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活躍する新日系農協3

活躍する新日系農協3 (2002/02/27) 冷たい専門農協として、セリ市場の設立
―サンパウロ花卉農業協同組合―

 「総合農協」に対して「専門農協」というシステムがある。総合農協は信用事業のほか、共済、購買、販売などの事業を総合的に行っている組合だが、専門農協は酪農、茶、柑橘、開拓など特定の業種に関する事業だけを行う農協である。
 コチア組合中央会なども、数々の業種を扱うと共に、「生産性・収益性の向上と同時に、組合員の生活向上のための教育・文化・福祉を含めた活動」を目標に掲げ、地域の中心的な役割を担っていた。
 特に、コロニアの歴史を振り返っても、日本人移住地を形成している所では、地元の日本人会と共に必ずといってよいほど総合的な産業組合が設立されている。こうした組合は日本人の心の拠り所となり、経済活動に限らず教育・文化を含めた事業活動の中心となっていた。
 戦前のサンパウロ近郊だけでも一九二七年のコチア組合をはじめ、ジュケリー組合(二九年)、モジ組合(三一年)、イタケーラ組合(三三年)、ジュキア・バナナ組合(三三年)などと枚挙にいとまがない。
 こうした伝統的な総合組合ではなく、専門農協としてサンパウロ花卉農業協同組合(荒木克弥理事長)が、昨年十二月に発足した。信用事業や福祉事業を行わない花卉生産者のための販売のみを扱う専門農協である。
 同組合は、アルジャ市を中心とする八十人の花卉生産者が、効果的な販売方法の向上、開発のために、二〇〇〇年七月に結成、二〇〇一年十二月に正式に認可された。具体的には、新しい花卉セリ市場(流通センター)を開設・運営するためだけの農協組合で、販売と販売に関する問題を扱う。
 同組合が計画しているセリ市場は、モジ近郊(タボン街道〇キロ地点、GM自動車工場隣接地)に建設され、敷地面積十万五千平米、建地面積五千平米と大規模なセンターとなる。建物は今年三月には完成する予定で、その後、コンピューターシステムなどの設備を導入し、今年十月には同市場をスタートさせる。
 同敷地は、すでに同組合員の出資により購入されており、総工費は一千二百万レアルを見込む。建設資金はJATAK(全国拓殖農業協同組合連合会)からの補助金が五割、残りは組合員たちが自己資金として支払う。今年度の総経費は七千万円で、三千万円をJATAKが補助している。
 販売方法は、セリ市方式や、予約相対(先物)、二十四時間体制でのキャッシュ&キャリー方式のほか、植木市場の入札参加があり、「すべてコンピューターにより管理される」と荒木理事長は説明する。
 荒木理事長によれば「この組合が実施するセリ市場は『売りやすい、買いやすい』をモットーに流通システムの確立を推し進め、組合は情報提供のみを行う」という。ただ、「近代的なシステムであり同組合は信用事業などはやらないため『冷たい専門組合』なるかも」と語っていた。(つづく・紺谷充彦記者)


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