12月の日記・総集編 縄文のからだ (2006/01/01)
12/1記 「ギアナ高地」評
ブラジルにて 昨11月30日付サンパウロ新聞、そして今日12月1日付ニッケイ新聞とブラジルの日刊邦字紙二雄に拙作「ギアナ高地の伝言 橋本梧郎南米博物誌」の紹介記事が掲載される。 いずれも絶賛、うれしい限り。 さらに制作者冥利に尽きるのはジャーナリスト・美代賢志さんにいただいたコメント。 http://www.brasilforum.com/ 上記の2005.11.27の記載をご覧あれ。
12/2記 DNAとしての氏名
ブラジルにて 未明に現場着。 今日は託児所の卒業式の予行演習がメイン。 ひとりひとりがフルネームで呼ばれる。 この子たちがフルネームで呼ばれることが、一生のうちにどれだけあるだろうか。 それぞれがいかめしいフルネームを持っていることが新鮮な驚き。 それぞれの歴史と尊厳の、ひとつの証だ。
12/3記 注文殺到
ブラジルにて 今日は託児所の卒業式。 保母補佐のおねーちゃんから、ビデオ譲ってもらえるの?いくら? と聞かれる。 薄給の人からカネは取れないしねえ。 職員の女性、子供の母がシスターにビデオ、譲ってもらえるのかしら、と聞いているのも目撃。 もう今日の撮影は地元用と割り切ってサービス撮影とする。 卒業式の後も終業までしばらく子供たちは託児所に来る。 ビデオ鑑賞の時間で拙作を披露することを思いつく。 これはえらいことになる予感。 そういえばかつてインディオ相手にこれをやってバカ受けし過ぎて、あげくに…
12/4記 待降節に
ブラジルにて おー、「待降節」がイッパツで変換されて妙に感動。 ナタール(クリスマス)について連載の方で書くことになり、アンテナを張る。 進行中の取材先も子供相手、我が家も学童が二人いるので何かとナタールものの催しは多い。 今日も午後からひとつ。 こちらのクリスマス菓子となっているパネトーネをいただく。 今年のナタールでは初めてほおばるが、数片いただいて、もう飽きてしまった。 これからあちこちからこれをもらうのだが… ちなみにパネトーネについてインターネットで調べてみて、その奥深さにこれまた打たれる。 また味わい直してみっか。
12/5記 恐怖と感動
ブラジルにて いよいよ「60年目の東京物語」が再放送される。 日本時間12月8日(木)、20:00より20:45まで東京MXテレビにて。 他人様のサイトに、こんな鋭い記述が。 案外「ペルー人って怖い」って言っている人の中には「ハルとナツ」に感動した、って人がいたりして(苦笑)。「ハルとナツ」には盗用疑惑あり。うやむやになっているようだが、テレビ東京で酷似のドキュメンタリーがあった。 「テレビ東京」となっているところが泣かせるが。
12/6記① 再放送副読本
ブラジルにて 日本の上映会で「60年目の東京物語」を見てくれた人が、ご自身のブログ「さすらい日乗」でこんなコメントを発表していてくれていた。 旅から旅の日々が続き、恥ずかしながらそれを今日、知った次第。
橋田寿賀子脚本のNHkの大作ドラマ『ハルとナツ』が盗作したのではないか、と言われているブラジル在のドキュメンタリー作家岡村淳氏の作品である。 東京MXテレビ用に作られたドキュメンタリー。 政府の在外日系人訪日事業で、60年前にブラジルに移民した東京出身の80歳の森下妙子さんが、60年前別れた姉一枝さんを訪ねて日本にやって来る。 姉に会いに鬼怒川、出稼ぎに来ている実の娘の富山に、さらに60年前に生き別れた養母の跡を訪ねて久留米、会津に行く。 結論から言えば、盗作問題をこえて、この岡村氏の作品の方がはるかに面白い。事実の意外さ、面白さ。平凡で無名の人物のドラマの起伏。 主人公・森下妙子さんのキャラクターの愉快さ、元気さなど、すべて魅力が岡村氏のビデオ作品の方が上である。 盗作問題に関して言えば、相当参考にした、それも極めて稚拙に消化したことは多分事実だろう。 NHKももっと上手にドラマができていれば、これほどまでに岡村氏に対して対立的にはなっていないだろう。 劇の出来がよければ、「何を言っているのだ、参考にはしたが、こっちは別にきちんと作った」と言い返せるのだから。言い返せないところは、やましいのだろう。 森下さんは今も90歳で元気にブラジルで生活されているそうである。 NHKのような大メディアが、無名の平凡な人物を描くことはいかに無理か良く分った。
