1月の日記・総集編 ネカフェ元旦 (2009/02/02)
1/1(木)記 ネカフェ元旦
日本にて 年明けの深夜。
祖国での年越しは、およそ二十年ぶり。 実家近くの、ネットカフェを目指す。 ついでに近所の神社仏閣を回る。 若者を中心とする初詣客で、ソコソコにぎわっている。 宗教を契機に、深夜でも若者が集う。 民俗は生きている。 いわば「おみくじ信仰」。 日本の七割のカップルは、キリスト教式結婚式を望んでいるという。 こうした「おみくじ信仰」「結婚式だけクリスチャン」を、どうあるべき信仰に導いていくかが、宗教者の責任。
元旦のネットカフェはお雑煮サービスあり。 というのは、初ウソ。 おそらく、地方にはそんな店もありそう。
1/2(金)記 ネカフェの裏切り
日本にて 再び未明に。 今日は、より実家に近いネカフェを目指す。 おっと、休みではないか! 24時間営業・無休をウリにしているが、31日から3日まで休みと張り紙あり。 私鉄沿線なんざ、こんなもん。 JRの駅前のネカフェまで足をのばす。 さすがに三が日のネカフェはがらがら。 新聞報道に、不況でネカフェは正月もいっぱい、とあったが場所と店によりけり。
1/3(土)記 50年目のショートカット
日本にて 早朝割引のあるネットカフェを目指す。 目黒駅までの道程を検討する。 地図上で確認すると、ショートカットがありそうだ。 そもそも、少年時代からの守備範囲。 少年時代から、縄文時代へ。 今さら、ショートカットに気づくとは。 歩いてみると、確かに早い。
1/4(日)記 目黒のアルチプラーノ
日本にて 今日は少し出遅れ。 実家を出て、目黒駅のネットカフェに向かうのが、6時過ぎになる。 ちょうど日の出タイム。
朝焼けの空に、ボリビアのアンデス高原・アルチプラーノを思い出した。 冷気の故だろうか。
商売柄、いろんなところの夜明けを体感したもんだ。
1/5(月)記 カンテツ
日本にて 実家の諸々の、ほんの表層を整理していて、カンテツしてしまった。 自分の体がどこの時間帯にいるのか、訳がわからないまま。
今日から銀行や役所が開くので、そっちの方も奔走。
わが身を過信しないようにしないと。
1/6(火)記 無力
日本にて いったい。 今まで自分の紡いでいた作品ども。 あれは、なんだったのかという。
無力感。
1/7(水)記 東京断食
日本にて 成り行きから。 いっそのこと、一日断食をすることを決意。 日本での断食は、とっても久しぶり。
少しは、健康管理しないと。
1/8(木)記 フルーツミックス
日本にて 未明からネカフェ。 断食明けのため、お茶系のドリンクで。 今日の店には、フル-ツミックスというジュースがある。 昔懐かしいフルーツ牛乳のような、何と何をミックスしてあるのだか、わからない系の味。 通常は、あまり手を出さない。 これが、メタメタにうまい。 断食の後は、体が果実を求める。 2杯まで、自分に許す。
1/9(金)記 弱者に厳しい
日本にて 「人が冷たい」とは、アマゾンに移住を余儀なくされた女性の日本評。
昨日今日と、大晦日に実家に戻って以来、初めて乗り物に乗る。 社会的弱者の立場に立ってみると、東京という街の非情さがよくわかる。 弱者に邪視を浴びせ、排他しようとする輩ども。 障害者と老人優先のエレベーターを唯我独尊、我が物顔で使うビジネスマン。 優先席で当然のごとく携帯メールに没頭する女ども。
天罰が怖い。
1/10(土)記 あるコール
日本にて 実家に、来客あり。 黒佐藤、白佐藤と二升の焼酎ほかを持参される。 缶ピンガで迎え撃つ。
今年、初めてアルコール飲料をいただいた。
1/11(日)記 霜柱ふみ
日本にて 早朝より、ネカフェまでウオーキング。 帰路。 道路脇の水たまりが氷結しているのに気づく。 さらに歩くと、空き地に霜柱が。 霜柱を踏むのは、どれぐらいぶりだろう。
そもそも日本に来ても、街中で霜柱の立つような地面を見なかった。 心なしか、土建屋待ちの空き地が増えているような気がする。
1/12(月)記 ゴミと大島
日本にて 東京の実家にて。 祭日でもゴミの収集がある。 実家の整理暮らしゆえ、ゴミ出しは大きな課題。 日本のゴミ収集システムは、たいしたものだ。 ベースの決まりごとを守らない在日ブラジル人への苦情はよく聞く。 両者のメンタリティがわかるだけに、切実。
