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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2011年の日記  (最終更新日 : 2012/01/01)
8月の日記・総集編 大根監督

8月の日記・総集編 大根監督 (2011/09/01) 8/1(月)記 本屋の底力

日本にて
出先の田園都市線の駅に、そこそこの規模の書店があることがわかった。
頼まれ本もあれば、自分のほしい本もある。
ええい、大人買い。
「無料で配送しますが?」と聞かれるほどの量を2袋。

原発関係の書籍もかなりの種類が。
出版業界は放送に比べると、かなりまともかも。
こうした書籍が店の売れ筋ベスト10に複数、入っていて心強い。

この書店は、5000円以上の買い上げで店内のカフェのドリンクがサービス。
アイスコーヒーをすすりながら、気になる何冊かをひもとく。
この喜び。
ネットばかりだと、まことに薄くなると自戒。


8/2(火)記 東京巡礼

日本にて
実家の件のあと、夜行バスの時間まで荷物かついで気になるイベント・映画を回る。

早稲田にて「ウルトラ戯画2」 http://home.att.ne.jp/green/kaida/
平成ウルトラマンシリーズなどのデザイナー、イラストレーターのイラスト類展示。
どんなことでも好きを極めれば、プロになりうる。
ブラジルの怪獣オタクの息子に成り代わって鑑賞。
「ウルトラQリターンズ」展 http://home.att.ne.jp/green/kaida/ は父の方が見たいが、日程が合わずに残念。
「怪獣絵師」とは素敵な言葉だ。

ついで新宿で映画「グッド・ハーブ」 http://www.action-inc.co.jp/hierbas/
敬愛する映画配給人かつ字幕翻訳者の比嘉世津子さん渾身の提供。
なんとも不思議な映像世界の体験。
色彩、特にみどり色のヴァリエーションが心に響く。
なにか「橋本梧郎と水底の滝」第2部を予見するような。
どちらも主役は植物かも。
この映画のパンフレットは、あっぱれ。
ローシャシリーズのパンフレットとは、雲泥の差。

うへー、4人がけ夜行バス、満席だぜ。
ちょいとした苦行。
ああ快適に旅したい…


8/3(水)記 最上滝

日本にて
四人掛けトイレなし満席の夜行バスで山形・寒河江へ。
料金は安いが、快適な旅というより移動のための苦行。

僕が山形に行くというと、ドキュメンタリー映画祭がらみで?としばしば返される。
まったく関係のない、親戚訪問。

午後、最上川畔の温泉施設に連れて行っていただく。
作りに重厚感、風情は欠くが、3種の異なる泉質の温泉があって、お題は300yen也、格安だ。

露天風呂もあり、柵越しに最上川が拝める。

 葉月にも 流れは速し 最上川

抹茶にコンデンスミルクを溶いたような色味。
これだけの流れの速さだと、ブラジルなら滝と呼ばれそうだ。
先日の大雨で水の色も流れも通常モードとは異なるというが。
最上川は、日本三大急流のひとつと知る。

宿題を抱え、また夜行苦行バスでひとまず東京を目指す。


8/4(木)記 ふたたびぼろ

日本にて
満席バスで早朝の新宿に到着。
夜には竹芝桟橋から夜行船で伊豆大島に向かう。
来週の今ごろはサンパウロに到着か。
「旅の重さ」という言葉を実感。

日中、諸々の残務。
やりくりして、日曜に訪問したばかりの浅草アミューズミュージアムをひとりで再訪。

いくつか購入したい関連書籍もあり、なによりも「BORO展」にひとりで向き合ってみたかった。
確かな感動。

名前を知るべくもない、東北の女性たちの連綿とした命の営みの結集。
そして収集者である民俗学者・田中忠三郎さんと、ボロを提供してくれた老婆や、黒澤明監督との魂の触合いのエピソードの数々。

リピートして満足できるミュージアムと出会った喜び。

東海汽船大島航路の二等椅子席は、格安バスの二倍ぐらいの広さがある。
こりゃあ快適。
すでにデッキに出て夜の出航を楽しむ余力もなく、リクライニングシートに身を沈める。


8/5(金)記 郷愁の南島

日本にて
久々の伊豆大島入島。
夏にうだる潮風。
台風に適応してきた石壁。
亜熱帯の厚いみどりと草いきれ。
昆虫層の濃さ。

武満徹のサントラ音楽のいくつかが、蝉時雨のなかからフェード・インしてくる。
夜、佐々木美智子さんの肝いりで、元町のお店を借りて岡村のプチ上映会。
集まり散じて、人は変われど。

伊豆 一途 亜 都留?


