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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2018年の日記  (最終更新日 : 2019/01/04)
11月の日記 総集編 アフリカ周りでひと回り

11月の日記 総集編 アフリカ周りでひと回り (2018/11/04) 11月1日(木)の記 思い出酒場
ブラジルにて


日本各地にメール大発信作戦展開中。
当地の明日は「死者の日」の休日で、3連休状態に入る。
訪日土産買い出し作戦では、思わぬ定番の品が払底していたり、苦し紛れに面白いものを見つけたり。

家族の祝い事もあり、イザカヤに行ってみることにした。
日本からの駐在員のご夫人で、かなりグルメ巡りをしているらしい方に教わったお店。
グーグルマップだと、わが家から徒歩でも23分。
その名も「思い出酒場」。

店のフェイスブックのページがあり、昨晩、予約のメッセージを送ったが返信なし。
(ちなみに予約希望時間が過ぎてから、予約できないとの返信あり。)
店に電話をするが、18時開店で17時になっても応答なし。
17時を過ぎてからようやく電話がつながる。
18時15分に予約すると、19時20分までに店を出るなら受け付ける由。
家人からクレームを被りそうだが、予約を入れる。

さて時間にたどり着くと、まだ誰も客がいないではないか。
19時近くになると、満席気味。
次に予約していた客がキャンセルしたとかで、まだいてもいいよということになる。

カウンターにファミリー3代で来たとみられる日系の一行。
メニューには日本産の日本酒のほかに焼酎も数種類ある。
一行の老人が「焼酎のお湯割り」とオーダーしても非日系の店員に通じない。
老人がポルトガル語で頼んでも、そもそも「ショーチュー」を店員が理解していないのだ。
日系の店員が呼ばれる。

メニューに日本語で「たまし酒」とある。
ポルトガル語の説明を読んでもわかりにくく、店員にきくと3種の日本酒を選べば、そのうち高い方の2種の値段で飲めるという。
「ためし酒」ということらしい。

経営は日系人とのことだが、すでに日本語がコントロールできていないのがうかがえる。
日本ならそこいらの駅の近くに居酒屋などいくらでもあるが、こちらとなるとこれが人気店。
思えば、僕がブラジルに来たばかりの頃、35年近く前には東洋人街に何軒ものいわば居酒屋があった。
先輩ディレクターが連日、これらのハシゴを繰り返し、太鼓持ちとしてお付き合いした。
その頃の経営はずばり日本人一世。
まさしく一世代以上の隔世となった。

焼き鳥をだいぶ頼んだ。
わが子らに、日本では串に刺してあるのを箸でばらして分かち合うのが是か非かでネット上で盛り上がった、といった話を披露する。


11月2日(金)の記 『透視も念写も事実である』
ブラジルにて


今日のブラジルは「死者の日」の休日。
身内の墓参りに行く習慣があり、各地の墓地はごった返す。
こちらの連れ合いの実家ではすでに複数の故人あり。

当方は訪日を目前にしてオーバーワーク気味なので、拙宅でお祈りさせていただく。
奇しくも流浪堂さんで入手した『透視も念写も事実である 福来友吉と千里眼事件』(寺沢龍著、草思社)を読んでいる。

明治時代、第一回ブラジル移民船「笠戸丸」が渡った直後の頃である。
東京帝国大学の心理学の研究者だった福来友吉は、いわゆる千里眼などの超常現象に科学的に取り組むことになる。
然るべき成果を上げ続けるが、心ない曲学阿世の研究者やマスコミにおとしめられて、大学を追われることになってしまう。
丁寧かつ誠実な調査によって紡ぎあげられたことがうかがわれる労作ルポである。
「あとがき」では千里眼を詐術と疑っているとみられる「知の巨人」立花隆氏も批判されているが、 立花氏はこれにこたえているのだろうか。

この本を読んでつくづくわかることは、福来友吉も自身の「千里眼」能力の研究に協力した人たちも、社会的にもこうしたことを披露してマイナスなことは多々あるにしても、なんらメリットがないことだ。
事実に、真実に、自分に忠実であろうとしたために邪な輩たちに誹謗中傷を浴びせられることになる。
学ぶこと、考えることが多々ある。


11月3日(土)の記 香港寿司
ブラジルにて


今日も日本の各方面へのメール送信。
新たな上映素材の準備。
なにせ上映作品が多岐にわたり、こんがらがってきた。
思わぬトラブルもあり、いやはや。

昼はわが子と近くに外食へ。
出ブラジルが近いので、僕のお好みとさせてもらう。
近くの香港人が営むスシ系の量り売りシステムの店へ。

日本ではチェーンの寿司店の夜間値引き品ぐらいしかなかなかありつけない。
とはいえ、こっちで本国の劣化コピーレベルのラーメンやスシを大枚はたいて食べる気にもならない。
が、この香港人のところはまず日の本では見られないような、一線を越えたものがいろいろあって面白いのだ。
巻きずしの天ぷら、さらにパン粉をまぶしたカツ状の揚げズシ。
刺身にクリームチーズたっぷり乗せ。
時間の経過したスシを揚げ物にしているのだろうか。
かじってみないと、なかがなんだかわからないのも面白い。
さすがに昆虫ズシはみあたらないようだけど。


