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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2010年の日記  (最終更新日 : 2011/01/02)
7月の日記・総集編 お楽しみはこれからだ

7月の日記・総集編 お楽しみはこれからだ (2010/08/01) 7/1(木)記 VIAJO PORQUE…

ブラジルにて
訪日を目前にして、ばたばた。
ぜひ見ておきたいブラジル映画がある。
万端くりあわせて夕方、映画館へ、
「VIAJO PORQUE PRECISO   VOLTO PORQUE TE AMO」。
訳ではあまり味が出ないだろうが、「やむをえず旅に出る。君を愛しているから戻ってくる」といったところだろうか。
刺激の強すぎる映画を観てしまった。

マスコミの紹介を見ると「実験映画」の範疇に入れられている。
スーパー8(!)の実写映像に、モノローグが乗るという形。

モノローグはほとんどフィクションと見ていい。
独身の地質学者が、干ばつで知られるブラジル北東部奥地の運河建設計画のためのフィールドワークに出る。
調査日誌とプライベート、個人の葛藤が語られる。
映像はあえて下手に、きたなく撮っている。

この手法なら、ひとりでも、フィクションが、自分の内面が描けるではないか。
観ておいて、ヤバいぐらいによかった。


7/2(金)記 敗戦国民の黄昏

ブラジルにて
午前11時から、ワールドカップ・ブラジル対オランダ戦。

敗戦。
あ~あ。

夕方、いくつか用足しで街に出る。
試合中は閉じていた商店街も、大半がふたたび活動を開始している。
サッカー破れて、経済活動あり、生活あり。

いまだにブラジルユニフォームカラーのシャツを着た人が多いが、自棄になっている感じはない。
静かだが、けっこう普通というか、正気な感じ。
そもそも大半の学校は冬休みに入っている。

小さなバール(いっぱい飲み屋兼コーヒースタンド)で親父さんが息子っぽい少年とブラジルカラーの装飾をはずしてまるめている光景に、ぐっとくる。

たかがスポーツでもこれぐらいなのだから、国家が戦争で負けた時の喪失感は、どんなだろう。


7/3(土)記 ブラジル0泊2食半の旅

ブラジルにて
祖国では、0泊2食の旅がブームとか。

子供たちは「冬休み」に入った。
「林住期」を迎えた父親はブラジル出家を直前として、残務雑務多々。

以前から泊まりを計画して2度も満室でNGだったサンパウロ近郊の宿の日帰り予約にトライ。
ついにOK!
朝食、昼食と夕方のオヤツつき。

アクセスはなかなかややこしかったが、環境はすばらしい。
人為のおよんだ大西洋海岸森林の「遷移」の観察、そして森歩き、ハンモックに揺られながらの諸々の思考に最適。
キャパに限りがあるので、オンラインで不特定多数には教えられない、まさしくアナ場。
日帰りなれど、こっちの森に癒していただいた。
また来よう。


7/4(日)記 予定変更

ブラジルにて
今回、横浜「岡村フェス」でお世話になるゲストの皆さんに。
ささやかなお土産に、ワールドカップ応援のブラジルグッズを混ぜることを考えていた。
ブラジル国旗柄の布袋など、なかなか手ごろであでやか。
すでにカントクも愛用してアルゼンチンにも持参していた。

オランダ戦の前日。
店に行くと、もうひとつしか在庫がないという。
とりあえず買うことにして値段を確かめると、なんと40パーセントUP。
そのさもしがが気に入らず、買うのをやめる。

そうこうしているうちに、あっけなく王者ブラジルは敗退。

さて、袋、袋。
こっちのスーパーのビニール袋というわけにもいかない。
文房具屋で売っているのも、あまりにもチャチなものばかり。
して今夕、目にも鮮やかな袋を発見。

ゲストの皆さん、どうぞお楽しみに。
4種類、そろえましたので、お好みのものを。


7/5(月)記 出家とその荷物

ブラジルにて
いよいよ今夜、サンパウロを出家。
スーツケースをどうやって埋めようかと思っていた。
ところが重量制限が気になるほどの重さに。
ナゾだ。

特に重いのはジャック&ベティさん販売用の雑誌Bumbaの塊。
フラジャイルの貴重品として、伊藤ガウショさんへのウン10年物の秘蔵ピンガ。

さあいい旅しよう。


7/6(火)記 アメリカひどーい

→アメリカ合衆国→
撤退間近の日本航空サンパウロ-成田直行便。
ニューヨークで給油と清掃を行ない、日本行きのトランジットの乗客も全員アメリカの入出国の手続きをしなければならない。