8/6(土)記 溶岩とポケセン

日本にて
伊豆大島・元町。
朝5時ぐらいから至近距離で蝉時雨。
蝉シャワー、なかなかよろしい。
種類も3種はくだらない。

富士見観音堂参拝に前後して、島の有志に名所をご案内していただく。
伊豆大島訪問はすでに10回を越えそうだが、まともな観光をしたことがない。
1986年の三原山噴火の際、もっとも溶岩が里に迫ったところにご案内いただく。
観光スポットからもれた穴場の由。
圧巻。
ギアナ高地のテプイの上を思い出す。
まさしく伊豆大島は、ジオパーク。
大津波も大地震も、地球の歩みのなかのルーティンであることを思い知る。

ふたたび大型船の2等で竹芝へ。
上陸後、次の約束の時間を気にしながら、浜松町ポケモンセンターへ。
いや増してキョーレツなポケモン熱。

伊豆大島帰りのポケモンセンター訪問、3年前にもやったな。


8/7(日)記 残りの夏

日本にて
今日に想定していた予定を昨晩、消化。
肉親のケアという本来の目的から、あまりぶれないようにしないと。
フライトの接続がうまくいかずに伸ばした訪日だが、思わぬミッションが飛び入り。
ばっちり予定は埋まってしまった。
秒読み段階となり、「あれもこれも」をどんどん削っていく。
あとは、どの程度まで無理をするか。


8/8(月)記 夏の縄文

日本にて
思い切って早出。
施設入居の病人の見舞いのハシゴ。
とにかく歩く。

朝7時台から炎天。
目黒の自然教育園に近づく。
まさかと思うほどの涼気が漂ってくる。
緑と土の空間が広がっているだけで、これほどまで空気が心地よいとは。

コンクリートとアスファルトのジャングルがこの熱気と猛暑を増幅している。
縄文時代の夏は、さぞ心地よかったことだろう。

午後、実家でブラジルのナショナルプレート・フェイジョアーダを製作。
あらたに日本の食材の利用に開眼。


8/9(火)記 拙者の接写

日本にて
さあ明日は出ニッポン。
思い切ってコンパクトデジカメを新しく買うことにした。
先回、買ったのは「KOJO」のカンボジアロケの際。

フィールドに強く、相当の接写のできるのが出ている。
これしかないだろう。

これでツノゼミや粘菌など、そこそこの写真が撮れそうだ。
先方に出会うまでが容易じゃないけど。


8/10(水)記 RIOと観音

日本→イギリス→
朝6時過ぎに目黒の実家を出家。
タクシーが平常料金に戻ったあと、そして暑くならないうちに。
シャトルバスに乗り換え、一路ナリタへ。

ロンドンで6時間以上のトランジット待ち。
ヒースロー空港は安寧秩序が保たれていたが、あちこちのテレビモニターはロンドンでの暴動を伝える画面ばかり。

ロンドンまでのJAL、そしてサンパウロまでのBAも満席。
エコノミー席だが、日本の格安バスよりややスペースがあるかも。

JALでは、ブラジルで見たかったアニメ映画「RIO」(邦題「ブルー/初めての空へ」)が上映されているではないか。
絶滅種のインコの冒険を通して、リオの美しさをバッチリと伝えてくれている。
しかもリオの位置する大西洋海岸森林の動植物の魅力を伝える映画、今まで他にあっただろうか?
映像と音楽、何度見ても心地よいかも。

BAでは「中文」映画コーナーにあった「観音山:BUDDHA MOUNTAIN」というのが気になり、中国語英語同時字幕版で鑑賞。
久しぶりに、映画を観てるな感を味わせていただく。
大学受験に失敗しながらも、つるみ続ける男二人女一人の3人組が、もと京劇女優の一人暮らしの女性のアパートに間借りすることになる。
この4人が、四川省大地震で壊滅した山中の寺院を訪ねることになる…
これは拾いものだったぞ。