11月4日(日)の記 ブラジルの大アジ
ブラジルにて


日曜の路上市にて…
刺身用の魚を物色。

こちらで Xaréu と呼ぶアジの仲間をすすめられる。
属名 Caranx、和名はギンガメアジ属か。
ギンガメとはなんのことか、ちょっと調べても不明。

このシャレウ、金色に輝き、色としては食欲をそそらない。
そもそも大きすぎる。
あんちゃんは、安くするから持っていけという。
はかると、3キロ。
ま、いいか。

昼、連れ合いの実家に持参して実家にあったマグロやサーモンとともに刺身におろす。

わが家に戻って、ホネ回りの肉をスプーンでそいで、ナメロウにする。
切り身は塩こうじをまぶして、焼き魚に。

実家からマグロの残りをもらってきた。
先日のお好み焼きの残りのヤマイモがある。
これでマグロ山かけにしてみると、女性陣に好評。
まずわが家では高価なマグロの赤身を買うこともないからな。

明日の今ごろは、サンパウロ出家か。


11月5日(月)の記 中生代のナマ臭さ
ブラジル→


ブラジル出国当日となる。
土産系で、荷物は満パイ。

今日も夕食は僕がつくる。
近くの冷凍食品店で、ピラルクーの切り身を見つけて買ってあった。
アマゾンの巨大魚にして古代魚。
1億年ほど形態を変えていないという。
時間尺で測ると…中生代か。
あまり過去生の記憶もない時代だ。

僕にとって最もおいしい魚、と公言していた。
サンパウロ近辺での養殖もあるようだが、アマゾン地域以外での養殖モノには食指が動かない。
これは、アマゾナス州産とある。

サーモンに似た味の記憶もあり…
塩コショウで鉄板焼きとする。
折りしも家人のこさえたニンニクとアボガドのペーストがあり、これをかけてもいいだろう。
僕以外の家族にはなじみのない魚であり、簡単な講釈も添える。
いただくのは、何年ぶりだろう。
がっつりした身であり、わが子に豚肉かと聞かれるぐらい。

久しぶりのお味は…
むむむ、なんだかナマぐさな味わい。
もっと香草類を使うべきだったな。
あるいは味噌漬けとか…
家族は食べてくれるが、次回はもっと工夫します、帰国後に。


11月6日(火)の記 シャイニング萌え
→エチオピア→


サンパウロからのエチオピア航空機で、日本に向かうらしい日本起源の新興宗教のグループと一緒になった。
ポルトガル語で「感謝」と書いた青いTシャツを着ている。
胸にはガイジン字体の漢字で「感謝」と書かれたバッジ。
どの宗派からはわからない。

さて、機内映画。
うーん、あまり食指が動くのがないなあ。
『Ready Player 1』というスピルバーグ監督のを見てみる。
英語音声、字幕がないのでお話のディテールについていけないけど。
大キューブリックの『シャイニング』への大々的なオマージュに圧倒される。
『シャイニング』を見直したくなった。

のちにググると、日本では『レディ・プレイヤー1』のタイトルで今年4月に封切られた由。
あのメカニコングも登場していたとあるが、これは気がつかなかった。
何度かウトウトしては、巻き戻していたのだが。
原作では主人公がウルトラマンに変身したが、映画化では版権がクリアできずに断念したとのこと。
残念。

帰りの機中でもかかっていたら、また見てみよう。


11月7日(水)の記 アフリカ周りでひと回り
→大韓民国→日本


マドンナは8月16日、マイケル・ジャクソンは8月29日、そして僕は少し遅れて今日。
マイケルは鬼籍に入ったが、これで3人とも十干十二支でひと回りである。
これがけっこうなプレッシャーだった。
スノッブにがちゃがちゃ祝われるのを避けたかった。
できればこの日はまるまるフライトの途中で過ごしたかった。
しかしエチオピア航空でのつなぎはデイリーではなく、少しこぼれてしまった。

誕生当日は韓国仁川空港で迎える。
セキュリティチェックのあるトランジットだが、入国はしていない。
Wi-Fiの電波をつかむと、スマホに桁違いのメッセージが入っている。
フェイスブックで日常になっている誕生祝メッセージがほとんど。

11月7日を数時間余して祖国日本の成田空港着。

渋谷経由で目黒の実家に22時に着けた。
急げば間に合うかも。
F1タイヤ交換なみにシャワーを浴びて着替えて、おっとり刀で学芸大学へ。
23時閉店前の流浪堂さんに間に合った。
二見ご夫妻に温かく迎えていただく。
肉声で初めて聞く誕生祝いのお言葉。

お店宛てに送ってもらっていた、佐々木岳久さん気迫のフライヤをピックアップ。
午前1時までオープンのスーパーに寄っているなどしているうちに、つかのまの祖国の11月7日は過去となった。


11月8日(木)の記 はじめにいのりありき
日本にて


実家から、歩けば歩ける距離。
カトリック目黒教会の早朝のミサにあずかることにする。
小さな聖堂に外国人司祭が4人も登場して驚いた。
沈黙の祈りのあわい、静かに電車の走行音まで聞こえてくるではないか。

午前中はメイシネマ上映会代表の藤崎和喜さんを小岩に訪ねる。
今度の日曜に上映していただく『ドキュメンタリーが風になるとき』のDVD素材をお渡しする。
午後は、世田谷にお住いの画家、富山妙子さんのお宅を訪ねる。
一昨日のお誕生日のお祝いの粗品をお渡しする。
これだな、と思って僕なりにブラジルでフンパツした品だが、面白がっていただけたようだ。
満97歳を迎えられた。