今、伊豆大島の富士見観音堂の清掃に行ってくれている仲間たちが、今後、いろいろな形で両者の架け橋になってくれるのだろう。 日本にいながら、入島できずに、御免。
1/13(火)記 霧星開眼
日本にて 昨年、関西のホテルの朝食にあった切り干し大根のマヨネーズ味サラダが、なかなかよろしかった。 ブラジルで作ってみる間もなく、また訪日してしまった。 実家で作ってみる。 至極簡単。 それにしても、切り干しそのものが、こんなに甘いとは。 テレビでも、奇しくも切り干し尽くしの料理番組が。 サンパウロの橋本先生のお連れ合いは、刻んだ大根を裏庭で干しておられた。 ブラジルで大根が豊富の時、アパートであれもやってみよう。
1/14(水)記 コノハナサクヤヒメによろしく
日本にて 荒川河口に近い、江戸城の東。 冬の快晴。 ビルの6階。
富士山が見えるかも、 なんてガラス窓から西方を見やる。 おっと! ビルの合間から、霊峰見ゆ…
自然と、掌を合わす。
1/15(木)記 胎内洞穴
日本にて 友人と中目黒で待ち合わせたついでに、ここに行ってみる。 http://www.city.meguro.tokyo.jp/shisetsu/shisetsu/bijutsu/kyodo/index.html
以前、ちょっと書いたことのあるイワクつき地元出土の縄文土偶に会いに行くつもりが、とんだ大穴にあたってしまった。 胎内洞穴。
これだけのメダマ展示について上記サイトでは、まるで触れていないとは!
目黒で目をシロクロさせてしまう。
入場無料の郷土資料館で、気分はアンコール遺跡群。
1/16(金)記 報告書、いりませんか?
日本にて 果てしないような、実家の整理。 自分の書籍類もバサバサ処分せねば。 いままでのナマヌルサでは…
考古学徒時代の、遺跡の発掘調査報告書をどうするか。 1980年前後の、関東と中部の縄文時代のものが中心。 段ボールに2箱はある「はず」。
学生時代、遺跡の発掘調査で稼いだカネを、つぎ込んで買った。 ほとんど開くこともなかった「つん読」もいいとこ。 悪銭、身につかず。
どなたか、引き取ってもらえません?
1/17(土)記 HOKUSAI'S STUDIO
日本にて 「え、江戸東京博物館、行ったことないのですか? ぜひ行った方がいいですよ」 こんなことを何人ものガイジンに言われるのもシャクというもの。 ルーティンワークの合間に、行ってみる。
東アジアの魔都東京にふさわしいグレード。 メディアのあおりもあるのだろうが、日本人の歴史好きを体感。
いーかげんに見ても、結構な見ごたえ。 思わぬ発見も。
1/18(日)記 たまのさき
日本にて 埼玉の親戚を訪ねる。 東武線沿線。 荒川を越えた後、地理的な指標になるものが何もない。 さすがは、関東平野。
昨日の博物館でも、東京を首都に選んだ理由のひとつに広大な関東平野を控えているから、とお勉強したっけ。 学生時代、埼玉で縄文時代のドブさらいをしたっけなあ。 幼少の頃は、ザリガニ取り。
1/19(月)記 世田谷ブンタン
日本にて ルーティンワークのついでに、世田谷に知人を訪ねる。 自分の家族の供養のつもり。
お庭に、赤い椿とたわわの柑橘類が見える。 なんだろう。 土佐ブンタンだという。 本場土佐産のものと、世田谷産のものを両方、いただく。 土佐モノはグレープフルーツをさらに甘くしたような、人工的な感じ。 世田谷産は色味も緑がかり、ワイルドな味。
どちらも、体が求めているようで、むしゃむしゃといただく。
ポケモンに本邦柑橘系の島名が続出したと記憶するが、ブンタン島はあったっけか。
1/20(火)記 小品価値
日本にて 晩年の黒澤明監督が、能の記録映画の小品を作りたいと発言していたのを記憶している。 人類史に輝く巨匠のこの姿勢が心に残っている。
かなり昔にブラジルで知り合って、最近、やり取りが密になった方を訪ねる。 ご夫妻と、いたく意気投合。 まだまだ聞き足りず、話し足りない。
この方とのご縁と熱意にほだされて、ブラジルでかつての撮影済み素材を発掘した。 12年前に撮影した、まさしくお蔵入りだった未発表映像の無事を確認した。 次回の訪日時には、これを編集してプチ上映会で披露する決意を固める。
1/21(水)記 DREAM ISLAND
