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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2011年の日記  (最終更新日 : 2012/01/01)
11月の日記・総集編 ブラジルの世間師

11月の日記・総集編 ブラジルの世間師 (2011/12/04) 11/1(火)記 スシの夢・洞窟の夢

ブラジルにて
さあついにこの日が来た。

まずは原稿の上書き。
拙作「郷愁は夢のなかで」の主人公の発言をもう一度、見直してリライト。
西佐市さんの「浦島太郎」に福島の、日本の惨状の預言をみて驚く。

午後より用足しを抱き合わせて、出家。
映画祭のウエブサイトの最新情報も確認。

本日、23:59!から予定されていた回に加えて、横並びのシネコンで23:00からも上映されるとある。
観たくてたまらなかったヘルツオークの「CAVE OF FORGOTTEN DREAM 」!
ヘルツオークが自分を入れて3人だけのクルーで、フランスの3万年以上前に描かれた洞窟壁画に挑んだドキュメンタリーだ。
あのヘルツオークが、どう見て、どう見せてくれるか。

十分に余裕をみて、17時に切符売り場に。
もう売り切れというではないか!
しかも23:00の回は、サイトの間違いで存在しない、とにべもない。
昼頃に列ができて完売、とのこと。
そんなにこれを見たい敵、いやさ仲間がいたとは!

せっかく水筒に日本茶を詰めてきたんだが。
まずは、それまでの時間つぶしのつもりの1本目、「JIRO DREAMS OF SUSHI」を観る。
ミシュランの三ツ星に選ばれた数寄屋橋の寿司処・次郎の主、小野次郎さんをアメリカ人が撮ったドキュメンタリー。
これがすばらしかった。
「シンプルを極めると、ピュアになる」
「いいネタで、いい寿司が握ることが一番大切。儲けはどうでもいい」
「うまいものを食べて、お客さんより感度の高い舌をもっていなければならない」
等々、上映中に手帳を出してメモ。

なかなかうまいつくりだが、監督は若いアメリカ人で、ビデオクリップなどを撮ってきて、これが初めての長編とか。

放射能汚染大国となった祖国にある巧みを、智恵を、希望をかつて日本国が鬼畜と呼んだアメリカの若者に教えてもらった。


11/2(水)記 アラブ手巻き

ブラジルにて
今日のブラジルは「死者の日」で祭日。
ほとんどの店は休みになるので、昨日のうちに買い込んでおいた。

我が家の近くにあるアラブ系食材店で、久しぶりに「葉っぱパン」を買った。
直訳すると「葉っぱ」だが、ホウの葉いやさバナナの葉より大きい。
そして薄く、テーブルクロスの代用になるほど。
テーブルクロスにして食べていくというのも、あずましいかも。

これにお好みの具をくるんでいただく。
巻きズシのようにシャリがないので、軽い。
お好みの具をありあわせのもの中心に考えて作るのが、また一興。
文化交流に、まことに食は友好、いやさ有効。

中東経由の訪日もよろしいだろうな。


11/3(木)記 ブラジルの世間師

ブラジルにて
「世間師」(読みは「しょけんし」とも)という言葉に宮本常一系以外の本で、初めて触れた。
種田山頭火の随筆集。
山頭火も宮本と同じ山口出身の人なので、むべなるかな。

世間師とは、民俗学者の田村善次郎氏によると、
世間師というのは西日本、ことに(宮本)先生の郷里である山口県あたりでよく聞かれる言葉である。広く旅をして広い見聞を持ち、世間のことを良く知っているだけでなく、ある見識を持っていて、事ある時には良き相談相手となり、周囲の人に役立つ人というようなニュアンスを持って使われているのである。

あこがれちゃう。
今、書いているものは、まさしく「ブラジルの世間師」。
しかも主人公は山口出身という、この奇遇は何だ?


