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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2010年の日記  (最終更新日 : 2011/01/02)
9月の日記・総集編 SHOOT AND EDIT

9月の日記・総集編 SHOOT AND EDIT (2010/10/02) 9/1(水)記 おギンザで。

日本にて
アフロな響きのある言葉。
ギンザ。
日本のガールフレンドと、デート。
彼女の八十路の門出を祝ったのは、リオデジャネイロだったか。
すべてがしんどい、と言いながらも銀座まで一人で出てこられた。

いよいよ明日は離日。
この酷暑に生きる日本の人たちは、ほんとエラいと思う。
いずれ涼しくなる、寒くなるという循環思想が救いか。
このまま暑くなる一方、と考えただけでも。


9/2(木)記 Captain speaking

日本→アメリカ合衆国→
成田からニューヨークまで、12時間あまりのフライト。
今日の日本人機長は、こんなアナウンスをした。
ジェット機の旅だと、船のクルージングのおよそ1日の移動距離を1時間で移動する。
12時間のフライトということは、客船の約12日分の移動をすることになるとのこと。
へえ。
わかりやすい。
思えば、客船の旅だと、キャプテンがいろいろなウンチクをアナウンスしてくれるものだ。
旅客機のキャプテンとは船と違ってまず遭遇することはないが、乗客もすべてをゆだねる間柄である。
こうした親しみのわくアナウンスは歓迎だ。

仮にも日本のナショナルフラッグの航空会社だが、チャイニーズ系の乗客が増えるいっぽう。
して、マナーの悪さがやたらに目に付く。
日本の飛行機だからなのか、どこでもなのか。


9/3(金)記 暑さ暑さで彼岸まで

→ブラジル
JAL016便はブラジル中央の南下を続ける。
窓側のオヤジが機内の照明を消しているのに機窓を開ける。
地平線から上がったばかりの朝日がまぶしい。
アナウンスによると、サンパウロの気温は接氏13度。
ほっとするが、ちと薄ら寒いかも。
冬のサンパウロ、先回僕が出てからだいぶ冷え込んだとは聞いていた。

グアルーリョス国際空港から市内のコンゴニャス空港までシャトルバスで。
このバスも時々、強盗に襲われているから安心できないが、装甲車をチャーターするわけにもいかず。

市内空港からタクシー。
暑い。
バスは、エアコンを効かせていたようだ。
運ちゃんに聞くと、冷え込むのは朝晩ぐらいとのこと。
日中は20数度はありそうだ。

サンパウロの我が家に戻り、時差の思い睡魔に襲われながら扇風機を探す。


9/4(土)記 コスモポリターナ

ブラジルにて
我がアパートメントの前の大通り。
少し上った角にあったアラブ系ファーストフード店が撤退。
新たに大手のアラビアンファーストフードチェーンが改築中、と掲示があった。
改装なり、オープンしているという。
家族で昼に繰り出す。

もとは日系の南米銀行という銀行の支店だったが、すでに旧石器時代のような昔話。
なんと今度の店はイタリアンのファーストフードだという。
経営はアラビアンファーストフードの大手チェーンなのだが、そもそもこのチェーンのオーナーは非アラブ系ブラジル人とのこと。

そう続けては食えないお味。
店のシンボルの少年の顔のデザインは、イタリアっぽくもあり、アラブっぽくもあり。
ブラジリゼーションのいい見本だ。


9/5(日)記 ナゾのシマガツオ

ブラジルにて
さあ路上市に魚の買出し。
シマガツオをすすめられる。
体長50センチぐらい、おなじみの魚だ。

先回、あぶってタタキにしてうまくいかなかった。
今日はサシミでいただく。
そもそも身が水っぽい魚のようだ。

ネット検索をしてびっくり。
祖国で「シマガツオ」と称されている魚は、カツオとは似ても似つかない形状ではないか。
分類学上もスズキ目シマガツオ科。
ファミリーネームである。

すると、ブラジルでシマガツオと呼んでいるのはなんだ?
形状はカツオそのもの。
いわゆるカツオは身体に水平に、横縞が入っている。
ブラジルの「シマガツオ」は縦にストライプが入っているのだ。
そもそも祖国の魚類に詳しくない日本人が、縦にシマのあるカツオということで「シマガツオ」と命名したのだろう。

