5月の日記・総集編 KOJOコード (2006/06/02)
5/1記 積み木直し
ブラジルにて 「KOJO ある考古学者の死と生」の編集作業と並行して、「アマゾンの読経」改訂版制作作業も手がけている。 一昨年末に完成させた5時間15分の超長編。 後に気づいた初版の手落ち部分、そしてその後の取材で判明して盛り込まざるを得ない映像挿入などの手直しである。 いわば、かなりどでかい積み木の構築物の一部作り直し、といったところ。 初版は初版で、それなりに細かく構成しまくったつもりである。 いい加減にパーツを作り直そうとかかると、全体が瓦解する恐れあり。 新パーツが妙に浮き上がってもまずい。 ちょうどアンコール遺跡群の修復作業についての本を読んでいるが、通じるものを感じている。 さあ、どうすっか。
5/2記 3時間26分
ブラジルにて 今日より「KOJO ある考古学者の死と生」のカット表およびテロップ原稿制作を開始。 とりあえず作品の尺が出た。 3時間26分。 こんなに長い作品になるとは想定していなかった。 劇映画で、同じような長さの作品があったろうか、と調べてみる。 ズバリ「地獄の黙示録 特別完全版」が3時間22分だ。 今回の拙作も、図らずも「地獄の黙示録」をほうふつさせる流れとなっているのに先日、気づいた。 カーツは誰だ? ウイラードは?
5/3記 遺民の思想
ブラジルにて 移民や棄民ではない。 「遺民」である。 故・上野英信を師と仰ぐ福岡の牧師、犬養光博先生の送ってくださった「月間福吉」にこの語を見出し、覚醒する。 「ヒノマル思想」に対峙する「遺民の思想」だ。 「遺民」とは旧約聖書に出て来る思想で「足のなえた者、苦しみを受けている者、捕囚をくぐり抜けた者、神にのみよりたのむ者、少数者しかし、次の歴史の担い手 人を生かす者」のことです。 (「月刊福吉」第401号) 犬養先生とはブラジルでニセ警官に襲われて銃口を向けられ、出ニッポンした炭鉱離職者たちと杯を交わし、土地なし農民虐殺抗議デモを共に歩いた仲である。 その犬養先生が今月28日、福岡は小倉で「アマゾンの読経」の上映会を開いてくださる。 犬養先生による上映のチラシを間もなくアップいたします。
5/4記 モスクワのポロロッカ
ブラジルにて 新発売のウオッカではない。 もちろん日本の量販店のロシア進出でもない。 あのアマゾンの大逆流・ポロロッカである。 さてこちらに届くアルファベットのメールは、99パーセント以上がスパム。 しかし時たま日本語環境のないところに暮らす邦人からのローマ字メールだったり、今回のような思いもよらない問合せもある。 モスクワの女性から、英語での問合せ。 NHKのポロロッカ取材のディレクターはあなたですか? 他にもポロロッカの番組があるようですが、どう違うのですか? ぜひ作品を買いたいのですが、どうしたらよろしいでしょうか? それにしてもどうやって僕がポロロッカ取材をしたことを、日本語環境にいない女性が知ったのだろうね。 モスクワの女性が、はるかアマゾンのポロロッカを想う、というのがいいでないの。 英文の返答になるため、週末送り。 これは書いておこう。 残念ながら、NHKの取材は実際のアマゾン河では取材しておりません。 私は3回、ポロロッカの取材をしておりますが、2度目以降は「本当の」アマゾン河で取材していることを誇りに思っております…
5/5記 カツ丼一致
