移民百年祭 Site map 移民史 翻訳
岡村淳のオフレコ日記
     西暦2018年の日記  (最終更新日 : 2018/06/21)
3月17日(土)の記 ブラジル走り読み

3月17日(土)の記 ブラジル走り読み (2018/03/20) ブラジル走り読み
ブラジルにて


わが長距離バスはサンパウロ州からミナスジェライス州、ゴイアス州を経てマットグロッソ州へと向かう。
目的地のアリプアナを地図で調べてみると、大アマゾン緑の魔境に通っている道路のどん詰まりだ。
1970年代の緑の魔境はアマゾン開発最前線、そして環境破壊の最前線と変化(へんげ)していった。
ブラジルのドキュメンタリー映画の巨匠コルチーニョ式に、特にテーマや狙いを定めずにこの最前線に行って、いきあたりばったり式のドキュメンタリーというのも面白いかな、と夢想。

さあ車内は明るくなったので、本が読める。
まずは丸山健一著『田舎暮らしに殺されない法』朝日文庫。
この本、益子町の添谷書店で買った。
地域に密着したいい本屋さんだった。
濱田庄司関係を求めて、この本も買った。
定年時に読む本としても、好著だ。

ついで畏友・鈴木隆祐さんの最新著『名門高校青春グルメ』(辰巳出版)。
これは事前に鈴木さんからネタ出しを乞われていた。
しかしわが母校は名門がどうかは疑問だし、近年になって校名を当時の都知事石原にソンタクしてグロテスクに変えたとみられる恥知らずぶり。
そもそも僕は高校時代、学校近くで外食するというような経済的余裕はまるでなく、すべてを映画観賞に注いでいた。
鈴木さんの手前、高校時代の友人や元教員に尋ねてみたが、これといった返信がなかったり、返信そのものがなかったり。

そもそも高校時代に筆禍事件を起こし、最高責任者は安倍総理なみに僕にすべて責任を投げて僕はひとり悪役となり、「自主謹慎」という嗤うべき妥協をしてしまった身である。
高校時代は「青春グルメ」どころか「青春ゲロメ」であったから、この企画自体がまるでどうでもよかったのだ。
さてこの本ができあがり、共通の知人が僕にわが「墓校」の部分をスキャンして送ってきてくれて驚いた。
僕の実名で、母校の校名批判から僕自身が映画にのめり込んでグルメどころではなかったことまで綴られているではないか。
「受領(ずりょう)は倒るるところに土をつかめ」とは高校時代の古文で覚えた言葉だが、鈴木ライターはまさしくそれをいっている。
これからは鈴木受領と呼ぼう。

さて刊行からしばらく経って、東京の実家に出版社からこの本が送られてきた。
鈴木さんからコメントを求められたが、自分の母校の部分でも食指が動かなかったのが本音。
かといってわが実名発言が掲載されている書籍を送ってもらって読んでもいないというのも、あずましくなさそうだ。
といった経緯で旅の友に加えた次第。

鈴木さんは僕より8年あとの生まれなのだが、話していると年代の話題が僕と同世代か、やや上に思えるほどだ。
やはりマスコミ関係だったご尊父の影響が強いとのこと。
書かれているものは名門高校はどうでもいいとして、B級グルメ本、現代日本の風俗本として面白い。
ブラジル移民となって久しい僕には意味不明のカタカナ語や略語も出てくるが、それもまた勉強になるというものだ。
「無化調」「〆ラー」「朝ラー」など、まあ文脈から想像がつくが、祖国と無縁になった移民には意味不明かもしれないけど。
行ってみたら定休日だった、といった失敗談、けっしてヨイショに終わらないコメントも好感が持てる。
牛山純一門下としては、取材すべき定休を確認していないことでどやされ、ふたたびオープン日に行っていないことで叩かれたうえでネタとして没にされるというものだ。
しかし、そのあたりのユルさも鈴木ちゃんだと許されちゃう感があるのも面白い。
ジャン・コクトーの訪日、高野悦子『二十歳の原点』といった教養もちりばめられるのも楽しい。
それにしても「小坂明子『あなた』状態」「夏目雅子の映画での濡れ場のように抑制が効いていた」といった記載に若い読者は付いていけるのだろうか?
ひょっとして編集者、あるいは鈴木ファンへのウケ狙いだろうか。
いずれにしろ、現在日本の最前線で自分の名前で活躍するライターの仕事ぶりをうかがう意味でも格好かもしれない。

サンパウロと1時間の時差のあるマットグロッソ州に入ると、すでに漆黒。
拙作『郷愁は夢のなかで』の西佐市さんの庵のあたりは、この闇では見当もつかない。
ロンドノポリスの町のバスターミナルには、リハビリ中の溝部富雄さんがお嬢さんの車に同乗して迎えに来てくれた。
再会かなった…


前のページへ / 上へ / 次のページへ

岡村淳 :  
E-mail: Click here
© Copyright 2018 岡村淳. All rights reserved.