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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2018年の日記  (最終更新日 : 2018/02/18)
1月22日(月)の記 嗚呼松井文庫

1月22日(月)の記 嗚呼松井文庫 (2018/01/26) 嗚呼松井文庫
ブラジルにて


2月はじめの出ブラジルまでの間の残務、今日がメインイベントかもしれない。
昨年9月1日に亡くなられた孤高の移民小説家、松井太郎さんのお宅を訪ねることに。
先日、ご遺族から松井さんの蔵書を引き取らないかと連絡をいただいた。
しかしすでに自分の蔵書を漸減していかなければならない状態である。

日本とブラジルの心当たりに相談をしているのだが、いたみを共有してくれる友人知人はいるものの、これといった妙案はない。

僕としては晩年の松井さんが「少し手を加えれば発表でけんでもないのがいくつかある」とおっしゃっていたのが気になっていた。
しかし松井さんの死にきちんと向かい合うことができず、今年になってようやくふたたび松井さんの著作集を読み直しはじめたところだった。

日本でも使われているらしい Waze というカーナビアプリで調べてみる。
これまで1時間はかかる道順でサンパウロ市東部の松井さんのお宅まで通っていた。
知らない道ばかりだが、50分足らずと出た。
あえて挑戦…
何度か迷う。
肝心なところでアプリが沈黙、画面を見ると、高温のため作動中止、とある。
いやはや。

なんとか、着。
昨年、山梨県立文学館の「津島佑子展」で、最も印象に残ったのが津島さんの書庫を大判の写真で再現した展示だった。
可能なら、これから日本やブラジルを超えて評価されていくだろう松井太郎の世界を書庫ごと遺したい。

が、蔵書類はすべて段ボールに詰めて分散してあった。
手記類は四十九日も過ぎてから、松井さんのお世話をしていたブラジル人の女性がひと通り「なげてしまった」という。

段ボールの積まれた松井さんのかつての書斎で、呆然としながら封のされていない段ボールをのぞいてみる。
日本語、ポルトガル語とまちまちだが、メモ類がはさみこまれているのがある。
わら半紙に読みやすい字でこう書かれていた。
「文学とは計算のない至高の気まぐれである
 約束の地に行きつけない歩みでもある」

400字詰め原稿用紙にカーボン紙で写した原稿もある。
帰宅後に細川周平さんと西成彦さんの労作『うつろ舟 ブラジル日本人作家松井太郎小説選』(松籟社)の「松井太郎作品一覧」をみるが、これからもれている短編だ。

僕に、できそうなことがありそうだ。
松井さんの長男夫妻は、僕が日本から帰るまで「とりあえず」そのままにしておいてくれると約束してくれた。
よもやま話で盛り上がり、「また来てくださいね」と言ってもらえた。

帰りは、ほぼ迷わずに Waze の言いなりに帰る。
さっそく松井さんの件で今まで返しをくれた人々に報告。


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