ブラジルにて 今晩はカツ丼を作ろうと前日から発表。 断食を予定していた妻もカツ丼と聞いて、断食は来週に延期。 娘はもちろん、大偏食家の息子も大好物(タマネギ抜き)。 当地ではまずカツ用の然るべき豚肉の購入、下ごしらえ、固くなったパンをおろし金でおろしてパン粉作り等々、なかなかの段取りとなる。 そうそう、ダシに煮汁に。 おいしい、おかわり、と楽しい夕餉。 我が家では、手巻き寿司以上のご馳走である。 かつては数ヶ月に1度ぐらい、カツ丼が食べたくなると、リベルダージのこけし食堂あたりに行ったもの。 いまや我が家で、あれに勝るとも劣らぬものが作れるようになった。 おフランス料理がお得意の義妹に振舞ったことがある。 「B級料理」とランク付けを賜わった。 B級で行きましょ。
5/6記 東京のカイピ
ブラジルにて 東京でブラジル料理店を営む方からのML。 「東京でいちばんおいしいカイピリーニャ」を提供するとのこと。 カイピリーニャとは、ブラジルの国民的カクテル。 訪日にあたって東京で人に会うことも少なくない。 すでにブラジル移民となって久しく、こちらから指定できる店がない。 昨今は軽く飲むにあたっても、東京近辺では縄文中期・加曾利E式土器の出土遺跡の数と同じぐらい、コギレイで価格もリーズナブルな居酒屋が密に分布している。 とはいうものの、1件ぐらいカイピリーニャの飲める店を押さえておいてもいい。 で、その店のサイトのメニューの価格をチェックしてみるが… カイピリーニャSが730円、Wで1250YEN! S一杯で、生グレープフルーツサワーが2杯飲めるではないか! カイピリーニャはこちらで飲み貯めしておこう。
5/7記 HONGA
ブラジルにて 昼に知人の子どもたちの所属するボーイスカウトの昼食会。 ひとり10レアイスで、売上げを活動資金にするそうだ。 会場はサンパウロにある西本願寺の大ホール。 カレーライスとミナス(ブラジル中部の州)料理という空前の組み合わせ。 カレーは小麦粉たっぷり、日本の田舎風。 一皿に盛ることになるので、カレーとトゥトゥ(ミナス風・豆の煮込み)、大豆とイリコとワカメのサラダ、白菜の中華風漬物等々が交じり合う。 さる日系移住地のフェスタでは、フェイジョアーダ(黒豆と肉の煮込み)と五目寿司とオデンを一皿に取れ、という難題を課されたことがある。 どれかに絞って食え、ということか。 延々長蛇の列、空席待ちの人々、とてもお替りはできず。 日系子弟やブラジル人たちは、本願寺をHONGAと呼んでいることを初めて知った。 日本文化圏にいる人間ならこうは略さないだろうな、と感無量で混沌料理をいただく。
5/8記 死は決して敗北ではない
ブラジルにて 最新作の仕上げと訪日にあたって、故人である主人公の関係者・遺族との電話やメールのやり取りが続く。 ふと、こんな言葉が浮かんだ。 死は決して敗北ではない。 これが今回の仕事の、作者の祈りであり確信かもしれない。 試みにズバリこの言葉をグーグルで検索してみる。 少なくない数のサイトにヒット。 キリスト教の牧師。 ホスピス関係者。 子供を若くして亡くした母親。 特定のムーブメントには至っていないが、宗教を超えて身近な死と対峙したさまざまな人たちが、これを確信しているということだ。 死は決して敗北ではない。 後は作品をご覧いただきましょうか。
5/9記 三本勝負
ブラジルにて 訪日までに、留守中のものも含めて三本、原稿をデッチ上げ、おっと編集者さんがこのサイトをチェックしているかも、心を込めてしたためなければならない。 自分のサイトの文章なら、気に入らなくなったらオンライン環境にいればいつでもいじることができる。 現にちょっと微妙な問題を書いた日記については、アップ後にも何度か推敲してリライトしている。 しかし、他人様に渡す原稿はそうは行かない。 とりあえず一本を写真と共に送信。 本業の作業、諸々の残務の合間を見て、次の一本、いってみっか。
5/10記 改定観音
