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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2018年の日記  (最終更新日 : 2019/01/04)
10月の日記 総集編 油面の迷宮

10月の日記 総集編 油面の迷宮 (2018/10/06) 10月1日(月)の記 1987
日本にて


今日は朝イチで新宿に映画を見に行く。
韓国映画『1987』。
http://1987arutatakai-movie.com/
これは、必見だった。
1987年の韓国。
ひとりの大学生が警察で不可解な死を遂げる。
当局は拷問死という事実を隠そうとするが…

自分なら、どうするか。
現在の日本の応用問題だ。
何度か、涙腺決壊。
朝イチの人の少ない回、しかも前方席でさらに人はまばら、周囲を気にしなくてよかった。

午後から改めて世田谷内奥のお宅へ。
撮影機材を持参するが、今日はまわすに至らず。

夜は上京された山口の龍昌寺の竹林師と会食。
祐天寺のバス通り脇の隠れ家的イタリアン。


10月2日(火)の記 夜行バスに乗るまで
日本にて


離日前に動ける平日は、もう今日しかない。
できれば、ただ安静にしていたいところ。

午前中は渋谷をまわって買い物ブギ。
ついで、京橋へ。
森一浩さんの個展の初日にうかがう。
http://www.chibabank.co.jp/data_service/file/news20180927_01_001.pdf
今日は電話の応対以外はヒマそうにされていたので、ギャラリー内で立ち話。
森さんのアートの最近の立ち位置や、共通の知人の噂話など。

午後2時を過ぎたが、せっかくだからこのあたりで安いランチでもいただこうか。
ぎょっとするほどの行列の天ぷら屋もあるが、こういうのはパス。
そのほか、これはというところはもうランチはおしまいだという。
地元にもあるチェーン店に入るわけにもいかない。

あきらめかけていたところに「陳麻屋」というのを見つける。
担々麺+麻婆飯というランチ。
本場四川を思い出す辛さ。
店内に書かれた辛みに対するウンチクも面白い。

実家に戻って荷造り、残務。
今宵の岡山行き夜行バスは新宿バスタから。
荷物もあるので、最寄りのバス停から目黒駅へ。

バス一本の遅れ、電車への身投げひとつでアウトだが…
ぶじバスに乗れる。
3人乗りを奮発したが、真ん中の席か。


10月3日(水)の記 岡山の岡村
日本にて


岡山駅に午前7時過ぎ着。
道中の休息タイムも気がつかなかった。

夜行バス到着後にしたいこと。
1.ひと風呂浴びたい
2.横になりたい、体を伸ばしたい
せめて、
3.顔を洗いたい、歯を磨きたい、ヒゲを剃りたい

今日は、いずれも難しそうだ。
今回、上映を主催してくれることになった赤木さんが駅まで迎えに来てくれる。
今日、予約してくれたゲストハウスには午前8時から荷物が置ける見込みという。
それまで近くの喫茶店でモーニングサービス。
店内に岡山出身の本田孝義監督の劇映画最新作『ずぶぬれて犬ころ』の俳優さんの色紙がある。
マスターに聞いてみると、なんとこの喫茶店でロケをしたとのこと。

ゲストハウスにチェックインできるのは、午後4時からとのこと。
近くに銭湯があるというが、午後5時から8時までという。
上映は、午後3時から。
…どこか、出先のトイレで顔を洗って歯を磨くしかなさそうだ。

東京のアミーゴが教えてくれた、朝から開いているという岡山後楽園に行ってみる。
ほう。
日本庭園がいいなと思うのは、めったにないこと。
こっちの加齢のせいか、心身の疲れのせいか。

修学旅行、そしてそこそこのガイジン客。
横になれるところは見当たらないが、木陰のベンチを見つけた。
藪蚊がやってくるけど。

ふたたび赤木さんと合流。
彼のもくろんでいたカレー屋はいっぱいで入れず。
オプションのお店でドライカレー。
ゆったりと気持ちのいい店だが、他に誰も来なかった。
地元の通人に案内してもらっているせいか、岡山、なかなかよろしいではないか。

上映会場は奉還町、カドという古民家改造スペースの二階。
お店を任された成田さんが、諸々の創作ブラジル料理を準備中。
担いできたわがDVDプレイヤーに接続、そこそこ使えるスピーカーもあり。
20人も入ると厳しいぐらいなスペースなので、ちょうどいい。

午後の部に『ブラジルの土に生きて』。
夜の部に『移住四十一年目のビデオレター グアタパラ編』。
とくに前者がかなりのインパクトだったようだ。
われながら、よく改訂版までつくった。

10年来のお付き合いになる倉敷の蟲文庫の田中美保さんがお店を締めてやってきてくれた。
しかも拙著の販売をしてくれる。
あなかしこ。

下に降りての懇親会。
もう12時近い、お店の人も解放してさしあげないと。

ゲストハウスのシャワー使用は12時まで、けっきょくミソギはかなわないままとなった。


10月4日(木)の記 アラビクの感激
日本にて


岡山市内の古民家ゲストハウスの朝。
ようやくシャワーを浴びることができる。
男女共用の洗面所では、こちらが気後れしてしまう。

岡山駅のバスターミナルまで、昨日の上映を主催してくれた赤木さんが送ってくれる。
地元紙などを買いに、駅構内を歩く。
と、昨朝、後楽園で見かけたガイジンのグループがいる。
褐色系で男二人に女一人。
女性はピンクのケースの楽器風のものを背負っている。