日本にて せっかく連日、東京を縦断している。 地図を見る。 夢の島まで歩いて歩けないことはないようだ。 おっと、まだ生まれてこの方、この島に行ったことがないかと。
お目当ては植物園。 腐葉土の甘い香りに、サウダージ。 不特定多数には教えたくないすばらしい秘宝を発見。
こりゃホントのドリーム・アイランドだぞい。 この発見を、橋本梧郎先生にご報告できないのが、残念。
1/22(木)記 本みるなら
日本にて 通い先の横に、見上げるようなショッピングモールがある。 そのなかの本屋は広い、とは聞いていた。
行ってみる。 広い! 車椅子ですれ違えるほどのスペース。
何軒か大きめの本屋を回っても見つからなかった文庫を探してみる。 ある!
それにしても、客数は従業員数を下回るのではないか。 採算は取れているんだろうか?
1/23(金)記 生々流転
日本にて ネカフェで見た情報誌で、近代美術館にて横山大観の「生々流転」の特別展が開かれているのを知る。 金曜は、20時まで開館とのこと。 ルーティンワークの帰りに寄ってみる。
全長40メートルの水墨画。 深山を覆う湿気が川となり、大海にそそぎ、宇宙に至るまで。
キューブリックの「2001」だ。 あえて、それ以上は明かさない。 圧巻。
連日、本業以外で精一杯だが、思わぬ充電期間となった。
1/24(土)記 3Hパック
日本にて イレギュラーな訪日の日々も、あとわずかとなった。 するべきことは、いくらでもある。
PC作業もばかにならない。 ネットカフェでここのところ、3時間パックを奮発。 もう、絶対的な時間がないので、この辺で勘弁してもらおう。
1/25(日)記 霊園の蝸牛考
日本にて デビュー作の、シンガポールのナメクジ。 シンガポールの日本人墓地にある二葉亭四迷の墓石に集うアフリカマイマイを取材した。 アフリカマイマイに登場いただかなくても24分30秒を乗り切れ、このシーンはボツとなった。
子供の頃の、墓参り。 石にへばり付いているカタツムリを採集するのが楽しみだった。
テレビ屋、そして異国住まいとなり、日本の自分の血族の墓地にはあまり来ていない。 それでも学生時代以降、この墓地でカタツムリを見かけなくなったのが気がかり。
今回は、冬のせいもあるだろうか。 軽く見渡しても、目に付かない。
彼らの好むカルシウム分の存在に変化はないだろう。 「こころない」コレクターによる乱獲も考えにくい。 何が起こったのだろう。
1/26(月)記 島嶼会館
日本にて 夜、伊豆大島から出てきたあの人と。 浜松町の島嶼会館で待ち合わせ。 http://www.niigata-job.ne.jp/career/map/tosho.html
3階にある食堂にて。 まさに島の延長、出島だ。
シメにいただいた、アモレイラのシャワー室のおばちゃんが握ったような巨大おむすびにはたまげた。 明日葉の佃煮入り巨大おむすびが味噌汁、漬物付きで金参百園也。 おトク感あり。
柑橘系生サワーをいただくが、次回は島焼酎でいきたいところ。
海を渡らずに、島気分。 島に行っちゃった方が早いか。
1/27(火)記 かんずりところあって
日本にて 友人がmixi日記で「かんずり」なるものについて書いていた。 初めて、このものの存在を知る。
実家近くのスーパーで発見、買ってみる。 原材料を霜にさらして、さらに3年間、寝かせた、とある。 岡村ドキュメンタリー並みのスローフードではないか。
鍋によし、焼き魚によし、とある。 味はゆず胡椒に近いが、辛味のなかに時の重みが舌にくる。
実家の冷蔵庫総ざらいの晩餉。 鍋に焼き魚に楽しませていただいた。
かんずり路線でいきたい。
1/28(水)記 多少の縁
日本→ おもろまさゆきさん、とお読みするようだ。
NHKの衛星放送でも放送するから、と今年になってから自分の担当した番組のご案内をくれたNHKスタッフもいるが、そもそもブラジルで我が家は地上波以外の契約はしていない。 「紛争」以前から、ブラジルでも日本でも積極的にNHKの放送を見ることはない。
それでも出先だと、勝手に目に耳に飛び込んでくることがある。 ちょっと聞き覚えのある声が。 朝の連続ドラマ「だんだん」。
橋本先生の資料横領・横流し問題と、ドラマのパクリ・シカト問題でNHKを告発し続ける岡村の、「私」の声ではないか?
