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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2014年の日記  (最終更新日 : 2014/12/06)
11月の日記 総集編 白の上の白

11月の日記 総集編 白の上の白 (2014/11/03) 11月1日(土)の記 雨中列島伊予路行
日本にて


国内移動開始準備でどたばた。
上映用素材、機材、お土産類、着替え…

渇水にあえぐサンパウロに届けたいような、さすがに傘がいるほどの雨。
→目黒→品川→岡山→愛媛へ。
連休の始まった祖国ですれ違うそれぞれの人の動きが、胸をきゅんとさせる。
まずは急きょ降って湧いたプライベートミッション。

うつらうつらしていて、またすでに外は暗く、瀬戸内海を渡る時間は夢の途中。
伊予も、雨。
ホームに降りると、潮風が香る。
ついで、製紙工場のニオイ。

旅の始まりは、カラダがいたい。


11月2日(日)の記 万霊節の再生
日本にて


今日は、カトリックでいう死者の日:万霊節。
ブラジルの日系人は「お盆」と呼ぶ。

四国島での、浅い眠り。
赤星山の威容に、あらためて目を見張る。
早い朝食をいただき、伊予三島駅まで送っていただく。

瀬戸大橋を渡り、岡山と広島で乗り換え、西条駅へ。
畏友の川口隆行さんにお迎えいただく。

午後より、西条酒蔵通りの「くぐり門」にて上映ミッションの口火を切る。
いくつもの行事の重なるなか、この上映を選んでいただいた人たちに感謝。
最新作『旅の途中』を不特定少数に初公開。
今年七回忌を迎える橋本梧郎先生らを祖国で再生。
然るべきリアクションをいただき、安堵。

伊与に恥ずかしい忘れ物をしてきてしまったのだが、致命的にならずに済んだ。


11月3日(月)の記 白の上の白
日本にて


広島連続上映の合間に。
比治山の広島市現代美術館を訪ねる。
開催中の「白の上の白 色・背景・余白」展が見たかった。

お、文化の日で無料とはありがたい。
メイン展にかくれて、こじんまりと、人もまばら。
が、キュレーターのヴィジョンは刺激的だ。

同展の解説より。

わたしたちは、作品を通して未知の世界や多様な価値観の一端に触れることができます。そこには作家の意志や思想、社会情勢や様々な問題が反映されています。作品は広い世界の一部分をその表現を通してわたしたちに提示してくれるものですが、それ自身が明確な答えを出したり、問題を解決することはありません。ただ、その手がかりや道すじをいろいろな方法で示してくれているのです。作品と私たちの間にある「白」は、「何もないところ」ではなく「意識によってなにものにも変容し得る空間」なのです。そして、その「白」はまさしく作品とわたしたちをつなぐものに他なりません。
(小島ひろみ 広島市現代美術館学芸員)


これは今日、午後に『リオ フクシマ』を上映してもらう際にぴったり。

広島駅から可部線で上八木へ。
この夏の土砂崩れの傷が生々しい。
テアトロ&カフェ「アビエルト」さんでの2本立て上映。
今日も諸々のイベントが重なり合うなか、昨日より多くの濃ゆいメンバーにお集まりいただいた。
懇親会の自己紹介コーナーだけでもディープ。
手応えたっぷりのありがたさ。


11月4日(火)の記 アンネの日
日本にて


当初の想定と、だんだん変わってくる。
昨日の広島のミュージアムは他館のチラシ類の置き場も三次元になっていて見やすく、取りやすかった。
そのなかに一色片面刷りの地味なチラシが。
広島でのアンネ・フランク展。

ちょっとアンネ・フランクのことが気になっていた。
道中のスケジュールが立て込んできているので、悩む。
思い切って今日の朝イチで行ってみることにした。

広島市立大学のサテライトキャンパスにて。
この会場での展示は今日からのようだが、一般訪問者は僕だけだった。
基本的に、会場に吊るしてある解説書きと写真を見ていくだけという、地味な展示。

が、自分がいかにアンネ・フランクについて知らなかったかを思い知らされる。
特に印象に残ったのは、彼女がアムステルダムに移ってから、モンテソーリ教育の幼稚園と小学校に通っていたこと。
アンネは自分の日記を「キティー」と名付けていたこと、等々。

会場で地元紙の記者さんに取材まで受けてしまったが、どうなっただろう。

市電の乗るべき方向が逆だったり、新幹線と在来線の乗り継ぎの裏ワザに思い至らなかったりして、次の山口入りがどんどん遅れてしまう。
お世話になってきた方のお見舞いへ。

予想外に予定がどんどんずれ込んできてしまったおかげで、山口でいちばん会いたかった人に、プチ奇跡の部類でばったり出会い、いろいろと話を詰めることができた。
あなかしこ。

