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日本語教育機関の模索8

日本語教育機関の模索8 (2001/07/27) 出稼ぎのための日本語学習
―国外就労者援護センター・日本語教室―

 「漢字や文法は必要ない」(四十代女性)「現場で使える日本語が勉強したい」(三十代男性)「夫が日本にいて、これから行くので、息子や娘と共に一緒に勉強している」(三十代女性)「日本語学校に通っている時間がない」(五十代男性)「会話の本とテープで、自宅でも復習できる」(二十代男性)――。
 国外就労者援護センター(CIATE)では、週一回「出稼ぎのための日本語コース」を行っているが、同コースに参加している人たちに動機を聞いてみた。殆どの人が短期間で役に立つ会話を学びたいという。
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 統計上、ブラジルの日本語学習者が年々減少しているとされているが、果たして実際にそうなのか。国際交流基金の数字を基にして日本語普及センターが発表した一万六千人という数字には、出稼ぎのために学んでいる人や、個人で勉強している人の数はカウントされない。もちろん実数を把握すること自体が無理だし、これまで出稼ぎ学習者を日本語教育というカテゴリーに入れていなかったこともある。
 長引く日本の不況にもかかわらず出稼ぎは年々増加し、数年前までは二十万人と言われていた出稼ぎが、現在では二十五万人(「日本でのブラジル国籍者の就労者数」二〇〇〇年度法務省調査)となっている。出稼ぎが増えている理由は、家族の呼び寄せや、リピーターが増えているとも推測され、毎年一万人以上が就労目的で日本に渡っているのが現状。
 こうしたことを考えると、統計上の数字には現れていない潜在日本語学習者数は、むしろ増加しているとも言えるかもしれない。
 日本語普及協議会が提唱する「効果的な日本語普及」に、出稼ぎのための学習者を取り込めないものだろうか―。
 文協ビル内にある国外就労者援護センター(CAITE)では、日本での就労者の役に立つようにと、昨年八月から毎週水曜日に「日本での就労者のための日本語教室」を無料で始めた。「現場で役に立つ会話」というはっきりした目的があることや、無料ということなどで、口コミで次々と生徒が集まり、現在、五十人以上。
 同センターの立入喜久雄専任理事は「教室としている同会議室も手狭になってきたため、週二回にしたり、初級者と上級者を分けることを検討している」と嬉しい悲鳴を挙げている。
 同授業は、四~五カ月でコースが完了し、また最初から始めるといったシステムで、同じコースに何度も参加している生徒もいる。最初から始める必要もなく、三~四回しか出席しない生徒もいる。年齢層も幅広く十代から六十代の生徒もおり、中には出稼ぎ目的ではない学生も混じっているという。
 また、同教室で使用している教科書は、財団法人・産業雇用安定センターが、必要な用語を調査したり、相談に訪れた日系人の事例を参考にして作成した「職場で役立つ日本語会話集」。同コース参加者に無料で配布されている。同会話集の内容も、「おはようございます」から始まって「住宅手当がでますか」「給料から税金がどのくらい引かれますか」「夜勤はありますか」など、就労者にとって非常に実用的。
 B4版で二百ページ以上、日本語、ローマ字、ポルトガル語訳が掲載されている。さらに、同教科書用のカセットテープもあり、生徒が自宅でも分かりやすく勉強できるように工夫されている。
 出稼ぎブーム以降、個人授業で出稼ぎ学習者に教えたり、日本語学校でも特別クラスを設けたりしているところもあるが、ブラジル日本語教育全体で出稼ぎ学習者が見逃されてのではないだろうか。たとえ、二~三カ月で止めてしまう学習者であっても、潜在学習者数は十数万人の規模であろう。こうした層を取りこむことも、今後の日本語教育にとっては見逃せないはず。(おわり・紺谷充彦)


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