9月の日記・総集編 ある「宿命」 (2009/10/01)
9/1(火)記 本土決戦幻想
日本にて ふらふらになってブラジルに戻り、最初に読み耽ってしまったのが、これ。 「本土決戦幻想 オリンピック作戦編」保坂正康著、毎日新聞社。 昨年、訪日の折に薬局か医者の待合いだったか機内だったか「サンデー毎日」での連載に触れ、一冊になるのを心待ちにしていた。
小生、ガキの頃から日本本土決戦に興味を持ち、学生の頃には松代大本営跡詣でなどもしていた。 今回、いい形でまとめてもらえた。 近現代の日本の国家、行政の指導者たちのでたらめさをよく復習しておこう。 国民の人命軽視どころか、蔑視のレベルだ。 人類史上に明記すべき負の具現。
折りしも、日本の政治の変わり目。 過去、そして失敗から学ばないものは…
9/2(水)記 逆転
ブラジルにて 山口で撮影した映像をDVDにコピー。 場面の通奏低音をなすセミ時雨が、さして違和感がない。 サンパウロ、日中は残暑時の東京ぐらいの陽気になった。
それにしてもレンガ造りの建築物は、夏場の日中はひんやりとここちよし。
9/3(木)記 キレる
ブラジルにて さすがに、キレる。
義も誠意もない連中相手に、自分の時間とカネ、労力をサクリファイスしても、シャレにならないどころか。
人を信用するという美徳には、常にリスクが伴なう。
♪いったい、なにを、教わってきたの?
さあ、オレしかできない、やらないミッションに突入だ。
9/4(金)記 諸々再開
ブラジルにて 昨日の日中から、車の運転を再開した。 今朝は朝から運転。 ええっと、サンパウロのドライバーたち、こんなに穏やかだっけ? なんて思っていると、さっそくキョーレツなのをかましてくるのが。
しばらく「プライベートビデオ」の編集に入るつもり。 トラブルを解消する方法も昨日、編み出した。 さっそく、つなぎ始めてみる。 皆さんに「とりあえず」お見せできないのが、残念。
今月半ばからの国内遠征を見合わせることにした。 その分、編集と家事に費やせるのがうれしい。
9/5(土)記 友の名誉のために
ブラジルにて 今日5日付のニッケイ新聞を開いてびっくり。 日系社会面のトップが、2日付のサンパウロ新聞とそっくり同じ記事。
高知新聞の富尾記者の筆による高知・佐川町でのブラジル移民の父・水野龍記念シンポジウムの報告記事の転載である。
同シンポでの拙作「ブラジルの土に生きて」上映や愚生のパネル討議出席などをご紹介いただいている。 ひとつだけ訂正させていただくと、 岡村氏は「移民たちやブラジルのために何ができるかを常に考えていた」と水野が貫いた「共存共栄」の志を強調。 とあるが、これはNHKプラネットのチーフ・プロデューサー、中根健さんの発言である。 中根さんは昨年「その時歴史が動いた」で水野を取り上げるに際して猛調査・猛勉強をして水野のこの言葉に行き着いたのだ。 それを岡村ごときが、誤認記事とはいえ、かっさらってしまっては申し訳が立たないというもの。
このシンポ、次の上映予定のため、夜の懇親会まで参加できなかったのが残念。 会場の方々の反応を、せめて記事で知りたかった。
9/6(日)記 牛眼
ブラジルにて 当地ではolho-de-boi、牛の目と呼んでいる。 お魚のブリ。
ブラジル帰還後はじめての路上市。 お目当ては、サカナ。 ブリをすすめられるが、数キロある代物で、お値段も安くはない。 けっきょくフンパツして購入。 フィレミニオンの牛肉ぐらいのプライスだ。
チューブ入りわさびが、1回の歯磨きにも足りないぐらいの量しかない。 赤紫蘇を刻み、ショウガをおろして。 山口・むつみ村(現・萩市)で買って担いできた醤油でいただく。 いやはや、けっこうなお味で。
9/7(月)記 マットグロッソの誘惑
ブラジルにて マットグロッソ… この語の響きに「すばらしい世界旅行」大アマゾンシリーズで魅せられた人も少なくないことだろう。
ブラジルに戻ってから、親戚のようにお付き合いをしているマットグロッソの人に電話をしてみた。 先方からも何度か電話をいただき、近況を知らせてくれる。
行きたい。 来週、予定していた旅もキャンセルしたことだし。
バスで行くと、訪日なみの時間がかかる。 飛行機だと…アンリーズナブルな金額。
編集作業も溜まってるしねえ…
9/8(火)記 激雨