12/6記② ホテル・ルワンダ
ブラジルにて アフリカのことに触れたくなる。 こちらで手っ取り早いのは欧米のニュース局やドキュメンタリー専門チャンネルを見ること。 しかし我が家はペイテレビに加入していない。 折りしもアフリカものの映画が2本、サンパウロではかかっている。 所用のついでに「ホテル・ルワンダ」を鑑賞。 ポル語のポスターから。 Quando o mundo fechou os olhos, ele abriu seus braços. (今日はあえて邦訳なし) これだけでもう泣かされる。 自分の矮小な世界観をこじ開けてくれた。 昨年度のオスカー3部門にノミネートされたとのこと。 日本での公開、邦題はどうなっているの? と検索すると、 http://rwanda.hp.infoseek.co.jp/ こんなサイトがあるではないか! 『ホテル・ルワンダ』日本公開を応援する会。 なんだか「岡村淳『60年目の東京物語』を観る会」等に通ずるものあり。 どんどん我々で流れを作っていきましょうよ。 例え細流でも、流れとしては大アマゾンと同じ1本だ。 ちなみに「ホテル・ルワンダ」、東京は渋谷で1月14日から公開とのこと。
12/7記 26回目の難産
ブラジルにて ブラジルにて不定期刊行の雑誌Bumbaの新刊が発行された。 毎号、難産続きでそれでも第26号となった。 そうそう、ガウディの建築物なみに工事中の続いていたBumbaのHPもついにオープン。 http://www.bumba.com.br/ ちょっと訪ねてみると、ちゃんと更新して岡村の指摘した過ちも訂正してあるぞ。 NHKよりはるかに良心的。 さて、次の連載、何を書きますかな。 NHK問題については新たな面白い情報も寄せられている。 下品な問題は産後の肥立ちにたたるかな。
12/8記 櫛の歯
ブラジルにて 今年のサンパウロの夏は、寒い。 来週、家族で日本に引き上げる日本人一世の友人に一献。 同席した別の日本人の友人は「友だちがどんどん帰っていって寂しくなりますねえ」を繰り返す。 確かに今年だけで実質的に引き上げた友人は3人。 リアリティや道徳無視の安手のドラマとは違う、これが現実。 まああの世に行ったわけじゃなし。 日本で訪ねる友人が増えたと思えばよろし。 それにしても、寒い。
12/9記 FILATERISTA
ブラジルにて ポル語で切手ファンのことをFILATERISTAという。 僕の小学生の頃は、子供の3分の1ぐらいは切手コレクションをしていたように思う。 不肖オカムラも切手を通して日本の地理・歴史・文化に触れていった。 さらに大東亜共栄圏発行の切手から、世界各地の切手へ。 「シエラレオネ」などという国名は、切手で覚えた。 移民となって、近年メールなどたしなむようになって回数は減ったが、年末には確実に中央郵便局に記念切手の買出しに行く。 クリスマスカードと年賀状のため。 ブラジルはなかなかの切手大国である。 それでいてズボラさが伴い、今日もまだ今年バージョンのクリスマス切手が発行されていない。 かといってそう何度もここまで足を運べない。 どれとどれを組み合わせれば国際郵便料金になるかなど、考慮の上、購入。 今回はいまいちギョッとするのがない。 それでもひとつ、強烈なデザインのものが。 PIRACEMAをテーマにした切手シート。 残念ながらこれは高額切手のため、特殊なものをお送りする方にのみのお楽しみということで。
12/10記 縄文のからだ
ブラジルにて 見事な不調。 一昨日はコリアン焼肉食べ放題、昨夜はシュラスカリアで焼肉食べ放題と続いてがっついたせい。 街でパステルやらサルガジンニョやら典型的なブラジルのスナックを見るだけでむかつく。 わずかに食指が動くのはリンゴ、梅干、大根おろし、ミシリカというみかんの一種ぐらい。 もともと縄文以来の日本人の内臓に、そしてそもそも中年以降に獣肉の多食は無理なことをカラダで知る。 訪日中も肉なんかほとんど食べていない。 数回の牛丼、それに上野の今半のスキヤキ、仙台の牛タン…けっこう食べてるか。 縄文時代は狩猟採集民じゃなかったの? これはシロートの陥りやすい偏見。 すでに1980年代の自然科学的研究で、縄文人も動物性食料より植物性食料を多食していることが明らかにされている。 医食同源とはよく言ったもの。 縄文以来のからだからの警告に、素直に従いましょう。
