12月の日記・総集編 「ありがとう すばらしい めぐみを」 (2012/01/01)
12/1(木)記 まぶしい笑顔
日本にて オカムラの東京でのホームグラウンド、西荻窪APARECIDAでの忘年上映。 「ブラジルの教育最前線から」。 店主Willieさん、女将のくみさんに「きみらのゆめに」をご覧いただければ満足、ぐらいのノリで挑む。 Willieさんがなじみの音楽系の人たちを強く誘ってくれて、はたまた故・佐藤真監督の門下映画人ふたり、「アマゾンの読経」のナヴィゲーター等々、多彩な人たちが寄り合ってくれた。
くみさんが「きみらのゆめに」に寄せてくれたコメントから。 友人や両親、先生方を、愛してる愛されているという実感?を持って生きる子供達の笑顔がまぶしかったです☆
12/2(金)記 東京駅でグスタボを想う
日本にて 東京駅周辺には4館の美術館があるのだな。 4館巡礼のマップまである。 そのうちの1館へ。 事前にコンビニで前売り券でもないかと2軒ほどハシゴして店内の端末をいじるが、なし。
大人1000yen也。 この展示はオンラインの紹介記事の写真にたまげたのだが… いまひとつ実物はぴんとこない。 そもそも抽象画に乗れない。 奈良でグスタボ磯部の究極の写実に魅せられてしまい、なおさら。
退館後、東京駅に向かう途中に金券屋あり。 いま見てきた展示の入場券が450円で売っているではないか。 激しい喪失感。 東京駅地下のウルトラマンショップで傷をいやす。
ブラジルから担いできたノートPCが起動しなくなってしまった。 再びネットカフェ通い。 明日明後日と上映は続く。
12/3(土)記 縄文とクレソン
日本にて 冬の雨。 実家から1時間ほど歩く。 びしょ濡れ。 お見舞いを一つ済ませてから、新橋へ。 「大アマゾンと縄文」をテーマにトークと上映。 主催の「縄文人になろう会」のスタッフが用意してくれた心尽くしのランチがありがたくもおいしい。 神奈川の縄文遺跡のある公園に帰化したという、紫がかったクレソンがよろしい。
青森の是川遺跡でも、縄文時代以来の湧水の周囲にクレソンが繁茂していたな。 ブラジルですき焼きにクレソンを入れるのを教えてもらったのを思い出した。 さあ明日で今年の日本上映はおしまいだ。
12/4(日)記 国際水
日本にて 昨日今日と渋谷の国連大学で国際水映画祭。 ぜひ観たい作品もあるが、昨日は別に自分の上映があり、今日もプライベートの所用がある。 残念だが、国際水映画祭の特別企画の岡村お楽しみ上映とトークの分科会のみの参加。 メイン会場で有名どころの作品上映が目白押しなので、こっちは誰も来ないのではという不安もあり。
ところがどっこい。 そこそこの人数で始まり、途中から他の上映がはねた流れでの来場者が集い、けっこうな人数に。 メニューは「アマゾンの大逆流ポロロッカ」「アマゾン新水俣病・第1作」「ブラジルのユーカリ植林と日本」の3本および質疑応答とする。
いずれも311以降はさらに重量を増した感あり。 受け止められかたも、かつてよりずっと重くなった。 これにて2011年祖国公開上映は、おしまい。
12/5(月)記 ワードとサーチャージ
日本にて ノートPCがお釈迦になったため、ネットカフェ通いが続いている。 ブラジルに持ち帰って修理を考えているが、NGだった場合、原稿執筆等に差し障る。 思い切って新機購入を図る。
出先から渋谷の家電屋に。 ほんの数万のノートPCがあると聞いていた。 しかし店員に聞いてみると、超安値のはワードなどがインストゥールされていないというではないか。 ワードのソフトは1万5千円とのこと。 近隣国製のワードなしにこの金額を足すと、日本メーカーのとさして変わらないではないか。
まるで国際航空運賃のサーチャージだ。 先日、日本-ブラジル往復10万円ちょっとという格安航空チケットを調べた。 サーチャージなど諸経費を加えると、四捨五入すると20万円になる。
世の中、そうボロい話はころがっていないか。