ブラジルにて 今日のサンパウロの日中の雨は強烈だった。
南回帰線上の亜熱帯都市の空に、墨汁がまかれた。 昼なお暗く、この世の終わりを想う。
われ、森なきレインフォレストにあり。 して、本場レインフォレストの映像をつなぐ。
9/9(水)記 七条刺納袈裟
ブラジルにて ブラジルにある未読の書籍だけでも、生涯かかっても読みきれないかもしれない。 事情により、日本の書物は大半を処分したが。
それでも、フリーマガジン、フリーペーパーほか、紙モノにはつい手をだしてしまう。 まれに、えらい拾いものがあるので。
病院待ち、郵便局での順番待ちの長いだろう今日あたりには、もってこい。
葉山に行った時にゲットした「たいせつな風景」(神奈川近代美術館編集・発行)で珠玉の文に出会った。 第11号、染織家の志村ふくみさんの随筆「布に思うこと」より。
(前略)まづ、七条刺納袈裟の話をしたい。 あらゆる布の原点のような気がするので。 死者や乞食、行き倒れの人々がまとっていた襤褸(ぼろ)を洗い清め、すでに繊維にかえったような糸屑をあつめて、それを織るのではなく、つめつめにつめてフェルト状になるまでつめて布のようになった物を上から刺し縫いしてゆくのである。藍色の麻糸で刺して刺してあたかも一枚の布であるかのごとく細かい針目で埋め尽くしてゆく。一針一針何万回、死者や貧者の最後をみとった糸屑を供養の思いで刺してゆく。糞掃衣(ふんぞうえ)とも納袈裟ともよばれている。死者達の魂を無事、かの岸まで送りとどけたいとの願いをこめる。 (中略) 布は物質であり、精神をもたないのか、生ける素材より、化学物質に変わりつつある繊維は、安価で便利、天然素材は扱いにくく、高価である。併し、世はオーガニックと叫びつつある。肌にやさしく着心地のよい天然素材をといわれてもそれを着用できる人は限られている。私の仕事においても全くその通りで天然のものはかぎりなく贅沢である。 こんな矛盾をかかえて空しい希みを抱いても果して次の時代の人々はどう受けとめることができるだろう。のこりすくない時間の中で若い人にどう伝えてゆけばよいか。この仕事をかけがえなく大切なものとして、この国の世界に誇り得る染織の文化をどう語り継ぎ、伝えられるものかと日々考えつづけている。幸いにもこの仕事をやりたいと、終生の仕事にしたいとけなげに真剣に考えている若い人達がいる。 私はその人達に伝えたい。併し、あまりにも厳しい現実が待ちかまえている。誠実によい仕事をしようと思えば想うほど、生きることは大変である。それはいつの世にも変わらない現実であり、その中でこそ伝わるべきものは必ず伝わると私は信じている。 (後略)(太字は引用者による)
9/10(木)記 今日のアルケオロジー
ブラジルにて 今朝はメトロで子供の送り出し。 駅からそこそこ歩く。
何度となく歩いている道だが、新たな面白いことを発見。 友人のアーチストが、人間の知覚は歩く速度に適応している、と言っていたのを思い出す。
体にもいいことしていると実感あり。
9/11(金)記 タルコフスキーに惑う
ブラジルにて 所用でリベルダージに。 次の目的地まで、バスで向かうことに。 待ち時間に、昔風にいうならレコード屋をのぞく。 安売りのDVDを期待もせで眺める。
おお、TARKOVSKIが! しかも「惑星ソラリス」と「鏡」の2本が入って、10レアイス、邦貨にして約500円という信じがたい安値。 他にもタルコフスキー作品があるが、そういっぺんにいくつも観られないし、画質もみてみないとわからない。 時間も迫っているので、この1本だけ、そそくさと購入。
バスのなかでパッケージの細かい字の解説を読むと… なんだ、作品そのものではなく、関係者へのインタビューや資料を集めたドキュメンタリーとあるではないか。 それでもアキラ・クロサワのインタビューなどの項目もあるので、ま、いいか。
家に帰って再生してみると… 黒澤のインタビューというのは、画面にポルトガル語の文字で出てくるだけ。 カットシーンもそれだけみても、なんだか…
そもそも訪日してビデオレンタル屋によく通っていた時期も、タルコフスキーのソフトは見かけなかった。 最近も、並の販売店ではソフトを見たことがなかった。 台湾で映画のソフトを買いまくった時も見かけず。
