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紺谷君の伯剌西爾ぶらぶら
     「ハルとナツ」エキストラ出演記  (最終更新日 : 2004/07/17)
8 米倉涼子に大接近 [画像を表示]

8 米倉涼子に大接近 (2004/07/17)  12人の囚人のうち、唯一顔見知りだったのは邦字新聞に勤めるY君だった。Y君はプロレスラーの何某(聞いたけど憶えられない)を信仰しているらしく、何某のポスターを部屋に貼って毎日筋トレしている。プロレス会場で客を抑える若手レスラーのような格好で取材先にも現れるというキャラクター。
 一方、僕はといえば「スマップ」と「スナップ」をいまだ区別できない芸能オンチ。ドラマ主役の米倉涼子と言われても、ぜんぜんピンとこない。まだ、森光子や野際陽子なら「あぁ あの人か」という程度には分かる。
 そんな僕に、Y君が言う。
「米倉ですよ。知らないんですか? 今一番日本で有名ですよ。『奥様は魔女』にも出てたじゃないですか」
「『奥様は魔女』?? それは知っている。ブラジルでも放映されている。でも、洋ドラマじゃないか! 何故、日本人が??」
「だから……」
 2人の会話はそんな調子だった。

 留置所の撮影が終わると、「エキストラの人はすぐにバスに戻って下さい」と指示されたのだが、関係者に交じってY君と共にちょっと残っていた。忠治役の村田雄浩が撮影最終日だったので、お疲れ様の花束を受け取っていたからだ。彼の回りにスタッフや役者らが大勢集まり、拍手していた。
 僕らも一緒になってその写真を撮っていたとき、すぐ隣に米倉が来た。僕は、気づかなかったのだが、Y君は興奮して、
「写真、撮らせてください!!」
「顔に蚊に刺された跡がありますけど」
 米倉は快く応じてくれた。
 Y君は、バチバチとフラッシュをたく。さらに、「僕は邦字紙の記者ですが、コロニアの人に一言」と詰め寄った。
『コロニア』※と言われても、何のことか分からなかったかもしれない。それでも、「知らなかったことが、いろいろ分かるようになりました」と答えた。
米倉涼子.jpg
米倉涼子に突撃インタビューするY君

 スタッフの一人が駆け寄ってきて、Y君に、
「あなた、勝手にインタビューされたら困りますよ。マネージャーを通してもらわないと」
 そう語気を強めた。
 しかたなく、我々はすごすごと引き下がった。
「ノートとペンを持っていたのは拙かったろう。関係者のフリをして自然に話しかけていれば、もっと話せたかもしれないな」
「そうですね。でも、もう少しだけでも話したかったですよ」
 Y君は残念がっていたが、一言といえども言葉を交わしたのだし、スッピンの彼女をカメラに収めたのだから、大収穫だろう。





※コロニア
 ブラジル日系社会の総称。「コロニアは邦字新聞を読む人の団体」(鈴木悌一サンパウロ大学教授)、「コロニアはブラジル社会におけるわれわれのマイホーム」(半田知雄サンパウロ人文科学研究所理事)、「コロニアはブラジルの発展に寄与するための日系人社会」(相場真一南米銀行副社長)などと様々な定義がある。


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