して、決死の覚悟でノートPC新機を購入。 懐がすっかり軽くなり、今後を思うとめまいがする。
「明日は、明日自体が思い煩う。」 もうすぐ誕生日のイエスの言葉。
12/6(火)記 「超エコ生活モード」
日本にて 電車での移動時間がここのところ、ばかにならない。 PARC講座で出会った快人・小林孝信さんの新著「超エコ生活モード 快にして適に生きる」(コモンズ) http://commonsonline.jugem.jp/?eid=105 を読了。
あちこちに線引き。 小林さんが60有余年の人生で編み出した生活ワザの数々。 よく人の話を聞き、よく本を読んで、よく討論して考えた知と実践の結晶がわかりやすく書かれていて、ありがたい。
「ふつうの人間であっても、自分の頭でよく考え、危機を感じとれば、将来の人びとと現在この地球上で生活を営む多くの人びとのため『ジャンプ』できる」 「バーチャルに逃げるな!バイオに楽しめ!」 「みんな電化のお化け屋敷に住んでいたみたい。太陽さんと地球さんから直接届けられる贈り物をもっと使わないと」 等々。
快人のナゾがだいぶ解けた。 そして新たなナゾも生まれ…
12/7(水)記 サンマからアートへ。
日本にて 目黒に、アートあり。 日本最後の一日、残務は山積み。 あえて次の機会のなさそうなミュージアムの特別展を三つハシゴ。 うち、ふたつは目黒区内。 歩いていく。
まずは現代彫刻美術館「次代を担う彫刻家たち展」(12月18日まで!)。 http://www.museum-of-sculpture.org/ 区内で見かけたポスターの彫刻が気になり、思い切って覗いてみた。 屋外展示、屋内展示、すべてがすばらしかった。 これまで彫刻にはイマイチ食指が動かなかったが、認識を改めた。 目黒にこんな誇らしい文化スペースがあったとは。 こっちもようやくそのレベルに少しは付いて行けるようになったか。 かつての縄文遺跡の地に、一僧侶が個人の力で日本の現代彫刻のミュージアムを築いたというのがすごい。 これからは訪日の度にお邪魔しよう。
ついで、目黒美術館「DOMA秋岡芳夫展」(12月25日まで!)。 http://mmat.jp/exhibition/archives/ex111029 デザイナーの展示というだけではこれも食指が動かなかったが、秋岡氏が目黒区中町在住というのが気にかかって。 これはまた、とってもよかった。 今日の諸々の深刻な問題の処方箋を、秋岡さんは40年前にすでに提示していた。 今回、復刻された著書の副題「消費者をやめて愛用者になろう!」あたりで十分にうかがえるだろう。 油面小学校の誇りだ。
いずれも知らなければ、たいへんな損失だった。 今回、目黒でサンマはスーパーで買った蒲焼きぐらいしか食べなかったけど。 サンマ三昧より、アート三昧でこころは満腹。
12/8(木)記 修羅場のアメリカンとCOLOMBIANA
日本→アメリカ合衆国→ 午前6時、祐天寺を出家。 成田からニューヨークまでは日本航空。 「アマゾンの読経」を二度上映できるぐらいの時間のトランジット。
「ご破算」のアメリカン航空に乗り継ぎ。 あいかわらず日航に比べるとサービスは雲泥の、泥。 日航では、けな気な大和撫子の客室乗務員が乗客の無粋な機内持込み荷物の収納をすすんでこなしてくれる。 離着陸に際しては、何度も上部の棚が確実に閉まっているかチェックしている。 アメリカンのセイタカアワダチソウたちは、これを一切行なわない。 8割がたの占有率のエコノミー席では、修羅場である。 こっちは優先登場の特権がありながら、自席にたどり着くと、付近の棚はひと通り荷物群で埋まっているではないか。 奇跡的に残っていた近くの棚を開けると、こちらが荷物を入れる前に近くにいたブラジル人の若いのが挨拶もなく自分の荷物を投げ込んできて、知らん顔。 弱肉強食の動物界以外でもこんな事態が起こるとは。 今度は横で、ブラジル人の若いねーちゃんが棚にあったカバンを動かそうとしたことで、持ち主のブラジル男が怒鳴り、ののしり出した。 オー、メウ・デウス。