12/11記 スクラップから
ブラジルより 今日、見つけた過去のブラジルの新聞記事から。 過去といっても今年の6月9日付だから、それほど「旧聞」ではない。 当地の有力紙「O ESTADO DE S.PAULO」紙より。 「シングー(註:アマゾン川流域にあるインディオ保護区で、国立公園に指定されている)のインディオの村でドキュメンタリーの撮影を行なった日本のTV局NHKが告発され、インディオたちに賠償金5万ドルの支払いを余儀なくされた」。 この記事そのものからでは具体的な責任者や番組名は不明。 こうした事件は、日本で報道されているのだろうか。 この賠償金も、皆様の受信料だろうか。 受信料負担者の知るべき事件だろうか、知る必要のない事件だろうか。 そもそも受信料がどのように使用されているか、負担者への説明があるのだろうか。 自浄・向上能力のない隠蔽と虚偽と恐怖の組織に、そう長い未来はないだろう。
12/12記 暦か肌か
ブラジルにて 今年の年末のサンパウロは異常に寒い。 本来なら盛夏を迎えるというのに。 暦の上ではそろそろ夏至である。 午後、所用で出る。 Tシャツいっちょうで。 いくら冷夏だといっても仮にも夏だから、というノリで… 寒い。 街ではジャンパーは当たり前、コートを着ている人もいるではないか。 半袖系はサルガドの被写体になりそうな人たちぐらい。 人間の決めた暦などにとらわれず、自分の肌を信じる。 そういう能力はブラジル人の方がはるかに上だな。
12/13記 デジタれない私
ブラジルにて 拙作「赤い大地の仲間たち フマニタス25年の歩み」 ( http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000044/20040213000270.cfm ) のポルトガル語版ナレーションの録音。 すでに僕の能力を超えているので、テロップ入れと共に知人の映像制作者に一任。 不肖オカムラは立ち会って、日本語の発音やイントネーションなどのチェック。 そもそもこちらのドキュメンタリー制作方式は、日本で僕あたりが慣れ親しんできたものとまるで違う。 いわばアナログ的方法とデジタル的方法の違い。 ナレーションの録音方法も、ちょっと僕あたりにはできない、したくない方法。 もうこれは任せるしかない。 改めて拙作の、自分の書いたナレーションのポル語訳を読んで、この作品に自分の込めた祈りがよくわかり、感無量。 新たなからし種の行方が楽しみ。
12/14記 カマラーダ
ブラジルにて カマラーダ(camarada):ブラジルの日本人移民や日系人が用いる場合、「(日雇いの)単純労働者」を意味する場合が多い。ブラジルでは、「仲間」「あいつ」といった意味で広く用いられる。 ベネズエラのロベルトに連絡を取る。 これまでメールを送っているが、返信がない。 住所を確認する必要があるのだが。 彼の携帯電話に電話をしてみることにする。 彼の居場所はギアナ高地。 クリスマスや年越しをテプイ(テーブルマウンテン)で過ごそうという外国人観光客のトレッキング旅行に付き添っているかもしれない。 おう、通じたぞ! 通話状況はよくない。 「オカムラだよ、ブラジルの…」 音声が途切れる。 「…カマラーダ?…、おおおおう、オカムラ!!兄弟よ!」 完成した作品を送る現在の確実な住所をメールで伝えてくれるよう、頼む。 現地で彼に作品が完成したら送るよ、と言った時、彼はせせら笑った。 「そう言って送ってきたのがいた試しがないな。ドイツの有名な○○だって…」 わが祖国を代表する放送局が内外でひんしゅくを買っている様は、想像以上に深刻だ。 こちとら、自分の都合で個人名を売り、問題がばれると組織の代紋のなかに隠れようとするような器用な立場にはいない。 祖国を代表しているつもりの放送局や政治家がこの体たらくだからこそ、個人の信用を大切にしたい。 ちなみにスペイン語の辞書を繰ると、カマラーダには「仲間」「同志」といった意味だけが書かれていた。
12/15記 ソフビを嗅ぐ