「外地」での日本語の新解釈。
この逆で、外地の日本語が祖国で別の意味で使用されている稀有な例がある。
ブラジル「原産」の「勝ち組」の語はいまや祖国でまったく別モノとして使われている。
さすがにこうした例は、いくつもなさそう。


9/6(月)記 撮影の達人

ブラジルにて
午後より、妻の知人の結婚式へ。

新婦は初婚、50代で全盲。
新郎は80代、先妻を数年前になくしたという。
招待状にはカトリック教会で15:30開始とある。
妻は新婦から16時開始と聞いたとのこと。

始まったのは、16時10分過ぎ。
得意げにビデオカメラを構えた若いのが前方に出てきたが、カメラを回しながらガムをかんでいるではないか。
式も佳境に入った頃、今度はズボンのポケットに片手を入れて撮影をしている。
もういや~ん!

日ごろ、カメラをぶれさせないため、息も止めて撮影をして命をすり減らしているオノレがバカみたい。

こいつの撮り方を見ていると、誓いの言葉などの音声もまともにカバーしていない。
新婦は全盲、映像は見てもらえない分、せめて音声ぐらいきちんと録ろうという誠意はないものか。

さあ他人のことはいいから、自分の仕事をきちんとしないと。


9/7(火)記 サハラ独立

ブラジルにて
干天と異常な乾燥の続いていたサンパウロ市の湿度は、サハラ砂漠なみと報道されていた。
今朝未明、ようやく慈雨が。
今日は独立記念日で祭日。

家族の昼食を準備して、台所の奥にあったヤバそうなピンガをいただく。
かなり辛口だが、慣れてくると悪くない。

時差ぼけに、疲労がたまっていた。
ぐってりと休ませていただく。
明日から、こっちの日常の再会だ。


9/8(水)記 SHOOT AND EDIT

ブラジルにて
さあブラジルの日常の再会だ。
早朝の子供たちの送り出し。
ビデオ編集作業。

最近、最も刺激的だった論説はエイゼンシュテイン→中沢新一による、映画のモンタージュ技術の本質を旧石器時代にみる、というもの。
まず畏友・淺野卓夫さんに聞いたのだが、酒席でもあり、よく理解できていなかった。
中沢さんの「狩猟と編み籠」は時差ぼけ続きのアタマと老眼の始まった身では、なかなかスムースに読めない。
青森の書店で買った中沢さんと坂本龍一さんの対談本「縄文聖地巡礼」にわかりやすく書いてあった。
縄文どころじゃないところまで行っちゃっていたか。

仙台で先月、撮影した和田恵秀さんの戦争語りの通し稽古から編集。
1カット64分を越えるショット=カットは岡村の撮影史上でも希。
さあどう編むか。


9/9(木)記 灰色の夜明け

ブラジルにて
深夜、身心フラフラながらも覚醒。
フラフラというより、全身が痛い感じ。
風邪の諸症状か?
いた・だるくて寝ていられない。

かといって本を読んだり、ものを書いたりする意欲はない。

昨日、ダウンタウンで思わぬ安値にて購入した黒澤の「天国と地獄」ブラジルバージョンのDVDがある。
思い切って、鑑賞。
ジャック&ベティでの特集上映の前に、この作品の黄金町のシーンを我が家のVHSコレクションでチェックしておくつもりが、ばたばたして失念してしまっていた。

こっちのデッキとモニターのせいのようだが、シネスコの画面の両端が切れてしまっている。
残念。
しかしそのおかげで、黒澤がシネスコ画面の最端でも大事な芝居をさせていることがよくわかった。

特に心打たれたことを、順に3点ほど。

1、密室劇!
前半1時間ばかりは、ずばり密室劇。
最新の長編が密室ドキュメンタリーだった愚生としては、事前に検討しておけばと後悔。

2、ドン引きで!
作品のクライマックスというべき、主人公と少年の邂逅シーン。
シネスコ画面の端っこの方の、大ロングともいうべきショットで、とても両者の表情などはうかがえない。
それでいて、これだけの効果。
映画を知悉したグレートマスターの技だ。