アメリカン航空の泥中に、拾い物あり。 機内映画で見つけた「COLOMBIANA」。 Olivier Megaton監督、「アバター」のヒロインZoe Saldanaが主演。 コロンビアのボゴタで両親を犯罪組織に虐殺された少女がアメリカにわたり、復讐を図るというお話。 主人公の「ソルト」のアンジェリーナ・ジョリーばりのアクションがカッコイい。 音量が低く日本語対応していない機内バージョンでも十分、楽しめた。
(後日記)ネットで調べてみると、日本公開の予定は今のところないようだ。 コロンビア女じゃ、売れないだろうというさもしい日本の興行者の判断か。
12/9(金)記 無罪放免
→ブラジル 心配だった二個の荷物はぶじサンパウロに到着。 今回は家庭用たこ焼き機から新ノートなどの電気製品、そして世界を脅かす核汚染国の食糧品をお土産等で通常以上にいただいたのを持参している。 税関で開けられると非常にややこしくなる。 最後までひやひやで快適な旅どころではなかったが、無罪放免!
どっと疲れが出る。 しばらくは、でれんとさせてもらおう。
12/10(土)記 夜明けのマンチャ
ブラジルにて 今回、日本で魅せられたグスタボ・イソエの画法はスペインでマンチャ(しみ、汚れ)と呼ばれるものとのこと。
時差ぼけで未明に覚醒。 見果てぬままだった映画「ラ・マンチャの男」のDVDを鑑賞。 深い感動。 手元のスペイン語辞典を開くと、マンチャには「不名誉」の意もあり。
高校時代、同級生どもに利用されて裏切られて、戯作者として自宅謹慎に追い込まれた過去を思い出す。 今となっては、名誉なことだ。
ソフィア・ローレンがすばらしい。 ピーター・オトゥールがドン・キホーテに扮する際のメイクが、黒澤の「影武者」や「乱」の仲代達矢の奇矯なメイクをほうふつさせる。 映画好きの黒澤は「ラ・マンチャの男」を見ていたことだろう。 この映画にあやかって、道化性を表現したのだろうか。
森下妙子さんの訃報を、お孫さんからいただく。 享年九十六。 午後になり、お弔いの場所と時間が確定して教えてもらう。 明日に備えよう。
12/11(日)記 「ありがとう すばらしい めぐみを」
ブラジルにて 森下妙子さんのご遺体は、荼毘にふされるとのこと。 火葬場まで、自動車で行ったことがある。 しかし、道をひとつ間違えるとややこしいことになる。
どうしたものかと地図をながめ続ける。 と、最近、開通したメトロの終点駅が僕から見ればさほど遠くないことに気づく。 歩くか。
告別式の仕切りは、孫の世代。 森下さんの90歳の誕生パーティや、「憩いの園」での拙作上映会で出会っている。 享年九十六は、大往生ともいえる。 そもそも、列席している親類はとても気持ちのいい人たちばかり。 森下さんの、血と徳を感じざるを得ない。
セニョールが自分たちより知っているだろうから、告別式の聖歌を選んでくれと言われる。 心当たり、2曲あり。 司式をしてくれる女性牧師が歌詞をひらがなとローマ字で用意してきてくれた2曲と、同じではないか。
彼女は森下さんとシャローム:パス:平和をテーマに説教。 ようやく、森下さんの逝去を実感し始める。
帰路。 さすがに地下鉄の駅までの歩きは僕だけだと思っていた。 往路は駅から早歩きで20分強、思ったより近かった。 日曜の日中だし、幹線道路をガンガン走る車がちょっと恐ろしい程度。 おや、おそらく七十代に入っている牧師夫妻も歩いているではないか。 途中の駅まで、「赦し」から東チモール問題まで、話は尽きない。
森下さんは、まさに妙なる人だった。 僕を人間にしてくれたといえるかもしれない。
12/12(月)記 夏は来ぬ2011
ブラジルにて 「あもーる あもれいら」第三部『サマークリスマスのかげで』手直し作業に着手。 昼前、子どもの送迎で車を起動。 特に問題なくエンジンもかかり、やれやれ。