ブラジルにて すでに学校は休みに入っている子供たち。 今日でセラピーや水泳などもおしまいにする。 一年間よくがんばった息子は、父のストックするプレゼントのオプションのなかから、2005年バージョンのゴジラのソフビが欲しいという。 ちょうど一年前に日本で買ったもの。 父も息子に習って臭いを嗅がせてもらう。 久しぶりに僕の少年時代と同じ臭いのソフビだ。 臭いの記憶。 小3の時だったろうか。 目黒不動の露天で初めてギャンゴのソフビを見つけて、亡き父に買ってもらったのを思い出す。 ソフビはいつまであの臭いを発し続けるのだろう。
12/16記 盗作霊視
ブラジルにて サンパウロのある日系団体の忘年会の余興としてお招きいただき、「60年目の東京物語」を上映することに。 日系社会には一筋縄ではいかない人が多く、酒も入る団欒の席という危惧もあったが、まあ成功の部類だろう。 お開きの後で、かつてないコメントをいただいた。 「岡村さん、これは霊界の方から見てNHKが盗作しているのは明らかですよ。他にももうひとりの人を盗作してますね」 「…、もうひとりですか。『ハルとナツ』のプロデューサーはこの『60年目の東京物語』の他に僕の『ブラジル最後の勝ち組老人』というのも『参考』にしているのが明らかなんですけど、そのことでしょうか?」 「うーん…、別のもうひとりですね」 とりあえず、報告のみ。
12/17記 誰がコングを殺したか
ブラジルにて 息子とアサイチで「キングコング」を観に行く。 サンパウロでは昨日、堂々115館でロードショー開始。 二人で数ヶ月前、1933年バージョンをDVDで観ていた。 期待も大きい。 それにしても大日本帝国が「蒼茫」やってた時代に鬼畜の国はこれだけの映画をこさえていたのだ。 2億ドルかけた188分の大作、ネタも尽きない。 例えば久しぶりに「邪悪」そのものの「原住民」を見せてもらった。 そして冬のセントラルパークのシーン。 「ある愛の詩」を超えたんじゃないかね。 蒼茫時代の「本歌」を観てるとさらに楽しめるぞ。
12/18記 サマークリスマス
ブラジルにて サマークリスマスという言葉に初めて接したのは、高校時代ぐらいだろうか。 TBSラジオの「パックインミュージック」という深夜放送でよく耳にしたが、どういう文脈だったかは覚えていない。 まさか自分がサマークリスマスの本場で家庭を営むとはね。 本場のサマークリスマス事情をスケッチした拙文がアップされた。 http://www.univer.net/1_nanbei/0512.html
12/19記 師走のコリーダ
ブラジルにて ブラジルも師走。 今日も盛りだくさんだ。 夜には夜行バスで再び現場へ…
12/20記 ブラジルしんちゃん
ブラジルにて 今朝、託児所のビデオの時間で先日の卒業式のビデオを披露したせいか。 あと2日で休みとなるのでうれしさいっぱいのせいか。 子供たちがやたらハイになっている。 帰宅時間が迫り、カメラの前でとんでもないことを披露し始めた。 託児所側や、シスターを派遣している修道院側に編集件があったらまず抹殺されるシーン。 どうしようかな。 でも、これが現実。 待てよ、別にブラジルの貧しいところの子供に特有というのでもないんじゃないかな。 春日部の野原しんのすけも似たようなことを披露していたよな。 これまた生涯、何度もできない規模の作品になってしまいそう。
12/21記 キティの怨み
ブラジルにて 年長組の少女がキティちゃんの小さなバッグを持ってきた。 誕生日のプレゼントだという。 当地では少なからぬ偽キティ・グッズが出回っている。 これは失礼ながらここの子らには珍しくブラジル・サンリオの純正グッズと見た。 少女は取り巻きの女の子にバッグをちょいの間、持たせてあげている。 仲間はずれにされた子が泣く。 今どき、日本でもキティちゃんをめぐって泣く子がいるだろうか。 そもそも、相手はメス猫。 化け猫の恨みは怖いだろうな。
12/22記 ハプニング
ブラジルにて 日本テレビ時代以来、牛山純一とかかわってきた映像記録の古参は、牛山的ドキュメンタリー作りを「ハプニングを狙え」という言葉に換言して僕あたりに伝えたことがある。 僕のひとつのベースだ。 今、思う。 ハプニングを狙っただけじゃあ、ビデオ投稿珍場面集の域を出ないだろう。 ハプニングを、追うこと。 今日、託児所の修業日というこの1年をかけた記録のヤマ場で学んだ。 予期せぬハプニングが二つも起こる。 今日で撮影はひととおり終わり、ぐらいのつもりでいたが、そうはいかなくなってきた。 いやはや、ドキュメンタリーですなあ。
12/23記 お、ムシキング!