11/4(金)記 花火と火花

ブラジルにて
故あって東洋人街のはずれで開かれる押し花アート展へ。
さまざまな花びらから木の枝、野菜、キノコ、地衣類までが用いられている。
いわば、見立てのコラージュか。

意外性は楽しめても、美的感動まで至る作品は稀な感じ。
花火を、花そのもので表現しているのは面白かった。


11/5(土)記 NIGHTMARE OF SUSHI

ブラジルにて
テマケリア。
ブラジルの手巻き寿司専門店のこと。
近所に、これができた。

夜、家族で思い切って行ってみた。
店の作りは並みだが、お値段は高級店。

店の名を冠したテマキを試す。
エビのフライやらクリームチーズ、キュウリの細切りやらが巻いてある。
そもそも箸をよこさず、おしぼりもなく、トイレのなかに入らなければ手洗いもないから、衛生的ではない。

まず、非常に食べにくい。
細切りキュウリが、鼻孔に突き刺さった。
味は、訳がわからない。

お値段は、これひとつで邦貨にして750円ぐらい。
日本なら、ランチの握りぐらいいただける値段。
しかもこんなの、5本ぐらい食べなければ腹も満ちない。

少なくとも、自腹では二度と来ないだろうな。

その足で、近くにあったブラジル人の大衆食堂兼飲み屋に入った。
テマケリアより、100倍はよろしかった。


11/6(日)記 エキスパート

ブラジルにて
日本から来た、さる筋のエキスパートを、我が家近くの路上市に案内する。
エキスパートが品選び・品定めする刹那の緊張感がいい。
大衆カフェに入った時も、見ているもの、指摘することが違う。

いただいた11月3日付日本経済新聞文化欄「ジョブス氏はうちの常連 シリコンバレーで和食店、訃報とともに幕下す数奇な縁」がまたよろしかった。


11/7(月)記 ミクシィと縄文

ブラジルにて
昨日ぐらいから、誕生日のお祝いメッセージをいただくようになった。
ミクシィやファイスブックが加盟者の誕生日をメンバーに告知するためである。
お互いそうでもなければ誕生日を覚えている人など、何人もいるものではないだろう。
昨年あたりまでに比べると、フェイスブックのウオールにお祝いメッセ、というのがぐんと増えた。
しかし根強いミクシィ党もあなどれない。
それぞれに御礼の返信をするが、なかには面識のない知らない人もいるのに気づく。

数日前の報道でミクシィの広告収入の減収が報じられていたが、それも時の流れというものだろう。
だらだらとメンバーから同じ比重でメッセージが入ってきてしまうフェイスブックやツイッターよりミクシィの方が使い勝手がいいように思える。
しかし歳月とともに、ミクシィのオレンジカラーが陳腐化していく感も否めない。

飽きやすさ、新しいもの好きは現代人や都市生活者に限られたものでなく、ヒトの本質かなと思う。
縄文土器の紋様や形態の変遷を見ていると、つくづく思う。
南米の岩絵しかり。

こうしてみると、「JIRO DREAMS OF SUSHI」から引用したように、シンプルなものが強いかも。
シンプルを極めていくと、ピュアになる、と。

身近なところで、大家の櫻田博さんが編み出したこのウエブサイトの形式などが、それにあたるかも。


11/8(火)記 想像謹慎

ブラジルにて
訪日も近くなってきたので、今日は思い切って断食をしておく。
外見はともかく、内臓ぐらい少しはおめかししておかないと、なんちゃって。
大江健三郎氏の「セヴンティーン」を思い出してしまうが、あらたに誕生日を迎えてはじめての断食だ。

文豪にちなんで、今のうちに少し書きもの。

こちらの日本語雑誌に相当量、日本の雑誌にも連載をしてきたが、こうしてみるとまだきちんと書いていないことがあるものだ。
価値や甲斐のほどはわからないが、僕の頭にしかないことども。

家族の昼食・夕食も冷蔵庫にあるものだけで作り、買い物にも行かなかった。
一歩もアパートから出なかったな。


11/9(水)記 文化遺産としての乱交

ブラジルにて
イビラプエラ公園のビエンナーレ会場で、サンパウロビエンナーレ60周年記念展開催中。
ダミアン・ハーストの母子牛のぶった切りフォルマリン漬けを目玉に、主に北米の現代アートの重鎮たちのオブジェの一挙公開だ。
「ウォーホルの孫たち」というキャッチあり。