3.黄金町と黒い雨。
黄金町の麻薬窟シーンでは、今回も息を呑んだ。
黒澤映画史上、もっともヤバい雰囲気をかもしているかもしれない。
ふと、被爆直後の爆心地を想起した。
これだけの演出家をして、長崎の被爆についてはひしゃげたジャングルジムに表現を集約している。
世阿弥に通じるものを感じる。
膝を正して、まねびをさせていただこう。


9/10(金)記 TEBANA

ブラジルにて
ブラジルでは、知らない方がいいことも少なくない。
特にブラジル好きのつもりでいらっしゃる方々には。
同意される方は、以下はお読みにならないように。

「手鼻」という日本語があるぐらいだから、かつては日本でもあちこちで見られたのだろう。
僕には、日本で見た覚えはないが。

鼻の片穴をふさぎ、いきおいよく、オープンにしてある方のアナから鼻汁を地面に放出するワザである。
こうした「文化」を知らない人がこれを初めて目撃した時のショックは、なかなかのもののようだ。
ティッシュを使わない分、エコロジーでいい、なんてうがった見方もあるが。
しかし、この手鼻はなかなかの技量を要する。
シロートがエコロジスト気取りでやってみようものなら、上着からズボンまで鼻汁でベタベタにしてしまうのがオチというもの。

ブラジルでも都市部ではあまりみられないワザ。
男性に限らず、女性にも見事な「手鼻つかい」がいる。
サンパウロの場末で、手鼻をキメた後のねーちゃんが、こちらがそれを見ていたのを知ってか知らずか、「おにーさん、遊ばない?」と声をかけてきたことがある。
「テバナのテクもご覧の通りよ、〇〇〇〇〇〇?」(この台詞のみフィクション)

拙作に登場する、ファンの少なくない日本人移民の御仁もなかなかの名手だったが、あえて名を明かすのはよそう。

さて本日午後、サンパウロ市内を路線バスで小1時間、移動。
信号待ちの時。
歩道に立つ、横丁の番人風のおじさん。
片方ずつ手鼻をかんだ。
「かみのこし」があるらしく、ハンカチでも探すのか、ズボンのポケットに手をあてた。
ないとわかり、手のひらでハナをぬぐった…

これだけのこと。
ただ、後でこのおじさんと握手をする人の光景を思い浮かべただけ。


9/11(土)記 宿命の親子

ブラジルにて
息子も、風邪の症状で寝込む。
父親のが、うつったか。

父子で、のたうちまわる。

映画「砂の器」の父子を想う。
父の病ゆえに、引き裂かれる親子。
ひとつのフィクションの背景に、どれだけの実話があったことだろう。

父の側から、あの映画をとらえる歳と身体になってしまった。


9/12(日)記 むかえびと

ブラジルにて
朝、目覚めると久しぶりにいささか快適な感じ。
ようやく病も峠を越したか。
二度寝をすると、ますます爽快。

問題のビデオも、後はダビングを残すのみ。
依頼主の和田恵秀さんが、今になって「霊障」の対処法をメールで伝えてきた。
本番中は霊的過敏症の女性が舞台の袖でうずくまっていた。
和田さんご自身は、バリアーを張っていたので大丈夫だったとか。

そういうの、事前に言ってもらわないと。

いまや我が家の子供たちが風邪の諸症状で苦しみ、気の毒な限り。
「あの戦争」を子供たちに伝えるつもりが、別の方が伝わっちゃった。


9/13(月)記 ブラジルの土を買って

ブラジルにて
小さなプランターを買いに。
日本でいえば100円均一ショップに近い、園芸用品を店頭に並べている店に行ってみる。
ついでに袋詰めの土も買う。
袋のビニールとインクも風化しているような代物だが、鮮度はあんまし関係ないだろう。

袋を開けてびっくり。
大きな陶器片。
ビニールコードほか、腐食しない生活廃棄物。
ヒト(おそらく)の毛髪。
それでいて、根っこが多く混入している。
民家をつぶした時の廃土をそのまま袋詰めにしたようだ。
さすがに人骨まではいまだ検出していないが、歯ぐらい出てきそうだ。