ブラジルにて おおかたの撮影を終えたつもりの「あもーる・あもれいら」。 オープニングのタイトルバック用の絵が欲しい。 やはり北パラナの大地と、それも日の出あたりだろうかね。 というわけで、未明から託児所近くで目をつけていたポイントに。 三脚かついで徒歩で。 強盗に間違えられたり、狂犬にかまれたり、雄牛に突進されたりの危惧を感じながら。 むむむ、日の出の方向、電線、そして立ち木の位置、いずれもこの1年の集積の顔にはふさわしからず。 静まり返った町外れを歩いてみるが、断念。 次回、車でチャレンジしましょう。 と、ひっくり返っているカブトムシの雄発見! 海岸山脈内外で見かける3本角だ。 以前、飼育してみて子供たちの環境教育にたいへん有効だった。 体に這わせると、懐かしい痛み。 いい土産ができた。
12/24記 つかの間の帰聖
ブラジルにて 早朝、夜行バスでサンパウロに戻る。 ちなみにこちらの日本人はサンパウロ州を聖州、サンパウロ市を聖市と書き慣らしている。 サンパウロ市から帰省する人が圧倒的に多いが、この休暇にサンパウロにやってくる人も少なくなく、ターミナルはごった返し。 今日の昼ぐらいで諸機関も商店もお休みに入る。 ヘロヘロの身心を十分休める間もなく、用足しで何度も街に出る。 イヤハヤこの度はまた強烈な取材をしてしまったな。
12/25記 ナタールのゴミ箱
ブラジルにて ナタールとはポル語でクリスマスのこと。 相変わらず、いや増してゴミメールは多い。 久しぶりに笑えるゴミが。 日本女性の個人名という世のスケベ男の劣情をそそるタイプ。 最近までブラジルにいた日本人女性と名前の末尾一文字が違うだけなので、まさか、と思ったが。 ゴミとはいえ、名前の部分は一部伏字にしておきましょうね。
某国立大医学部ニ年の○山○子と申します。 あなたにお願いがあってメールしました。私は今、 「精嚢分泌液に内服されるセリンプロテアーゼ(主にPSA[Prostate-spefic antigen]) の空気接触に伴う状態変化について」 という課題についてレポートを書かされているのですが、 書物だけで調べてもなかなか進めることができないでいます。 私はこれまで20年間男性経験が一度も無かったため、 精嚢分泌液、つまり精液に関する実地的な知識に乏しいのです。 (地元の高校に居る間は父が厳しく、男性と交際する機会がありませんでした)
それに伴いまして是非一度、成人男性の本物の精液を採取し、 この目で確かめた上でレポートの参考にしたいのです。 もしも差し障り無ければ、あなたの精液を採取させてもらえないでしょうか。 決して肉欲的な意味でのお願いではありませんので 採取方法は主に手や口を使うのみとさせて頂きますがご了承くださいませ。 (とはいえあなたが私に対して女性的な魅力を感じて頂けなかった場合、 採取行為が不快に感じられてしまう恐れもございますので、 ご希望に応じて予め私の顔写真などを送付させて頂くことは可能です。 ちなみに私の身長は157cm、体重は44kgです)
場所はどこかホテルの一室を取ろうと考えております。 交通費、ホテル代、お礼としてのお食事代程度しかこちらでは負担できませんが、 (何分学生の身分なので申し訳ありません) ご都合を付けて頂けないでしょうか。 お返事を頂ければ、今後のスケジュールなどを追ってご連絡差し上げます。 それではどうかご検討くださいませ。 ○山○子
最近、頼みごとのメールをよこした、おそらく本物の女子学生より文章はまともなのが泣かせる。
12/26記 仕事納めは旅納め