夜は湯田温泉、昭和のお宿を堪能させていただく。


11月5日(水)の記 過疎地の出来事
日本にて


道中、校長先生にご説明をいただく。
昨年7月の山口県東部の大豪雨被害。
降雨量1時間に143ミリ、観測の限界を超えたという。

いまは山口市に編入された阿東地区の嘉年(かね)小学校。
全校生徒4人。
今日は僕の作品上映と特別授業。

校長先生に事前に4人の名前を教えてもらい、覚えるように努める。
10人だったらアウトだったろう。
まずは授業参観をさせてもらう。
そのレベルの高さに驚く。

これは、とても贅沢、理想かも知れない。
1-2人の生徒に、先生1人。
生徒も先生も一生けんめい。
ヨーロッパの貴族の子どもと家庭教師もかくや。
この小学校の生徒たちは伝統的に県内でも有数の成績のよさ、と後に聞く。
給食を先生生徒たちと一緒にいただく。

PTAおよび地元紙の記者さん、さらに県外からの好事家が集まる。
僕の方は、あくまでも4人の小学生が主役と心する。
僕の作品が子どもたちに通用するかどうか。
数ある拙作群から、先生たちが選んだ2本の上映とお話。
生徒たちは自分たちから手を挙げて感想を言ってくれた。
遅ればせながら、昨年の大災害を耐えた子供たちにお見舞いを言う。

今日、生徒たちは特別授業が終わるとすぐに近くのキャンプ場の「アドベンチャースクール」に向かうというタイトさ。
講堂で記者さんの取材を受けている間に出かけてしまい、見送りができなかった。

また会えるといいね、ありがとう。


11月6日(木)の記 長薩密航
日本にて


山口の山寺、龍昌寺の朝。
http://www.sakuraco-print.co.jp/html/people/008.html
建設中の山門、回廊がまことに面白い。

ラッキーにも無料の山口県立美術館を訪問。
防府で現在、特別公開中という雪舟の「四季山水図」を見たくなってきた。

新山口から鹿児島中央駅まで乗り換えなし、約2時間という近さ。
薩長は近くなったものだ。

鹿児島中央駅は、亜熱帯の熱気。
ブラジルで出会った友が出迎えてくれる。
駐車場の車を覆う黒灰色の火山灰が驚き。

火山をウリにする鹿児島で率先して原子力発電所を再稼働しようとする狂気の政治。
地元民が立たずして、どうする。


11月7日(金)の記 雪舟ひとり占め
日本にて


今日は、キュリー夫人の誕生日。
昨日ぐらいより、あちこちから誕生祝いのメッセージが入る。
昨晩は鹿児島の友人一家に、かつての撮影現場でお祝いしていただいた。

朝イチで鹿児島を発つ。
新山口で乗り換え、防府駅。
毛利博物館で特別公開中の、雪舟の「四季山水図巻」をぜひ見ておきたい。
これを自分の誕生プレゼントとしよう。

防府駅には、毛利博物館の案内も見当たらない。
荷物をロッカーに預けたいが、一回り大きいロッカーはすべて塞がっている。

観光案内所に泣きついてみるが、どうにもならないという。
そもそもバスの接続も悪く、夜までに首都圏に到着するためには、タクシー使用しかないか。
何度目かの観光案内所への相談で、レンタサイクル使用をすすめられる。
自転車を借りれば、荷物も預かるという。
これは盲点。

防府の街は、自転車で回るのに格好のサイズ。
毛利博物館はお茶会の準備で取り込んでいる。

いざ、雪舟へ。
西暦1486年完成。
雪舟67歳の時の作品、全長16メートル。
圧巻、のひとこと。
アクセスが容易ではないせいか、この雪舟の国宝の前には僕しかいない時間もしばしば。
長編のあり方について、感じ、考える。

久しぶりに、絵のなかに入り込んでしまう感覚。

さああとはひたすら横浜を目指してJRを乗り継ぎ。
車中で休んで、今宵のオールナイト上映に備える。


11月8日(土)の記 再生旅行
日本にて


昨晩、夜10時より横浜大口のガウシャ旧店舗での『アマゾンの読経』オールナイト上映。
主催の伊藤さんが公私心身ともに不調の気配があり、中止も覚悟で鹿児島から鉄路、乗り込んだ。
伊藤さんはやる気満々、トータルで二桁の人が集い、感無量。

午前5時終映、その後の話は尽きないが今日のミッションがあるので6時半過ぎには伊藤さんと握手をしていったんお別れ、新横浜駅へ。

すでに指定は取れず、自由席で空席を見つけて京都まで、さらに乗り継いで高槻着。
体感済みの「天神の湯」で禊をして昼の待ち合わせ時間まで待機。

関西のシンパが手をつないでの『ブラジルの土に生きて』上映。
場所も使い勝手もいい施設だが、プロジェクターの画質が劣るのが残念。
ふしぎと、この作品の上映環境では画質の問題があったことが何度かあった。
上映中、2度抜け出してコンビニでのコピーや100円ショップでの備品の買出しに出るが、その間、映写事故もなくてよかった。

関西人にしてはリアクションの大人しい人たちばかりだったが、心にはしっかり響いていたようで、質疑応答はあっという間に時間オーバー。
いま、この作品を上映することの意義を改めて教えていただいた。