今年、札幌の上映に行った時。 朝、ホテルの近くの小川の流れに見入って、バッハの旋律が自然とうかんでくるほど「惑星ソラリス」の影響は大きい。 ググッてみると、しかるべき価格の本編ソフトは販売されているようだ。 今後のお楽しみ。
9/12(土)記 ある「宿命」
ブラジルにて 「なに、本浦千代吉が生きてる?」 (映画「砂の器」1974年制作、野村芳太郎監督)
新型インフルの余波。 子供の学校の7月の休みが一週間、延長された。 その分の補講を土曜日に。
朝の送り出しから昼の迎えまでの間に、グアルーリョスの憩いの園を訪ねることにした。 「60年目の東京物語」の主人公、森下さんが入居しておられる。 ここのところ、日本とブラジルの自分の家族のことに追われ、しばらく訪問できないでいた。 8月にはブラジルの僕の知人がわざわざ憩いの園を訪ねてくれ、森下さんの近況を訪日中の僕に伝えてくれていた。 森下さんは発声が不自由になったという。
大音声のNHKの衛星放送漬けにされている車椅子の森下さんを連れ出す。 近況をいくつかお話ししてから、園内を車椅子で散歩。 無言や沈黙が苦にならない間柄。 一緒に訪日した時は80歳だった森下妙子さんは、94歳になられた。
拙作を観て、松竹映画を思い出す、と指摘した友人がいた。 さまざまな列島の風景。 思えば、洋画ばかり見ていた高1の時にみた「砂の器」が邦画嗜好転向の契機となった。
原作にはなかった本浦千代吉が存命中だという設定。 映画がテレビになり、千代吉が加藤嘉から原田芳雄に代わっても、この設定は継承されている。
自分自身の「宿命」に感無量となりながら、憩いの園を後にする。
9/13(日)記 「朝鮮人、帰れ!」
ブラジルにて 「朝鮮人、帰れ!」 これが21世紀の日本の首都で、著名な宗教施設で外国からの訪問者に投げつけられる言葉である。 その宗教施設の性格が、よくわかろうというものだ。
田上正子さんが編集製作発行されるガリ版刷りの「あめつうしん」最新号の竹見智恵子さん著「死者は誰のもの―ヤスクニ・ナショナリズムに抗して」に驚き、胸を痛めた。
梨の木舎(電話03-3291-8229)新刊の「アボジが帰るその日まで―靖国神社へ合祀取消しを求めて」(李熙子:イ・ヒジャ、竹見智恵子著)に詳細が書かれているとのこと。 次回の訪日で、さっそく購入しよう。
9/14(月)記 さまよえるナショナルフラッグ
ブラジルにて 経営危機のJALがデルタに付くか、アメリカンに付くか。 利用者としては切実な問題である。
VARIGブラジルが経営不振から日本路線を廃止して以来、JALに「ほぼ」操を立ててきたのだが。 チョーまずいカレーを出されようとも、ドリンクサービスが3回から1回に減っても、何度もスーツケースを破壊されても…
毎日新聞のサイトを見る。
日本航空:廃止、減便対象に検討 サンパウロ、ローマも http://mainichi.jp/select/biz/news/20090915k0000m020136000c.html
おっと! サンパウロ―成田便が廃止されたら、操の立てようもないではないか!
同じHP内にこんな泣かせるPRが。 毎日新聞を新規購読すると、もれなくJALマイレージがもらえます!
9/15(火)記 日系社会の怪談
ブラジルにて 友人のオフィスで、さる日系組織のハプニング話を聞く。 こぼれ話?笑い話? これは怪談として聞いた。
こわいのは、苦手。 肝試しも、ほどほどにしよう。
9/16(水)記 撤退・ナショナルフラッグ
ブラジルにて 10余万の国民を送り込んでおいて、ブラジルから撤退した日本国公館。 その時、残された移民の心情を想う。
インターネットによる祖国のニュースによると、日本航空はブラジル・サンパウロから撤退とのこと。
さて、この大きなニュースが地元サンパウロ発行の日本語日刊紙2紙の日系社会欄では、まるで見当たらない。 ここ数ヶ月、今週80周年記念式典のあるアマゾン移民の特集ばかり。 ふだんサンパウロばかりの日本人記者さんにとっては、アマゾンは筆がふるってたまらないのかもしれないが… 読者としては、アマゾンの珍味も連日延々とでは、食傷気味というもの。
こちらの夜のネット検索だと、日本の新政権が、JALの再建計画を白紙に戻させるとか。 まさしく日本とブラジルの空は、混沌。
いまさら、メリケン航空には… また大韓民国にお世話になるか。 アンニョンハセヨ!