そのことを赤木さんに伝えると、「キューバの至宝!」と絶叫。
昨日は岡山で僕の上映とキューバの至宝3人組のライブがかち合うとは聞いていた。
調べてみると、オマール・ソーサ、ジィリアン・カニサーレス、グスターボ・オバージェスの3人。
後楽園の帰りにも横に並んで歩いているのを見かけて、絵になっているのでスマホ撮りしようかと思ってやめていた。

大阪行きのバスは、申し訳ないぐらいがらがら。
緑の山の連なる山陽路は、ここちよい。
梅田のカプセルホテルに荷物を置いて、西崎町の喫茶アラビクさんへ。
オーナーの森内さんとは、開店以前、15年来のお付き合い。
近年は韓国系韓国人でにぎわっている。
店内には森内さん厳選の新刊と古書も置かれている。
帰り際、拙著をたっぷり置いていただいているのを発見。
奥ゆかしいお気遣いに感激。

今宵の上映会場まで、徒歩でいけた。
関西学院大学の梅田のサテライトキャンパス。
えらい繁華街のなか。
主催していただいた津田睦美先生の生徒さん+一般の方々。学生さんたちからもそこそこ質問があり、うれしい。

終了後もたむろしてくれる方々がそこそこの人数となる。
残念ながら学生グループとは別に懇親会。


10月5日(金)の記 京 アマゾン
日本にて


昨夕の大阪上映会に、日本海近くの町に移住したアミーゴが車で駆けつけてくれた。
彼は僕と同じ梅田のカプセルホテルにビバーク。
今日は車で僕の次の目的地、京都まで送ってくれるという。
日本のドキュメンタリー映像業界での共通の知人も多く、話は尽きない。

京都駅近くで降ろしてもらう。
けっこう時間が押してしまった。
水木しげるの原画展というのを見ておきたかったが、断念。
今晩の夜行バスに乗るまで、荷物をロッカーに預けたかったが、やたらなところに預けるとかえってピックアップが面倒になる。

昼のアポの時間が迫る。
スマホで調べると、指定のお店まで徒歩で30数分。
京の街をがらがらと荷物を引きずっていくことにする。

在京都の美術研究者の方とお会いする。
1930年代にブラジルを訪問したパステル画家の矢崎千代二について。
僕自身、見たくてたまらなかった矢崎の南米、そして移民船を画材とした作品をパソコンで見せてもらい、わかる限りのコメントをさせていただく。

絵画としてすばらしく、史料価値も高い。
ブラジル移民110周年、皇族フィーバー、自画自賛の表彰、移民スゴイもけっこうだが、こうした大切なものをきちんと共有したいものだ。

夕方から、今年はや3回目!となる京都の有志による拙作上映会。
驚くべき人が来てくれた。
メイン上映作品『あもーる あもれいら』の舞台となるブラジル奥地の保育園の創設者、ベルギー人のマルゴット神父に60年近く前、小学生時代に大阪で薫陶を受けたという方。
最近、マルゴット神父の消息が気になってネットで検索して、この上映に行きついたという。
まるで、映画だ。

余韻と、懇親会のジビエ鉄板焼きのゴマ油の泡沫に浸りながら八条口から夜行バスに乗る。


10月6日(土)の記 銀幕の開幕
日本にて


今回の夜行バスは隣で嘔吐する人もなく、助かる。
午前6時台に横浜で下車。
崎陽軒のシウマイと神奈川新聞を購入、東横線にて祐天寺の実家に戻る。

今日は午後からホームグラウンドの学芸大学にて上映、来週月曜には離日。
この実家の散らかりと残務、荷造りが片付くかどうか、いやはや。

今日はアンケート用紙のコピー、そして流浪堂さんに預かってもらっている新規購入のスクリーンの設置がある。
早めに実家を出る。

スクリーンは長さ2メートル、バズーカ砲サイズか。
電車で運ぶのはたいへんな大きさだ。
東京からUターンを決意したシンパの夫妻が流浪堂で待機していてくれて、上映会場設営をサポートしてくれた。
これには助かった。

ここのところ猛暑や台風などもあり、ここ地元上映は集客数がイマイチだった。
今日は、一気に挽回。
上映作品は『リオ フクシマ 2』、7月末の上映で台風直撃を受けたため再映。

思い切ってスクリーンを購入して、字幕も多いのでめいっぱい高めの設定にしてよかった。
いい上映ができたと思う。

18時前に撤収、懇親会参加希望は10名ほど。
僕の出国準備もあり、アルコール抜きの喫茶店を想定していたが、これだけの人数の席が取れない。
ままよファミレスでも、と思うが面々はアルコール希望者が多い由。
キャパの大きい毎度おなじみのチェーン居酒屋での懇親とする。
盛り上がりは尽きないが、21時前でいったんのお開きとさせてもらう。

さあこれから幕引きを美しくいけるか。


10月7日(日)の記 油面の迷宮
日本にて


離日前日。
早朝から出て、あれもこれもするつもりだったが…
体力的にも、肝心な離日準備にも差し障りそうだ。
予定縮小、まずは実家の身辺の片づけ。

午後、思い切って地元界隈の用足しに。
おそらくわが実家から最も近いギャラリー、油面(あぶらめん)の金柑画廊さんへ。
広瀬良二さんの『皺と襞』という個展開催中。
広瀬さん在廊中、僕より年配だがバミューダをはいた気さくそうな人。
お住まいが祖師谷とのことで、世田谷一家殺人事件の話などで盛り上げる。