うーむ、字幕改訂版、やっぱり作ろうかな。
横浜の深夜の上映のインターバルでも、夜の懇親会でも誕生を祝っていただき、こんなに各所でお祝いしていただくのは初めて。

作品でお返ししないと。


11月9日(日)の記 水戸の神話
日本にて


日付が今日に変わってから、大阪駅に遅れて到着のサンライズに乗車。
のびのびシートの至福。
大衆浴場、共同墓地のなごやかさ。

東京駅からダイレクトで水戸に向かうつもりだった。
だが残りの書籍、いただきものなどがあまりに重い。
横浜で下車して、いったん東京の実家に立ち寄ることにする。

だいぶ身軽になって、水戸に到着。
まずは水戸芸術館で韓国人アーチスト、ヂョン・ヨンドゥさんの映像展を見る。
併設の若い日本人女性フォトグラファーGABOMIさんの展示の方が面白かった。

日本で最も熱い岡村作品上映スポット「にのまえ」さんでの最新作『旅の途中』お披露目。
店内がどよめきわたる。

橋本梧郎先生は格好の酒の肴、話は尽きない。
妙な作品をつくってしまった。
にしても、ちょうだいした新蕎麦はよろしかった。


11月10日(日)の記 蕎麦のカービー
日本にて


今日は「にのまえ」マスター夫妻、そしてマスターの刎頚の友と、蕎麦の故郷を訪ねる。
茨城県旧金砂郷町、現在の常陸太田市。
眞家マスターはこの地の農家から直接、蕎麦の実を仕入れている。

一軒一軒の農家を訪ねていく様は、そのままドキュメンタリーの醍醐味。
こちらも撮影ではないので、気が楽である。

さて、昼食時。
『山猫の夏』の弓削一徳を師と仰ぐ眞家マスターはなかなかの策士である。
山中にある、見かけは味もそっけもないお店に連れてきていただいた。
篤農家とはちょっと異なる、押しの強いおじさんのお店。

壁に貼られているお品書きからチョイスしようとすると、全員、けんちん漬け蕎麦にしなさいと押し切られる。

手打ち蕎麦だが、不揃いなんてものじゃない。
長虫の群れがのた打ち回っている感じ。

これまで黙っていることのなかった4人が、蕎麦をすすって静まり返る。
マスターがポルトガル語で「カビの味…」とつぶやく。
蕎麦のカビくささが強烈。
我が人生の、ワーストそば。

店を出た眞家一徳マスターによると、そもそも蕎麦はかびやすくなりやすいので、新蕎麦がもてはやされたとのこと。
いたんだ蕎麦をごまかすために、トウガラシ、ワサビ、長ネギなどの強い薬味を入れることはこれまでマスターから教わってきた。

美しく、本当においしい蕎麦のありがたみを体感させるためのマスターの演出か。
二度と立ち寄りたくない、息をのむほどの下品さがにじみ出ているお店だった。

ああおいしい蕎麦で、口直しがしたい。


11月11日(火)の記 無言と無念と
日本にて


JRレイルパス利用可能期間中は、多少の無理もしないと。
長野の上田にある戦没画学生の遺品を陳列する無言館に行きたかった。

アクセスが容易でないところで、電車とバスの使用では、夕方からの早稲田の講義に間に合わない。
昼過ぎまで東京の実家で西洋と雑務残務の処理にあたるというのも魅力。
だが、この機会を逃すと次があるかどうか。

最寄りの駅からタクシーを思い切って奮発するか。
信州の風景、空気の美味しさは格別。
近くの駅からのタクシー代は2000円を超え、いたいところが、ときには時は金なり、である。

紅葉の信州の山々を望み、雑木林に囲まれた無言館のシチュエーションのすばらしさ。
脱帽して入館。
絵画を見るとき、たとえば被爆者とか障碍者といった、アートそのものの区分とは異なるレッテルにとらわれないよう、留意してきたつもり。
が、ここでは入館後まもなく目頭を拭わずにはいられなくなる。

帰りのバスの時間まで、第一館と第二館を三往復。
それぞれのアーチストのストーリーをふまえつつ、アートそのものとしてもある程度、享受できたかと。
若くして、納得できる作品を遺さずして国家に命を奪われる無念。
いっぽう、絶望の状況のなかでも作品を創作して遺す歓び。

なにひとつ残さで逝った人々の無念へと、想いは沈下していく。

上田駅で少し時間ができた。
駅前のプラモデル屋をのぞく。
さして期待しないで入った駅前の手打ち蕎麦屋「よろづや」のそば定食が値段・味・ボリュームともよろしかった。
しかもスタッフがさわやか。
昨日の昼のカビそばの無念を挽回。

店内で見た信濃毎日新聞にブラジル長野県人会55周年式典、そして松代大本営造営開始70周年の記事。


11月12日(水)の記 滝の呼び戻し
日本にて


昨晩、からだのオーバーヒートを感じた。
道中、養生して回復に努めよう。
朝イチで祐天寺裏出家。
目黒駅、東京駅、新庄駅を経て余目(あまるめ)まで向かう。

最上川の流れる右の車窓に、思わぬ光景が。
紅葉も終わりかけた雑木の山を、一条の滝が刻んでいるではないか。
付近の駅名をチェック、あとで名前を調べよう。
夜のトークで、滝がらみの話を披露しようか。