ブラジルにて 今年後半は人生最大級の機動作戦の連続だった。 おそらく今年最後の「公務」の旅。 早朝より車を600キロばかり転がすことに。 疲労等々を引きずったまま。 例えば一昨日前までの旅先での虫刺され等のかゆみが収まっていない。 基本的にアクセル踏みっぱなしの運転だが、時折、あまりの足の痒さにアクセルから足を外すほど。 そして眠い。 同行してくれた助手席の友人、いつもはよく寝ているのだが、今日は気を使ってくれてよく話しかけてくれる。 お互い、まさか現場で深夜までの思わぬ労働が待機しているとは…
12/27記 フマニタス再び
ブラジルにて フマニタス。 http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000044/20040213000270.cfm 今日は佐々木神父の叙階50周年の記念ミサ。 叙階とは手元の広辞苑にもない言葉。 カトリック「業界」で司祭(神父)に任命されること。 段取りは後進たちに任せた。 細かいアラはともかく、なかなかよろしかった。 この日に間に合わせるため、「赤い大地の仲間たち」のポル語版制作でバタバタしていたわけだ。 初めての試みでまさしく試行錯誤だったが、これで大体ノウハウもつかめた。 会場でブラジル限定・佐々木神父サイン入りのビデオを販売。 設置したモニターで会場で流すと、登場する若者たちにバカ受け。 もうすでに僕の手を離れているが、販売の方もまんざらでもないはけ方だった。 次回は南蛮バージョンで祖国上映も計りたいもの。
12/28記 旅の重さ
ブラジルにて アサイチで「あもーる あもれいら」 http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000050/20051229001537.cfm 用の日の出の撮影を決める。 後はひたすらサンパウロへと車を走らせる。 おなかの調子があずましくない。 思い当たるフシもあり。 ギリギリでガソリンスタンドに駆け込み、トイレを借りる。 が。 ドアに鍵がかからない。 便座がない。 ペーパーがない。 イヤハヤ。 ブラジルで庶民的な旅をするということは、こういう事態に耐えられるかどうかということでもある。
12/29記 こんな国イヤ
ブラジルにて 昨夕、サンパウロに帰って来て以来、日系人を含めたブラジル人の自分勝手さ、無責任ぶりに辟易する事態が続く。 これがイヤで帰国を決意した日本人の知人を思い出す。 「自己責任」でブラジルに渡った人は多少はこらえるだろうが、家族の事情等でこちらに来た人のなかには耐えられない人も少なくないだろうね。 そのあたりから学ぶことがありそうな気もする。
12/30記 アマゾンの死に方
ブラジルにて 古新聞のチェックで、いたたまれない記事が。 今年8月16日付。 アマゾンの古代文化を精力的に研究していたアメリカ人考古学者・ジェームス・ピーターソンが殺された。 遺跡の発掘調査の後、マナウスの郊外のレストランで夕食中に強盗に射殺されたという。 時刻は夕方の6時半。 数人の強盗が店に押し入り、金銭を出した後での射殺。 容疑者の中には現職の警官もいるとの報道。 実に興味深い研究成果をあげていたのだが。 繰り返すが、いたたまれない。
12/31記 師か屋か
ブラジルにて 年内の懸念事項のひとつを決行。 陶芸家の生駒さんをサンパウロ郊外に訪ねる。 さっそく缶ビールがシュパッと開く。 生駒さんは人を使わず、営業に走らず、と誰かさんによく似ている。 ブラジルのマスコミへの露出度の高いさる陶芸家の裏話を聞き、げんなりしながらさもありなんと思う。 この人物には僕も間接的に利用されている。 生駒さんはご自身のことを「焼き物師」と称しておられる。 カッコイイではないか。 ○○屋さんよりは。 不詳オカムラのいただくことのある師の付く名称は、世間師ぐらいか。 世間師にははるかに遠いが。
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