これまた気になっていて行けずじまいだった油面の KUNIMA COFFEE に入ってみる。
エチオピアの豆があり、明日からに備えてそれをいただく。
まだ場所が確認できていない、この近くにあった舞踏家の土方巽さんのアスベスト館のあとをきちんと訪ねてみたい。
金柑画廊の太田さんに以前、場所を聞いてみたが、いま一つ要領を得ていなかった。

住区センター、老人ホーム、プロテスタントの教会…
そもそも夕暮れ、よけいわかりにくい。
袋小路の道に入り…
岡本太郎の太陽の塔のような、尋常ではない建物があった。
黄昏のなかでも、周囲とは異質。
暗がりで表札を確かめると、アルファベット表記で日本語とは思えない単語。
ここかも。

さあ、次の目的地、学芸大学の流浪堂さんへ。
ショートカットや知らない道にチャレンジすると、しばしば行き止まり。

そもそも、このあたりのことはまれに夢で見ている。
実際は僕の幼少時から平板な市街地だが、夢のなかの油面小学校の裏あたりは、森やら原っぱやら丘陵やら…

この夢は、いわば僕の夢のファイルのなかにあり、ときおりページが追加される。
このあたりは、縄文時代中期の油面遺跡の範囲だ。
さらに…90年近く前にわが亡父やその妹が遊んでいた頃を幻視しているのか。


10月8日(月)の記 成田の替玉
日本→


さあ、出ニッポンの日。
未明から作業、郵便物いくつかとお片付け、荷造り。
冷蔵庫のものの使い切り、お掃除。

実家から恵比寿のホテルの成田行きバス乗り場まで向かうタクシーのゲットもうまくいった。
ホテル前には、なにかを待つ人々の群れ。
ボーイさんに聞くと、結婚式の新郎新婦待ちとか。
そうか、今日は日本の祝日か。

エチオピア航空は成田のチェックインからして混沌だが、なんとかなった。
ラウンジは使えないから、なにか祖国で最後の腹ごしらえを。
寿司といきたいところだが、ナポリタンスパで1500yen以上という場所柄。

あまり好みではないが、850yenの豚骨ラーメン、赤味というのをいってみる。
成田の酒、長命泉のカップ酒が400yen。
テーブルのメニューを見ると…
KAEDAMA 130yenとな。
替玉とは何かの英文イラスト入り説明もある。
飛行機に乗ればまもなく機内食だが、カエダマもいただいておく。

カップ酒のカップをいただいてブラジルに持参しようと思っていたが、下げられてしまったぞ。


10月9日(火)の記 アジア→アフリカ→南アメリカ
→大韓民国→エチオピア→ブラジル


地球の自転に逆行しているから、僕にとっての今日は長い。
一日で、三大陸を踏む。

いまさらながら、エチオピア航空はなかなかの混沌である。
インチョンではさすがにきちんとしていたが、アジスアベバ空港はなかなか。
欧米系の航空会社なら列や順番などを守るのがマナー、当たり前。
こっちは、正直者はバカを見る感じ。
正直に、搭乗順のゾーン分けに従っていたら、搭乗時にはすでに頭上の棚の空きもなかった。
しかしアメリカ系の航空会社よりは客室乗務員が親切で、ずっと離れたところの空きスペースを教えてくれた。

機内映画は邦画の『今夜、ロマンス劇場で』というのが拾いものだった。
「映画は、ひとを幸せにするもの」というのが自明のこととされているのが妙な驚きだった。
わがドキュメンタリーも映画の範疇に入れてもらうとすれば。

今回の日本ファイナル上映会で、震災と福島事故関連の映画を数多くご覧になっている方からこんな言葉をもらった。
他の作品は気が滅入るばかりだけど、岡村さんの作品は気持ちが明るくなる。

孤独の記録映像作家は、このことを考えていこう。


10月10 日(水)の記 世田谷の20世紀は血だまりに幕を閉じた
ブラジルにて


次回訪日までのそこそこのプレッシャーの宿題が複数ある。
が、今日一日は安静にさせてもらおう。

日本から担いできた本をいくつか開いてみるが、なかなかあたりが多いぞ。
読みかけだった一橋文哉『世田谷一家殺人事件』(新潮文庫)を読了。
20世紀最後の夜に世田谷の祖師谷で起こった一家惨殺事件。
韓国の元軍人らしい「足跡」に始まって、なんと日本の組織暴力団の影が。
謎が多いのだが、どうやら殺害された当時、6歳の保育園児だった幼児の言葉の発達が遅れていたことがボランティア面した組織暴力団関係者につけこまれたのが発端のようだ。
まことに、いたたまれない。

思い切って外出、近くでモヤシなどを購入。
夜は鉄板焼きそばをつくる。


10月11日(木)の記 「ドキュメンタリーが風になるとき」
ブラジルにて


成田買いした原田マハさんの『暗幕のゲルニカ』(新潮文庫)を昨日から読み耽る。
絶妙に面白い。
彼女の小説は何冊か読んでいるが、庶民の機微からピカソのような巨匠の挙動まで見事に筆が到っている。
ストーリー展開、落としどころといい、あっぱれな名人の技だ。
この本は進行中のプロジェクトの参考としても読ませてもらった。

さて、最優先の課題。
メイシネマ祭’17を撮影した素材の編集。
もっと早く手掛けたかったが、次々と新たに早急に編集すべき素材が横入りしてきてしまった。
先の離日前に、メイシネマ上映会の藤崎代表からこれをこの11月に上映できるかと打診をいただいた。
今年の分も撮影してあり、さすがに昨年分のまとめを来年まで延ばしてしまうのはサマにならない。