余目駅で鶴岡駅を目指して、ホーム反対側に停車中の列車に乗り換える。
あれ。
この列車は新庄行ではないか。
鶴岡駅で庄内ドキュメンタリー映画友の会の飯野代表が待っていてくれているのだ。
うわ、左の車窓にあの滝が!
高屋駅という無人駅で下車。
携帯電話の電波もとぎれとぎれ。
飯野さんに次の列車で鶴岡に向かうと伝えると、高屋まで迎えに来てくれるという。

この滝が白糸の滝と呼ばれ、源義経や松尾芭蕉ゆかりと知る。
ずばりこの滝を正面に望む食堂で麦切りをいただくことになった。

飯野さんが頼んでくれて特別に開館してもらった、土蔵移築の今井繁三郎美術収蔵館を訪問。
庭を掃除していた木草館長が、かつて山形からブラジルに移住を志す青年の研修所が近くにあり、しょっちゅう青年たちがここを訪ねてきたと教えてくれて、さっそく盛り上がる。

中央、権威、画廊に背を向けて自分の描きたい絵を描き続けたという今井繁三郎の精神に励まされる。
長く見ていても飽きない絵群。

平日の、冷たい雷雨が振りつける夜。
にもかかわらず、濃厚な方々が遠方からも参加してくれての上映会。
質疑応答も手応えたっぷり。
疲労も吹き飛んだ感じ。


11月13日(木)の記 至福のグレードアップ
日本にて


鶴岡のホテルで朝はゆっくり目、つかのま心身ともに休まる。
バスターミナルまで歩くが、えらい強風。
帽子どころか、眼鏡まで飛ばされそうだ。

寒河江に移動。
山形は広い。

夕方より先回に引き続き、お隣の西川町のお蕎麦屋さん「杉之屋」で寒河江の「至福の会」の方々による、外部の人ウエルカムのライブ上映会。
仕掛け人の強い希望で『赤い大地の仲間たち フマニタス25年の歩み』を上映。
会場がどよめきわたる。
これはもう、錬金術のレベルかも。

ご馳走、美酒が入り、初めて出会った同士が拙作を肴に旧知の親友のように盛り上がり続ける。
小川紳介作品にも登場されたという店のご主人の大沼さんが、大黒舞を披露、一同を寿いでくださる。

寒河江温泉の入湯門限にかろうじて間に合う。
この湯の極楽。


11月14日(金)の記 鎌倉の夕べ
日本にて


レビー小体型という言葉になじんだら、今度は嗜銀顆粒性。
読みも字もむずかしくなった。

ひたすら移動中に休む。
山形の用事が早めに済んだので、いったん目黒の実家に戻ってキャリングケースを置く。
いざ、鎌倉。

今宵の上映を主宰してくださる「港の人」のオフィスまで鎌倉駅から歩く。
和洋新旧がここちよく混じり合い、なんともよろしいではないか。
この町の住民がうらやましい。

上映会場の古民家スタジオ イシワタリさんは、「港の人」さんのお向かい。
古民家までいかない伝統住宅で、サウダージ:郷愁をそそる。
上映を抜きに、さっそく宴会を始めたくなるお座敷にプロジェクターを設置。

少なからず、多すぎずのほどよい人数が集まってくださった。
上映作品は里舘代表チョイスの『リオ フクシマ』。
人びとのリアクションが、実にいい。

『リオ フクシマ 2』の完成を望むリクエストを多数ちょうだいする。
NHKリオ支局に勤務した旧知の太田さんより、ゴイアニアのセシウム事故について耳よりの情報を教えていただく。


11月15日(土)の記 鶴見免疫上映
日本にて


目黒の実家で起床。
夕方の上映出発まで、あまり無理をしないで残務雑務を手掛ける。

鶴見駅東口下車、鶴見国際交流ラウンジへ。
ここは今日で三度目の上映。
会場の設営は主催の佐々木さんにお任せして、僕はこれまでの試行錯誤と蓄積を活かして、プロジェクターとスピーカーをひとり設定していく。

近年は、鶴見で僕の最新作をいち早く上映していただいている。
鶴見には岡村シンパや常連の方々の他に、なかなか辛口の論客も来てくださる。
岡村の経歴や作品群に接していない方からの、時にはアグレッシヴな批判は貴重である。
僕自身の思考を深め、高めて、今後のための理論武装ができるというもの。

まさしく多士多才にお集まりいただき、うれしい限り。
懇親会では外野がうるさくて恒例の自己紹介はできなかったが、それぞれ異種の方々がほどよく混じりあってくれて、これまた結構であった。


11月16日(日)の記 客をえらぶ
日本にて


限りある日本の日曜日の朝。
少し無理して外出。

実家に戻り、諸々の残務雑務。
横浜に行く前に、別の外回りをと考えていたが、時間が押してしまう。

黄金町・シネマジャック&ベティ階下の横浜パラダイス会館にて、第3回アマゾンナイト。
本物のアマゾン出身の女性を妻として日本に連れてきた、ガウショこと伊藤修さんの手によるアマゾンの郷土料理に舌鼓をうちながら、岡村のアマゾンものの映像を余興に流すという趣向。

今宵のメニューは、モコト(「藻琴」と変換されてびっくり。これはアイヌ語起源の北海道の地名)という牛のアキレス腱の煮込みのアマゾン風。
拙作の方は「アマゾンの日本人村」と「ひとり芝居」。