ブラジルにて 「海底観音」ではない。 「アマゾンの読経」の改訂版。 「KOJO」の仕上げ作業、残務・雑務と家事の合間を縫って。 改定部分の構想がほぼ、まとまった。 午前中、編集をしてみるが「トリ」のテープにキズがあり、中断。 外回りをいくつか。 午後、一気につなぐ。 まあ、こんなところかな、という感じに。 いささか作品の深みと広がりが増した気がする。 しかも、次の次ぐらいの仕事としてちょっと考えていることの伏線もあり。 あとは藤川師の地元・山口での奉納上映がかなえば。 「アマゾンの読経」改訂版は、早ければ今月28日の小倉での上映会でお披露目できるかも。
5/11記 衝撃のイラスト
ブラジルにて サンパウロで刊行を続ける日本語雑誌の編集部を訪ねる。 この雑誌には、創刊号以来、連載を続けている。 諸々の雑談の後、編集長が次号のオカムラ連載文のゲラをサラッと差し出す。 イラストに激しいショック。 思えば、几帳面な担当者から今度のはゲラが届いていなかったが… 作者は、才能をもてあますほどの異能の人なのだが。 ちょっと考えましょう。
5/12記 シュラスカリアの罠
ブラジルにて ブラジル風バーベキュー:シュラスコのレストランをシュラスカリアと言う。 今晩は家族のいくつかの小さなお祝いを兼ねて、ちょっと小じゃれたシュラスカリアに行こうという話になっていた。 昼食をとる時間がなく、夕方に残りのフェイジョアーダを食べてしまったと言う妻がパス。 娘と息子を連れて行く。 近年、サンパウロで見られるようになった格安料金の大衆食堂風シュラスカリアについては以前、この日記で書いた。 今日の店は、ほぼ大衆料金で食材は料金相応ながら、店の雰囲気のグレードが高く、明るい。 入ってすぐに先回よりアテンドが落ちたことを感じる。 さて基本的なシュラスカリアのシステムだが、サラダ類、オカズ類はバイキングスタイル、おかわり自由で料金に含まれている。 テーブルに廻ってくる串刺しの肉類、その他、テーブルに運ばれてくるフライドポテトやバナナフライなども料金に込み。 ドリンク類、カートで運ばれてくるデザート類は別料金。 基本料金は抑えて、ドリンク類などであざとく稼ごうとする店があるが、この店はズバリそうなってしまった。 清涼飲料水は缶入りだが、子供が控えめなマイペースでちびちび飲んでいると、ウエイターがサッと現れて缶の残りをがばがばコップに注ぎ、缶を回収、「おかわりだね?」と子供に聞く。 息子がフライドポテト待ちをしていると、見慣れないものが運ばれてきた。 皮をむいた小柄なパイナップルを8等分ぐらいに縦割りにしたもの。 これは他の店では見たことがない。 一皿もらう。 勘定書きをチェックしてビックリ。 このパイナップルは別料金だった。 生ビール一杯以上の値段、大柄の完形パインをまるごと買ってお釣りの来る値段だ。 タダ風に運んできて、別料金という説明もなしとは、あざとい。 肝心な肉の質も味も明らかに落ちた。 もうこの店はよそうか、と子らと話す。
5/13記 午後のカレー
ブラジルにて 妻子は母の日の催し等へ。 家で残務・雑務の数々。 午後からカレーを作る。 たっぷり時間をかける。 出来上がりは夕方。 たそカレー、なんちゃって。
5/14記 ホームビデオ
ブラジルにて シロートさんが家族の記録をビデオに撮って、それが1度でも再生されるのはどれぐらいの確率だろう。 ほとんどが撮りっ放しだろうが、まあそんなものだろう。 当方は、訪日にあたって恒例行事がある。 こちらの家族の諸々を記録したビデオをVHSにコピーして、日本の実家の母に持っていくこと。 本気で喜んでくれる視聴者が一人でもいると、張り合いがあるというもの。 なかなかダビングが追いつかず、今回は2年前の映像である。 子供たちは見たり見なかったりだが、両親は過去の映像から新たにいろいろと発見する貴重な機会だ。 これぞライフワーク。
5/15記 州警対組織暴力