撮影素材は、5時間弱あり。
昨年5月の三日間、計12本のドキュメンタリー映画上映のそれぞれのゲストのトークを中心に撮影したもの。
2017年の藤崎さん手書きのプログラムを改めて見直してみる。
「風よ吹け、霧が立ち込める-----ドキュメンタリーが風になるとき」とある。
いいではないか。
2015年のメイシネマ祭25周年から僕が記録をすることになり、この年は『五月の狂詩曲』、翌年のものは『五月の狂詩曲2016』のタイトルでまとめている。
今度の2017年版は『メイシネマ祭’17 ドキュメンタリーが風になるとき』としてみようか。


10月12日(金)の記 アルゼンチンを食べる
ブラジルにて


今日は西荻窪APARECIDAさんの開店12周年記念日。
ブラジルはアパレシーダの祝日。

連れ合いが彼女の実家の面々との外食を企画した。
場所は、実家の近くのショッピングモールにあるアルゼンチンレストラン。
僕は疲労と時差ボケが抜けないが、運転手役、いやはや。

一族のアルゼンチン人にオーダーはお任せ。
僕は運転業務のため、アルコールが飲めないというつらさ。
僕はこのレストランどころか、このショッピングモールに入るのも初めてで、姪にあきれられる。

実家でしばらく横にならせてもらう。
と、家族が猛烈な嘔吐。

今日は尋常ではないことがいくつかあった。
朝は WASE というアプリに従ったところ、表示の道が通行止めとなっていて、これまで忌避していたスラム街のなかを通らざるをえないことになった。
なかは混とん、何度も停車と徐行を余儀なくされる。
やばい。
現場を知らない人にかみつかれそうな表現だが、サンパウロ動物園隣接のサファリパークを走った時を思い出した。
その先の住宅地では、昼前にもかかわらず、たちんぼの方々が何人も営業されていた。
実家近くの、まず渋滞のあり得ない道路で車が詰まっている。
なんと、体長80センチぐらいのオオトカゲが手傷を負いながら横断していたためのようだ。

アパレシーダ、日本語では「顕現」の語をあてる。


10月13日(土)の記 東洋人街から離れて
ブラジルにて


今日は日本からやってきた知人と近くで会食。
隣の駅近くの大衆シュラスカリアに案内。
今どきの日本の若い人らしく、あまり食べないな。
こちらもかつての勢いはないが。

僕のとらえているこちらの文化情報を喜んでくれるので、お気に入りのスペースに案内。
Lasar Segall美術館はなんと常設展は改装中。
が、「未来の南へ」と題した特別展が意欲的。
解説文の冒頭から Stefan Zweigについて言及されている。

自画自賛の日本スゴイ、日系人スゴイ、ミヤサマキレイ、から離れた知的美的ここちよさ。

そのあとで訳あって『メアリと魔女の花』という日本のアニメ映画のポルトガル語吹きかけ版をシネコンで見る。
可動式の背もたれだが、いま一つあずましくない。
予想通り、少しうとうと。


10月14日(日)の記 『アウトサイドで生きている』
日本にて


いやはや今回、日本から担いできた本は、あたりばっかし。
岡山での上映会の前に、主催してくれた赤木さんがランチに案内してくれた HIBARI STORE で2冊の本を買ってしまったが、どちらも収穫。

さっそく読み始めた『アウトサイドで生きている』(櫛野展正著、タバブックス)は面白すぎ。
冒頭で取り上げられている「クイーン・オブ・セルフィー」の女性はブラジル生まれというのもオマケの面白さ。

「本書に登場する人たちは、自分の人生に覚悟を決めた人たちだ。彼らは、失敗を恐れてはいない。思い立ったら、すぐ行動に移す。誰になんと言われようと自分のやりたいことをやり続ける。そして、自分の人生を自分らしく生きるために、何をして何をしないかをはっきり決めている。」(前提書「はじめに」より。)

いま、ぱらぱらとめくっていて本文中のこの部分が目にとまった。
「『自由に生きる』ということは、自分で自分の人生を生きていく覚悟を持つ、ということだ。それは、組織や規範に縛られた僕らにとって、もっとも難しいことなのだから。」

祖国で安倍政権と自民党をのさばらせているのは、「自由に生き」ている人があまりに少数だからかもしれない。


10月15日(月)の記 断食編集人
ブラジルにて


さあ久しぶりに一日断食だ。
今週の金曜日には、さらに久しぶりにサンパウロで邦人相手の上映と講演あり。
同じ上映作品を別の方にも送る必要があり、DVD焼きをしないと。

そのもとのデジタル素材が、いっきに劣化しているではないか。
あたらしい編集システムに取り込んで、美術品の修復のような細かい作業を繰り返す。
美術品の修復は手掛けたことはないが、縄文土器の接合作業なら、少しはたしなんだな。

思ったより痛手は深く、途方に暮れもしたが、本日ようやく完了。
さっそくDVDに添え状を書き、古封筒を再利用して郵便局で書留便にて発送。
これでメインとすべきメイシネマ祭2017の記録映像の編集に没入できる。

自分のトークシーンは、まことに汗顔。
テキトーに、いやさ確信犯でカットを加える。


10月16日(火)の記 羽田澄子監督かたる
ブラジルにて


メイシネマ祭’17の記録のヤマ場。
羽田澄子監督の来場とトーク。
ご存命の日本の記録映画監督のなかでは、まさしく巨匠中の巨匠。
西暦1926年1月3日、大連生まれ。
撮影時で満91歳。