横浜大口の店を閉めて、横浜パラダイス会館前で肉を焼くようになった伊藤さん。
こちらに来て「客を選べるようになった」というのが面白い。
参加者は舌も目も肥えている方々ばかりで、こちらが教えてもらうこと多々あり、ありがたい。

終了後、有志でブラジリアントランスジェンダーのマリさんが経営するアブラカダブラにうかがう。
オーダーを作り終えたマリさんがカウンターで書きものをしている。
漢字のドリルに励んでいた。
しばし隣に座り、世間話。

今回、訪日して初めてポルトガル語でしゃべったかも。
山口の小学校での上映の際、小学生に何かポルトガル語でしゃべってくれ、とせがまれて少ししゃべったが、これは会話とはいえないな。


11月17日(月)の記 目黒で月曜
日本にて


神奈川三日連続上映を終えて、日付が今日になってから目黒の実家に戻る。

今日は溜まっている送りもの関係に着手。
さる週末、日本郵便のレターパックライトの入手に往生した。

コンビニだと、ローソン系のみの販売と知る。
目黒駅から祐天寺裏の実家に至るまで、二軒のローソンを訪ねるが、売り切れとのこと。
一軒では「青のレターパック」を頼んだのに「赤」を出してくるので「青を」と繰り返すと「アオ、ナイ」とたどたどしい日本語。
頼んだものと違う高価なものをエクスキューズなしで出してくるとは、ローソンもブラジルなみである。

金融機関をまわったり、急ぎのメール類にも着手していると、送りもの類も今日中に終わらなくなった。
にしても、ようやく一息ついたかな。


11月18日(火)の記 APARECIDA沸騰
日本にて


西荻窪APARECIDAに行く前に、あれもこれもやろうと思いつつ、時間が押してしまう。
明日に回すか。

東京の岡村ライブ上映といえば、このAPARECIDAさん。
半年ぶりだが、今日は事前にお店で次回訪日時のイベントのスタッフとの打ち合わせもさせていただく。

本日上映の『消えた炭鉱離職者を追って・サンパウロ編』はまことに地味な作品。
が、お店は満員御礼となる。
オカムラはスクリーン直前で体育座りで鑑賞。

上映後の話題も尽きず。
お店のドナくみさんが、今日も鋭いコメントをくださる。

なんとか終電間際のJRを乗り継いで、日付の変わった目黒駅にたどり着く。
ラーメン激戦区の目黒、入ったことのないお店に話の種に挑戦。
税込みでなんと1000円以上になるが、一度でシェーガ(もうたくさん)だな、この店は。


11月19日(水)の記 沈黙の代償
日本にて


気になっていたドキュメンタリー映画。
『大いなる沈黙へ』に下高井戸シネマのモーニング上映で挑戦。

場内は還暦過ぎぐらいの女性陣が埋め尽くしてほぼ満席、補助椅子も置かれている。

特にストーリーもなく、3時間近くフランスの山中の修道院の日常が延々と紹介される。
まったくの無音と言っていいシーンの連続。

それだけに場内の些細な音も響き渡ってしまう。
こっちは体力的に見送ろうかと思ったほどの眠たい状況。
寝息やイビキでひんしゅくを買わないよう、ガムをかみ続けて眠気をごまかす。
作品の前半、劇場の左前方の方から、通奏低音として響く音が。
そこいらの観客のオヤジのイビキと見た。
ところがほぼ作品が終わった段階でまたこの音が聞こえてきたので、ひょっとすると作品中の音かも。

にしても、劇場後方よりひたすらがしゃがしゃとラップ類をいじくる音が。
持ち込んだおにぎりでも食べ続けていたのだろうか。
ブラジルの劇場だったら、シネフィルの観客からどやしつけられたことだろう。

決して面白い作品ではない。
この映画を見る、という体験そのものが話題になる体験型の映画といったところか。
購入したパンフレットをまだ読んでいないが、いろいろと疑問の残る映画だ。

下高井戸の町をぶらつき、思い切って天ぷら屋さんのランチに挑戦。
昨晩のラーメンより安い。
天ぷらはその場で揚げてくれる。
しかし米飯がべちゃべちゃ。
日本の実家では釜飯弁当の釜で一合ずつ炊いていただいているが、この天ぷら屋の飯とは比べ物にならないぐらいおいしい。

今回訪日中のワースト米飯は、この下高井戸の天ぷら屋。


11月20日(木)の記 この二展
日本にて


訪日中は、上映オフの日をどう使うかが問われるというもの。
ネが怠け者なだけに、できれば終日寝そべっていたい。
そんな自分を、どう追い込んでいくか。

外は、けっこうな雨。
その後も渇水にあえぎ続けているらしい我がサンパウロにテレポートしたいぐらい。
傘がいるほどの雨降りだが、電車賃を惜しんで中目黒まで歩く。
まずは南千住駅へ。

ここからけっこう歩いて、東京都人権プラザへ。
事前にざっと地図を見て、住所を控えてきただけなので、けっこう往生してしまう。
途中、ようやく地図掲示板を見つける。
台東区橋場1丁目を目指す。