訪日中に終わってしまうので、willでなくてmustでみておく、というとこか。

「18禁」指定のアートがいくつかある。
セヴンティーンから、愚生は少しは過ぎたはず。

おっと、いきなり乱交シルエットと来たぞ。
教室らしい設定で、男女の教師ふうなのが立位、後背位で。
生徒たちはそれぞれ自慰、男色、性交にいそしんでいる。
似たような設定の影絵の動画が延々と続く。

小中高生ぐらいの団体見学が多いが、3階にわたる広範な展示でもあり、ここは人影もまばら。

作家はポール・チャン。
他にもいくつかプロジェクト投影の彼の作品がインストゥールされている。

乱交動画をながめながら、思い出した。
ブラジル北東部の世界遺産に指定された岩絵遺跡にある、乱交画。
研究者によると、乱交場面が描かれた時代は環境変化や社会の乱れがうかがえる、とのこと。
たしかに乱交画は、粗く雑なタッチだった。
整然としてたら、乱交にならないか。

その後、あの遺跡も観光用に整備が進んだというが、さすがに先史時代の文化遺産は18禁にはならないだろうか。

文化、教育と乱交を考えるいい機会をちょうだいした。


11/10(木)記 印度のOZの隠し子

ブラジルにて
なんと、インド映画とは!
祖国のインド映画ブームに袖触れ合うことはなかった。
なので、学生時代に見たサタジット・レイ作品以来か。

インド映画「THE JAPANESE WIFE」をポルトガル語字幕版で、ブラジルで観る。
書きもの続きでけっこうテンションが上がり詰めだったので、少し冷却ということで。

きちんと日本ロケもしていて、日本人の女優も登場。
リアリティの乏しいストーリーなのだが、それをこれだけ見せてしまうのがあっぱれ。

日本のシーンなど、小津の影響もあるのだろう。
げに、不思議な味わいの映画。
日本では九州の映画祭で上映されたらしい。

日印凧合戦のシーン。
ヒロシマ、ナガサキなどの言葉が出てくる。
糸にガラス片をまぶした殺人ダコで、ブラジルの知人のご子息が亡くなっているので、これはいたい。


11/11(金)記 自動車時間

ブラジルにて
小説家の松井太郎さんのお見舞いに行く。
松井さんは、94歳になられた。
会話内容のヴォルテージは、けっこう高い。

自動車で片道1時間以上はかかる。
車の運転は、わずかの不注意でこちらが殺人も犯すことになるので、かなり神経がぴりぴりする。
リラックスするために軽くアルコールというわけにもいかない。

家族のこと以外で転がしてきた、ブラジルでの膨大な運転時間を想う。
撮影時間の、何倍ぐらいになるだろう?


11/12(土)記 ファヴェーラの海

ブラジルにて
一面に拡がるファヴェーラ。
起伏のある地形で、よくわかる。
まるで、海だ。

ファヴェーラとは、スラムのこと。
サンパウロ市南部。

訳あって、この地域の課外児童教育活動を見学。
サンパウロの美術館やギャラリーを回っていたのでは見えてこない周縁・底辺。

メガロポリス・サンパウロはこうした周縁・底辺の生産と消費があった成立しているのだな。


11/13(日)記 二日酔い日記

ブラジルにて
まことに二日酔い。
昨日は日中、ちょっと緊張する撮影あり。
プライベートでとてもうれしいことあり。

その後、昨晩は気のおけない一家と会食。
日本語・ポルトガル語・英語がちゃんぽんで飛び交い、アルコールもちゃんぽんで。

ビジュアル系本でも読もうと思うが、眼球の痛みさえあり。

それでも家族の夕食の支度はしたぞ。

横になっていたら横になっていたで、ちょいとしたアイデアも浮かぶ。


11/14(月)記 この期の停電

ブラジルにて
サンパウロは未明から雨。
一気に訪日時使用のDVD焼きにかからんとする。

と、プチ停電。
さらにノイズの出現。
何度もやり直し、どんどん「おしゃか」のDVDが増えていく。
霊障か?