おそらく岡村本人以外は、誰も気づかないだろう。 1999年にETV特集という番組での「ビデオジャーナリストは見た」シリーズを担当した。 僕が3年間、撮り続けたブラジルの土地なし農民問題を放送することになった。 「農地をわが手に ブラジル・土地なし農民たちの闘い」というタイトル。 日本人がブラジルの土地なし農民たちのなかに入り込み、生活と闘争を共ににした記録というのは、他にありうるだろうか。
もちろん僕がひとりで撮り続けた記録だから、僕の一人称ナレーションでの報告になるだろうと思っていた。 「わたし」・岡村淳の報告という形にはなったが、NHKのプロデューサーの判断で、オカムラサンの45分ものナレーション読みはたいへんだろうから、と声優を起用することになってしまった。 そこで登場したのがこの小室さんというわけだ。
岡村が2005年に告発した上記のふたつの問題への質問に関して、NHKは回答を拒み続けている。 NHKクレーマーという汚名をかぶり続けている「わたし」の声を看板ドラマの解説に起用するとは、しゃれているではないか。
NHKとは、岡村のシンパの皆さんをニンマリとさせる作戦を進行させている。 どうぞ発表できる時をお楽しみに。
ちなみに今日のタイトルは誤変換ではなくて、確信犯ですので。 気分はピーチパイ。
1/29(木)記 タクシードライバー
→ブラジル コリアーノかな、とも思った。 聞いてみるとジャポネスの三世。 道をよく知らないので教えて欲しい、という。
空港からのタクシーでジャポネスにあたるのは、初めてかも。 グアルーリョス空港には600人のタクシードライバーがいて、日系は20人ぐらいじゃないかな、という。
こちらで商売を始めたがうまくいかず。 7年間、日本で働いた。 4年前に家族を考えて、こちらに戻ってきた。
「いい時、引き揚げてきたね」 「日本はいずれ、日系三世、四世に門戸を開くだろうね?」 「うーん、むずかしいんじゃないかな。より安くお気軽に使えるアジア系の方が優先され始めたみたいだし」 「でも、三世、四世が日本にたくさんいるし、滞在と労働が合法化されるだろうね?」 「…、そうなるといいけどねえ、出生者に国籍も認めないような国だからねえ」 日本は自国の農林業を外国人労働者を導入してでも復興するべきだ、みたいな話でお茶を濁す。
サンパウロは暦の上では盛夏だが、涼しいぐらいで、曇天。
1/30(金)記 自閉症裁判
ブラジルにて ややオーバーワク気味な訪日から昨日戻り、本来なら今日一日ぐらいは惰眠を繰り返したいところ。 日本で買ってきた「自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の『罪と罰』」佐藤幹夫著、朝日文庫を読み耽ってしまう。
やすやすと言葉が出ない。 まずは「あとがき」にあるこの言葉を書きとめてご紹介するにとどめよう。
振り返ってつくづく思うことは、私は書き手というよりむしろ、多くの人びとが意を尽くして語ってくれたことを虚心に受けとめ、構成し、配列する編集者的な役割だったということである。この本にもしなんらかの「パワー」が宿っているならば、それはひとえにこうした人びとによる後押しの賜物である。
志の高いお仕事に触れることによって、少しずつ自分のやる気を取り戻していきたい。
1/31(土)記 逆戻り
ブラジルにて こちらは新学期の始まり。 いずれにしろ、今日は土曜でお休み。
こちらにあったのと、新たに買ってきた「医龍」をむさぼり読む。 昼食後、夜までお休み。 また時差ボケ逆戻り。
|