9/14(火)記 明瑞再開

ブラジルにて
昨日から「明瑞発掘」の編集作業を再開。
まずは「明石編」。
明日はサンパウロで友情撮影、その後すぐそれのまとめに入るだろうから、またブランクができちゃうけど。

これはこれで面白いんだけど、そろそろお渡ししないと。
子午線上のアリア。


9/15(水)記 またぐ女

ブラジルにて
いよいよ。
今晩、リベルダーデ近くの日系のキリスト教会にて。
あの西荻窪のAparesidaのWillieさんの快著「リアル・ブラジル音楽」出版記念の講演会とポケットコンサート。
日本のお店で何度も上映会をしていただいている御礼に、講演とコンサートの撮影をさせていただくことに。

Renato Brazさんの歌とギター、門外漢の僕にもすばらしかった。
ギターという楽器の豊かさを、まざまざと教えてもらった。

さて。
撮影ポジションをいろいろ考えた。
コンサートは、観客のいない側のサイドにうずくまって挑むことに。
Willieさんのリポート写真でもわかるが、カメラはギターに接するほどの近さ。
しかし!
撮影中に、カメラをまたいでいった女がいた。
おそらく女。
いったい、なんだったのだろう?
これから編集やダビングで、いやでもその股のアップに接しざるをえない。


9/16(木)記 うつらうつら

ブラジルにて
午前中、リベルダーデに散髪に。
昨晩は手持ちの長時間撮影、その後、熟女たちとセルベージャをあおり、帰宅は午前様。
疲れた。

床屋さんでのうつらうつらは、なかなかの至福である。
昨日のウイリーさんのトーク編の編集は仕上げておく。
夕食後、早めに休む。


9/17(金)記 森かアートか

ブラジルにて
所用で、パウリスタ大通りに出る。
トリアノン公園の亜熱帯の森にゾクッとくる。
森のディテールが見たい。

しかしここは、いわゆるハッテン場でもあり、メンドくさい。
この辺りにある無料のアートスペースは…
より近い方の前を通るが、なにもやっていないようだ。

買い物をして、夕食の支度にかかるとするか。
我が家で画集でも見よう。


9/18(土)記 蘭

ブラジルにて
午前中、東洋人街へ。
こっちのホテルに移るWillieさんに焼きたてのDVDを届ける。

近くの文協がにぎわっている。
ランの即売会のようだ。
入ってみると、身動きが取れないほどの人。
小鉢をひとつ買ってみる。

数日後には、こちらは暦の春。


9/19(日)記 バジル大作戦

ブラジルにて
トマトが安くなった。
先週、トマトソースを作ろうと買ったウレウレの安いやつは、三日も置くと半分以上、傷んでしまった。
ソースに添えるマンジェリコン購入に手間取った。

ブラジルでマンジェリコンと呼んでいるハーブは、てっきりイタリアンでバジルやバジリコというやつと同じものだと思っていた。
ところがどうやら、一筋縄ではいかないようだ。
両方ともシソ科メボウキ属(Ocimum)までは確実そうだが。

ブラジル名マンジェリコンが沖縄に持ち込まれ、「じゅりこん茶」という現地化した名前の健康食品となっているのにびっくり。
糖尿病に効果ありと宣伝されている。
ポルトガル語のサイトでも薬草とされているが、糖尿病は見当たらない。
橋本先生の分厚い事典を見てもわからない。

鉢植えのマンジェリコンでも育ててみるか。


9/20(月)記 なめられない日

ブラジルにて
伊豆大島御掃除隊から、渋滞に巻き込まれながらも無事帰還の報がぼちぼち入る。

この日にうっかりすると、大変なことになる。
近年の例では、感染症で入院したり、ハチの群れに襲撃されたり。

今年は、しめやかに拙宅で「明瑞発掘」の編集をたしなむつもりだった。
ところが。
先日、日本で知り合ったばかりの人から電話。
今朝、ブラジルに着いたとのこと。
さっそくホテルに来るようにと電話があり…

いろいろあって、とんだハプニングから窮地に追い込まれる。
あまり思い出したくない。
身体やサイフはだいぶ消耗するが、なんとか無事。

9月20日は、アマゾンで彼岸に渡った藤川辰雄さんの命日。


9/21(火)記 松井太郎!