いままではバスを乗り継いで富山さんのお宅にうかがっていた。
今回、スマホが田園調布経由のルートも表示してきた。
これ、わるくない。
久々に田園調布駅に立ち寄ると、成城学園前ふうの空気。
バスとバスだと、まるで時間が読めなくなって遅れがちだが、電車が入るとだいぶ締まる。
帰路は日の暮れた田園調布駅周りを少し歩いてみる。


11月9日(金)の記 明日に向かって打って出る
日本にて


さあ明日が東大東文研でのメインイベント。
それまでに散髪をしておきたい。
昨晩、19時過ぎに学芸大学の格安散髪店に寄ってみたが、すでに締まっていた。

今日も早朝からいろいろ動こうかと考えていたが、体がもたないかもしれない。
とにかく、散髪だけは済ませよう。
目黒川近く、目黒通りに面した「理髪一番」へ。
ここは昼の12時までなら、格安価格からさらに300円サービス。

女性が担当してくれる。
指使いが柔らかい。
店内に流れるラジオの声に、聞き覚えが。
なんと大御所ユーミン:松任谷由実ではないか。
オリジナルアルバム『ひこうき雲』から45周年とか。
わが10代の記憶とオーバーラップ。
TOKYO FM の番組だった。

午後は、東大にて打合せ。
プロジェクト代表の真鍋先生に『狐とリハビリ』をご覧いただき、明日上映することのGOをいただく。
渋谷、学芸大学によって所用を済ませて。


11月10日(土)の記 東大モトクロス2018
日本にて


さあ今回訪日のメインイベント。
東大本郷での、画家の富山妙子さんをめぐるプロジェクトで、拙作上映と講演、ディスカッションのセミナー。
午前中は関係者での勉強会。
いやはや研究者の道を選ばなくてよかった。
と思わせるほど鋭い研究者、論客ばかりだ。

午後の公開イベントはオカムラ系の仲間も来てくれるが、どんな人たち、エキスパート、刺客がいるかもわからず、緊張。
映像が映り、音声も聞こえるので安心していたが、ああ、アスペクト比がワイドになっているではないか!
担当の人に聞いてもわからないという。
むむ、横太の犬養牧師…、ごめんなさい。

初公開『狐とリハビリ』の上映の際にプロジェクターのリモコンをいじって、ようやくスタンド画面に戻すことができた。
なんとも締まり、美しいサイズ。

会場の、面白いことに女性からの発言だが、画面の富山さんからパワーをもらった、元気づけられた、といった声が続く。
映像配達人の本懐。

富山さんへのツッコミが足りない、とのお声も。
「やや」冷静さを失う。
富山さんのところにさんざん通って、撮影はダメ、の連続だったのだ。
ようやくオッケーが出て、岡村流に相手からの声を引き出すことができたのだが。
僕はこれが限界です、どうぞ他の方がされるならされてみてください、と言明。

キチンと拙作をご覧いただければおわかりだろうが、富山さんはこちらの質問に答えずに話されることが多いのだ。
そもそも耳が遠く、とにかく大変だったがここまでこれたのだ。
これ以上、なにをどう突っ込めと申されるのか。

プロジェクト関係者で懇親会。
隣り合わせた僕より若い男性研究者たちが、二人ともウルトラ怪獣系に造詣が深いのには驚いた。
うちひとりが断言することがどうも腑に落ちず、かえって調べてみたらこっちの方が正しかったぞ。


11月11日(日)の記 ドキュメンタリーが風になるときが封切りになるとき
日本にて


午前中の欲張り計画は、縮小。

小岩へ。
今日のメイシネマ上映会では、映像機器操作を担当することになった。
なぜか、画面の天と地が反転。
僕が南半球から来たから、などと周囲を笑わせるが。

会場にマニュアルがない。
技術に詳しい来場者にも協力してもらうが、解決せず。
藤崎代表に施設のスタッフを呼んでもらう。
最初の人は、お手上げレベル。
次の人と力を合わせて、解決。
なんでこんな事態になったのか、お互い首を傾げあう。

『ドキュメンタリーが風になるとき メイシネマ祭’17』の初公開。
2017年のメイシネマ祭三日間12本の作品の上映のゲストのトークを記録したもの。
画面のなかの会場が湧いて、それを見ている今日の会場も湧くのが面白い。
上映後には、フロアからこの作品を認めてくれるあたたかくうれしい声をいくつもいただく。
ドキュメンタリーとはなにか?を何重にも考えさせる作品だな。

懇親会場でおなじみメンバーの四宮鉄男監督から、「生きててよかった」レベルのうれしいコメントをいただく。
これはもう、来年もこの時期に訪日してとるっきゃないかな?