186分、3時間を超える大作『早池峰の譜』が上映された。
体長が厳しいので上映前に観客の皆さんにご挨拶をされることになった。
背筋を伸ばして傾聴すべき語り。

その後、退席される予定が、3時間余りもご覧いただく方々にお詫びと感謝の気持ちから、客席に最後までとどまられた。
上映後、藤崎代表が羽田さんのところにマイクを届けて、あらためてお言葉をいただいた。
編集中に泣く。

よりによってこの時、僕の撮影機材にトラブルが生じた。
とにかく致命的にならないよう対処したが、うろたえて計算違いが続いた。
それを編集でどこまでカバーできるか。

今日また新たな致命的クラスのトラブルに気づく。
まさしく血の気が引くが、これは編集プロセスでの事故とわかり、胸をなでおろす。


10月17日(水)の記 アートの眼ならし
ブラジルにて


昨日、東洋人街の歯医者に行ったのだが、さっそく問題。
今日の午後イチで再訪となる。

時間もメトロ代ももったいない。
次の予定もあるのだが、ダウンタウンのカイシャクルトゥラル銀行のアート展を早見することに。
三つの特別展を開催していたが、どれも特に僕の心をひくものがなかった。
がっかり感と、ほっとした感も。

ただいまサンパウロではラファエロ展が始まり、そもそもサンパウロヴィエンナーレが始まっている。
次回の訪日まであわただしいが、これらは必須。
それへの、眼ならしというところで。


10月18日(水)の記 ビデオ編集危機一髪
ブラジルにて


朝、ウエブ日記などに手を加えてから、さて映像編集を始めようとして…
ノートパソコンに取り込んでいる編集システムが、シリアルナンバーの入力を要求してきた。
え?
こちらに持ってきていたパッケージのなかに長々のシリアルナンバーが印字されていて、これは助かった。
今度は、暗証番号を要求してきた。
まるで覚えがない。
よく使うのをいくつか入力してみるが、NG。
さあ困った。
購入当時のメモ帳を探して…

いやはや、あったあった。
なんとか編集システムの再開かなう。
日本に上映中止のお願いを入れなければならないところだった。

午後から二件ほど、東洋人街に日本人の知人に会いに行く。
一件目は日本から来ている若い人。
ぜひ会いたい、ということでこの取り込み中に都合をつけた。
4か月ほど前にも乞われて会っていた。
その時、彼がメモを取っていたはずの基本的な単語を口にすると、それは何のことかと聞かれる。
それ以前に、今でも僕のウエブ日記の存在もご存じないのに驚き。
見ればわかるその内容の説明をと求められて、さすがに勘弁してもらう。
思えば先回、会った時にブラジルの先住民のことを聞かれた。
僕はウエブ上でもブラジルの先住民について書いていることを伝えたのだが、もちろんそれを読んだ気配はなく、「インディオとどう付き合ったらいいか」などとまた聞いてくる。
なぜインディオと付き合いたいのか?と先回、会った後でメッセンジャーでも伝えているのだが、それは問答無用のようだ。
本業で追い込まれている時に、いやはやわが不徳の致すところ。

次の面会に遅れてしまう。
中南米の風土病シャーガス病の権威、三浦先生とのお話。
若者に「これから風土病の専門家に会いに行くのに遅れてしまう」と言ったら、
「フード病」と思ったようで、何の食べ物の病気かと質問を受けたのはご愛敬。
彼の今日も質問のなかでは、いちばんサエていたかも。


10月19日(金)の記 パウリスタの金曜日
ブラジルにて


「預言者故郷に容れられず」。
こんな2000年前の教祖のツイートから話を始めようと思っていた。
けっこう時間が押してきた感があり、はしょる。
「ブラジルを知る会」という主にブラジルの日本人駐在員の夫人たちからなる勉強会に呼ばれる。
20年近く前に何度か呼ばれていたが、まるで世代は交代して気分は浦島太郎。
1時間ほどの作品の上映とトークを、パウリスタ大通り沿いの一角で。

いくつかのツボを話し漏らしてしまったが、まあ及第点かな。
そのまま有志の方々と近くのホテルでランチ。
午前中の講演では控えたという話を聞きたいというリクエストあり。
「ブラジル日本会議」にまつわる話だった。
が、そもそもここにお集まりいただいた方々は「日本会議」とは何かをご存じなかった。
安堵、それ以上に危惧。
どこから、そしてどこまで話そうか。

けっこう今日のこのイベントのことでナーヴァスになっていた。
とにかく無事そうに終えて、どっと疲れ。
それでもせっかくパウリスタ地区に出たので、FIESPで開催中のラファエロ展に行ってみよう。
あのラファエロの特別展、しかも無料、行ってみると列なし。
ずばりラファエロの実物は僕が見たところ3点ほどだが、「アテネの学堂」の巨大パネルと解説などあり。
照明が暗く、解説文の文字が小さいので、現物のみ会場を二回りほど拝んでおく。


10月20日(土)の記 今日も危機一髪
ブラジルにて


昨日はどっと疲れが出て、夕食の支度もパスして寝込む。
今朝も体調不良の余韻、昼過ぎまで臥せる。
少し軽いものが読みたくなる。
水戸の川又書店で求めた『茨城の怖い話』。
コンビニ本、ぐらいのノリのつくり。
最初のエピソードから、編集者がきちんとチェックしているのかというような不整合を発見。
ライターの得意分野なのか、死姦と膣痙攣というネタが続く。
それでも、なじみのある地名が続き、目くじら立てずに読了。
1943年10月26日に発生した土浦駅構内での大事故のことも繰り返して取り上げられていて、これを知っただけでもありがたい。
http://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000136460
次回、土浦を通るときに黙祷しよう。
先月のPARC講座の際、一同でピクニック気分で通過したあたりが事故現場のようだ。
先回の講座の時は知らないでごめんなさい。