9/17(木)記 アルゼンチンマジック
ブラジルにて 10月に予定していたアルゼンチンでの上映。 先方の都合で、11月になった。
コーディネイトしてくれている現地の人と、先方の希望の時間枠と希望する作品の傾向をかんがみて、上映作品プログラム案を作成してみる。 と、思わぬ偶然、ないし符牒に気づいた。
「60年目の東京物語」は作者の思惑を超えた不思議に満ちている。 改めて、教えていただく。
9/18(金)記 じさむし
ブラジルにて 5時台に出家。 サンパウロ市内のコンゴニャス空港から、まずはブラジリア行きに。 ブラジル連邦共和国首都で、クイアバ行きにトランジット。 機長のアナウンス、ポルトガル語も英語も着は11時40分と伝える。 予約発券時の確認でも、手元の搭乗券でもクイアバ着は10時40分とある。
次の長距離バスの乗り継ぎにかかわる。 マットグロッソ州との時差をひょっとして忘れているのでは?
ドリンクサービスに来た女性客室乗務員にクイアバとは時差があるのでは、と確認を試みる。 ねーちゃん、自分はわからないと言い、近くの別の乗客に時差があるのか聞いている。
こういう人たちに命を預けての旅。 そういえば、数年前にこの近くで生じたジェット旅客機と小型機の衝突の大惨事も、管制塔が指定高度の設定をうっかりまちがえたのが原因とか?
9/19(土)記 残丘の町
ブラジルにて いまや環境活動家(あんましいい訳じゃないけど)と称するアドン、そして岡村作品ウオッチャーの間でファンの多い溝部さん。 20年来のコンビが再現(クルマはトヨタだけど:これはブラジル通向けのシャレ)。
3人で、相当に変わったジャポネースがいるという町を目指す。 セラードの新緑が目に鮮やか。
さすがはブラジル楯状地。 テーブルマウンテン地帯の数億年後の景観が拡がる。
地質史、人類史、ブラジル史、日本人移民史、個人史が錯綜する時間旅行。
アドンから、宿題が。 またよけいな仕事を増やしそう。
9/20(日)記 のりものづくし
ブラジルにて 今日は、真弘忌。 23年前、「アマゾンの読経」の藤川真弘師がアマゾンで入定された。
セラードは昨晩から雷雨、未明まで雨。 暦の春とともに、セラードに春来ぬ。
午前4時台にタクシーを呼ぶ。 長距離バスでクイアバへ。 ローカルバスを教えてもらい、空港へ。 飛行機はふたたびブラジリア経由。 ブラジリアで長編映画1本分の時間を待つ。 サンパウロのコンゴニャス空港からタクシーで帰宅。
クイアバのローカルバス。 運転手が携帯電話で話しながら運転。 さすがにサンパウロでは見ない光景。 地方では、いろいろ新たに奇妙なものを見させてもらった。
9/21(月)記 写真の証明
ブラジルにて 総領事館に更新を申請していた旅券を取りにいく。
今回の旅券用の写真は、友人のフォトグラファー・楮佐古章晶さんにお願いした。 楮佐古さんとは同じホームページコンドミニアム・櫻田百年荘の店子仲間でもある。
おかげさまで、お気に入りマークの写真を撮ってもらえた。 近くの写真屋で撮らせた、こちらの身分証明証の写真などは、みられたものではない。 プロに心をこめて撮ってもらったマイ写真というのは、うれしいものであるな。
9/22(火)記 小華鼠
ブラジルにて 日本から担いできて使っていたノートPCのマウスがいかれてしまった。 大型文具チェーンに買出しに。
まあいろいろあるが… いずれも中国製のようだ。 ハローキティのマウスなんてのもあったが、これも中国製。 ネコのマウス。 ディズニーに行けば、ミッキーマウスのマウスなんてのもあんのかな。
家に戻って、日本マークのわがPCの壊れたマウスの腹を見る。 するとこれもチャイニーズではないか。 中国鼠が、世界制覇か。
9/23(水)記 女の義
ブラジルにて 先日、サンパウロの雑誌「Bumba」編集部を訪ねた折り。 去り際に入り口の書棚に立ち止まった。 「なにか面白い本、ないですか?」 細川編集長が迷わず手渡してくれたのが「嘘つきアーニャの真っ赤な真実」(米原万里著・」角川書店)。