して、本格停電。
DVDどころかPCもアウト、もはやこれまで。
窓下のアヴェニーダの信号も消えている。
手回しラジオで情報収集。
この雨で相当のトラブルが生じている模様。

書き損じのDVDの利用法はないもんかしらん。
古いVHSテープもだけど。


11/15(火)記 空港間移動

ブラジル→
未明よりDVD焼き作業フィナーレ。
諸々おかたづけ。

夕方出家。
最寄りのコンゴニャス空港までタクシー。
コンゴニャスからグアルーリョス国際空港までシャトルバス。
祭日のため、交通はいたく快適。
所用34分だ。
ちなみに両空港の距離は、40キロメートル強。

羽田と成田の距離は約90キロ。
東京駅と成田空港で約80キロ。

サンパウロは、その半分足らず。
しかしわがサンパウロの空港は、両方とも電車でアクセスできない状態のまま。

アメリカンエアラインは国際線のアルコールドリンクもカネを取るようになったぞ。
つかの間の断酒にちょうどいい。


11/16(水)記 日輪のおごり

→アメリカ合衆国→
ニューヨークで約6時間のトランジット。
日本航空機上の人となる。
機内映画のパンフレットをわくわくと開く。

おう、「日輪の遺産」、見たかったぞ。
第二次大戦末期、日本軍は極秘裏に占領国から奪取した財宝を、女学生たちを使って隠匿しようとしたというお話。
末期的となった異常な国と組織、過酷な状況のなかでまっとうに、健気に生きようとする個人。
原発事故をめぐる同時代の祖国とオーバーラップしてしまう。
JALのおねーさまたちの眼前で、つい涙。

映画のお話は2011年にもつないでいるのだが…
もともとフィリピンからマッカーサー親子がせしめたという財宝を、今日の日本人の登場人物たちの誰もフィリピンに返すべきという主張をしない、そうした発想も浮かばないらしいことがグロテスク。

我々がクリスマスで誕生日をお祝いするイエスも言っているではないか。
「シーザーのものは、シーザーに返しなさい。」


11/17(木)記 成田素描

→日本
日本時間16時を過ぎた。
成田空港は、ちょうど日没を迎えようとしている。

リムジンバスの待ち時間に、到着ロビーの売店2軒をのぞいてみる。
鉄道時刻表が欲しかったが、さすがに見当たらない。
と、透明容器の弁当が店頭に積まれている。
値段を見ると、500yen、ワンコインではないか。
もう一軒では400円台の弁当も。
かつては空港でこんなお気軽プライスの弁当を見たことがない。

リムジンバスの地上スタッフのお辞儀の角度、ポーズ時間はこれまでより増した観あり。
日本航空の客室乗務員のサービス度と反比例している傾向を感ず。

リムジンスタッフの腰の低さには、恐縮するほど。
ガイジンさんたちには、かなりのインパクトだろうな。


11/18(金)記 君の管

日本にて
訪日前にART LAV OBA( http://artlabova.org/ )のヅル主幹から、映画「ちづる」が横浜で上映中で、OBAさんでちづるさんのアート展を開催中と教えてもらった。
来日翌日というのは、時差ぼけで体調ははちゃめちゃである。
正規料金を支払って映画館で眠ってしまうのは、悔やんでも悔やみきれないというもの。

思い切って横浜に遠征、アサイチの回に挑む。
眠気どころか、たっぷり銀幕のなかに引き込まれてしまった。
「ちづる」は自閉症と知的障害を伴なう妹を、大学で映画を学ぶ兄が撮影した記録。
いわゆるセルフドキュメンタリー、障害者モノである。
少なからぬ本数の、その手を見てきた覚えがある。
正直、不快感、怒りすら覚えたものもある。
しかし「ちづる」はどうも違う。
冒頭のエピソードから、引き込まれてしまった。
この違いは、なんなのだろう?