現地時間で午前8時をまわっているが、入国審査のブース数の4分の1程度しか係官がいない。
数百人が列に並び、15分たっても一人も進まないような状態。
厳戒態勢どころか、サボタージュ状態だ。
ニューヨークからの出発時刻が予定通りに行くか心配。
来日後、すぐに予定が入っている。

出国時の荷物と身体の検査ではなぜか僕がグレーリストに載せられていたらしく、パスポートを取り上げられて念入りなボディチェックを受ける。

日の丸撤退後、今後はマジで中東経由にしようか。


7/7(水)記 気分はもうアマゾン

→日本
成田の天候は、雨。
暑さこそ感じないが、湿度がえらい。
サウナの国だ。
アマゾン並みだぜ。
かといって、大気にアマゾンのような「森いきれ」は香らない。

リムジンバス乗車。
里山や側壁の緑の濃いこと。
伸ばし放題の髪の感あり。
視界は悪く、ギアナ高地を思わせる。

なめくじに会いたい。
粘菌に会いたい。
蝉時雨は、まだか。


7/8(木)記 横浜行脚

日本にて
土曜からの上映のための諸々で、横浜。
映画館で販売していただく雑誌BUMBA、企画のお仲人さんに持参した半世紀モノ秘蔵ピンガなどをキャリングケースに詰めて、ごろごろ転がしながら。
そうとう重いぞ。

伊勢崎町・若葉町辺りの商店街の程よい賑わい、多様性が心地よい。
このあたり、アーケードじゃないのがよけいよろしいのかも。

全国の閑古鳥飼育用のアーケード街も、まずは覆いを撤去してみたらいいかも。


7/9(金)記 階段に書あり

日本にて
今回の訪日は、ずばり横浜の上映に特化した旅。 http://www.jackandbetty.net/
滞日総時間の過半は映画館のなかだろう。
上映が終われば、ワールドカップ敗戦国よろしく、すみやかにブラジルに帰る。

今日は諸々の用事を一気に手がける。
その合い間に目黒雅叙園・百段階段へ。
書道家の武田双雲さんの記念展の鑑賞。
ジャック&ベティさんで14日にワールドプレミアを行なう最新作「明瑞発掘 奥吉野編」はずばり書道家のお話。
そのためのお勉強でもある。

絵画なら、ほんの少しの知識や取材暦もある。
書は、からっきしである。
百段階段も武田作品もすこぶる面白く、階段から落ちて目が覚める思い。
行き先は、蒲田じゃなくて横浜。


7/10(土)記 史上最大の作戦

日本にて
「みらい世紀ブラジル 岡村淳の舞楽而留(ぶらじる)移民のススメ」ついに始まる。
http://www.jackandbetty.net/miraiseikibrazil.html

朝の京浜急行線の車内で、競輪・競馬あたりに向かいそうなおっちゃんが寄ってくる。
関西からアサイチの新幹線で駆けつけてくれたNHKプラネットの中根健プロデューサーだった。
そういえば中根ちゃん、辺見庸にあこがれてたっけか。

映画館スタッフに教えてもらったイセザキモールの喫茶店コーリンで、モーニングサービスのコーヒーをすすりながら打ち合わせ。

史上空前の岡村まつり、始まる。
さっそく思わぬ人から声をかけてもらう。

星野智幸さんとのトークショー終了後、星野さん、中根さん、浅野卓夫さんの地上最強の岡村作品ウオッチャーらと若葉町通りのタイ料理店イヤムシャナーで懇親。
拙作に対する新たな気づきを、たくさんいただく。

決行してもらったオールナイトもそこそこの入り。
感謝と感激。


7/11(日)記 岡村のいちばん長い日

日本にて
横浜の丑三つ時。
「アマゾンの読経」オールナイト上映中に映画館でメールをチェックさせてもらう。
星野智幸さんの日記サイトにさっそく昨晩の上映のことが。
http://hoshinot.exblog.jp/
涙。