11月12日(月)の記 狐とパソコン
日本にて


今日も世田谷桜丘の富山妙子さん宅へ、田園調布経由で。
富山さんに拙作をどのように試写していただくか、考えあぐねて。
富山さんのお宅にあるモニターにはHDMI入力端子しかない。
僕の持参するDVD携帯プレイヤー使用だと、アダプターが必要。
渋谷の大型家電チェーンに行ってみたが、店頭にはなかった。
ネットで探して購入したが…
どうやら中国から送られてくるらしく、間に合わない。
HDMI端子付きのDVD携帯プレイヤーを買うとなると…
安いので2万円台なかばである。

とりあえずわが15.6型の大型ノートパソコンを持参するか。
大型ノートパソコンにビデオカメラ一式を担いでいくのは、なかなかに重い。
して、富山さんに『狐とパソコン』じゃなかった、『狐とリハビリ』をご覧いただくことになる。
歩いているとこが長い、ここ(神社の本殿に向かう富山さんと療養士をカメラで送るショット)から始めたらいい、などと僕と異にする意見をおっしゃる。

そのあとで、当人は忘れていらした5年前の僕が富山さんがインタビューをした映像をお見せする。
富山さんは、自分の声が聞き取れないとおっしゃる。
富山さんは、音声がほとんど聞き取れていなかったのだ。
それなら、先ほどのような意見が出るのもわかる。
富山さん自身の語りを、僕が要約してお伝えする。

僕がアーチストを記録した作品はまた次回にでもご覧いただきましょう、ということに。
やれやれ、大きく前進できたかな。
帰路は重荷も軽く、田園調布駅近くのカフェを自分にフンパツ。


11月13日(火)の記 大声のささやき
日本にて


ブラジルでも日本でも手続きの重なる、まさしく人生の節目。
今日は、懸念の日本編。

手続き会場の最寄りに友人夫妻が住んでいる。
お互い時間があればカフェでも、と声をかけると応じてくれた。
まさしく会場と目と鼻の先の住まいだった。
「どうぞ拙宅に」と招き入れていただく。

妻の方は勤めに出ていて、なんと食事を用意してくれていた。
妻にメシを作らせて働かせ、夫と日中からアルコール、という極道の道へ。
訪日以来、張り詰めていただけにまことにリラックス。
ついでに午睡までさせていただく幸せ。

思えばこの夫、あの岡村が目をむくほど声が大きい。
以前、昼の定食屋でチンピラに「うるせえ」とどやされたこともあり。
それを知った妻の配慮かもしれない。
お宅でも声は大きいので、近隣からクレームがないか確認しておく。


11月14日(水)の記 東京のエコ地域
日本にて


副都心渋谷駅ホームは最悪レベルの設計で、サンパウロの地下鉄よりはるかに劣る。
が、東急東横線に住まう者としては、渋谷さえ外せばホーム移動の上り下りがなく、あっちゃこっちゃに行けるようになったのはけっこうなこと。
祐天寺駅から板橋練馬方面に行くのは便利になった。

夕方から、江古田方面へ。
まずはコスモナイトαさんへ。
ブラジルで捜査願いを預かったソフビを探してもらう。
外にあった小物を自分用に購入。

ついでギャラリー古藤さんへ。
届け物と打ち合わせ。
サプライズの人を招いているという。
これは、サプライズ。
夫婦が登場したが、夫の方とは20年以上前にブラジルで出会った。
同じ部屋で寝起きを共にしたこともあり、彼は拙作にも登場している。

お蕎麦屋さんでの美酒とお任せ料理に舌鼓を打つ。


11月15日(木)の記 狐のテコ入れ
日本にて


今日も15.6インチのノートパソコン、撮影機材一式を担いで世田谷の富山妙子さんのお宅へ。
富山さんは寝込まれていた。
午前中、張り切ってしまい、どっと疲れが出たという。
安静にしていただくようお願いして、お暇する。
満97歳の御年、心配だ。

千歳船橋のイートインのあるパン屋で仕切り直し。
今夕は知人からフェイスブックで流れてきたイベントに行くつもりだった。
気になっていたドキュメンタリー映画『沈黙は破られた:16人のニッケイ』の上映が早稲田のwam:女たちの戦争と平和資料館 で行なわれる。

上映環境は、かなり過酷。
他人の上映見て、わが上映直せ、の学び。

受付のところの壁に富山妙子さんのリトグラフ『光州へのレクイエム』が飾られていた。
帰りにも眺めていると、スタッフが「奥にもありますよ」と教えてくれた。
なんと!
『桜花幻想』の原画があるではないか!
この「狐シリーズ」はすべて京都精華大学に行っていると思っていた。
「週刊金曜日」などのグラビア写真ではわからなかった諸々が実物から見て取れる。
まだまだ眺めていたい逸品…

狐に化かされたような一日だった。
この早稲田の近くの神社が八幡でなくて稲荷だったら申し分なかったが。


11月16日(金)の記 芝居と上映
日本にて


今日は日本のホームグラウンド、学芸大学ライブ上映の初日。
が、日中のお芝居のお招きをいただいてしまった。
水上勉作『釈迦内柩唄』、練馬区生涯学習センターにて。
時間的には、学大上映に間に合いそうだ。

「しゃかない」と読む。
秋田、青森の山間部には「内:ない」で終わる地名が散見するが、縄文屋の心を誘ってやまない。
このお芝居は見ておいてよかった。
葬儀を生業とすることで差別される人と、花岡鉱山での強制労働から脱出した朝鮮人との出会い。
この設定の戯曲を書いた作家がいて、その芝居を今も続けるグループがいて、それを支援する市民がいる。
チラシに「希望舞台プロジェクト」とあるが、まさしく希望である。

拙作上映の準備では流浪堂さんからのスクリーンや機材の搬入が懸念だった。
ありがたいことに、思いやりのある数名の男衆が準備開始時刻に自発的に集まってくれていた。
ただ、感謝。
今日の献立は、最近まとめた短編の4本立て。
うち『未来のアミーゴたち 神立キッズ&スクール』は目黒初公開。
『常陸と南米 写真家・柴田大輔の視点』は世界初公開。
今日も多種多彩な顔触れにお越しいただいたが、拙作をいとおしんでいただけたようだ。