おう、街はなかなかの暑さだ。 この数日が涼しすぎた。
ダウンタウンのあちこちにクリスマス飾りとサンタクロース像。 熱帯・亜熱帯の夏にあの赤白の厚着とひげ面はまことに暑苦しい。 ブラジルの国旗カラーの涼しげなサンタはいかがか。
12/13(火)記 ブラジル的日常
ブラジルにて 「あもれいら」完結編の手直し作業の合い間に。 ノートPCが修理できるか、メガネのフレームの交換などで動く。 都市生活をして生きているだけで、どんどんカネが出て行くことを実感。 入ってくる当てはないのに。
12/14(水)記 映像文化のさいはて
ブラジルにて ブラジル日系社会のイベントの中心とされるホールに映画を見に行った。
いくつかの入口は黒いカーテンで覆われている。 しかし上映中に入ってくる人々も出て行く人も僕が観察していた限り皆、カーテンを開けたまま立ち去ってしまい、まるで閉めようとしない。 プロジェクターの光源は今日の日系社会のようにか弱く、暗い。 ただでさえ暗く見づらい画面に外光が射して、ますます見にくくなる。
ホール内前方では、複数の人間が上映中にけたたましい呼び出し音の携帯電話を堂々と受けている。 映画の音量に負けじとばかりの大声を張り上げて電話に応じている。 オレはこんな映画を見ているどころではない多忙な名士なのだぞ、と誇示したいようだ。 誰かがひき肉系の食べ物を持ち込んで食べている。 強烈な匂いが漂ってくる。
これはひどい、のひと言。 ホールがぼろぼろ、プロジェクターの性能も悪いのは我慢もできる。 しかし映像文化と作品を大切にする気があるのなら、観客を教育することを放棄してはいけない。
人の振り見てわが振り直そう。
12/15(木)記 ブラジル車検
ブラジルにて 不肖岡村、日本で自動車の免許こそ大学卒業時に合宿制で取得した。 しかし日本で自動車を所有したことがないので、日本のいわゆる車検というものがよくわからない。 今回、これを書くに当たって検索してみて「車検」とは自動車検査登録制度の略称と知ったが、それ以上はあんまりわからない。
さて、ブラジル。 サンパウロ市では現在、自動車の排ガス規制をクリアしているかどうかの年に一度の検査が義務付けられているが、それ以外の「車検」はない。 まさしく自己責任。 ブラジルではそうとうヤバそうな車も平気で公道を走っている。 だが路上でエンコした時のあの絶望感は、あまり人生で何度も味わいたくはない。
最後にメカニックに見てもらったのが、今年の1月。 訪日が続き、あまり車を転がしていないものの、予防医学の心得で見てもらう。
自動車は殺人凶器である。 そのことは映画「ちづる」にも描かれるが、登場する監督の母・赤崎久美さんの著書「ちづる 娘と私の『幸せ』な人生」(新評論)に詳しい。 自動車事故は、罪なき被害者とその家族らにどれだけの不幸を浴びせつけるか。
車検に加えて。 日本から担いできた新機ノートPCが我が家のADSLにつながらず、技師を呼んで見てもらう。 新機のワードは2年間限定版なのだが、最初にオンラインでライセンスを得なければならないというややこしさ。
ブラジルで最低限、車を動かして、原稿を書くためのインフラを整えるまでのはるかなる道のり。
12/16(金)記 日本語新聞の誤りを正す
ブラジルにて 本16日付けサンパウロ新聞を見て、唖然。 「『勝ち負け抗争』証言映画」という無署名記事に、僕の名前とコメントが書かれている。 そのなかに映画「南米の声」とあるのは、明らかな記者の間違いと、手抜きである。 僕は「南米の広野に叫ぶ」と申し上げた。
14日に「闇の一日」という映画の上映が行なわれた。 終映後、顔見知りの同紙の若い記者に感想を聞かれた。 初対面の老人を暗殺した主人公に共感がもてないこと、そして証言映画と銘打ちながら、実写ニュース映像、新聞記事の映像にフィクション映画「南米の広野に叫ぶ」の映像をちゃんぽんにつないでナレーションや証言の音声をかぶせて、フィクションの映像を使用していることのことわりがないというのは僕には御法度、というようなことをお話しした。