ブラジルにて 今朝の新聞の見出しによると、週末以来の組織暴力団によるサンパウロ州の警察関係への一連の襲撃事件の死者は70人を超えたとのこと。 一般市民の死者も複数におよんでいる模様。 さらに市バスや銀行の焼き討ちが行なわれている。 日本でも事件は報道されているようで、お見舞いのメールが届く。 午後、息子の件で早めに帰ってきた妻が市内の流言を伝える。 夜間は戒厳令に入る、とも。 テレビをつけっ放しにしてニュースをチェック。 市内の店舗は次々にシャッターを下ろし、市民は自主戒厳令に入った。 市民の足・市バスはほとんどが運行停止、交通パニック状態。 皆さんの受信料で成立しているNHKが局を挙げてドラマ「ハルとナツ」のプロパガンダを行ない、疑惑の告発も無視して再三、再放送をしているのは周知の事実。 このドラマの企画時のハレンチぶりは、すでに告発した通り。 さてこのドラマの安易かつ無責任な結末はご存知だろうか。 影響力の極めて大きい巨大メディアによるドラマである。 視聴者のなかには、かつての「川口探険隊」シリーズがクリエイトした事象すら、ホントの本気にしてしまう人もいるのだ。 あの「ハルとナツ」の結末を本気にして、ブラジルに行っちゃおうとする、あるいは本当に行っちゃった日本人もいるのではないか。 そんな日本人が現実のブラジルで事件に巻き込まれたら、誰が責任を取るのか。 制作者からはあんなドラマを本気にするのが悪い、と居直られそうである。 繰り返す。 公共報道機関でもあるはずのNHKが、局を挙げてあの無責任で恥知らずのドラマのプロパガンダを行なったことは忘れてはいけない。
5/16記 その後の州警対組織暴力
ブラジルにて 朝のテレビのニュースでは、サンパウロの治安は「コントロール下」にあるという。 子供たちを送りに出る。 交通量は通常の3割以上は少ない感じ。 休日並みだ。 襲撃の対象となっている消防署の前は、道路2車線をふさいで銃撃と爆弾攻撃に備えている。 娘によると、クラスの出席者は半分足らず、特に女子生徒の欠席が目立ったという。 今回の事件は、この国の処置を怠り続けていた病巣の一部から膿が噴出した、といったところか。 あのNHKのドラマは、日本以外の地でフィクショナルな日本人像をでっち上げたかっただけで、ブラジルという国そのものには関心もなければどうでもよかったことに改めて気づく。 10年前の「大地の子」に比べて、なんと志も制作能力もモラルも低下したことか。 その背後に、商売繁盛でほくそえんでいる輩もいる。
5/17記 1895年生まれ
ブラジルにて 以前、インタビューを受けた雑誌Bancaの第4号を入手してひも解く。 まさしくブラジルオタクの雑誌。 米粒より小さい粟粒大の活字がぎっしり、表紙写真以外は色気はなし。 これで525円はお買い得だろうが、居並ぶ執筆人にタダで原稿を書かせているとはいえ、採算が取れるものではないだろう。 何考えてるんだか、編集者に聞いて見たいところ。 オメエに言われる筋会いはねえ、といったところでしょうか。 さてインタビュー依頼に際して、メールによる一問一答を繰り重ねて弁証法的に行くのはいかが?と提案したが、却下されて6問の質問が送られてきた。 それなりに吟味して推敲を繰り返して回答をしたためたので、能力もなければ勉強も努力もしない人間がインタビューこくよりは、面白い上がりになったと思う。 回答送信後に編集者が明かしたのだが、同じ質問を別の著名なブラジル在住の日本人にも行ない、並べて掲載するというではないか。 そうと知っていたら…別に答えを変えようもないか。 さて先方の回答。 「満州国新京市生まれ」ときた。 これにはかなわない。 ところが自分の方の記事を見てさらにギョーテン。 岡村淳さんは、1895年、東京で生まれたそうだ。 あわててこちらから送ったファイルを開いてみるが、原稿は実際の生まれた西暦年に間違えなし。 どうして入力済みの数字が変わるんでしょう? 今回のインタビューは「ブラジル日系移民学入門」特集だそうだ。 岡村さんは笠戸丸の時には13歳ということになる。 まさに生きている移民史だ。 Bancaについてのお問合せは http://willie.cocolog-nifty.com/que_tal_este/ を参照されてください。