ブラジルにて
不徳のいたすところで、明け方フラフラの帰還となる。
2時間の仮眠で、大切なミッションに向かう。

こちらの日本語ジャーナリズムをになう友人二人を、車で松井太郎さんのところにお連れする。
今年、93歳を迎える現役の移民小説家・松井太郎さんの代表作「うつろ舟」を含む作品選が先月、日本の出版社から刊行された。
http://shoraisha.com/
この快挙、福音を知らさでおくべきか。

こちらの日本語界の中堅→重鎮をなす二人だが、松井さんを知ることで口々に日系社会の奥深さを語る。
両者とも松井さんの飾らず節度あるお人柄に深く打たれたのが伝わる。

いいことをすると、気持ちがよい。
未明までの悪夢を吹き飛ばす心地よい疲労感。


9/22(水)記 案ずるより撮るが易し

ブラジルにて
子供の学校の卒業記念ビデオのボランティア撮影開始。
「ササキ農学校の一日」の手法を考えていた。
事前に打ち合わせをしてあるのだが、こちらの意図が伝わっていない様子。
ままよ。
そもそも日本とブラジルでは学校の文化が違う。
しかもこの学校はモンテソーリ教育を実践していて、これがまただいぶ勝手が違う。
とりあえずは子供たちをカメラに慣らす。

どうするべきか、どうなることか、かなりプレッシャーだったが、それなりに面白いのが作れるかも。

もうひとつそもそも。
ブラジルではふつう、日本の授業参観みたいのはない。
子供の人生の大半を過ごす学校の日常を見ることができるのは、特権というもの。
よその親たちは完成した作品を見て、さぞびっくりこくだろうな。


9/23(木)記 うつろうつろ

ブラジルにて
深夜に覚醒してしまう。
火曜午後からふたたび読み始めた松井太郎さんの「うつろ舟」を一気に読了。
これで3度目。
3度も読んだ小説というのは、そういくつもないかと。

あらためて、すごい作品。
作品の光景が、脳裏を駆け巡る。
「うつろ舟」と大陸の大河についてでも、いずれ連載で書いてみるか。

ちなみに「うつろ舟」、日本の大手新聞に近く書評が出る由。
装丁もすばらしいので、ぜひ手にとっていただきたい。
万引きはダメよ。


9/24(金)記 赤と黒

ブラジルにて
近年、日本で特に女性に謹呈しているプロポリス+姫マツタケの石鹸。
ご好評をいただき、ありがたい限り。
本日、生産者から新たなアドバイスをいただいた。

プロポリスのみのものは黒く、プラス姫マツタケのものは赤。
洗髪には黒いプロポリスのみのものがオススメとのこと。
赤いプロポリスに姫マツタケの加わった石鹸は、肌によろしく、加齢のものを始めとするシミ類が見事に消えたとの朗報がいくつも届いているとのこと。

まずは自分と家族で改めて人体実験してみよう。
ちょうど手ごろなシャンプーが見当たらなかったところ。

次回訪日の際は、2色そろえないと。


9/25(土)記 パタゴニアに萩

ブラジルにて
禍も幸も日本からやってくる。

今朝。
コーヒーをすすろうとして、いつものコーヒー茶碗を手にする。
こちらのさる会合でいただいたもの。
いかにももらい物の、あまり物。
自分で気に入った器で飲みたいものだ、と思う。

石井敏子作品は、ちょっと重厚すぎる。

日本から短期留学に来た若い友と昼食。
わざわざ祖国から萩焼の茶碗をペアで担いできてくれた。
把手のついたコーヒー茶碗。
器面全体を花模様が覆い尽している。
すばらしいのひと言。

パタゴニアに、先史人の掌が岩面を覆い尽す遺跡がある。
それを思い起こした。

おそらく金額的に自分では手の出ないシロモノだ。
ブラジル産未市販紅茶を注ぎながら、いかに割らないかを夫婦で談義。


9/26(日)記 丼勘定

ブラジルにて
ちょっと重い原稿の締め切りが近づいてきた。
量でなくて、内容。

これのための資料として、日本から買ってきたDVDと書籍の料金だけで稿料の倍は使っている。
他にもこちらで出費が。
おそろしくて計算できない。

日本語では他の追随を許さないネタだろうが、それだけに責任も重い。

こんな調子でよく今までやってきたもんだわ。


9/27(月)記 松籟

ブラジルにて
しょうらい、と読む。
最初はこんな字、どうやって入力しようかとうろたえた。
すると「しょうらい」ですんなりと変換するではないか。
松林を吹く風の音の意とのこと。
松籟社は京都の出版社。