恥ずかしながら、この作品についても、作者についても作品の背景についてもまるで知識がない。 騙されたと思って…
中篇3作からなるが、最初の「リッツァの夢見た青空」の出だしから作品のとりこになる。 親のイデオロギーと激動の政治に翻弄されながらも、ひたむきに、したたかに生き抜いた少女たち。
10代の映画フリーク時代に観たフレッド・ジンネマン監督の「ジュリア」を思い出した。 映画のディティールは覚えていないのだが、「女の義」ということを深く感じたことがよみがえった。
まさしく「女の義」の世界。 記憶の再生力といい、言語表現の巧みさといい、作者の力量に舌を巻くばかり。 米原万里さんについて、ググッてみる。
!!!ああ、 2006年に亡くなられているではないか。
ただ、言葉をうしなう。
9/24(木)記 「日本人はとっても偉大なんだってこと」
ブラジルにて 日本から季刊「中南米マガジン」22号が届いた。 「アマゾン移住80周年記念特集」ということで日本のアミーゴに頼まれ、原稿料フリーで寄稿した。 岡村の原稿のタイトルは、「ハダカがきっかけでした…」。
編集後記を読んで、目をむいた。 「この特別号を通してお伝えしたかったことはただひとつ。日本人はとっても偉大なんだったこと。」 中南米を標榜して、しかもアマゾンの特集でありながら、そういう「ただひとつ」の編集意図があると始めから伝えていただいていれば、友情にひびが入ろうとも「敬遠」させていただいたのだが。
アマゾンの日本人移住地での、祖国でも、国際レベルの常識でも許されない真にグロテスクな体験の数々でも書かせていただけばよかった。
管見では、ブラジルの日系社会を訪問して、きちんと批判してくれた著名人は大宅荘一さんと手塚治虫さんぐらいしか思い浮かばない。 もし当地の日系社会に明るい未来があるとするならば、こうした批判を真摯に受け止めることだろう。
行かないでも書けるようなおべんちゃら、無知のさらけ出し、日本人の期待するイメージにそって再生産される表現に僕あたりがかかわってはシンパの皆さんに申し訳が立たない。
9/25(金)記 家事の合い間に
ブラジルにて まさしく、家事の合い間に。 映像素材のプレビュー、チェックと編集作業。 なかなか、果てしなく。
エキストラの用事は次々、入ってくるし。
時にアタマにくるのは、勧誘電話。 作業の流れを切られて、ガチャガチャまくし立てられると、これはムカツくというもの。 むこうも金儲けだろうけど、こんなのに引っかかるのがいるんだろうね。
いやはや、もう留守番電話にしておこうか。
9/26(土)記 時間旅行
ブラジルにて 在日本のラテンアメリカ関係者から、在日外国人の子供たちの絵のコンテストの審査というのを頼まれていた。 彼らの方で絞り込んだものの紙コピーを事前に届けるとの約束で、日本の24日までに審査結果を郵便かメールで伝えられたし、とのことで。
紙コピーが届いたのは、日本時間より12時間遅れるブラジルの25日夕刻。 結果はタイムマシンで送るか。
サンパウロにいたからいいようなものの。 選ばせていただいた作品にそれぞれコメントを添えて、急いでメールで送る。 何点の応募があったといったような基本情報が添えられてこないのだが、できれば全点をみせてもらいたかった。
子供、平和、環境あたりをテーマにすれば絶対正義だと思われがちな風潮に乗じて悪巧みする大人、批判回路をシャットアウトしてボランティアしちゃう若者がいがちというもの。 年寄りは嫌われても警句を発し続けないと。
9/27(日)記 停電上映
ブラジルにて またユニークな上映パターンを増やしてしまった。
サンパウロでのブラジル日本交流協会研修生の中間研修報告会に招かれて、拙作「赤い大地の仲間たち フマニタス25年の歩み」を上映、ということだったが。
この作品は、いわば敢えて前半をかったるくしてある。 作品中盤の運動会のシーン、硬かった若者たちからようやく笑いが取れ始め、さあ岡村ワールドに引きずり込むぞ、というところで! ブラックアウト! もしや素材のトラブルか、と思いきや、停電である。