宇井眞紀子さんの写真展「アイヌときどき日本人」、11月28日まで。
http://www.tokyo-jinken.or.jp/plaza/tenjishitsu_201402.htm
首都圏に暮らすアイヌ民族の人たちを長いスパンで記録した労作。
首都圏のアイヌ民族の数は、5000人近いという。
テーマは貴重そのもので、しかも写真家の技術と感覚がいい。
動の瞬間を巧みにとらえ、いっぽうポートレイトは美しく力強い。
さらに被写体の人々と築き上げてきた信頼の時間がにじみ出ている。
実にいいお仕事だ。
小学校・中学校用のアイヌ民族についての学校教育用の副読本を受付けに申し出ればもらえる、とある。

受付けのおじさんにブラジルから来たこと、この問題をブラジルに伝えるため小・中学校用の両方が欲しい旨、伝えるが、もう在庫が少ないからと中学用しかもらえなかった。
ブラジルにもアイヌ民族は渡っているのだが、在庫確保重視のおじさんの心を動かすことはなかったようで、残念。

北海道にでもありそうな銭湯があったり、「バッハ」という名前の喫茶店があったりで寄り道したいのは山々だが、次を目指す。

日比谷線で逆戻り、八丁堀下車。
nichido comtemporary artにて世界に誇るブラジル人アーチスト、ヴィック・ムニーズの「SMALL」展、29日まで。
http://www.nca-g.com/exhibition/2014/vik_muniz_-_small_-/
ここの受付けの女性は、ブラジルから来たと告げると大変盛り上がってくれた。
彼女はヴィックのドキュメンタリー映画『ごみアートの奇跡』を20回は見たとのことで、日本で直接触れたヴィックの魅力についても語ってくれた。
日本では知られていないだろう、ヴィックがらみのエピソードをいくつかお伝えする。
「ごみアート」のヴィックはとどまることを知らずに、ここまでやってくれた。
ハイテクを駆使して、ミクロの決死圏から人類のアート史を概観して、森羅万象共存共栄のこころを伝えてくれる。

今日のこの二つの展示を見ることができて、日本に来た甲斐があるというもの。


11月21日(金)の記 目黒の迷地図
日本にて


深夜に名古屋行きのバスに乗るまで、地元目黒系のいくつか気になるスポットを巡回。

めぐろ歴史資料館「目黒の地図展」11月24日まで。
常設の縄文土器にみとれ、目黒新富士胎内めぐりのレプリカで大日如来像を拝んだ後、この企画展へ。
やはり自分の生まれ育ったところが気になる。
1947年の地図でも、現在の道路と整合しないようだ。
80年以上前のこの地に暮らした叔母の話ともかみ合わない。

さらに現在も「自然園下」というバス停留場がわが実家の近くにあるが、いったい自然園とはなんだったのか調べてみよう。
油面(あぶらめん)と大鳥神社の間あたりを小滝町と呼んでいたのもなぜだか気にかかる。

学芸大学駅の古書店「SUNNY BOY BOOKS」とコラボ企画をしている「caraway」という喫茶店を探していってみることにする。
「カップと本棚」というペーパーにある地図と住所を頼りにするが…

一帯に地図案内板がなく、記載された地図通りに歩いても、お店にもその住所にも行き当らない。
住所は目黒区なのだが、もはや世田谷区になってしまうのだ。

さんざん迷って、ようやく発見。
SUNNY BOY BOOKSさんで見て気になっていたguse arts展を開催中、見入る。
店主のcarawayさんにこの地図で祐天寺駅方面から来るのはハードだった、と告げるが、同様のクレームを受けたことはないようだ。
どなたかこの地図を頼りに祐天寺駅からたどり着けるかどうか、チャレンジされたし。


11月22日(土)の記 至福の読書
日本にて


夜行バスは午前5時、真っ暗の名古屋駅付近に到着。
さあまずはどうするか。
近くのネットカフェやサウナの料金をチェックしてみようと思うが、いずれも値段表示が見当たらない。
会員証を持っているネットカフェもあるが、会員証を取り出してみるとたった一年の有効、とある、
新たな登録もめんどくさいし、登録料も取られるかもしれない。

と、目の前にあるマクドナルドがえらく盛況である。
続々と到着する夜行バスの降車客が立ち寄っているようだ。
うすら寒い未明は、人いきれの多いところがいいかも。
マフィンとホットコーヒーで500円を切るセットを頼む。
店員も少なからぬ客たちも、僕には何語ともわからぬ言葉を話している。

旅の友にと持参した旦敬介さんの『旅立つ理由』を開く。
ANAの機内誌に連載していた短編をまとめたもの。
今日の上映が名古屋のカポエイラ(武闘と舞踊の混合したブラジルのワザ)道場なので、「カポエイリスタの日常」という短編から読み始めている。

舞台であるブラジルのバイーアの描写が実に巧みだ。
カポエイリスタ:カポエイラ家(か)を自称するブラジル人が主人公で、特に日本人らしいのも登場しない。
日本人が日本語で、これだけの世界を紡ぎだしたことに目を見張る。

さっそく冒頭から読み始めるが、いずれも余韻深く、地球のどこかの誰かの切実な物語を描き出している。
サウナと冷水浴を繰り返すように、一編耽読しては、その余韻に浸るのを繰り返す。
周囲の客もだいぶ入れ替わり、外もすっかり明るくなった。