オールナイト終映後に有志たちと24hの中華料理屋へ。
ビールに紹興酒。
近くのサウナで汗を流して着替え。

映画館の前で森さんをお迎え、上映と対談。
終了後、森さんとコリアンレストラン。

各作品終映後のトーク、さらに被取材。

夜の鼎談の打ち合わせと上映、ホンバン。
ふたたび有志と24h「中華一番」、さらにタイ系バー。
終電危ない!という淑女をエスコート。

日付はまた変わる。


7/12(月)記 伯ゲイ

ブラジルにて
風まかせとはいえ、日に何度も格闘技をしているようなもの。
拙作上映中に、ついウトウト。
いびきをかいていないか、心配。

昨晩はゲスト関係者との二次会で、終電を心配する淑女のエスコートを申し出て、大活劇。

今日の夜はオカムラさん、休養日に…の予定だったが、スタッフと近くのブラジリアンゲイバーへ。
昨晩は暗く固く閉じていた。
まずやっていないと思っていたのが!

これは面白かった!
目的は拙作上映のチラシを配り、宣伝することだ。
こういう人たちが足を運びたくなり、共有できるような作品をつくらなければ。

おっと、今宵もいい時間に…


7/13(火)記 岡村ムラムラ

日本にて
いやはや不思議なことはあるもの。

昨晩、上映の合い間にブラジリアンゲイバーが営業しているものかどうか、カントク自らが斥候に立った。
真っ暗でこりゃだめだ、と思いつつ、帰路は若葉町通りではなくイセザキモールをチョイス。
コンサート場に人だかり、誰かのライブ。
青江美奈ではないようだ。

歌詞に仰天。
♪オカムラ、ムラムラムラムラ…
いつの間にか岡村まつりのテーマソングが!?
作詞は星野智幸さん?
…どうやら横浜市にある岡村町のことを歌っているようだ。
歌手らの姿を見ようとするが、なにせ人だかりがすごい。
「ゆず」という貼り紙が、ミュージシャン名か。
「ゆず」というミュージシャンがいることは、移民監督も知っている。

映画館スタッフに話すと、驚いている。
「ゆず」は地元伊勢崎町のストリートでデビューしたとのこと。

今朝、検索。
ズバリ「ゆず」に「岡村ムラムラブギウギ」というのがあるではないか。
You Tubeをチェック、昨晩、聞いた歌だ。

岡村町は考古学徒時代に出陣したことがある。

まことに使えるネタだが、もう一晩「発酵」させて水曜夜の「岡村淳 ひとり取材ひとり語り」で披露しよう。


7/14(水)記 気分はもうスティング

日本にて
「完全ではないが、それに近い」。
映画「スティング」のセリフ。

ヨコハマ岡村ムラムラ上映、まさしくピークに。
映画館での人と人の出会いがオルガニックに増殖していく。

メイントークは、ドキュメンタリーで観た小三治師匠並みに周到に準備。

このスティングのセリフ、一度使っていたのを思い出した。
高校の時、映研でつくった8ミリ映画について、校誌に書いた時。

映画少年死す。
そして、再生す。


7/15(木)記 目でみる日経新聞

日本にて
カタカナじゃなくて、漢字の方の日経。
本日付け朝刊の文化欄に、ガツンと掲載。

映画館には朝から問い合わせの電話が殺到とのこと。
コヤがにぎわうのは、いい。
これがお祭りだ。

ギアナ高地が見たくて、大阪から新幹線で駆けつけた人。
聞く人もなかったブラジル駐在時代の思い出を、移民監督にエンドレスで語る人。
じっと岡村を待ち、一言、万感のこもった礼を述べて、さる人。

空気も流れも変わった。
日経新聞効果をビジュアルに知る。


7/16(金)記 お楽しみはこれからだ

日本にて
ついに千秋楽上映。
今日も日経効果は続く。
思わぬ千客万来。

ブラジリアンゲイバーのママさんが来てくれた。
感激。

「フリーゾーン2000」の長谷川シスターズの仕切りで打ち上げ。
一期一会の有象無象の人たちがそれぞれ盛り上がってくれている。
これぞ、祭り。

さあいったん洞窟を出よう。


7/17(土)記 なつまつり

日本にて
昨晩の上映とトーク終了後、弘明寺AVシスターズの仕切りでの懇親会。
それからあのブラジルアンバー。
居残ったブラジル帰りの若衆と、さらに居酒屋で夜明かし。