昨日付の読売新聞の読書欄に松籟社の松井太郎小説選「うつろ舟」の書評が掲載されたという。
まずは日本の知人が添付ファイルで送ってきてくれた。

松井太郎さんの松籟社発行の本を松山巌さんが解説。
松づくしで幸先がよろしい。
松山さんは、細川周平さんの指摘した松井ワールドの主人公の「筋を通す」生き方という表現を、さらに進化・深化させている。
移民を記録してきた作家の端くれとして、感無量。

読売のこの記事、オンラインでも読めるようになった。
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20100927-OYT8T00573.htm

松の風を聴け。


9/28(火)記 THE MEIZUI

ブラジルにて
今月中には横入りの作品群の仕上げをひと通り済ませるつもりだった。
不意の来客の接待やらエキストラのヤボ用が続き、危ぶんだ。
ところが難航するかと思っていた「明瑞発掘」最終編・東京編が意外にスムースにつなげられる。
本日中に目鼻がつく。

11月に水戸の「にのまえ」さんでワールドプレミア上映を計画中。
昨日、水戸の宿のオンライン予約をしている時に、この作品と水戸のただならぬ関係に気づき、震える。
な、なんなんだ?


9/29(水)記 BIENAL

ブラジルにて
サンパウロ・ビエナル。
カタカナ日本語ならビエンナーレか。
ラテンアメリカ最大級の国際アートの祭展。
先週土曜から一般オープン。

連日、午前9時オープンとラテンらしからぬがんばりよう。
午前中に行ってみる。
入場料タダというのが感激。
欧米や日本では考えられないのでは。
100万人の来場を見込んでいるというが。

アートとは何かを考えるいい機会だ。
表現の伝達の試みであることは、まちがいなかろう。
ヒトが何かを知覚して、伝えようとすればもはやアートということか。

近代日本人はアートを美術と訳した。
美とはなにかはむずかしいところ。

僕にとってのアートは、美を感じ、感動があるというところか。
ビエナルに鎮座するオブジェのいくつかに、驚きを感じることはあっても、美や感動はなかなか。
それでもわずかだが意外な美と感動を覚える作品に出会えて、うれしい思い。

平日午前中の入館者の大半は学生の団体、高校生ぐらいが多い。
学生のグループには、若い解説員がつく。

うらやましい。
美とは縁遠かったわが日本の高校の授業。
美的感動も知的興奮もなく、ただ受験で縛るだけの収容所。


9/30(木)記 レジョナルシューズ

ブラジルにて
靴屋のショーウインドーを眺めていて「天国と地獄」の権藤さんを思い出した。

日常に外で履く靴の底が抜けてきた。
隣の駅前の商店街には靴屋が数件あるので回ってみる。

遠目のデザインもそこそこ、値段も許容範囲の靴を見せてもらう。
手にとってみると、なんとも作りが雑。
デザインとして穴を開けてあるところの抜けているべき部分がきちんと抜けていない。
接着剤がずれた部分がいくつもある。
以前、安物の運動靴を買ったら、1週間たたないぐらいでベリベリはがれてきたっけ。
正確には、ここで権藤さんのことを思い出したのだ。

いったん店を出ようとするが、もうひとつ、ちょっとだけ値の張るのを見せてもらう。
悪くないかも。
店員のおじさんはそのメーカーをほめる。
靴探しでこれ以上、靴をすり減らすのもシャレにならず、奥から運んでくるおじさんにジャポネースの印象が悪くなってもいけないので、この辺にしとくか。

権藤さんの作る、兵隊靴のように丈夫な靴がいい。
ナショナルシューズから放逐された権藤さんは、規模のずっと小さな靴メーカーを任されたという。
ナショナルよりずっと小さいなら、レジョナルか。


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