以下はサンパウロに戻ってからネットで調べた後日談。
この2本とも、まだ日本では一般公開されていないではないか。
「RIO」はアメリカのアニメ興行収入一位を記録して、日本の今春上映の予定が中止されたとか。
この秋上映の説もあるようだ。
「観音山」は東京映画祭で複数の受賞をしているが、劇場公開の予定はないみたい。

いっぽう字幕もパンフもでたらめな映画が特集上映されたり、日本的映画興行界、摩訶不思議也。


8/11(木)記 サンパウロに避暑

→ブラジル
未明のグアルーリョス国際空港に、ぶじ到着。
預かり物の食料品もあるが、懸念の税関もすみやかにパス。

シャトルバス車中でほぼ読み終えの千住博著「NYアトリエ日記」(時事通信社)を開くと、橙色の陽が背後から刺す。
振り向くと、ご来光、6時40分。
美しい。
車内の表示を見ると気温は摂氏14度。
空気はさほど乾燥しておらず、実にさわやか。

マラリアの症状に似た原爆症に苦しみ、高原都市サンパウロに移住したという広島での被爆者の方の話を思い出す。
日本で熱中症などという言葉が流布したのは、近年のことではないか。
縄文時代には季節による移動、季節ごとの住居があったろうと、故・古城泰さんも指摘していた。
近代以降、避暑といえば軽井沢の別荘といった感じで金持ちどもの文化とされてきた感がある。
季節移動という智恵を庶民が取り戻すべきかも。
例えば山村、過疎地に数日-数週間、避暑移動するだけでも双方の活性化、交流になるだろう。
都市政策・エネルギー政策に失敗した熱中都市に365日しがみつきの呪縛からの解放を。

さあサンパウロは知的生産にふさわしい陽気。
この疲れから回復できてきたら、書きものを。


8/12(金)記 「チャイナ・シンドローム」

ブラジルにて
しばらくは、したいことだけさせていただくつもり。
時差ぼけに身を任せて、食べたい時に食べ、眠たい時に眠る。
気になるDVDを未明から見始める。

日本で書籍の大人買いをした時、隣の家電チェーン店でDVDも4枚ばかり買った。
そのうちの1枚が「チャイナ・シンドローム」。
公開は1979年、僕が大学2年、遺跡の発掘三昧の頃だ。
観たこと、ジャック・レモンの熱演は覚えているが、その程度しか覚えていない。
試写会か名画座か、その記憶もなし。

すごい映画だ。
まぎれもない傑作ではないか。
よどんだテレビ・マスコミ業界、そして電気・原子力業界を鋭く告発していて、エンターテインメント。
映画音楽を排している点だけからも、なみなみならぬ志がうかがえる。

311以降に観るのは、まことに痛い。
ちなみにこの映画のアメリカ公開が1979年3月16日。
その12日後の1979年3月28日にスリーマイル島原子力発電所事故が発生している。

この勇気ある映画の製作は、直後の事故を防ぐことができなかった。
しかし32年経ち、さらに祖国日本が人類史上最悪レベルの原子力発電所事故を起こすべくして起こしてから5ヶ月を経て、この映画の存在が僕に希望を与えてくれる。


8/13(土)記 「出来ごころ」

ブラジルにて
けっこう僕の作品を見てくれている友人から、僕の自主制作作品より、それ以前の朝日ニュースターの「フリーゾーン2000」や東京メトロポリタンTVで放送したテレビ時代の作品の方がいい、と言われたことがある。
なかなか複雑な気持ち。

日本で奮発して買ったDVD&BOOK「小津安二郎 名作作品集」の「秋刀魚の味」は昨日、観た。
今日はこれとセットになっているサイレント映画の「出来ごころ」を鑑賞。
1933年の作品だが、「喜八もの」と呼ばれる喜劇とされている。
以前、小津のサイレント映画「生れてはみたけれど」の衝撃を記したが、この「出来ごころ」もすごい。
社会の、人生の闇が随所に顔を出し、それに翻弄される庶民の苦悩と愛が描かれる。
庶民というより、細民か。
舞台は日本のスラムと言ってもいいだろう。
ブラジルのファヴェーラの人情ものなんてのも、ありだろうなどと思う。