5/18記 サンパウロの書き置き
ブラジルにて 今度の訪日のメインの仕事は、最新作の完成と上映。 その他、諸々がある。 ジャーナリズム関係の教育機関の依頼により、「ハルとナツ」疑惑を始めとするNHK問題についての告発と講義も行なう予定。 敵は実にえげつない手段を用いてきている。 もし岡村に万が一があった場合は、まずそのあたりを疑っていただければ。
5/19記 ニューヨークのアマゾン
→アメリカ合衆国→ 通路側の座席から垣間見たニューヨークは雨。 JFK空港付近の鈍色に澱むたっぷりの水面とささやかな緑は、雨季のアマゾンをほうふつさせる。 出入国や荷物検査もかつてほどの緊張感はない。 英語とは縁のないブラジル人や日本移民にポル語と日本語で「靴も脱いでこのケースに入れてください」と通訳のお手伝い。 さあ、この国には用はない。
5/20記 夏の気配
日本にて 半年ぶりの日本。 緑が若く、生き生きとしている。 東京タワーって、あんなに小さかったっけか。 道路が狭い… 屋根が低い… さあ、ここまで来た。
5/21記 KOJOコード
日本にて 今日はさっそく最新作「KOJO ある考古学者の死と生」の完成のための重要な用件二つのために動く。 あな、かしこ。 協力者の善意が善意をリンクしていく。 武者震い、ならずドキュメンタリスト震いぞする。 慎重にいこう。
5/22記 まちぶせ
日本にて さっそく列島内移動の開始。 ブラジルからオンラインで予約していた格安長距離バスで、本州を北上。 待ち合わせ場所にたどり着く。 祖国ではケータイ非携帯で異端扱い扱いされている私。 公衆電話を探しに歩く。 ・・・と、思わぬトンデモナイものを見てしまう。 なんなんだよ! こんなところで待ち伏せしているとは! 尋常ではない。 この興奮を誰が分かち合ってくれるだろう。
5/23記 善意のリンク
日本にて 仙台にてお邪魔させていただいている方のお宅で、パソコンをいじらせていただく。 在アマゾンの方からいただいたメールの内容にまずびっくり、そしてじわじわと感動。 善意がリンクしていく。 そして善意が増幅していく。 人類に未来があるとしたら、こうした善意を輪としていくことだろうと思う。 ありがたし。
5/24記 KOJO入魂
日本にて 最新作「KOJO ある考古学者の死と生」の仕上げ作業中。 今回は、在仙台の同志でフリーのビデオ制作者である佐藤仁一さんに仕上げの作業をお願いした。 町場のテクの粋を結集して、かつ独自の勉強と努力をされた方である。 僕は技術的なことはちんぷんかんぷんであるが、佐藤さんの心を込めて仕事に取り込む姿勢、そして手を加えていただいた画を見て音を聞けば、その境地の高さは明らかである。 ビデオの錬金術師だ。 岡村が祈りをつむいだ画と音に、佐藤さんが入魂してくれる。 これまでの岡村作品より、さらに昇華させてもらっている。 まずは作品を見てもらいましょうか。
5/25記 祖国DEフェイジョアーダ
日本にて 仙台でお世話になっているお宅で、和風フェイジョアーダを制作・披露する。 フェイジョン豆とファロッファはブラジルから持参。 岡村の編み出した精進フェイジョアーダを、と最初考えるが、これはオリジナルのフェイジョアーダを知らないと面白みに欠ける。 家主の方の肉入りの方がいい、というリクエストに応じて四つ足の肉類も投入。 フェイジョアーダとコウベ・マンテーガの代用のキャベツの炒め物はうまくいくが、陶器の鍋で炊いたご飯をうっかり焦がしてしまう。 まあ及第点の味。 豆を水につけること半日以上、煮込みに数時間かかるので、日本で連泊させていただくお宅では時折、披露させていただきましょうか。 なにせ時間がかかるので、調子に乗ると本業に差し障るが。