「ゴー・ビトゥイーンズ」展開催中の名古屋市美術館まで歩く。
この企画展も面白かったが、コレクション展の「メキシコ・ルネサンス」がよかった。
名古屋名物だという「あんかけパスタ」をハナシのタネに食べてから、千種のカポエイラ道場「ヴァジアソン」へ。
道場のメンバー、そして一般の方々にもお集まりいただき、『ブラジルの土に生きて』の上映。
高槻市の施設よりははるかに映像がよろしい。
上映後、それぞれが熱く語ってくれる。

上映後、近くの大衆食堂で有志でアルコール抜きの夕食中に、長野で震度6弱の強い地震、これから来る地震に備えるようにとのテレビの報。
覚悟をするが、さほどのことはなくて済んだ。


11月23日(日)の記 もらい泣きの午後
日本にて


午後の岡崎での上映まで、何をするか。
荷物も考えると…
美術館かな。
東海地区で調べてみて、もっとも気になるミュージアムは、今日はお休み。
昨日、名古屋市美術館でゲットしてきたチラシを吟味。

「高浜市やきものの里かわら美術館」の「土の物語」展。
昨日は『ブラジルの土に生きて』の上映で、土について盛り上がったし、これにするか。
高浜市に住みついたヒメナ&スティーブンというチリ人とアメリカ人の陶芸家のカップルが、里山に60トンもの粘土を使ったオブジェをつくったという。
その巨大なオブジェの場所には一般人はアクセスがむずかしいとのことで、美術館にはそのメイキングビデオの上映、およびふたりの「小物」が展示されている。
スティーブン「むりやり形にすると土に対して失礼。土もどういう形になりたいか、上手にきく」
ヒメナ「土はそのままでも面白い」

僕のドキュメンタリー観と合致するではないか。

美術館のレストランは、貸切りとなっている。
駅の近くにガレットという、そば粉を使った料理を食べさせる店があるようだ。
外目では開いているかどうかもわからないお店だが、思い切ってドアを開けると、えらい活気。
フランスはブルゴーニュ地方の郷土料理とか。
これは、おいしい。
玄そばの香りの味わいたっぷり。
ランチでも安い値段ではないが、先日の茨城蕎麦処でのカビ風味ソバの雪辱を果たした感。

岡崎市、名鉄美合駅前の「旅と本」をコンセプトとするカフェ「隠れ家」さんでの初オカムラ上映。
マスターの希望で「勝ち組老人」「60年目の東京物語」を上映。

僕の横に日系ブラジル人の女性二人が並んだ。
彼女たちの涙に、こちらも涙。


11月24日(月)の記 学習院の学習
日本にて


豊橋から乗った夜行バスは午前5時に横浜着。
横浜駅ではまだ売店も開いていなく、シウマイも神奈川新聞も購入かなわず。
祐天寺駅下車、実家で装備の仕切り直し。

昼前に目白駅へ。
学習院大学は山手線の内側にありながら、ごちゃごちゃしていない。
アーカイブズ学専攻の主催で、僕の橋本梧郎作品2本を鑑賞しての講演と質疑応答という趣向。
http://archivists.cocolog-nifty.com/archivists/2014/11/post-b065.html

多種多様な人たちにお集まりいただいた。
辛口、攻撃的なコメントも覚悟していた。
ところがどっこい。
拙作を現代アートとして評価していただいたり、ナレーションをお褒めいただいたり。
アーカイビストたちの興味もたっぷり刺激させていただいたようだ。
『橋本梧郎と水底の滝』シリーズ第二部の『旅の途中』を編集するにあたって今日、上映した第一部『南回帰行』を見直すと、ややかったるい感もあった。
改めて落ち着いて見てみると、まあこれはこんなものかな、という感じ。

「先生と私」の迷宮。
予期せぬ母娘との再会がうれしい。


11月25日(火)の記 ならぬ観音 するが観音
日本にて


さあ残務雑務に取り組みだ。
ちょこまかとノートパソコンに向かっているうちに時間は過ぎていく。

頼まれもの、値の張るものの買い出し。
渋谷で伊豆大島富士見観音堂お掃除隊の桑島隊長らと会う。
海外移住者、特に無縁仏を供養する目的で建立され、無住になってしまった観音堂のボランティア清掃に取り組んでもらって10余年。
来年1月の連休に予定されている伊豆大島行きで19回目を迎えるという。

これまで続けてもらえたことに、ただ感謝。
この掃除合宿にまつわる関係者の成長物語をうかがい、感無量。

ここにきて、この観音堂をめぐる新たな動きがいろいろと出てきている。
ちなみに、「無縁」の人も歓迎しますので、1月のお掃除合宿に参加されたい方は、とりあえず岡村にご一報ください。


11月26日(水)の記 全生園の午後
日本にて


東京は、今日もまたサンパウロに持ち帰りたいような雨。
足もとが悪いが、思い切って少し遠出。
東村山市の国立ハンセン病資料館へ。

「この人たちに光を-写真家・趙根在が伝えた入所者の姿-」展が目的。
http://www.hansen-dis.jp/07exhibition/07exhibition.html
秋津駅から徒歩で挑むが、秋津駅にも新秋津駅にも案内板は見当たらず、なかなかのわかりにくさ。
遠方の色づく雑木林がそうだろうと見当をつけて、歩く。

