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紺谷君の伯剌西爾ぶらぶら
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エメラルドの郷 (2002/11/01) 【エメラルドは石ころ】
※ホームページでは、作品の一部だけを紹介します

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山の中腹の牧草地に、幾つも巨大な「蟻の巣」が点在していた。
地底に続く縦穴の周りに、掘り出された土砂や瓦礫が盛り上がっている。
 五月の誕生石として知られ、濃緑色が幸運をもたらすとされているエメラルド。日本でも高価な宝石として人気が高い。産出国は南米が主で、コロンビアとブラジルでその八十%以上を占めているのだが、その採掘過程はあまり知られていない。
 そこで私は、ブラジル・バイア州カルナイーバの採掘現場で、鉱山労働者と共にエメラルドを掘ってみた。エメラルドを採掘するには、地下百数十メートルに至る坑道に下り、ダイナマイトを仕掛け、掘り進んでいく。結局、1カ月ほど滞在したが、売り物になるエメラルドを発見できなかった。どこに向かって掘れば見つかるのかは、賭けだ。
 こうした現場では、色の薄いエメラルドや不純物の多い結晶は、たとえ大きなものでも穴の周りに山のように捨てられている。濃緑色ではない石には価値がないのだ。エメラルドに含まれるクロムやバナジウムなどの含有元素のほんのわずかな違いだけで、結晶は宝石にも石ころにも変わってしまう。
 「エメラルドは高価である」「宝石の女王」と、我々はイメージを植え込まれているのだが、採掘現場にいると、ただの石にしか思えなくなった。鉱山労働者や宝石売買人の価値観や、どのようにエメラルドが採掘されているのかレポートしてみた。


【ブラジル、バイア州カルナイーバとは】

 ブラジル東北部バイア州にあるこの町は、もともとは数家族の農業従事者だけが住んでいた山奥だった。一九六五年にエメラルドが発見され、ガリンペイロと呼ばれる鉱山労働者が数千人流入して町を形成した。六十年代から七十年代にかけて、町は、世界エメラルド産出の一流ランクにも位置付けられるほど隆盛を誇った。七九年には電気が供給されるようになり、約五十軒の商店、二軒の映画館、公立小学校までも設立された。
 しかし、八十年代後半から産出量は激減、人々は他の鉱山へ移っていった。そして現在、町の活気は失われつつあるが、それでも、エメラルドの濃碧色に惹かれて、ガリンペイロや山師、投資家、あぶれ者たちが集まってきている。




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蟻の巣
地下百二十メートルに達する縦穴を、ワイヤーにつかまって降りる。縦穴の側面には、伝声管、空気管、配水管、電線ケーブルが這っており、暗闇に続いている。二十メートルぐらい降りると、地上の光が届かない。見上げると四角い光が小さくなっていた。












ガリンペイロ1
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 ブラジルで、ガリンペイロといえば鉱山労働者のことで、一攫千金を狙った食い詰め者、環境と治安を悪化させる悪役として知られている。ましてや、ガリンペイロの町となれば、麻薬や犯罪の巣窟、さらにはマラリヤや伝染病が蔓延しているといったイメージが持たれている。私自身も、ここを訪れるまでそうしたイメージを抱いていた。









ガリンペイロ2
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 太陽光にすかして色の度合いを見ているガリンペイロ。エメラルドは大きさや形よりも、緑色の濃さと透明度で価値が決まるという。










ガリンペイロ3
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 老ガリンペイロ、年齢は自分でも分からないようだ。85歳を過ぎているのは確か。いまだ現役で穴を掘っているし、自分の見つけたエメラルドを見せて気焔を上げている。














エメラルドの鉱脈
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 エメラルドは黒雲母の層に存在する。その層が10センチから広いところでは1メートルの幅で地中を横切っている。










ダイナマイト1
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 鉱山は岩山であるため、坑道を掘り進むにはダイナマイトを使う。岩盤にドリルで穿孔して、そこにダイナマイトを仕掛ける。一回の爆発で三十センチほどしか削岩できないため、一日に二回仕掛けられる。ドリルを使うと粉塵がまい、「じん肺病」という職業病を引き起こす。












ダイナマイト2
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 ダイナマイトのことを、ガリンペイロは「バナナ」と呼んでいる。形状がまさにそれで、一発で理解できる。「バナナ」は一箱六十六本入り、火薬合計量二十五キロ、百二十レアル(五千円)で購入できる。長さ五十センチ、直径三センチぐらいの細長い形で、半分に切って使用している。









洗う女
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 町の女は、娼婦かガリンペイロの女房である。その女房連中は、蟻の巣から掘り出された瓦礫の山に集まり、屑エメラルドを拾っていく。彼女らはブリキの簀子に瓦礫を入れ、それをタライの水で漉くように揺らす。濡らした石を光線に透かして、エメラルドを見つけ出す。タライの上で簀子を揺らす姿は、誰が見ても「洗う」と表現するだろう。











鼠市1
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 町のメインストリートではエメラルドが売買されている。屋外の選別台の上に緑の小石が積まれ、ルーレットのチップのように遣り取りされながら、売り買いされている。こうした青空市場は、鼠市(フェイラ・ド・ハット)と呼ばれている。カゴに入った二十日鼠が車輪を回しているように、宝石が売り手と買い手の間を回っているからだという。









鼠市2
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 小石の中からエメラルドだけを取り出している。エメラルドは割れやすいので注意が必要。


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