OBAさん(シネマジャック&ベティ階下)に寄らせてもらい、ちづるさんの作品を鑑賞。
これがまたいい。
ヅルさんがレディース腋毛シェーバーのようなビデオカメラを持ち出し、愚生のコメントを撮影してYouTubeにアップしてもいいか、と聞く。
断る理由もない。
まだ考えもまとまらず、たいした話もできなかったが。

日付けも変わらないうちにホントにアップしてあり、驚く。
これに登場するのは、本人が知るのは初めて。
http://www.youtube.com/watch?v=A3X4WXDBiWI
そう悪くもないではないか。

何年も前に撮影された、誰が撮ったのかも知らない自分の映像を最近みて、けっこう自己嫌悪を感じていた。
そもそも本人が聞いても何をどういう文脈で言っているのか、わからない。
見る人間は、取材者・編集者より発言者に嫌悪を感じるだろう。

今回のヅルさんのは、まるで別物。
そのあたりが「ちづる」の心地よさと通じそうだ。


11/19(土)記 あもれいら、おわりのはじまり

日本にて
ひさしぶりに大久保のビデオスタジオ、ビデオウォークさんへ。
道をまちがえちゃったり。
いよいよ「あもーる あもれいら」完結編の仕上げ作業。
いろいろな思い出と思いがよぎる。

業務ビデオ最前線の最新情報・知見が面白く刺激的。

新たな題字は、想定以上かも。
ナレーションと現地音のバランスが気になるが、まあとりあえず。
DVD版受け取りは明日に。

さあ今晩はよい子のオールナイト上映だ。


11/20(日)記 読経で夜明かし

日本にて
昨晩より西荻窪APARECIDAで「アマゾンの読経」終夜上映。
大雨警報で人々が出控えるなか、店主夫妻と拙者の3人での鎮魂上映になるかと思いきや。
ほどほどの密度の参加者に恵まれ、感謝。

何よりも僕自身にとって大きな気付きをいただく上映となった。
終了後にお店でいただいたカイピリーニャとフェイジョンスープは、身心にいたく沁みた。

マンガ喫茶で時間調整とPC作業。
ふたたび大久保のスタジオ。
いくつか所用をたしなみ、明日未明からの列島巡礼の準備。
複数の場所を回るので、上映素材と資料、土産類など漏らしがないか気がかり。


11/21(月)記 りくつな上映会

ブラジルにて
未明の街をガラガラと荷物を引きずり、目黒駅へ。
長岡駅で日本海側の冬の冷気を思い知る。
先方列車の故障で、金沢駅着は30分の遅れ。

はじめての人たちとの出会い。
日経新聞の竹林師の伊藤明瑞についての記事を読んだ金沢の書道教室の人たちの発願にこたえた「明瑞発掘」上映会。

せっかくなので、金沢の近くが舞台のひとつとなる「60年目の東京物語」も併映。
大喝采をいただく。

金沢弁で「りくつな人」と評していただいた。
理屈っぽい人か、と想像。
しかし独自の意味があった。
ネット上でも金沢弁の「りくつな」は少なからぬ人たちが取り上げている。
「面白い」「気のきいた」「うまいことできてる」「かしこーい」「じょうずー」ぐらいの意味のようだ。
「理屈:理(ことわり)にかなった、理想的な」ということだろうか。

ポルトガル語でもlegalという言葉があり、これは英語とも重なる意味あいがある。
法にかなった、がベースになる言葉。
サンパウロあたりでは口語で「いいよ」「ステキ」ぐらいのノリで、けっこう使われている。