11月17日(土)の記 新橋から水戸へ
日本にて


話題騒然の今回の学大ライブ上映のフライヤを製作してくれた佐々木岳久さんと会食。
新橋駅近くにできたシュラスカリア:ブラジリアンバーベキュー店に行ってみる。
電話で予約して、受けた人の名前を聞くと「当日いるかどうかわかりませんから」と言われていたので予約が通っているかどうか心配だった。
11:30過ぎに到着すると、ほかに客は誰もいなかった。
交差点に面したビルの2階で周囲はガラス、眺めはよい。

佐々木さんは肉がけっこういける方で、シュラスカリアではここちよい。
あとの都合のためアルコールが飲めないそうで、カイピリーニャを味わっていただけずに残念。
日本のブラジル料理屋通の知人にこの店の名前を出すと引いた反応だったので、予約に次ぐ懸念があった。
高い!という金額ではなく、味と質もそこそこではないか。

新橋から、鈍行列車で水戸へ。
水戸駅周辺が異常に混み合い、車で向かいに来てくれた人にも「にのまえ」さんで待機してくれていた人たちにもご迷惑をかけてしまった。
なぜかは判明しないままだが、そもそもあまたあるホテルが取れず、安宿が通常の3倍の価格を吹っかけている異常事態が水戸で生じている。

さて、水戸にのまえさんで岡村淳ライブ上映会30回!記念の上映。
僕の茨城3部作を一挙上映。
うち2本は にのまえ初公開。
最新作『常陸と南米 写真家・柴田大輔の視点』はにのまえさんと常連の方々への答礼として制作した。
この作品については、さっそくすばらしいレビューをいただいた。
https://ashigarakenpou.wordpress.com/2018/11/17/
水戸岡村会の一同に、ただ感謝。

なごりは尽きないが、宿が取れず明日もなかなかにハードなので鈍行終電でお暇する。


11月18日(日)の記 高輪→横須賀→黄金町
どこに在っても私は私

日本にて


さあ今日の欲張りスケジュールを無事こなせるかどうか。
大切な上映会にダメージなしに。

カトリック高輪教会で江戸の殉教者祈念ミサというのが行われるのを知った。
キリシタンの殉教というと長崎ばかりに目が行きがちだ。
ところが日本中各地に、あるある。
わがおひざ元の東京:江戸だけでも1000人近くが処刑されているのだ。
その嚆矢となる、1623年に50人近くが処刑された日にちと場所にちなんでの祈念ミサだ。

祐天寺裏の実家から、歩いて行ってみることにする。
はじめての道を行く、あの気持ち。
この教会にはキリシタン関係の資料展示もあるようだが、今日はお預け。

殉教ミサのあとは、モモエチャンのシマに向かわねばならない。
横須賀美術館での『矢崎千代二展』へ。
パステル画家として知られる矢崎は1930年代に移民船に乗ってブラジルに渡っている。
移民船の情景からサンパウロ州奥地のコーヒー園、アマゾン河流域に至るまでをパステル画に遺している。
今日は矢崎を研究する京都の横田香世さんの講演がある。
縁あって僕は京都で横田さんにお会いして、矢崎の南米関係の作品の画像をひと通り拝見している。
ベテランの先生の、心のこもった丁寧な授業を受ける感じ。
「どこに在っても私は私」は横田さんの講演からいただいた矢崎をあらわす言葉。
展示では、矢崎の初期の作品に驚く。

さあ横須賀カレーを食べてみたいが時間がない。
おっとり刀で、横浜若葉町へ。
大道焼肉師にして伊豆大島冨士見観音堂守の伊藤修さんと茶飲み話。

ついで横浜パラダイス会館にて上映。
現地女性のつくったアマゾン料理フランゴ・ノ・トゥクピに舌鼓を打つ。
今日の上映メニューは『大アマゾンに賭ける日本人青年ボランティア』と『未来のアミーゴたち』。
蔭山キュレーターはこの逆の順の上映を想定していたようだが、この順番にしてもらった。
そうして、よかった。
『未来のアミーゴたち』の触媒効果には驚いた。
まず蔭山ヅルさんがご自身の行なうこの場での多国籍児童のお世話をめぐる深刻な状況を語る。
ついで伊藤修さんが、一世代前からブラジル生まれの子らを日本で育ててきた、いまに続く苦闘を語る。
いずれも、余人はコメントも加えられない迫力だった。


11月19日(月)の記 コラージュのはじまるとき
日本にて


午前中、富山妙子さんのお宅に電話。
体調は回復されたとのことで、まずは安心。
今日の午後、さっそくまた世田谷のお宅にお邪魔させていただくことに。
拙作試写のこころづもりで、15.6インチのパソコン、ビデオカメラ一式を担いでいく。

木曜日に西早稲田で見た『桜花幻想』の衝撃などをお伝えする。
接客兼作業用のテーブルに、コラージュの素材が新たに積まれている。
話しているうちに興が乗ったようで、透明のボードを取り出して、素材を並べ始めた。
だんだん本気になってきたことが感じられる。

うう、どうしよう。
一期一会。
撮影の許可を求めながらビデオ機材を取り出す。
シュート!
アーチストが試行錯誤を重ねながら、撮影者と対話をしながら創作を進めていく。
これが撮りたかった。