本業の編集に踏み切るのに、いまひとつ気が重い。
来週土曜日にサンパウロ郊外の農場で予定されている上映の素材の準備を使用。
懸念していた作品の方は、マスター扱いのテープの劣化もうかがえず、胸をなでおろしながらパソコン編集機に取り込んで作業。
ところが、メイン上映作品のDVD素材がこちらにみあたらない。
しばし、うろたえる。
VHSデッキを担いでいってVHSで上映するか。
が、別の心あたりの方法を試してみて…
試行錯誤のうえ、なんとかなりそうだ。
いやはやいやはや。


10月21日(日)の記 ウエブはあざなえる縄のごとし
ブラジルにて


ひとり仕事のフリーランスの身として、時おり自分の名前をパソコン検索してみる。
思わぬ方が拙作の上映活動を応援してくれているのを知って、さっそく御礼の連絡をしたり。
時にはトンデモな誹謗中傷もあり、それへの対応はケースバイケース。

ありゃ。
ブラジル旅行についてのウエブ投稿サイトで、僕が名指しで、そしてわが代表作『あもーる あもれいら』がケチョンケチョンにくさされているではないか。
(くさす: 悪意をもって悪く評する)
上映の場での僕の発言にキレてくさしているようだが、そもそも僕の口から出るとは考えられない言説をもとに僕と拙作をこき落としている。

お話にならないレベルだが、先方はどこの誰とも明らかではなく、そのブログに書き込むには会員登録をしなけれなならない仕組みになっている。
あまりの下品さに引用もはばかられるが、これからも上映を続けるつもりの作品と僕のことがあり得ない理由でおとしめらている文章が不特定多数に向けて拡散されているのを看過するわけにはいかない。
僕がおとしめられるのは慣れっこだが、僕の被写体の方々、制作と上映を応援してくれている方々までおとしめられることは許せない。

まずはフェイスブックでこのことを明らかにしておく。
さっそくシンパの方々からのかたじけない書き込みが続く。
問題のブログを検証して書き手の精神構造を分析してくれる仲間もあり。

いっぽう、丁寧に拙作を鑑賞してレビューを紡いでくださる方もいる。
http://flim-flam.sblo.jp/article/184624399.html
「節度をもって」のお言葉に、姿勢を正す。

吹けば飛ぶような異国住まいの河原乞食を支えてくださっている方々に、感謝です。


10月22日(月)の記 スカイプの沈黙
ブラジルにて


2週間後には、またサンパウロを出家して日本に向かわねばならない。
それまでの二つの大きな課題の最初、メイシネマ祭’17の記録のまとめの最中。
メイシネマ上映会代表の藤崎代表に至急、確認したいことあり。
藤崎さんはメール系をたしなまないので、これまで在日本の森田恵子監督に「糸電話役」をお願いしてきた。
こちらの丑三つ時に開いた森田さんからのメッセージを受けて、眠っていられなくなり、藤崎さんとの直接の相談を図る気になった。

ノートパソコンを買い替えてから、ユーザーネームやパスワードがどれがどれだかわからなくなり、スカイプを使用しなくなっていた。
緊急事態のため、新たにスカイプを立ち上げて…
藤崎さんの携帯電話は留守電になっている。
固定の方にかけると先方の声は聞こえるが、こちらの音声が聞こえていないようだ。
こっちの問題のようで、いろいろテストするがお手上げ。

家人に譲ったノートパソコンに切り替えるか。
パスワードはなんだったっけ…
相変わらず藤崎さんの携帯は留守電サービス。
ご家族との電話で判明したことは、藤崎さんは本業の関係で東北の秘湯に行っていて、電波が届かないかもしれないとのこと。
秘湯さわがせ。
秘湯で映画祭をやってもらうのも悪くない。

とにかく、できることは進めておこう。
さあ今日も一日断食だ。


10月23日(火)の記 聖市二万二千歩
ブラジルにて


いやはや、よく歩いた。
朝イチでパウリスタ地区のクリニックへ。
トリアノン公園で時間調整。
イビラプエラ地区で自動車免許更新手続き。
ついでイビラプエラ公園内で開催中の第33回ビエンナーレ展。

だだっ広いビルの3フロアで展開されるビエンナーレの鑑賞は、なかなかのエネルギーを要する。
覚悟を決めて入ってみると…
例年より、だいぶ緩い。
近年の半数ぐらいの出品数ではなかろうか。
見る方には、ラクである。

今回は、身近な感じのする作品が多い。
アート抜きに、そこいらで見かけるような…
宇宙におわすもの、すべてアートなのかもしれないな。
午後から多い団体客ともぶつからないで済んだ。

帰路は近くに開通したメトロの新駅に潜ってみる。
やれやれ、それでも今日は22000歩、約14キロ歩いてしまった。
身分証明証などのオリジナルを携帯していただけに、盗難等に遭わずに何よりでした。


10月24日(水)の記 悪い指紋の男
ブラジルにて


サンパウロは、朝から雨。
こちらの自動車免許の書き換えの時期である。
自分で直接、交通局に手続きをするとややこしそうだ。
医者の検査などを別個にしなければならないとか。
わが家の徒歩圏に、日本でいえば自動車学校みたいのがある。
そこが手続き代行を行ない、そこで医者の検査もできるとのこと。
手数料を払って、そこですすめていた。