記者さんの勉強不足がうかがえたので、年寄りの表現者として基本的なことを教えるぐらいのつもりだった。 しかし先方はメモも取らず、記事にしてもいいですか、といった確認もなかったので、彼のパーソナルな関心かと受け止めていた。
自分の口から出たこと、文字にしたものが公表されるのは覚悟はしている。 しかし先方を糾弾していると取られる文脈では、最低限の慎重さを期したいもの。 肝心の映画の題名を、こちらが教示しているのにメモもせず、調べもしないででたらめを記事にするのは、手抜き・御法度もはなはだしい。 自動車は凶器という話を昨日、書いたが、新聞も凶器になりうることをせめて自覚していただきたいもの。
新聞名とともに、こちらの信用まで落とされるのはかなわない。 ちなみに「南米の広野に叫ぶ」は命がけで勝ち組たちによる犯罪行為を告発した映画だといえる。 これがなんのことわりもなく、勝ち組のテロ殺人犯のエクスキューズ映画に使われているというのは、まことにいたましい。
まったく、なんだよ、「南米の声」って。 南米で日本語短波放送かなんかやってる日本人移住者の話かよ。 ますます東洋人街から、足が遠くなる。
12/17(土)記 夏の入力
ブラジルにて いやはや真夏らしくなってきたサンパウロ。 それでも風が涼しく、ありがたい。
追い込まれてきた原稿を叩いていく。 Windows7とWord2010、なかなか使い勝手がわからなく、いまのところ不便。
書いていくうちに、思わぬ展開。 小泉照男さんのことを書いていて、牛山純一御大に行きついてしまった。
さあこれからどうする?
12/18(日)記 カンブクで。
ブラジルにて 日中は建物、道路の白亜の照り返しが厳しい。 路上市に魚を求める。 クリスマス、年末が近くなる時期の常で、マグロの値段が高騰。
そもそも刺身にしたくなる魚が見当たらない。 あんちゃんがカンブクをすすめる。 安くないが、買っちゃう。 カンブク、土語感たっぷりの名前。 日本人移民が日本語名をつけ損ねた魚だ。
軽く調べる。 Sciaenidae、ニベ科か。 パナマから北アルゼンチンまで分布し、学名はCynoscion virescens。 すでに属名で和名が見当たらない。
白身の魚で、ねっとり感あり。 カルパチオ風にしてみるが、なかなかよろしいぞ。
残りは、どうしようか。
12/19(月)記 アドベントにデトックス
ブラジルにて さあ、今日は断食。 先回の訪日の上映会にいらしてくれた方々へのお礼メールをしたため始める。 クリスマス前に終わるかな?
小型ノートPC、Windows7とWord2010での原稿書き、何かと不都合が多いが、習うより慣れろか。 いま書いているものの年内収束を目指して、そこそこと登り道をゆく。
12/20(火)記 赤ひげから、赤い大地に
ブラジルにて 昨晩から、DVD&BOOK版・大黒澤「赤ひげ」を観る。 今朝、終了。 日本で過労や病にも倒れなかったので、自分へのご褒美というやつで奮発して買った。 昨日、原稿がそこそこはかどったので、鑑賞を許した。
はじめてみたのは、高校3年の時。 僕の通っていた都立高校は、高校に付属しているような目立たない大学の付属高校ということになっていた。 その大学で、「赤ひげ」の上映があったのだ。 当時、この作品を見るチャンスがあったのは、この時ぐらいだったと記憶する。 そして、激しい感動。 人を変えるほどの。
おそらく、それ以来、観ていない。 ふたたび向き合う何かが、なかなか。 それでいてこれだけディテールまで覚えているのは、僕にとって奇跡的。
新出去定と、佐々木治夫神父が重なる。 小石川養生所は、フマニタスか。 根岸明美扮する、おくにのカミングアウトは「あもれいら」完結編の少女のシスターへの告白に。
黒澤の映画のように生きたいと願った映画少年時代。 いま、赤い大地シリーズをひとまず完結させんとす。
おっと、まだ宿題が残ってたか!