戦後の小津の一連の作品ももちろんよろしいが、戦前のサイレント作品には、別ものの重いすごさがある。
喜劇などではすまされない、観るのが怖いほどの。


8/14(日)記 「渚にて」にて

ブラジルにて
午前4時の名画座。
「チャイナ・シンドローム」の衝撃と感動よふたたび。
そんな思いから、やはり日本でまとめ買いしてきたDVDの「渚にて」を観る。
1959年の作品で、設定は1964年。
核戦争による放射能汚染で人類は滅亡していき、オーストラリアの一部にのみ生き残った、という設定。

ところが、なんともクリーンな核汚染である。
中性子爆弾か。
オーストラリアに脱出していたアメリカの潜水艦が、滅亡後のサンフランシスコを偵察。
街は整然としていて、「ひとけ」など生き物の気配と乗り物の動きがないだけ。
ネコは死ぬ時、ねぐらに戻るというから、みんなベッドに戻って死んでいるのだろうという解釈。
こういうのを「子供だまし」というのかも。

もう10年単位の昔だが、戦争の恐ろしさ、それを忌避させることを伝えるには、ヒトの生理的嫌悪感に訴えるべき、という意見に接して、いかにも、と思い続けてきた。
核汚染しかり。
人として、生命の担い手として生理的に嫌悪すべき。
いのちを侵して、なんの経済発展か、なんの国家か。


8/15(月)記 ブラジリアングラフィティ

ブラジルにて
子供の件で、サンパウロ市のダウンタウンにあるカンブシ地区で2時間ほど待機することになった。
今日は断食日としたため、バールでカフェという訳にもいかない。
急坂が多く、道のややこしい一帯、日中から路上で酩酊していらっしゃる御仁もあり、やたらに歩き回る気にもなれない。

未明から起きているので、夕方には眠くなる。
冬枯れてゴミの目立つ広場を発見。
若者グループや中年のカップルもいるので、そうヤバくはなさそうだ。
しばし時間をつぶす。

付近の住居や塀、シャッターにはグラフィティが多い。
作風もヴァラエティあり。
そもそもカンブシは世界的に有名になったグラフィティ・アーチスト、オズ・ジェミオスの根拠地だ。
街の随所に隠し絵のように配されたグラフィティには、一期一会の面白さがある。
街にアートあり。
写真は撮らねど、脳裏に刻んでおきたい。


8/16(火)記 ギャラリートーク

ブラジルにて
大河も、いつかは尽きる。
大河マンガ「ギャラリーフェイク」(細野不二彦著、小学館文庫)全23巻をついに読了。
出会いは、絵描きさんの取材が続き始めた頃だから、数年前。
たしか日本の駅構内の本屋で見つけ、23巻もあって文庫にもなっているぐらいだから、そう間違いはないだろうと買ってみてビンゴ!

東京でにせものアートを専門にする画廊を営む、元ニューヨークメトロポリタンミュージアムのキュレーター、フジタが主人公。
各エピソードに盛り込まれたウンチクも、ストーリーも秀逸。
訪日の度に数巻ずつ購入、ブラジルに戻ってから読むのが楽しみだった。

さあこっちの細流ドキュメンタリーも、そろそろ…


8/17(水)記 博物輪廻

ブラジルにて
故・橋本梧郎先生の、6年前のベネズエラでの発言を収録したビデオテープを発掘。
さっそく書き起こす。
「植物教」についての語り。

「橋本梧郎と水底の滝」全三部作。
まだ第二部のまとめにも着手していないが、完結編のタイトルは「博物輪廻」としようか。
「ある博物学者の遺言」というのも考えたが。

橋本作品はもう少し寝かしておくが、書きものと別の映像のまとめ、追い込まれてきたぞ。


8/18(木)記 まちがいさがし

ブラジルにて
ブラジルに戻って、はじめて東洋人街へ。
日系の書店で、友人と待ち合わせ。
「ブラジル日本移民百年史 第三巻 生活と文化編(1)」(風響社)が目に入る。
こちらのカネで150レアイス、日本の定価は8000円と、高額本である。
しかし友人知人が執筆していると聞いている。
しかたがない。
思い切って、カードで購入。

