ヘラクレスオオカブトムシ探訪記 (2005/06/29)
ブラジルに住んでいる私は、少年時代の夢を叶えるためヘラクレスオオカブトムシを探しにアマゾンへ行った。会社を辞めて暇になり、「カブトムシに対する想い」が甦ってきたからだ。
日本では外国産カブトムシの人気が高い。九九年に輸入が解禁されたことで飼育ブームに拍車が掛かり、マニアの間では数万円で売買されるものもある。しかし、ブラジルには「カブトムシ」という単語すらない。あるのは「ビゾーロ」という甲虫一般を指す言葉だけ。さらに、若い女性にはゴキブリ同様に扱われもする。カブトムシを探すというだけで、変人扱いだ。そのうえ、現在ブラジル政府は、野生動物の保護のため、動植物一切の持出しを禁止している。もし見つかれば逮捕という厳しさだ。 それでも、アマゾン拠点の都市マナウスへ行った。まず、ヘラクレスの生態に詳しい博物学者に会い、見つけるためのヒントをもらう。それから、アマゾンの町、テフェとタバチンガへ船で向かった。
 | インディオの小屋で寝ていると、少女たちが覗きに来る |
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アマゾン奥地の川に浮かぶ小屋では、十才の少女が家事や幼児の世話をする。五才の子供が巧みに泳ぎ、カヌーまで操る。一方、私はといえば、ジャングルで生活するための能力を何一つ備えていない。生水は飲めない。狩りや釣りも出来ないし、カヌーも漕げない。動植物に関する知識もない。いかに自分が無力かを知った。 ジャングルでは、インディオは裸足で歩き、私は長靴を履く。インディオは深夜も平気で密林に踏み入り、暗闇でも迷うことはなかった。鳥やサルの鳴き声、魚の跳ねる音、虫の声など、ジャングルの音を聞き分ける。一緒にいる私は、毒蛇やサソリ、毒グモ、巨大蟻を必要以上に恐れ、大量に群がる蚊の攻撃に気が狂いそうだった。
 | カブトムシを集めるための仕掛けに、 人間の方が集まってくる |
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カブトムシを見つけるにしても、自力では出来なかった。常に誰かを頼ることになる。NGO代表者や伝道師、密売人、インディオ、日本人移住者、ペルー人など、様々な人々に助けられたり、騙されたりしながら、私はカブトムシを集めた。同時に、カブトムシを通して、アマゾンのことを学んでいった。 しかし、本命のヘラクレスはなかなか見つからなかった。結局、地元の青年から生きたヘラクレスを購入し、目的を達成したことにする。少年時代からの夢を、大人の妥協で終わらせた。 (本文の概要のみ掲載、本文は原稿用紙換算200枚)
―目次― 第1章 昆虫少年 【少年時代からの夢】 【ブラジルのカブトムシ観】
第2章 アマゾンの町 【テフェ】 【河辺の村】
第3章 国境の人々 【ペルー人】 【サブローさん】 【シウド】
第4章 カブトムシ密売買 【レティシア】 【ホテル高菜】 【ウマリアスー】
第5章 捕獲作戦 【密林】 【シダーデ・ノーバ】
第6章 ピンボケ写真 【ヘラちゃん】 【妥協】
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