それでも新たな指紋登録などは自分で交通局に出頭せねばならず、それも昨日、終えることができた。
あとは、代行業者お抱えの医師の検査のみ。
時間予約の必要なしとのこと。
楽勝気分で朝イチでいってみたが…

これがタチが悪かった。
その医者のところでもふたたび指紋を調べて交通局のものと照合するシステムのようだ。
それがうまくいかない気配。
「悪い指紋だな。機械が読み取らないじゃないか。また交通局に行って取り直しだな。」
こっちの指紋が悪者扱いだ。
昨日の交通局の職員もこちらの指にクリームをつけるなどして取り直していたが、もちろんこちらが非難されることはなかった。
日本人なら、こんなこちらの落ち度ではないことでも「すみません」ぐらい言ってしまうことがあるが、詫びてはいけないケースもあるというもの。
システムないし、採取者の問題だ。

医師はなんとかなったとも言わないが、視力検査に移ったのでシモンはクリヤできたのだろう。
点灯する文字盤の2行を読めという。
下の行が読みにくい。
メガネ着用だが、そのメガネはダメだと言い始めた。
これは大変な奇遇だが、僕は昨日、ブラジルではじめて眼科のクリニックで診察を得て、メガネも眼科医に称賛されていたのだ。
それを告げると、そんなはずはない、ダメだ、という。

こちらが理詰めでいけば、さらに自分の「権威」をタテにイチャモンをつけてくるだろう。
黙っていると、けっきょく無罪放免となった。
ばかばかしい。
次の更新はいつになるか、その時は不快指数が低い方法を考えよう。


10月25日(木)の記 『Kusama』のかげで
ブラジルにて


第42回!サンパウロ国際映画祭開催中。
が、ただいま次回訪日を控えてそれまでに必須の自作の映像編集を二つ抱えている。
今年はスルーしようと思っていた。

しかし一昨日、パウリスタ地区に出た際に今年のポスターを見てしまった。
まことに秀逸。
この映画祭のポスターは忘れられないものが少なくない。
まずは今年の献立だけでも目を通すか。

400本近い映画の内容をチェックするのは、けっこうな作業。
うーむ。
月光荘の8Bエンピツで何本もマーキング。
この機会に見ておかないと、生涯見られそうもないものもあり。

して、今日は2本を厳選。
まずは『Kusama-Infinity』、草間彌生さんをアメリカ人スタッフがドキュメントした作品。
僕がご縁をいただいている画家の富山妙子さんは1921年生まれ。
草間さんは1929年生まれ。
第二次大戦を生き抜いた日本人の女性画家としての共通点、相違点を考えてみたい。

草間さんの著書も少しは読んでいたが、あらためてジョージア・オキーフの尽力に感動。
そして草間さんはベトナム戦争時のアメリカで反戦を訴え続けた。
米国を去り、新たに日本人キュレーターに再評価されるまでの20年。

これから富山さんについての小編をまとめようとしているだけに、これは見ておいてよかった。
彼我の制作規模の数ケタ違いには苦笑するしかないけど。


10月26日(金)の記 日ポ奇譚
ブラジルにて


日本ブラジル友好史みたいなのは我田引水自画自賛がきつく、敬遠しがちである。
それに比べると二ケタぐらい存在そのものがまれな日本とポルトガルとなると、まずは興味がわく。

昨日、見た2本目の映画はポルトガル映画『Perignaçâo』、「巡礼」の意。
日本語ではフェルナン・メンデス・ピントと表記される16世紀のポルトガル人の冒険家の話。
大航海時代にインドに渡ったフェルナンは、さらにオリエントを目指して…
明朝の支配下の地に渡る。
数奇な運命を経て、北京へ。
そして!あのジャポンに至るのだ。

映画のなかではまずブンゴに、そしてタネガシマに渡った彼の日々が紹介される。
これがなんともエキゾチック。
登場する日本人のニホンゴは、どうやらネイテイブっぽい。
演技のほどは、ブラジル奥地の、あまり日本文化に接していない日本語学校のはじめての学芸会、といった感じ。
万里の長城も登場するし、中国では「ちゃんと」ロケされているようなので、ジャポンはそのついでに中国領内でセッティングしたのだろう。

この映画でも語られているが、フェルナンは日本での知名度は何ケタも上のフランシスコ・ザヴィエルの日本行きの資金を提供したという。
彼の著書のタイトルはずばり『Perignaçâo』、日本では『東洋遍歴記』のタイトルで東洋文庫から翻訳が出ている。
次の訪日時にゲットしよう。

さてさてそのノリから今日は日本で『ポルトの恋人たち』のタイトルで今年公開の映画も見てみた。
これまた奇作。
18世紀のポルトガル、そして21世紀の東京オリンピックのあとの!日本が舞台。
ポルトガルを衰退に導いたリスボンの大震災から話が始まる。
日本の地震を思わずを得ない。
監督は福島のドキュメンタリーを撮っている舩橋淳さんという若い日本人ではないか!
ポルトガルパートにはけっこう引き込まれたが、わが日本パートはちょっと設定に無理を感じる。
浜松のブラジル系労働者が支える工場などが描かれているだけでも面白いのだが。
それにしても、よくぞこんな映画を実現できたものだ。


10月27日(土)の記 『満洲国水草図譜』
ブラジルにて


今日はサンパウロ市近郊アチバイアにある和栗農場に呼ばれての拙作上映。
昨年、アチバイアに車で出向いて泥道で遭難したこともあり、乗合いバスで。

先回は日本からの留学生やサンパウロ市からの方々中心だったが、今回は地元の日系人の方々も招いたという。
今日のメイン上映作品は『ギアナ高地の伝言 橋本梧郎南米博物誌』。
地元の農家の方々のなかには、生前の橋本先生の薫陶を受けている人もいらした。