パラフィン紙がかかり、600ページを越える大著。
一朝一夕で読みこなせるものではない。
ぱらぱらとめくり、巻末の「ブラジル全域地図」を見やる。
おかしい。
ブラジル国内の21の地点にドットが打たれ、地名が書かれている。
そのうちアマゾン流域の8箇所のうち、明らかに位置のおかしいところがいくつか。
「モンテ アレグレ」がアマゾン本流の南側になっている。
「パリンチンス」がアマゾン本流の北側になっている。
「マウエス」がマデイラ川の西側になっている。
「ヴィラアマゾーニア」の位置がアマゾン本流とマデイラ川の合流地点になっている。
ざっと、こんな感じ。

こうしたまちがいを恥ずかしいと思い、善処しようとする良心と知性を、今後も作業を続けるらしい編纂・刊行委員会が持ち合わせているかどうか。

昨年12月の発行とあるが、ほかにすでにおかしいと指摘する人がいたかどうか。


8/19(金)記 原稿たたき

ブラジルにて
まとめるべき映像素材がたまっている。
最初にまとめようと思っていたものは、依頼者の意図が伝わってこないので、ペンディングとする。
誰がいつ、どのように食べるかわからない料理は、作りようがないというもの。

だんだん追い込まれている原稿を優先する。
資料を引っ張り出してつぎはぎするものでなく、自分の記憶から引き出すもの。
カイコが糸を吐くのは、こんな感じか?

調べてみると、カイコの場合は絹糸を吐く、出すというようだ。
「紡ぐ」というのは繊維を撚(よ)って、糸にすることと知る。
とりあえず、吐くか。

げろげろ。


8/20(土)記 もぎりよこの本ありがとう

ブラジルにて
出来の悪いカイコは、絹糸を吐くのをサボってばかり。

片桐はいりさんの「もぎりよ今夜も有難う」(キネマ旬報社)を耽読。
横浜のジャック&ベティさんで、ローシャグッズを買い込んだ時に、共に購入。
片桐さんはJ&Bにも時おり、出没されるとか。

実に面白いあっぱれなエッセイ集。
それぞれ、何が飛び出してくるかは、読んでのお楽しみ。
片桐さんが旅先で訪ねる映画館のエピソードが多いが、その映画館の写真もないところがよろしい。
ネタも表現力も、映像を超えている。

出来の悪いカイコは、回顧録どころか解雇されちゃうかも。


8/21(日)記 クーラー効き過ぎ

ブラジルにて
サンパウロは、未明から雨模様。
涼しいどころか、寒い。

酷暑の日本から戻って10日、肌が猛暑モードになりきった感じで、ついつい半袖、Tシャツ一丁になりがち。
路上市に出る時、さすがに半袖のジャケットを羽織る。
待ちゆく人は、極寒モード。

でれでれと、書きものの次の章の構想を練る。
これに使いたい資料が見当たらない。
ほかのものに、寄り道。

先回、ジャック&ベティで買った映画「100,000年後の安全」のパンフレットをひもとく。
吉祥寺でこの映画を観た時は、パンフはできていなかった。
池田香代子さんの文章に付箋。

たかが数十年、ほんのひとつまみの裕福な人びとが核エネルギーの恩恵に浴する代償が、おびただしい「人びと」への10万年にも及ぶ呪いとは。

このパンフの巻末資料によると、米国環境保護庁は、放射線防護遵守期間として10万年どころか100万年を高レベル放射性廃棄物処分場に適用しているとのこと。
さすがアメリカである。


8/22(月)記 サマークリスマスのまえに

ブラジルにて
相手のある仕事は先方のレス待ちで、後回し。

ついに「あもーるあもれいら」第三部『サマークリスマスのかげに』のポストプロ作業に着手。
これが始まると、他のことはなかなか手がつかなくなる。
思いは諸々。
第一部以来、作業方法もどんどん変わった。

マシンの容量も考慮して、ふたたび素材をチェックしながら、同時に一部を編集していくという方法を持ってみる。
さあどうなるか。

期間の空き具合はコッポラの「ゴッドファーザー」PARTⅢクラス。
内容の方は、「勝つ子 負ける子」のクオリティをどこまで保てるか。
なにせこっちの第三部の取材時は、あの6年前の大事件の直後かつ渦中だったし、思い出してもへろへろだぜ。