まさか、今日それがはじまり、撮影をさせてもらうとは思わなかった。
表現者が表現者とかかわり、最低限の落とし前はつけさせてもらった感あり。

さあ、今後はどうするか。
ここいらで引くべきか、なおも寄り添い続けるべきか。


11月20日(火)の記 アジアにめざめたら
日本にて


メイシネマ上映会の藤崎代表を小岩に訪ねる。
今後の打合せ。

帰路、竹橋の近代美術館へ。
「アジアにめざめたら」展。
韓国のホン・ソンダム(洪成潭)の版画が圧巻。
涙腺が緩んでくるほど。

新宿ゴールデン街の「ひしょう」にも届け物に。
佐々木美智子さんとよもやま話。
客足が乏しい、という話に言葉が詰まる。
と、男女の二人組がやってきた。
このお店の特徴は、初対面の客同士の距離が近いこと。

男性の方はかつて佐々木さんが仕切っていたサンパウロのミモザ館に滞在したことがあるという。
僕がエチオピア航空で来たというと、最近のエチオピアの情勢にも詳しい。
他にも、思い出せないほどいろいろと盛り上がった。
佐々木さんには、アマゾンのマナウスいらい、あまたの出会いの機会をちょうだいしてきた。
明日はお店で変わった上映会があると教えてもらうが、自分の上映があってさすがに参加はできない。


11月21日(水)の記 富山妙子さんまわり
日本にて


誰かがお手伝いしているところを撮ろうと思っていた。
が、自分がやるしかないかと思うに至った。
今日は、お手伝いとして画家の富山妙子さんのところにうかがう。

かつてのスライドの機械が動くかどうかみてみることを頼まれる。
ケース内は、油状のものでねっとり。
清掃しつつ、電源を入れてみる。
激しいモーター音。
ランプはつくが、スライドフォルダーが回転しない。
明日の再訪をお約束。

今宵は、西荻窪アパレシーダでの上映会。
少人数での、濃く熱い上映会となった。
『フマニタス』と『死者の日のミサ』の2本立て。

今日も上映に来てくれた井上さんは、富山さんの1962年のブラジル訪問の際にサンパウロでお世話をされた人。
今日も意外な話をうかがう。

見覚えのあるような若い女性が来ている。
日本語で話しかけると、ポルトガル語で応じた!
ええ!?驚いた、サンパウロ大学に留学していた中国人女性ではないか!
彼女はハルビンの出身。
ハルビンは、富山妙子さんが女学生時代を過ごした街だ。

富山さんへの土産話がたくさんできた。


11月22日(木)の記 ある決断
日本にて


ブラジルからの頼まれ物の買い出し、来週からの国内旅行の手配。
閉展間近の高麗博物館「描かれた朝鮮人虐殺と社会的弱者」展へ、新大久保下車。
駅改装中で昼時の新大久保駅は異常にごった返し、電車を降りてから改札口を出るまで10分はかかる。

あちゃー、新大久保駅界隈はリトルコリア化して若者、特に女性でにぎわっている。
この国の嫌韓ムーヴメントは、この吸引力への嫉妬だろうか。
ランチタイムのコリアン料理屋に入ってみる。
味もサービスもよろしいが、喫煙者の多いのに辟易。

高麗博物館の展示は、僕には必見だった。
目録等を購入する際に、ブラジルから来ていること、富山妙子さんとの交際についてスタッフに話してみる。
と、富山さんは音楽家の高橋悠治さんとここでイベントをしたというではないか。
さらに、たまたま今日来ていたボランティアの方が、ご母堂はハルビンの女学校で富山さんの一級下だったと教えてくれる。

その足で、今日も富山さん宅へ。
たっぷりと昨日からの土産話をお届けする。
よもやま話の末、今後のことの提案をお伝えする。


11月23日(金)の記 人の作みて
日本にて


明日早朝から、九日連続で移動と上映が続く。
今日は静養と準備にあてたいところだが…

江古田のギャラリー古藤さんで田中千世子監督『熊野から』三部作一挙上映と、ルポライターの鎌田慧さんの講演がある。
ひとの上映を見て、わが上映の至らないところ、気づき洩らしていたところを直したい思いもある。
鎌田さんには久しくご無沙汰している。
最近になって鎌田さんと富山妙子さんの親交も知ったので、ご挨拶をしておきたい。

眠らないで済むかな?
思い切って、行ってみる。
熊野を舞台にした作品だが、僕の嗜好する南方熊楠の世界は触れられていない、と言っていい。
畏敬すべき小説『闇の奥』の作者、辻原登さんへのインタビューもあるが、『闇の奥』で描かれている世界には立ち入っていない、と言ってよさそうだ。

自分でも驚きだが、眠るというほど眠ることもなく、鎌田さんとお話もできて、よき日となった。


11月24日(土)の記 牛久の谷津田をあるく
日本にて


品川発所定の電車に乗れて、やれやれ。
牛久駅で柴田大輔さん、野口和恵さんが出迎えてくれる。

茨城の南で谷津田と呼ばれる一帯をあるいてみたかった。
柴田さんが事前にリサーチをしてくれていて、付近までまずは車で出向く。
ほう、こういうところか。
意外と平地ではないか。
車を置けるところを見つけてもらって。
三人で散策。
通りがかった地元の年配の女性に話を聞く。
これまた意外な話が出てくる。