人々にとって望ましい「理」「法」にある人。
すばらしいではないか。

「すばらしい世界旅行」は「りくつな世界旅行」か。
まことにりくつな出会いと上映。


11/22(火)記 商店街キャッチ上映

日本にて
金沢の目覚め。
昨日の上映に来てくれた人の縁で、思い切ってここに行ってみる。
http://www.nishidatetsugakukan.org/
西田幾多郎記念哲学館。
駅から道に迷うが、そのおかげで変わったものに出会えた。
墓場鬼太郎についてはある程度の教養を修めているつもりがあるが、西田幾多郎については受験程度の知識しかなかった。
これは表現者として、在外邦人として恥ずかしいことと思い知る。
まる一日の行程をみたいスポットだ。

上方へ。
大阪大学近くの石橋商店街。
この商店街立ち上げのプロジェクトと聞いていたので、シャッター街を想定していた。
ところがどっこい、活気たっぷりの生活空間だ。
商店街の一角での上映を頼まれた。

これは驚いたが、オープンスペースでの上映だ。
上映中に道行く人にスタッフが声をかけて呼び込むという見世物形式。
ストーリー性のあるお話を、最初からじっくり見ていただきたい通常の岡村作品上映の対極。
先週、荻窪で見かけた、ちんどん屋さんがオーバーラップ。
ちんどん上映か。
通常は鎮魂上映。

いくつか皿は持参していたので、急きょプログラムを変えていく。
及第点以上の成果はあげたかと。


11/23(水)記 大阪懐徳

日本にて
奇しくも今日までの岸田劉生展を見ておこうかと思った。
しかし午前中に打ち合わせが入っているとのことで、断念。

大阪は、モーニングサービスありの喫茶店が多い。
石橋商店街をしばらく歩き、箕面川畔の2階という絶妙のシチュエーションの喫茶店を見つけた。

お店はいい感じなのだが・・・
隣のテーブルに着いたサラリーマンが煙草を吸い始めた。

ブラジルでは禁煙・分煙が進み、まことにしばらくアカの他人の煙で不快な思いをさせられることがなかった。

男の喫煙は一本では終わらず、耐えられずに店を出る。
他人をケムに巻くのは、こっちの領分だぞ。

祝日の大阪大学。
カラスの生態観察にはもってこいだ。
学生層を想定したトークとメッセージを考えていたが、いらっしゃるのはご年配の方たちばかり。
少しトーンを変えようかと思っていると、時間ギリになって学生風のが集まりだした。

想像以上の人の入り。
人が多すぎて、しかも設置スクリーンの位置が低く、字幕が人頭でさえぎられてしまうのが残念。
アンケートには、ぎっしりと書き込んでくれた人が多し。
こっちのメッセージは想像以上に響いたようだ。

いい寄り合いとなった。


11/24(木)記 明瑞・あもれいら

日本にて
未明に大阪を発つ。
新大阪のコインロッカーに大包を置いて一路、山口へ。
龍昌寺伊藤明瑞美術館を開館後、初めて訪ねる。
想像以上のすばらしい空間。
個人レベルでここまで実現するとは、驚異のひと言。

はしるはしる関西に戻る。
アモレイラの保育園を創設した故マルゴット神父ゆかりの人と場所で、「あもーる あもれいら」第三部『サマークリスマスのかげで』史上初披露。
万感の思い。

友のアドバイスもいただき、少し仕上げの手直しをすることを決意。
カネもかかるけど、天下の周りものだ。


11/25(金)記 グスタボの至福

日本にて
見つめれば、見つめる程、物の存在が切実に映り超現実まで見えてくる事がある。そこまで実感し、感動を起こす精神の繊細さをもって初めて実を写せるのではないだろうか。習い覚え、慣れ親しんだテクニックだけに頼って機械的に描かれた画面に実が宿るはずはない。
磯江毅


兵庫尼崎から新大阪を経てまず京都へ。
大葛篭をコインロッカーに入れようと駅内を彷徨。
見事にひとつも空きがない。
これでも世界的観光都市か。

しかたがないので、がらがらと奈良まで引きずっていく。
シニアのアミーゴが強く勧めるアート展を見るため。
「磯江毅=グスタボ・イソエ マドリード・リアリズムの異彩」
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_itemid-71445.htm
このページをみただけで、ぶったまげた。