さっそく作者の目頭を熱くするシーンがあるが、これを伝える努力をするのがこっちのワザかと。

理想は今年のサマークリスマスのまえまでに完成させること。
もうよけいな用事を安請けあいするのは、控えよう。


8/23(火)記 この闇

ブラジルにて
「あもーるあもれいら」第三部では、この世の闇とでもいうべき、重く暗い事件をいくつか紹介する予定。

僕にはより深刻に思える問題の部分の、素材のチェック。
言葉が、追いつかない。
どうしよう。

なんでこういうのをうつしちゃったか、うつっちゃったのかから考えないと。


8/24(水)記 大根監督

ブラジルにて
物価高すさまじいブラジル。
食料品しかり。

そんななか、昨日は束売りの大根を購入。
根も葉もみずみずしいのが、生産者にも移送者にも申し訳ないような安値で売られていた。

早めにさばかないと、豊富な葉が枯れてきてしまう。

沢庵風大根漬け、皮のキンピラ、葉の炒めもの…
葉っぱ料理のレシピを増やさないと。

うへ~、午前中の貴重なビデオ編集時間をだいぶ割いてしまったな。
どっちがより貴重かは、むずかしいところ。


8/25(木)記 アモレイラの雨

ブラジルにて
臨界を起こしたら、停めるのがたいへん。
今日も「あもれいら」③の編集。

雨のシーン。
トトロのあの雨のシーンを思い出す。
「冷たい雨」というのは、とまりりんの「氷雨」、ずばりユーミンの曲名等々、歌にもさんざんうたわれている。
「あたたかい雨」というのは?
検索すると、そのまま曲名であったか。

当人たちも覚えていないような日常のエピソードから。
大きなイベントも、ちいさな人から。

♪こんな気持ちのままじゃ どこへも行けやしない


8/26(金)記 毛髪入りパスタ

ブラジルにて
植田まさしの作品だったろうか。
10年ぐらい経つかもしれない。
日本の、たしか週刊誌で見た4コママンガが忘れられない。

起・ラーメン屋にて/男の客が店主に髪の毛が入っているとクレーム。
承・店主、あやまりながら別のラーメンを客に出す。
転・別の男客が、ラーメンに髪の毛が入っていない、とクレーム。
結・店主、あやまりながら客のドンブリにたっぷりと毛髪を振りかける。

近所のスーパーで安売りをしていたイタリア製パスタを昼食に。
もっとも細い、ゆで時間3分というのを買ってみた。
ウルトラマン級だ。
まさにそうめん感覚。

外箱を見るとCAPELLINIとある。
ポルトガル語では毛髪をcabeloという。
ひょっとして?

検索してみると、ビンゴ。
イタリア語で「毛髪のように細い」、日本語読みだとカペッリーニとか。

麺に毛髪は、よく似合う。


8/27(土)記 マクドナルドの小児ガン効果

ブラジルにて
今日はブラジルマクドナルドの、年に一度のハッピーデイ:Mc Dia Feliz。
この日のビッグマックの売り上げは、すべてブラジル国内の主に小児ガンを扱う医療機関に寄付される。

開始以来23年で、現在のレート換算でおよそ60億円が寄付されたことになる。

それにしても、ブラジルは高い。
ビッグマック1個が約500円。
日本なら、牛丼大盛りに味噌汁・漬物・サラダ・生卵が付けられるかも。
お茶は飲み放題だし。

ここ数年、訪日が続いてハッピーデイは父親不在だった。
以前の苦い経験から、午前11時に車で家を出て、最寄りのドライブイン型のマクドナルドへ。
再認識するが、この食べ物は片手で博打に興じたり、マウスを動かしたりしながらハラの足しにするもので、食という行為を楽しむものではない感じ。
ま、今日は大義名分が。
12時前には、食欲も失せるほどの列。

祖国を思う。
日本政府の無策のなか、残念ながら数年後には小児ガンが激増することが予想されている。
日本のマクドナルドに月イチぐらいでハッピーディをやってもらうか、親日国ブラジルのマクドナルドに日本救済のハッピーデイを設けてもらうか。

今なお、処分のめどのまったく立っていない放射性廃棄物を多量に生産する原子力発電所の稼動を続け、ガン発生のリスクのある子供たちを放置し続ける日本。
また、外圧しかないのか?


