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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2016年の日記  (最終更新日 : 2017/01/01)
12月3日(土)の記 クエスタの地縁

12月3日(土)の記 クエスタの地縁 (2016/12/05) クエスタの地縁
ブラジルにて


クエスタという言葉を知る。
スペイン語起源の地理学用語だ。
シンメトリカルではない傾きを持つ山塊をいう。

今日、ようやく訪ねることになる香山文庫は、このクエスタの山頂にある。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/195218

勤務先のアメリカでブラジル人男性と結ばれ、サンパウロ州内陸のクエスタに住まうようになった吉田さんという日本人女性が、こちらで縁のあった香山さんという移民資料蒐集家から蔵書の寄贈を受けたもの。

面識はないが、以前、メールのやり取りのあった吉田さんから、この香山文庫の告知、協力を頼まれた。

ちょうど、日本からの留学生と、そのお世話をする研究者からこちらで拙作を鑑賞する機会はないかと問い合わせをいただいていた。

香山文庫見学と岡村作品上映というイベントをプロデュースしてみることにした。
研究者と留学生のノリはよく、車2台で乗れる範囲での香山文庫に関心を持ち役立てそうな他の留学生を募り、僕の友人の邦字紙記者にも同行取材してもらうことになった。

それぞれとの周到な準備のやり取りは楽しく、特に吉田さんは切れ者のテレビ取材コーディネーターをほうふつさせた。

吉田さんは香山文庫の場所がサンパウロ市から200キロ以上という遠方なのを気にされていたが、その地は僕がパラナ州遠征の際、「朝飯前」に通過しているところだったのだ。
大平原と、今回クエスタと呼ぶと知った山塊が視界に飛び込む、息を呑む光景だ。
この奇景のなかに踏み込みたいという気持ちを以前から抱いていたが、思わぬ形でかなうことになった。

岡村号の方は午前7時サウーデ駅集合、岡村と邦字紙記者のアミーゴ、そして女子留学生2名。
街道は勝手知ったる道、そのあとも吉田さんの案内か気が的確で迷うことなく、後部座席の女子2名は道中爆睡でトイレ休憩もなく、ちょうど3時間所用、思ったより早かった。

自家用車の修理のためレンタカーを借りて駆けつけるという、もう一台の到着を待つ。
今日のこの地方の天気予報は雨、特に午後からは豪雨で停電のリスクもあるとのことで、まず1時間ものの拙作を鑑賞。

吉田さんが台所に追われて観賞できないようにならないように、という僕の希望を受けて、お連れ合いがひとりでその間、肉を焼いてくれた。
上映後にDVDを寄贈することで、お連れ合いには勘弁してもらおう。

昼食、敷地内見学、そして香山文庫見学と吉田さんとの質疑応答。
上映はトータルで2時間程度、暗くならないうちにおいとまするという予定だった。

午後4時、カフェをいただきながら懇談、雨も大降りにはならず、さてもう一本、なにを上映するか。
ひとりの女子留学生が「いま何時? あたし6時からバイトがあるんだけど」と言い出した。
留学生の発起人と彼女が、暗くなる前に帰ると言ったじゃないかなどと言合いになる。
もはや、これまで。
ピクニック気分やシュラスコ焼肉が目当てといったモチベーションの低いのが紛れ込むとこちらの信用に関わるので、けっして加えないようにと発起人に厳命してあったのだが。

現在、サマータイムの午後4時は本来の午後3時。
日没時刻は午後8時前、まだ4時間近くはある。
今日は雨天のため、やや空が暗い程度だ。
そもそも「暗くならないうちに」とは、約3時間の運転の道中があまり暗くならないうちに出発、そして吉田さんに夕食の気遣いをさせないためにという気配りからの設定だった。

ふつうの計算能力があれば、片道3時間はたっぷりかかって、午後6時までにバイト先に戻れる行程かどうかぐらいは簡単に計算できるだろう。
通常の上映なら、勝手にお引き取りいただくが、今回はそうもいかない。

最後にどの作品を上映して、感動と余韻とともに香山文庫の可能性と今後に結び付けるトークをして締めようとしていたのだが…
せっかくの緻密な計画が、台無し。
上映プロデューサーとしては上映を再会する意欲をなくしただけではすまず、ムカツキが収まらずに帰りの運転手業務に支障のないことを優先することにする。

ああ、クエスタの非対称性。
ガソリン代、高速料金等を考えると、そう気安くうかがえないが、今後は今回の失敗に懲りて人選をさらに厳格にしよう。

まあ、今回は文庫視察と上映というちょっと欲張りな試みであり、参加者に事故がなかったのはなにより。
僕自身、ゆっくり開いてみたい本を何冊か見つけた。


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