活躍する新日系農協6 (2002/03/04)
大リストラを敢行 ―グランデ・サンパウロ組合―
「とんでもない大きな物を担がされた」とグランデ・サンパウロ南伯農業協同組合(半田保夫理事長)の役員は振り返っている。 九四年三月に南伯産業組合中央会が解散した後、同組合員の要望で、それまで中央会の一組織だったグランデ・サンパウロ単協(六九年設立)に、南伯販売部が移転された。従業員五十人とセアザの売り場、二十八単協の販売委託が、そのまま同単協の肩に乗せられたのだ。 同時期、レアルプラン直後、青果物の価格は高騰、市場原理に反した不均衡な価格で、いわゆるバブル的な高値が付けられていた。 南伯販売部を担いだ同組合では「意外とできるではないか」と錯覚してしまったという。 しかし、九六年頃からレアルプラン安定と共に、青果物の価格も見直され、泡(バブル)は消えていった。当然、大きな世帯を抱えすぎた同組合は、従業員の給料、セアザ売り場の借料などに圧迫された。同組合理事会では、経営方針転換についての論議が日夜続けられた。 こうしたことから、九八年に大改革のリストラを実施、半数以上の従業員が解雇された。同時に単協として、販売部と購入部だけを残すことが決定された。 残った職員らは、事務員が足りなくなったことで、事務仕事を平常業務後にやらなければならない状態となった。「同事務所にダンボールをひいて寝泊りし、一年間ちかく深夜まで仕事をやっていた」という。こうしたことで、むしろ一丸となって難関に立ち向かう気概が、組合全体にみなぎった。 現在、同組合は、セアザでの委託販売を受け持つ販売部と、農薬や肥料などを扱う購買部を運営。アチバイア、バストス、マリリア、サンミゲール・アルカンジョ、ロンドリーナなどの九単協と契約し、ぶどう、メロン、トマトなどを中心に青果物を扱っている。販売部の年間売上げは八百万レアル、購買部では三百万レアルを売上げている。 同組合役員も大改革と同時に一新されており、今日、若きリーダーとして活躍しているのが、山崎己都明さん(三五)である。山崎さんは、アリアンサ出身、農学部卒業後、南伯中央会の農業技師として勤務していた。 同組合が、最近、軌道に乗ってきたことに関して、山崎さんは「役員や理事長のおかげ」と強調するが、古参の役員らは「山崎君の功績」と賞賛している。「初め、我々も半信半疑だったが、ここまで山崎君が頑張るとは思わなかった。特に農業者に対して親身を持って接するため、組合員から信頼を得ている」と役員らは語っている。 山崎さんは、今後の目標について、「事業を拡大するのではなく、扱っている生産物を正確に売って、確実に支払う。当たり前のことを積み上げ継続していくことで、組合員の信頼を得ていくことが重要」と説明していた。 最後に、「出稼ぎなど考えたことはないのか?」との質問に対して「自分は、農業にすべてを賭ける。たとえ儲からなくても、バカだと言われようが…。農業活性化に人生を賭ける」と山崎さんは熱く語っていた。(つづく・紺谷充彦記者)
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