至福の業。
写実、リアリズムについて再考・洞察せざるをえない。

帰路、京都で友人と落ち合う。
ツーカーで磯江を讃え合う。
この作家を強く勧めてくれる友、そしてツーカーで礼賛しあえる友もいる幸せ。
旅の疲れもぶっ飛ぶ。


11/26(土)記 地方紙ハシゴ

日本にて
今日はプライベートの用事のハシゴ。
祐天寺を発ち、レイルパスを駆使して新横浜から山形へ。
「神奈川新聞」「山形新聞」と一日に2紙も地方紙を購入できる小さな喜び。
今日の切り取り。
福島の友人を訪ねた作家の田口ランディさんのエッセイから。

「みんなが逃げろ、逃げろと言う。逃げなければいけないのはわかっている。でも、私だけが逃げてもいいのかなって思う。この森の木々も、サンショウウオも、トンビ、それから土の中の虫や、犬や、猫や、野ネズミ、イタチ、みんな私の友達だった。その子たちを残して人間の私だけ逃げていいんだろうか、って思う。他の生き物たちが助けてくれたからここで農業をやってこれた。人間だけじゃ生きていけないのに、私の都合だけで逃げるなんて、ひどいと思えて」
田口ランディ「秋の森に立つ」神奈川新聞2011年11月26日付



11/27(日)記 水戸でダブルダブルヘッダー

日本にて
私の巡礼と旅は続く。
上野駅構内におしゃれで知的、スペースたっぷりの店舗がいくつも登場しているのに心地よい驚き。
変わったぞ、上野!
常磐線の特急「ひたち」は新幹線以上に心地よい。

まずはホテルに荷物を置き、茨城県近代美術館の「ウルトラマンアート展」。
強行軍で今日が最終日の茨城県立歴史館の「妖怪見聞」展をハシゴ。
これは両方同時に見ておいてよかった!
ゴモラの頭部と鬼のミイラの頭部を時を経ずに目の当たりにする贅沢さ。

して水戸漫遊の本来のミッションは、ダブル上映とトーク。
茨城県民大学連続講座「震災から学ぶ」のひとコマと、今回で8回目と末広がり、末広町の手打ちそば店にのまえさんでの監督出前上映講座。

ライブ上映は、いわば格闘技。
ダブルヘッダーはけっこう疲れたが、心地よい疲労。


11/28(月)記 土浦ゆ

日本にて
にのまえ店主夫妻と、土浦方面遠足。
面白すぎ。
土浦に散見する土蔵は東日本大震災の傷跡を露出したままで、いたましい。

櫻田博さん主幹の南米系児童の補習塾「K&S」を見学。
「教育とは」から「人間いかに生きるべきか」までの問題の凝縮をみる。
近所のネパール人経営のお店で会食。

盛り沢山だった。


11/29(火)記 九十九タイピン

日本にて
東京の実家にて、朝から小包のパッキング、添え状書きなど。
あっという間に午後になってしまう。

夜は横浜線大口駅のステーキハウスガウシャさんに、最近入籍した若い友人夫妻をお招きした。
余裕をたっぷり見た時間で長津田から横浜線に乗ろうとすると。
中山駅での人身事故で、ダイヤは大幅に乱れ。
そもそも電車が来ない。
ようやく来た電車は、乗客でごった返す。
30分以上の遅れ。
線路途中で停車を繰り返す電車のすし詰めの車内。
空調も不調で蒸し返し、窓も開かない。
このまま閉じ込められた状態が続くかと考えると、気が変になる。

マスターもカップルもお待たせしてしまった。
楽しく酒池肉林。
実家に帰ってショルダーバッグに金メッキのネクタイピンが付着しているのに気づいた。
お店で?
おそらくあの電車の中だろうな。


11/30(水)記 銀幕のをちこち

日本にて
神奈川から埼玉へ。
拙作「アマゾンの読経」の登場人物と観客の出会いをコーディネイト。
こういうことのできる喜び。
さああと東京3箇所で上映だ。


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