いんちきトークと質疑応答で時間は埋める。 けっこういろいろな上映を体験してきたが、停電打ち切りは初めて。 かえって充実して、見る側のモチベーションを高める結果になったような。
9/28(月)記 パパじゃなきゃイヤん
ブラジルにて 先週、PCのマウスがイカれた話を書いた。 すると日本の友人が、オッパイ型マウスのネット通販情報を伝えてきた。 さすがは日、いづる国。 こうしたばかばかしいものが各種、出回っているとは。 これも中国製らしいけど。
それにしてもこういう商品は、ネット通販以外にお店でも売っているのだろうか。 ○○小学校指定みたいな文房具屋では難しいだろうし、オトナのオモチャ系になるのだろうか。
さて最近の我が家の台所のニューフェイスは、パパイアの漬物。 アマゾン移民がいかに苦労したかの文脈で紹介されることがあるが、なかなかのグルメの一品である。
先週、断食をたしなんだ後で、むしょうにパパイアが食べたくなった。 買ってきたものは、包丁が入らないほど固い。 体重をかけて切断すると、まだまだ果肉を食べられる状態ではなかった。 その時に思いついた次第。 10年以上前にマットグロッソの日系のおばちゃんに教わり、残り物の野菜を味噌漬けにしていた。 それに青パパイアを投入、一日未満で妻子も喜ぶ絶品に。 これはこれで、なかなか奥が深い。
おっと、枕のマウスとの関連を書きそびれた。 形態と甘美な味、白い乳液の分泌などからパパイアはオッパイのメタファーとして用いられることが多い。 チチウリノキという和名もあるではないか。 ポルトガル語ではマモンというが、ずばりオッパイ系の言葉である。
わが新熱帯区の原産だが、料理法としては東南アジアが完全な先進地域になってしまったようだ。
9/29(火)記 まじめにオッパイ
ブラジルにて ところで、オッパイという語の語源はいかに。
ググってみると「語源由来辞典」というのにたどり着く。
1、「ををうまい」→「おおうまい」が「おっぱい」になった
近世とはいへ、「おおうまい!」などとオッパイをいただく童を想定できるだろうか? 「おおうまい」が「うまうま」「まんま」に変化することは素人でも考えられるが、M音がP音に変容しうるものだろうか?
2、「おなかいっぱい」が「おっぱい」になった
ダジャレにもなっていない感じ。
4番目に古代朝鮮語で「吸うもの」を意味する「パイ」とする説が。 これあたりに一票、投じたい気が。 しかし「おっぱい」の語が文献に最初に確認できるのが19世紀後半とのこと。 この時期に突然、古代朝鮮語が表出するのがナゾだ。
古代朝鮮に源流をもつ隠された巨乳の伏流が、幕末に突如としてほとばしったか。 はからずも「おかげまいり」「ええじゃないか」の時期だ。
幼児語は奥が深い。 「おっぱい」はずばり「パパイヤ」あたりに連なる語のような気がする。 おっぱいは、性交のもと。
ブラジル移民文化も含めて考察しようと思ったが、紙面の都合で、この辺で。 もちろん紙面の都合は、ウソ。
9/30(水)記 ピザラーメン
ブラジルにて これといった残り物がなく、昼はインスタントラーメンでもたまには。
パラナに車で遠征した時に地元のスーパーで買ったのがあった。 地方旅行の楽しみの一つが、地元のスーパーをのぞくこと。
この時もサンパウロではまるで聞かないメーカーの、僕にとっては奇怪な味をうたうインスタントラーメンが目に付いた。 話のタネに購入。
今日、挑戦したのがピザ味。 ハズレを覚悟で。 ピザに乗っかっててもおかしくないような野菜を数種、一緒にゆでる。 水量は300ccで、クリーミーな仕上がり。
なるほど、確かにピザっぽい味がする。 悪くはない。 この味はチーズ系なのか、トマトピューレなのか… 原材料名を確かめるが、化学製品や「スペシャルなもの」みたいな記載ばかりで、不明。
ま、たまには。
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