驚いたことに、父親が『満洲水草図譜』という本の出版に関わったという方がいらした。
その実物を持参してくれた。
奥付を見ると、1942年の発行。
旧満州で水草に特化した図鑑が出されていたことがそもそもの驚き。
佐藤潤平著、杉野光孝画。
作画を担当した杉野氏が敗戦後、内地を経てブラジルに家族を連れて移住していたのだ。
橋本先生もご子息にこの本を見せてもらって感心していたという。
かつて橋本先生の同僚で、ブラジルの貝塚の発掘などを手掛けた考古学者の酒井喜重氏も晩年をアチバイアで過ごしたと教えてもらい、これも驚き。

ちなみにこの本の著者の佐藤潤平氏についての興味深い資料があった。
ほう、秋田の人か。
http://jsmh.umin.jp/journal/54-2/130.pdf


10月28日(日)の記 宇宙の創造者
ブラジルにて


今日はブラジルの大統領選決選投票の日。
わが家の近くの教会でまつる聖ユダ・タデウの記念日。
投票に行く人、お参りに行く人で賑わう。

サンパウロ映画祭で、ぜひ見ておきたい作品がある。
13時から、ダウンタウンの映画館。
万端くりあわせて参上。

『El Creador de Universos』、直訳すれば『宇宙の創造者』といったところか。
ウルグアイのドキュメンタリー映画。
アスペルガー症候群の16歳の青年が、96歳の祖母を役者としてビデオ映画を作り続けるという話。
青年は自分も出演して、祖母が演じる女性が殺される映画などを撮り続ける。
いわばお遊びの部類のホームビデオだが、なんだか深読みできそうな要素がいくつもあることからこうしたドキュメンタリー映画がつくられて国際的に上映されることになったのだろう。

さあ、自分の仕事をしないと。
家族の食事の支度も。
夕餉は鶏肉とヒジキの五目おこわ。
あ、もうニンジンがなかったか。
ヒジキもこれで最後、日本で買ってこないと。


10月29日(月)の記 『狐とリハビリ』
ブラジルにて


さあ次の訪日までで最後の一日断食だ。
して、訪日までのもう一つの大きな課題の映像編集に着手。
題して『狐とリハビリ』とするつもり。
取り込んだはずのデータが見当たらず、しばしうろたえる。
が、あったあった。

今年、日本で何度となく通った画家の富山妙子さんに関する記録で、とりあえずは内覧用と考えている。
思えば、いろいろあった。
さて、見直しかつ、つなぎ始めてみて…
おかげさまでとりあえず、それらしくかつユニークな小編になりそうだ。
どうぞお楽しみに。


10月30日(火)の記 GERMAN LORCAを観る
ブラジルにて


恥ずかしながら、ロバート・キャパのパートナーだった写真家と混同していた。
キャパのパートナーの方は、GERDA TARO。

これまで利用していた日系の旅行エージェント、通常の営業時間に電話をしても応答なし。
経営者の携帯電話にメッセージを残しても、返しがない。
たまたま出会った日本人の旅行代理店経営者の方が、航空券を買ったわけではないのにその他のこまいものの世話を快く引き受けてくれた。
今日の午後、オフィスにうかがい、もろもろ話が弾む。
さらに下のカフェでごちそうになってしまった。

けっこうな時間になったが、閉催せまる GERMAN LORCA展へ。
彼はブラジルを代表する写真家。
たとえばサルガドの写真は「すごい」、ロルカの写真は「うまい」といったところか。
ロルカを体系的に、しかも無料で鑑賞できるのだ。
パウリスタのイタウ銀行カルチャーセンターにて。

彼の写真のヴァリエーションには目をみはるばかり。
いっぽう彼自身の歩みがとても面白い。
写真を撮り始めたのは、自分の新婚旅行からだという。
会計士の仕事をしていたが、趣味が高じた。
現在、96歳。
画家の富山妙子さんより、ひとつ若い。
して、現役で写真を撮り続けている。

数年前に医者にこれまでのような活動は止められてしまった。
以来、自宅で窓やカーテン、その光や影を撮っているが、それがなかなかの評価を受けている。

彼についてのこうした情報は、会場で上映していた20分程度の映像で仕入れた。
夕食の準備、夕方のメトロのラッシュが気になったが、思い切って見ておいてよかった。
帰宅後、昨日から仕込んでおいた鶏の唐揚げをひたすら揚げる。


10月31日(水)の記 粘菌ホラー
ブラジルにて


来週に迫る次回訪日時に上映すべき未公開映像の編集は、とりあえずひと通り片付いた。
後はその他の上映作品の素材の準備。
近年、作成したマスター素材の思わぬ劣化、さらに素材の編集システムへの取り込みプロセスでのトラブルなどで往生する。
危機一髪の連続。

作業の合間や一服の時の読書。
最近、日本から担いできた書物にはアタリが多い。
高橋克彦さん著『非写真』(新潮文庫)。
ホラー仕立ての短編集だが、写真論として専門書より面白かった。

宇佐美まことさん著『入らずの森』(祥伝社文庫)。
なんと、粘菌ホラー小説。
登場人物の書き込みが細かくリアル。
いったいこの人物が本筋とどのように絡んでくるのか。
読ませる、うまい。
四国山中での現代の怪事件に、あの南方熊楠からの書簡がカギとなる!


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