まず常設展が見どころがあり重く、僕にしてはゆっくりと拝見。
と、よく似た人だなと思いきや、ずばり山本利彦さんがやってくる。
今年3回におよんだ愛知岡崎の上映会の仕掛け人である。
上京したついでに、僕が勧めていたので来てみたという。
…覚えていない。

故・上野英信が『写真万葉録』の仕事に着手する際、この趙さんを指名した訳がよくわかった思い。
すごいお仕事だ。
16時30分に閉館とのアナウンスで、あわただしくなる。
夜のバスまで山本さんは都合がつくということで、新宿と学芸大学駅に誘うが、秋津駅まで道に迷って時間が押してしまい、学芸大学駅に直行。

山本さんとは直接会ってお話をしたいとは願っていたが、よりによって。


11月27日(木)の記 「青の洞窟」にまっつぁお
日本にて


男の特権を捨てる。
今日は横浜シネマジャック&ベティのメンズデイで1000yenポッキリ。
横浜パラダイス会館へのご挨拶もかねて「訪浜」しようと考えていた。
しかし送りもの類のパッキングがなかなか進まず、残務は増えてたまる一方。
映画もどうしても見たいものはないので、神奈川詣ではキャンセルとする。

実家の庭木を少し手入れする。
ふと、亡母の声が浮かぶ。

夜、結ぼれに僕も責任があるカップルと久々に再会。
場所は、中目黒駅。
現在「青の洞窟」と称して目黒川の桜並木に青色の電飾を巻きつけて照らすイベントが行われている。
人だかりは、桜開花時並み。

お店はどこも満杯で、電飾から外れたところまで足を延ばす。

夫の方がネットで調べておいたという店が、ない。
けっこうネットではこういうことがあるという。
店が潰れても、ネット上では消されずに残り続ける。
夜桜の電飾より不気味かも。


11月28日(金)の記 ガクダイ コヤマ
日本にて


送りもの類が続く。
手ごろな大きさの箱がなく、大きい段ボールをばらして適当な大きさに切り貼りするのがけっこうな手間。

午後より、知人の取材を受ける。
昨今、こういうのは学芸大学「平均律」さんでというのが定番。
「SUNNY BOY BOOKS」さんで待ち合わせ、終了後に「流浪堂」さんも紹介するという古書店づくし。

SUNNYさんの通りにあり、「天然温泉」をうたう「鷹番の湯」に行ってみようと思っていたが、金曜定休ではないか。
奇遇にもサニーボーイ高橋さんが武蔵小山のブックカフェで月イチの大道セールをしているという。

高橋さんを追っかけて、ついでに武蔵小山の銭湯温泉「清水湯」に浸かることにする。
相変わらず露天風呂の方は子どもら中心に満杯。
ちんぽふりふりの少年から、キレメも鮮やかな少女、モンモンづくしのあんちゃんまで。

人の波の途切れに、2種の温泉に入湯。
ちいさなゴクラク。
幸か不幸か、帰路に適当な喫茶店が見当たらない。
せっかく頭も洗ったのに、タバコくさくなりそうな店ばっかし。

ちょっと気になる「珍日本紀行」なみのアンティークバーがあるのだが、さすがに一人では入りにくく、おカネももったいないのでスルー。


11月29日(土)の記 大魔神サンタ
日本にて


朝、実家のお片付け、清掃。

昼、ブラジルで知り合ったファミリーのお招きをいただき、調布へ。
近くに日活と大映の撮影所があるので、車で前を通ってみましょう、とサービスしていただく。
「ゴジラの像がある」とのことだが、いくらなんでもゴジラではなく、ガメラだろうと見当をつける。
が、意外にも出会ったのは一対の大魔神像。
変身前の埴輪の穏やかな表情のやつだが、向かって左のはサンタの赤白帽をかぶらされていた。
怒れ、大魔神。

奇遇にも夕方、新宿ゴールデン街「ひしょう」を仕切ることになった佐々木美智子さんに届け物をすることにしていた。
佐々木さんはかつて日活の映画編集の助手をされていた。

明日が今回の訪日のメインイベントなので、「ひしょう」で一杯だけいただいて実家に戻る。


11月30日(日)の記 法要週間
ブラジルにて


今日は東京・目黒の実家で法事。
今度の土曜はサンパウロで法事だ。

会食後、導師を目黒雅叙園・百段階段の金澤翔子展に案内。
導師は、書より各間に用いられている銘木に興味津々。

最初の間の床柱の材について、監視員の女性に尋ねる。
なんと、イチイと、パウブラジル。
ブラジルの国名のもととなった、ブラジルでは絶滅危惧種の珍木だ。

雅叙園では昭和初期にアマゾン流域からも銘木を入手しているのを知っていたが、パウブラジルもあったか。
導師はこちらの初歩的な質問にも丁寧に答えてくれて、こっちも「にわか床柱オタク」になる。

わが目黒の東京都重要文化財のなかに、パウブラジル:ブラジルの樹:ブラジルスオウあり。


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