目黒の実家でお休み。
とはいえ、明日の離日を控え、いくつか買い物へ。
昨日から盆踊りの始まった祐天寺の境内を通る。
露店が連なり、明るいうちから結構な人出。

深層の記憶がよみがえる。
僕は縁日大好き少年だった。
夏の縁日シーズンは、徒歩ならびに車好きの父の運転であちこちを回ったものだ。
雑誌の付録売りなんかが好きで。
当時は怪獣のソフビを売っている店もあり。
ギャンゴをお不動さんで買ったっけ。

三の日は地元油面地蔵通り。
五の日は広尾商店街。
九の日は中目黒・伊勢脇通り。
二十八日は目黒不動…

夏祭りを訪ね歩いて、常夏の地を志向してしまったのかもしれない。

盆が早よ来りゃ、ムイトボン。


7/18(日)記 全国区の付加税

日本→アメリカ合衆国
オンラインのなかの、アリ地獄みたいなところでオカムラ批判がなされているのを発見。
素性を明かさずに高飛車に誹謗中傷尽くし。
ぐっとこらえて、言葉少なめに書き込んでおく。
相手はなおも挑発にかかってくるが、こういう御仁は敬遠するに限る。

今回のような全国区レベルの特集上映、日経の記事などがブレイクすると、こういうのが出てくるようだ。
5年前にNHKに質問状を送り、それがマスコミに流れると誹謗中傷のための誹謗中傷を浴びたのを思い出す。

今回の上映で、少なからず感動の表明、応援のメール等をいただいている。
その人たちのご厚意に応えるために、ライブ上映、作品制作を続けたい。
岡村作品は、人を選ぶ。


7/19(月)記 自己喪失

→ブラジル
ない。
グアルーリョス国際空港での入国審査時。
ブラジルのIDカードがウエストポーチに見当たらないのだ。
認証済みコピーがあり、審査官のお姉さんはそれで入国させてくれた。

どこにもまぎれていないようだ。
JALの職員に飛行機の座席も探してもらうが、見当たらないという。
来週にはまた訪日しなければならないのだが…

以前、出国当日にIDカードがないのに気づいたことがある。
旅行社からはダメといわれたが、「罰金」の支払いで出国できた経験あり。
なのでさほどパニックにはなっていないが、手続きが大変。
イヤハヤ。


7/20(火)記 紛失の証明

ブラジルにて
今回のような書類の紛失や盗難、そして自動車事故など、この国では何か起こった時に手続きを進めるには、警察への届出の証明書とでもいうべきものが必要になる。
通常、近くの民事警察に出頭して何時間か待機するのだが、今回、オンラインでも可能なことを知った。

待つこと、24時間。
その間、まことにヤキモキ。
いずれにせよ手続きには現金が要るだろうから、東洋人街でチェンマネをしておく。
ブラジルレアル、相変わらず強し。


7/21(水)記 インフォーマルワールド

ブラジルにて
早朝の地下鉄の混雑時間を避けて、10時過ぎに連邦警察に到着。
そもそも書類の再発行に何が必要かが、連邦警察のHPでも明らかにされていない。
電話では、人によって「まちまち」。
まずは出頭して申請書をゲットせねば。
情報も現場も混乱。
暗い密生した藪の中を、手がかりもなく歩む思い。
いくつかの僥倖があったが、16時までの受付時間のものの、昼前で「きょうはもうおしまい」。
わかりうる書類をそろえ直して、明日、早朝から出直さねば。


7/22(木)記 列伝

ブラジルにて
今日は早朝6時台に出家、連邦警察に二日目のトライ。
けっきょくNG。
よく要領を得ないが、もっと早く来なければダメらしい。
インフォーマル情報が錯綜。
連邦警察側はきちんと段取りを説明せず、列に並ぶのは半分ぐらいはボリビア人、列側の公用語はスペイン語。
つかの間だが係員に必要書類を直接、確認できただけでも幸いというところ。

最初に列に着いた時、チャイニーズっぽい女性がすぐ後ろに。
彼女が取り出した本は、どうやら日本のマンガ。
作家名を同定できる文庫サイズの作品。
思い切って話しかけてみる。
「日本からいらしているんですか?」
「いえ、ここに住んでいます」
マンガの作家名を告げてみるが、まるでのってこない感じ。
深追いする理由もないので、そこまで。