12/21(水)記 日本のあの夏、ブラジルのこの夏
ブラジルにて 扇風機、いやさウチワでも欲しい! バルタン星人のウチワはどこだ?
今日もブラジル被爆者平和協会の森田隆さんを訪ねて、追加質問。 買い物を抱き合わせてうかがえる、至近距離なのがありがたい。
内容は、重い。 昨日今日ブラジルに来たような、表現とマナーの基本もカンケーない輩たちと同様のものなら、書かない方がいい。 凶器と名刀は、紙一重か。
ヤマ場。
12/22(木)記 うだる街で
ブラジルにて 東洋人街に出る。 ふだんは週末に開かれる手工芸品の露店が出ている。 針金細工のドラゴンに感動、とりあえず購入。 次回訪日用の土産が早くも溜まってくる。
DV屋をのぞくと、小津、黒澤作品の値段が手ごろになっている。 迷った末、黒澤のを1作購入。 少し原稿が進んだら、観させていただくか。
12/23(木)記 松井さんを訪ねる
ブラジルにて 車を出す。 諸学校は休みに入り、故郷に戻った人、旅行に出た人の多いシーズン。 車両の量は通常の2-3割減ぐらいか。 しかしかえってトンデモな運転をするヤツ、動きの読めない歩行者もいて油断はできない。
移民小説家の松井太郎さんを訪ねる。 お元気そうで何より。 用事を済ませるつもりが、用事を増やしたかも。
12/24(土)記 どん底の朝
ブラジルにて 未明。 昨日買ったDVD、黒澤の「どん底」(1957年)を鑑賞。 これを劇場で見たのは10代の時だった。 オールナイトの中の1本で、ほとんど寝てしまった。 イントロのゴミ捨てと、ラストのばか騒ぎぐらいしか覚えていなかった。
すごい映画ではないか。 まさしく名優たちの競演。 左ト全の老遍路は、白眉。 黒澤映画のよきエッセンスの凝縮といった感じ。
折りに触れて観直し続けたい。 それにしても「赤ひげ」の杉村春子や、この「どん底」の山田五十鈴演じる悪女が、何か身近な感じ。 ブラジルのコロニア(日系社会)での知り合いのような気がするぐらい。 まあこっちのコロニアには悪男悪女はファルタ(不足)しないから。
早朝から強烈な作品を観ると、一日中、後を引いてしまう。
12/25(日)記 市なき聖日
ブラジルにて クリスマスの祝日と日曜が重なる。 店の数は少なくても、ある程度は出ていると思った。 しかし日曜の路上市は、一軒の露店もなし。 選挙の投票日には市がたたないのは知っていたが。
午前中、車を走らせると、ふだんの日曜より3-4割は交通量が少ない感じ。 まるで地方の小都市なみだ。 夕方はふだんの日曜より交通量が多い感じ。 明日からまた日常という市民が少なくないのだろう。
一年中、これぐらいゆるいといいんだが。 と毎年、思うこの時期。
12/26(月)記 レンブラントVSブラックオックス
ブラジルにて 息子と祖国2005年公開版の「鉄人28号」実写映画をDVDで鑑賞。 おお、ブラックオックスのメタリックなボディに周囲の映り込みが! 昨年、遭難したオランダにて。 アムステルダムの国立美術館でレンブラント系の画家の作品をけっこう見ることができた。 彼らが甲冑や銀のポットなどへの映り込みまで描き込んでいるのに感激したのを思い出す。
映画では後出の鉄人28号のボディにも、もちろん映り込みが。 鉄人とブラックオックスがぶつかり合う時の激しい金属音がまたいい。
いくつかツッコミも入れたくなるが、ま、いいか。 また蘇れよ、鉄人。
ふと思い出す。 来年2月公開予定のドキュメンタリー映画「テレビに挑戦した男 牛山純一」のスタッフから、この作品にも証言をそえた木村哲人さんが亡くなったと聞いた。 もっといろいろとうかがっておきたい人だった。
12/27(火)記 年の瀬プロジェクト