そしてこれまた意外な山林の小径をみつけて逍遥。
ああ面白い。
時おり、路傍の朽木をひっくり返してみる。
分解の進んだ朽木のなかからミミズが何匹も出てきたのには驚いた。

さあ午後から上映。
柴田さん野口さんとの初めての牛久上映。
こじんまりを想定していたが、なかなかどうして。
よくぞこれだけヴォルテージの高い人たちが集まってくれた。
柴田さん野口さんの人柄と信頼の賜物だ。
柴田さんのご両親もいらしたので、上映予定になかった『常陸と南米』を岡村が強硬上映。

懇親会も楽しいが、明日も早いのでお先にお暇する。
本日の歩行数は…
13,356歩で3.9キロ、意外と少なかったかも。


11月25日(日)の記 富士と廃校
日本にて


特殊な趣味、として「知らないカトリック教会のミサに預かる」というのを持ち合わせている。
今日は神奈川県の最西部にして山間部の廃校利用スペースでの上映会。
それに間に合うように…
あちこち調べてみて、カトリック初台教会の早朝のミサにトライすることにした。

なんと、ミサ曲はギター中心の演奏。
座席に置かれた歌集を見ると、この回はフォークミサとよばれるものらしい。
大きな聖堂での早朝のミサだが、そこそこに人が埋まっている。

今日は上映前に焼き芋大会をすることになっていたが、担当の方のご家族が急病で中止、との連絡が入った。
風邪など流行っているようで、これから来週日曜まで連日の大移動と上映が続く身として慎重にしないと。

廃校スペースは登山道の中継地にもあたるようで、今日は一般の方相手の食堂も営業していた。
先客たちが富士山が見える、と教えてくれた。
なるほど、木立に隠れがちだが白化粧の霊峰が拝める。

今日の上映は先回の足柄上映に引き続き、高田さんという方が機材類をすべて仕切ってくれているので楽である。
『あもーる あもれいら』第一部の上映。
登場する子供たちと同年代の子供たちもそこそこに見てくれる。

あとになって、近くの不登校の若い人たちの寄りあうスペースから何人か来ていたと聞く。
そういう人たちの、かそけき声を聴きたかった。

明日は、未明に祐天寺出家。
今日は懇親会もなく、駅までご一緒した人に「軽く」と声掛けすることなく、帰路につく。


11月26日(月)の記 京都のキエフ
日本にて


ジャパンレールパスに目黒駅で入鋏。
早朝の ひかりで京都へ。
移動中に休息。

駅近くのカプセル系ホテルに荷物を置いて。
モーニングサービスの喫茶店を見つけるのが、相変わらず大変。
と、東本願寺前でオツな店を発見。

地下鉄鞍馬口下車、古本のカライモブックスさんへ。
突然の来店で奥田夫妻を驚かす。
富山妙子さん、高橋悠治さんの名前を出すと、ツーカーで濃い反応。
絶版の富山妙子さんの岩波ブックレット2種もさっと出てくるではないか。
旅の初めにそこそこの重量の本を買ってしまうが、うれしい悲鳴。

昼は、今日の達人・平井さんにお任せ。
ロシアレストランのキエフにご案内いただく。
眺めよし、料理よし。
歌手の加藤登紀子さんの兄、加藤幹雄さんの経営。

加藤さんが我々のテーブルまで挨拶に来てくださる。
平井さんがまず京都地元の話題で加藤さんを引き留める。
ついで僕が加藤登紀子さんに僕が取材で通ったブラジルの岩絵遺跡にお越しいただいたこと、青森六ヶ所村でお会いしたことなどを伝える。
加藤さんは椅子に座って諸々のお話を聞かせてくれた。
加藤さんは、富山妙子さんの青春の都・満州ハルビンからの引揚者でもあるのだ。

夕方から今年4回目の同一メンバーによる岡村作品京都上映。
機材トラブルあり、僕が持参したDVDポータブルプレイヤーで切り抜ける。
『あもーる あもれいら』第二部の上映なだけに、第三部が見たい!の声があちこちから。
懇親会は、上映会より多いかと思うほどの人数で盛り上がる。
真鯛のしゃぶしゃぶ、絶妙なり。

そうそう、『京 サンパウロ』の紅葉ロケ、この時期でした。
あの頃は厳しかったなあ。
ちなみに今日24時までの歩行数は23,900歩、15キロメートル。
けっこう歩いたな。


11月27日(火)の記 陰陽連絡路線
日本にて


今宵は鳥取県倉吉市での上映。
京都から倉吉までどういったらいいのかと考えあぐねていた。
東京でお会いした主催者は、なんとかいう特急に乗ればいいといっていたような…

調べてみて、びっくり。
京都発倉吉行きの「はくと」という特急があるではないか。
京都駅08:50発、倉吉着12:30。
先週、新宿駅で指定をとっておいた。

車内で車掌の検札。
途中区間は別に乗車券と特急券が必要だという。
こういうの、外人さんにはわかりにくいだろうねえ。
まあ、この特急に乗る外人もあまり多くはなさそうだけど。
智頭急行という第3セクターの路線を途中で経由すると知る。

一本の特急で瀬戸内海と日本海の両方が拝めるというのも、なかなか。
中国山地を鉄路で越えて気づいたこと…
あちこちで墓地が目についた。

倉吉駅到着。
主催していただく鷲見さんご夫妻のお宅で旅装をとき、昼食をいただく。
円形小学校を再利用したフィギュア博物館とか、興味をそそるが、夜に備えて休ませていただく。