建物内に入ると、列の後ろはボリビア人風の青年となる。
姿勢がきちんとした若者だ。
簡単なきっかけから、話してみる。
ラパス出身で、大学を中断してブラジルに働きに来たという。
日本のテクノロジーへのあこがれを言う。
日本では年間3万人近い自殺者がいることを告げる。
どうして?と聞かれる。
…夢をなくしたり、仕事に行き詰ったり、仕事をなくしたりして…
「ラパスなら、仕事ぐらいどうにかなるのに」。

この青年のすがすがしさは、どこから来るのだろう。


7/23(金)記 アメリカの友人

ブラジルにて
午前4時台に出家、始発の地下鉄で。
連邦警察に三日目の挑戦。
今日、初めてオフィシヤルにわかった。
当局は、一日100人しか手続きを受け付けないのだ。
未明5時台から列について、ギリチョン99番…

前のボリビア人グループ、後の100番のアルゼンチン男性といろいろと話す。
ボリビア人のエルメールさんは、何かと事情通。
自ずと、列につくボリビア人の班長役になっちゃうといった感じ。
日本に行って新幹線に乗ってみたい、と繰り返す。

100番ポッキリのアルゼンチン人のカルロスさんは、書く方のジャーナリストだった。
手にしていた四方田犬彦著「『七人の侍』と現代」(岩波新書)の口絵写真を見せると、「今は別のクロサワが活躍してるね」とくる。
僕の「フマニタス」スペイン語字幕版がぜひ見たいという。

最初のプロセス、書類の受理まで7時間半ほど列に立ちっぱなし。
ここまでで「七人の侍」ノーカット版を二回見て、さらに「虎の尾を踏む男達」を見る以上の長時間だ。
次いで10本の手の指の指紋入力、いつとも知れない受領証の発給待ちが続く。

夕方からの受領証待ちで、昨日、話したボリビア人青年ダニエルさんと再会。
彼は昨晩10時から列についたという。
寒くて眠れず、段ボールで段を取ったとのこと。

今回の1週間ポッキリのブラジル滞在、その多くを警察で過ごした。
日本での疲労もいえないまま、更なる疲労困憊。
しかし、かけがえのないアメリカの友人たちと出会った。

ともに歩もう、アメリカの友人たち!


7/24(土)記 動揺過ぎし土曜に

ブラジルにて
今回のIDカード紛失は、4月のオランダ足止め以来のピンチだった。
オランダの時は、まるでアウエーの地。
滞在先ではPCも電話も自由には使えず、往生したものだ。

日本の時差を背負ったまま、未明に連邦警察に「登城」する日々が続き、そうこうしているうちにまた日本に向かうことになる。
今日も未明から覚醒、日本のドキュメンタリストからいただいたDVDを見る。

今回、ブラジルに戻り、これほど泥濘にはまってしまったとは知らずに観た小津の「宗像姉妹」。
登場する男どもはどれも情けないようなのばかりだが、女たちが強烈だった。
「いつまでも古くならないものが、新しいものなのよ」。
そんな作品づくりを理想としたい。


7/25(日)記 はじめに自由ありき

ブラジルにて
自主制作どっぷりになる以前のアマゾンインディオもの、環境モノ、土地なし農民モノなどをDVD焼き。
少しせいせいする気もあり。

移民モノ、ブラジルものは拙作のなかでかなりの割合を占めるだろうが、もちろんすべてではない。
それらだけにワク付けしてしまうと、お互いまことに息苦しくなる。

自由に、自分の作品をこさえ続けないと。
今回のブラジルではまるで手をつけられなかったが、まずは「明瑞発掘」の続きだ。


7/26(月)記 若い人

ブラジル→
今日も午前2時ぐらいから覚醒。
パソコンいじりから始めて、もそもそ。

今回、横浜の上映に来てくれた二人の若い映像作家から、それぞれ作品のDVDをちょうだいしていた。
昨日は岡本和樹さんの「記憶の手触り」を見終える。
埼玉は川口の群像を記録したドキュメンタリー。
ドキュメンタリーの素材たりえる人物は、身近にいますことを再認識。
岡本さんは昨夏の埼玉ふじみ野市での拙作上映会に来てくれたご縁。

