人。数学、ポ語の生徒を合わせ合計三百人が通っている。生徒は、五歳から六十歳までと幅広いが、特に、二・三世の中・高校生が多いという。同教室では本橋先生の他、七人のアシスタントが生徒の指導、プリントの採点を行い、日本語、数学、ポ語の生徒が、それぞれにプリントに取り組んでいた。「学校の教室というよりも、生徒らが宿題をやる場所」といった印象を受けた。
 「数学の場合は、こういったシステムでも良いだろうが、日本語の会話は」という問いに、小宮さんは「会話というものは、読み書きが出来て、作文の能力が付けば、自然に身に付いてくるもの。基礎学習をしっかりと行えば、日本語の世界に入っても、すぐに会話は出来るようになる」と説明していた。(つづく・紺谷充彦記者)


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