8/28(日)記 臨界書き

ブラジルにて
臨界に達した原子炉のように、制御が困難、というたとえは、時局がら不謹慎だろうか?

書きもの作業がたまり、とりあえず週末は書きもの優先というモードを実施してみた。
昨日は、なかなか乗らず。
書いているものもだらだらとした状況説明とエクスキューズみたいな感じで、自己嫌悪。

そもそも強烈な「あもれいら」の世界にようやく浸っていたのに、10年以上前の土地なし農民運動に関わっていた頃への変換がむずかしい。
ところが夕食の支度の前ぐらいから、どうしたことが興に乗ってきてしまった。
夜間もひたすらノートパソコンを叩き、いったんオチをつけると日付が変わっていた。
それにしても石丸春治さん、本当に不思議な人だった。
サンパウロの「建国以来」といわれた大停電の時に、当時、電気のない入植地にいた石丸さんのことを書こうと思って実現しなかったのが、残念。

さあ朝は早いから、ほどほどにしないと。


8/29(月)記 冬の35度

ブラジルにて
訪日中、日本の実家に問答無用でブラジルへのことづけものを送りつけてきた人がいる。
郵便事情が心配だから、と添え書きが。
岡村の事情はまったく心配がないようだ。

届け先はサンパウロだが、交通費は国内郵便料金よりかさみそう。
梱包して郵便局に並ぶ手間と、届けに行く手間と、どっちもどっち。

午後、車を出す用がある。
道順を調べ、先方に電話をして滞在を確認して、お届けに。

はっきりいって、受け取る方も困惑するようなシロモノ。
徒労感ばかりが残る。

ちなみに、日本の消印8月22日の普通郵便が27日に届いている。
ヘタなメールの返しより、ずっと早い。
日本政府や日本の電力会社より、郵便はずっと信頼できそう。

車での帰宅時、街の気温は摂氏35度とあった。


8/30(火)記 編み手あり

ブラジルにて
父親に谷底へ突き落とされる獅子の子より、おだてられて木に登るブタでいたい。

一昨日、いったん打ち上げた原稿。
一夜、寝かして加筆したい情報が出てきて、別名保存の第二稿とする。
今日、第一稿を読んでくれた日本の編集者から、心を熱く揺さぶるコメントをいただく。
岡村の文章に、これ以上の読者はないといえる知性と感性の達人に拙文を編んでいただく喜び。

今回、恥ずかしいほどすっかり忘れていたキーワードをご指摘いただく。
こっちのスイッチが入ってしまった、というやつ。
「あもれいら」の作業は中断、ややカミがかって一章を加筆。

再臨界、か。


8/31(水)記 良書との出会い方

ブラジルにて
原発禍について書くつもりだったが、枕に使おうとしていた報道が危なさそうなので、やめる。

吉田直哉さん「映像とは何だろうか」(岩波新書)を読了。

 映像は、実体がないかもしれない。しかし、映像には、内に秘めた火があるのだ。

等々、あちこちに鉛筆で線を入れる。
吉田さんは、アマゾンのポロロッカ取材の大先輩。
多彩かつ豊富な吉田さんの映像作品を拝見できる機会はテレビ番組という性格上、むずかしい。
しかし吉田さんの著書はアクセスがはるかに容易で、これがまた面白くてためになる。
たとえば「思い出し半笑い」、タイトルからして忘れられない。

2003年発行の岩波新書だが、恥ずかしながら存在を知らなかった。
PARCの移民映像講座の受講生の皆さんとは今も楽しいお付き合いを続けさせていただいているが、 そのひとりにいただいたのである。

その女性は映像業界ではないのだが、なぜかご自宅の郵便ポストにむき出しでこの本が入っていたという。
それからまもなく、上述の講座で出会ったカップルの結婚を祝う酒池肉林の集いがあり、「これはぜひカントク(彼女は岡村をこう呼ぶ)に」と思って持参したという次第。

僕にとってまさに必読書。
それにしても、不思議すぎる本との出会いの形。
これが、ホントの出会い、なんちゃって。


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岡村淳 :  
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