今朝は飯塚諒さんの「靄の中」を拝見。
フィクションだが、諸々の登場人物の言動がまるで芝居くさくないのが驚異。
飯塚さんとは昨年だったと思うが、サンパウロの東洋人街のカラオケ屋でたまたま出会った。
サンパウロ映画祭で特集が組まれた岡本喜八の話などをすると、若いのに岡本喜八も牛山純一もちゃんと認識していた。

ふたりとも、辛口のオカムラをして「好青年」と呼ばしませるタマであり、今後の歩みが楽しみ。

夕方まで小まめにいろいろたしなんで、ふたたび日本に向かう。


7/27(火)記 夏枯れの。

→アメリカ合衆国→
近年、最も劇映画を見ているのはJALの機中かもしれない。
封切り映画、封切り前の先行上映などもあり、長旅の楽しみのひとつでもある。
しかし、この7月のプログラムは夏枯れそのもの。
プログラムは月替わりなのだが、よりによってこの夏枯れの月に片道25時間のフライトを3回もたしなむとは。

ちなみに今回のアメリカでの入国手続きは、先回とは別の国かと思うほどスムースだった。
ニューヨークの夏の厳しさと日の長さをつかの間、体感。


7/28(水)記 イニシエーションゴールド

→日本
猛暑の昼下がりの成田に到着。
シャトルバスで帝都へ。

房総の大地、たぎる緑。
祖国の植生、そして地霊とのチューニングのひと時。
この地は縄文時代の貝塚銀座であることも妙。

さあ夏祭りの再開。


7/29(木)記 東京の黒山

日本にて
夕方、APARECIDAさんでの上映に向かうため、井の頭線に乗る。
車窓から東大駒場のキャンパスを見やって、目をむく。
この緑の、森の濃さ。
黒い。
黒い森だ。
日本の夏の緑は、森は、黒い。

大学時代の、黒田日出男先生のゼミを思い出す。
「日本史のなかの黒山」。
黒山の人だかりの、黒山とは?
開発の手の及ばない原生林が、黒山ではないか。
最も刺激的なゼミだった。
不肖オカムラは遺跡の発掘調査に追われてあまり大学には通わず、好きだったゼミも欠くことしばしば。
それがよかったか、悪かったか。

今、日本の都市に必要なのは、黒山ではなかろうか。
黒山は涼しい、怖い。
「ホモサピ」さえいなくなれば、数10年で都市は黒山化、タ・プルーム化するだろうな。


7/30(金)記 枕崎のカツ丼

日本にて
空路、鹿児島へ。
県都に出て、市立美術館を見学。
バスで枕崎まで南下。

枕崎の美術センター、南溟館館長さんにお出迎えいただき、さっそく会場へ。
スタッフの皆さんは明日夜、前夜祭の始まる「風の芸術展」の準備でおおわらわ。
夜は店屋物のカツ丼にしましょう、ということになる。
カツオの街に来てカツ丼…

これが絶妙だった。
「全国区」のカツ丼との違いとしては、具に線キャベツが乗っかっていること。
三つ葉か貝割れ大根かと思った。
香の物にたくあんと、鰹節のかかったラッキョウの薄切りが添えられている。
カツ丼の味を絶賛すると、もっとおいしい店があるとのこと。
あなどりがたし、枕崎。

そういえば鹿児島出身のアモレイラの堂園シスター、サンパウロから「たこ焼きマン」たちを連れて行くと、「キャベツの入っていないたこ焼きなんて…」と言ってたっけ。
鹿児島のキャベツ文化、探りを入れてみるか。


7/31(土)記 風の芸術展前夜

日本にて
さあ今回の訪日のメインイベントの始まり。
トリエンナーレまくらざき・第9回 風の芸術展、前夜祭の交流会。
カメラを回す。

交流会後、地元のサポーターのお宅に招かれる。
審査員の美術評論家・金澤毅先生と全国から集った受賞・入選者たちとの対話がとてもよろしかった。
金澤先生いわく「アートは一点モノ。オリジナルはオーラを放っている。」、深くうなずく。
複製芸術である映像で、オーラ、のようなもの、を放つためにも作家の立ち会うライブ上映でなければ。


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