ブラジルにて さあ先の訪日のお礼メールはひと通り終えたかな。 あとは年賀カード、何人かに約束したDVD焼きと発送。 メインは年内締切りの原稿。 みておきたいドキュメンタリー映画があるが、つい腰が重くなる。
さっそく、お礼メールへの返礼メールも。 これがあるから、やめられない。
12/28(水)記 化けるクローム
ブラジルにて なんだかいつの間にかデスクトップパソコンにインストゥールされているGoogle Chromeというの、いじったこともなかった。 わが子が、これを使うとHotmailなども速いと教えてくれる。
なるほど、早い感じ。 理屈はわからないけど。 こういうのは誰かが直接、教えてくれないとわからない。 ということでこれを使い始めていた。
なぜか時どき、日本語が文字化けしている。 エンコードしてみても改善されず。 こっちのOSがブラジル製のせいだろうか?
さあ年内に残務がどこまで片付くか。 原稿優先で、カード書き等になかなか切り替えられず。
12/29(木)記 郵便屋さんちょっと
ブラジルにて 原稿書きが、臨界状態。 されど、先に賀状をいただいてしまった日本の恩師には、せめて年内の消印でカードを送りたい。 巨艦を急反転させる感じで、すでに落手した賀状への返信書き作業モードに切り替え。
近くのポストもヤバそうなので、夕方に最寄りの郵便局まで行ってみる。 おお、張り紙に30日・31日は休みとあるではないか! 今日明日で一気に国内外へのDVD送りを片付けようと気張っていたが!
来年に持越しとは、とほほ。
12/30(金)記 多様なる郵便事情
ブラジルにて 早朝、外出する妻に道中にある小さな郵便局が開いているか念のため見ておいてくれと頼んでおいた。 電話があり、ちょうど開けているところで夕方5時までオープンとのこと。 なんと。
昨日のより大きい直営局が休みに入るのだが、まったく読めないブラジル。 急きょふたたび作業工程を変えて、DVD焼き、日本語とポルトガル語での書き込み、添え状書き、梱包、切手選び。 件の郵便局に2往復。 ブラジル国内はサンパウロからアマゾンまで、そして日本まで発送を年内に完了。 すっきりさわやか。 郵便局のサイトで書留料金を調べて、少し足りないぐらいの金額の記念切手を相手に合わせて選んで貼っておいた。 しかし郵便局での計算は、サイトの金額より安いではないか。 誠に不可解。 「あら、この切手、懐かしいわねえ。こっちの切手はここには来なかったわ。きれいねえ。」 民営化がなったとはいえ、日本の郵便局のねーちゃんとこんな会話はあんましないだろうな。
いやー、年内に済ませることができるとは。 おっと、原稿が遅れをとったぞ。
12/31(土)記 味の上書き
ブラジルにて さあ今年中に締切りと課した原稿を書き上げよう。 と、未明から空腹を覚える。 ウン10年前の試験前のにわか勉強の時みたい。
日本で買ったタイ製インスタントラーメンをゆでるか。 ペッパー味というやつで、胡椒が効き過ぎてこちらの家族にも敬遠されているシロモノ。
たしかに強い。 少なくとも、もうコショウは足さなくていい感じ。 と、食卓に昨晩の紅ショウガの残りがある。 無謀気味と思いつつ、モッタイナイ根性で投入してみる。 沖縄ソバを思い出しながら。
おう、あのきつかったコショウ味がすっ飛んで、みごと沖縄ソバ系の味わいに。 アジアの味わい。
味には、足し算ではない、上書き効果もあるということか。
原稿はとりあえず完成、日本に送信。 やった・・・。 残りの年を、もてあましちゃいそう。
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