5/26記 地底の森
日本にて 作品チェックまでの待機時間を利用して、仙台市にある地底の森ミュージアムを訪問。 これはよろしかった。 およそ2万年前の森林の痕跡と、その森で焚き火をしたとみられる旧石器時代人の遺構を空間として保存・展示してある。 2万年前の祖先数人がここで一晩、焚き火をして石器の手入れをしたらしい。 さまざまなイメージをそそる。 10代後半ぐらいの女性が一人いつまでも見入っていたが、よくわかる気がする。 こんな空間が僕にも欲しかった。 遺跡・遺構は日本全国無数にあるが、このミュージアムは企画と志の勝利だ。 受付スタッフの作った復元模型なんていうのも展示してあり、うれしい。 昨日、チョー有名かつえらい人出の考古遺物の展示を仙台市内でみたが、そのウン十倍は面白かった。 ここならリピートしてもいい。 モノよりも場、モノと場が一緒ならそれはスゴイ。 唯一の興ざめは、再現映像のご先祖様の衣装と風体がオウム真理教徒みたいなこと。 だいぶイマジネーションを汚されてしまった。
5/27記 KOJO開封
ブラジルにて 古城泰兄の七回忌の月に間に合わせることが出来た。 関係者にお集まりいただき、しめやかに上映。 関係者の皆さんにとっては、ただならぬ作品。 皆さん、相当テンションが上がった。 まだ少し手を加えるが、まるで主人公とも考古学にも関係のない人達にご覧いただくのが楽しみ。 ドキュメンタリーは、人を変えうるか?
5/28記 イビキOFF
日本にて 九州島に陸路IN、小倉で下車。 本日の上映会会場・西南KCC小倉教会は実に面白い建物。 古い民家の屋内の壁等を取り除いて広くしてある。 寝っころがって見ることもできるし、寝袋持参の人もいた。 「イビキの電源はOFFにお願いします」などと控えめな岡村ジョークをかましておく。 「アマゾンの読経」改訂版の初上映。 大半の方たちが真剣に見入り、ボルテージの高い反応があった。 新たな出会いに感謝。
5/29記 生き埋め
ブラジルにて 湯の街・別府の大学で教鞭をとる、かつての上司でドキュメンタリー作りの大先輩を訪ねる。 お勧めいただいた街なかの砂湯を、ひとりチャレンジ。 スッポンポンに浴衣を羽織り、砂場の上に仰向けになり、おばちゃんにシャベルで砂をかけられる。 砂かけのオババ。 体を埋められるのは初体験。 日本でみまかれば、体は窯で焼かれてしまう。 ブラジルで果てれば、いずれこうなる。 臨死体験、臨死の湯。 効用はどんなもんだろう。
5/30記 出会いの湯
日本にて 今回の別府の宿は使い勝手がよく、値段もリーズナブル。 もちろん温泉付き。 昨晩以来、急性温泉中毒になるほど入湯を繰り返す。 何度目かの朝湯の後、フロントのエレベーターでブラジルの知人にバッタリ。 先方はだいぶたまげたようだ。 「優雅でいいわねー」。 これぐらいの優雅は許容してもらおう。 さあ豊後水道を渡るぞ。
5/31記 四万十の併走者
日本にて 高知中村のトンボ王国の仕掛け人・杉村光俊さんとは20年以上のお付き合い。 最初のころはまだ青年でも通りそうだったが、さすがに齢50になるとねえ。 早朝より杉村さんのフィールドワークに同行。 永遠の青年だ。 ボルテージはとどまることがない。 併走者として今後も歩んでいこう。 それ以上はオフレコのオフレコ。
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