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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2018年の日記  (最終更新日 : 2018/01/15)
1月2日(火)の記 新年の後出し

1月2日(火)の記 新年の後出し (2018/01/03) 新年の後出し
ブラジルにて


断食はじめをしようかどうか。
正月二日。
わが家からは一人、さっそく出勤。

が、日本人としてのナマケ癖もあり。
三が日のうち、今日まではお酒をいただこう。

こちらのファミリービデオの前世紀撮影の素材を探す。
意外と手間取ってしまう。
見つかってよかった。

自分で撮影したものながら、撮影場所もよく覚えていない。

合い間に古新聞のチェック。
昨年11月の邦字紙のコラムにたまげる。
ジブリの宮崎駿さんが吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を次回作として準備中の由。

僕は恥ずかしながらこの書名も知らなかった。
昨年最後の訪日の際、川崎での上映会にいらしてくれた方が、持参していた岩波文庫版のこの本を僕にくれたのだ。
付箋が貼られ、鉛筆で横線も引かれている。
この方は質疑応答でも「翻訳の暴力性」といった実に刺激的な問題を投げかけてくれた。

この本はブラジルに担いできたが、御礼の連絡をするためにも読み始めてみた。
コペル君と呼ばれる中学2年生の少年が主人公。
彼が日常の諸々から感じ、考えて、悩んだことをノートに書き、それに彼の叔父さんがコメントを加えていく。

さてこのコペル君、欧米あたりの少年ではない。
大日本帝国の臣民なのだ。
しかもこの本の初出は1937年、盧溝橋事件が生じた年であり、もちろん生まれていなかった僕にとっても想うだけで息苦しい時代だ。

そのなかでコペル君が考える問題が、最近、僕がブラジルの森のなかで考えたことと重なるではないか。
この本のツッコミどころについては丸山真男がこの文庫版に収録された文章で鋭く指摘している。

それにしても、未曽有の破滅に向かうアリ地獄のような状況のなかで、いまなお新しいこうした本が出されていたことが驚異だ。
叔父さんはよきリベラリストの権化のような人で、『となりのトトロ』の父親(考古学者!)あたりをほうふつさせる。
そして時代設定はずばり『風立ちぬ』。

こちらの編集作業が一段落ついて、さっそく年末に読了して、「宮崎駿さんが映画にしそうな世界」と贈り主にメールで伝えていたのだ。

その後の彼らは、どう生きただろう?
リベラルな叔父さんは、特高警察に目をつけられ…
コペル君は、学徒出陣。
雨の神宮外苑か。
ここでもユーミンの『ひこうき雲』が聴こえてきそうだ。

年末の日本からのニュースで、日本の総理夫人がユーミンと会ったというのがあったな。
今年こそは『あべさりぬ』を期待したい。


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