今宵は顔見せ試験上映ぐらいのつもりだったが…
なかなかに濃ゆい面々が各地から集まってくれた。
上映会場に貼っていただいたコラージュ作家のスミカヤさんの作品もナイス。
なんと上映会場のスタッフさんが、おでんまでこさえてくれて。

近くにはこれまたナイスな温泉があまたとのこと。
入湯はまた今度。


11月28日(水)の記 マリアと親鸞
日本にて


朝、ご無理を言って午前9時開館の塩谷定好記念館に車でご案内いただく。
塩谷定好は明治生まれ、日本の芸術写真のパイオニアである。
同じく鳥取出身の写真家、植田正治の先輩でもある。

その写真はまさしくアートであり、記録としての史料価値にもあふれている。
短い時間だったが、連れてきてもらってよかった。
今回、鳥取で上映を主催してくれた人は塩谷定好ゆかりの人でもある。
身内から聞く写真家の話は、興味しんしん。

コナン列車、鬼太郎列車が並ぶ米子駅まで送ってもらった。
米子発10:48の特急スーパーおき乗車。
津和野駅13:55着。

津和野は世界では秋田と並ぶ聖母マリアの出現地として知られている。
僕も先回の津和野訪問時にはその顕現の地 乙女峠を訪ねている。
今日は津和野にある浄土真宗のお寺 妙壽寺で開祖親鸞聖人の御命日祈念の報恩講に呼ばれた。
その講で拙作『リオ フクシマ 2』を上映するというのである。
レゲエ好き、DJ好きという村上住職とは駅で初対面である。

集まってくれた人たちの上映中のリアクションのよさには驚いた。
よって質疑応答も尽きることがない。
そして、村上住職の南相馬での体験をうかがって、なぜ彼がこの作品を選んでくれたか納得。

あなかしこ、アヴェマリア。


11月29日(木)の記 大朝の昼夜上映
日本にて


津和野の妙壽寺から宿に戻ったのは、午前1時。
今朝6時台のミッションも考えたが、体力的に日中のお勤めに差し障りそうでやめておく。
8時過ぎにお寺を訪問して住職にあいさつ。
朝霧が立ち、山から陽が差す刹那の津和野の美しさに、言葉をうしなう。

9時開館の津和野駅前の桑原史成写真美術館を出発前に見学しよう。
「僕が記録した『水俣』展」。
重い。
撮影者は、被写体の人の「私」の部分をどこまで公にしうるのか。
桑原さんのお仕事の発表は、両者の同意と覚悟があってのことだろう。
僕には、ここまでできないかもしれない。

津和野駅09:58発。
「スーパーおき」を昨日とは逆方向へ、島根の浜田駅へ。
青原さとし監督が広島から車で迎えに来てくれる。
僕にとっての青原さんはドキュメンタリー映像作家であり、姫田忠義さんの民族文化映像研究所のOBである。
青原さんは浄土真宗本願寺派の僧籍を持ち、今年から北広島・大朝の教信坊というお寺の住職となられた。
映画館のないその地域で映画を上映しちゃおうというのが今日のプロジェクトである。
車中、話題が絶えず、お寺には今日のために遠方からいらした宮本常一フリークの方がいらしていて、ますます話ははずむ。

午後から青原さんのお寺で上映。
青原さんは僧衣で登壇。
先回、島根で上映をしてくれた人、ブラジルがらみの共通の知人を持つ人などが来てくれて、アウエー感をいやしてくれる。
真宗の寺で、いきなり『生きている聖書の世界』の上映。
ちなみに今日の作品セレクトは、いずれも青原さんなり。
ついで『ギアナ高地の伝言』。

余韻とともに至近のカフェ「TSURUYA」さんに河岸を移して上映。
寺とはだいぶ顔触れが変わり、新たに緊張。
上映後に会場で懇親会、そのまま教信坊さんで懇親が続く。
地元の酒造の若旦那がとっておきの逸品を持参してくれるなどあり、盛り上がり続ける。

二日連続で河岸を変えての寺院上映というのは初めてだな。
今回は、いずれも西本願寺系のお寺。
あなかしこ。
「寺銭」の語源を調べてみよう。


11月30日(金)の記 大朝の朝事と倉敷の蟲
日本にて


何時ぐらいまで…
午前1時を過ぎても教信坊さんの炬燵の間で有志たちと盛り上がっていたのは記憶している。

朝7時から青原住職は本堂で「朝事:あさじ」をつとめるという。
僕はアサジのなんたるかを恥ずかしながら知らなかった。
真宗で早朝におこなう勤行、のことだそうだ。

石油ストーブを灯していただいた本堂で、読経。
読経後に住職の法話。
青が島の「他火:タビ」と呼ばれる民俗例の話から「旅」の語源と意味、「観光」のひかりと阿弥陀如来のひかりについてなど、二日酔いのアタマにも心地よい世界。

カトリック教会の早朝のミサもいいが、真宗の朝事もよろしいぞ。
いずれも導師次第だけど。
上映の流れで、僕のほかにも三人の善男善女が教信坊にお泊りした。
朝餉をいただき、そのまま午前10時をまわっても話が尽きない。
なごりはつきねど、それぞれの道に向かわねば。

高速バスの大朝インター停留所まで送っていただき、江田島から来た若い人と広島駅まで同行。
興味津々の話に耳を傾ける。
さあ倉敷に寄り道しよう。

先回の岡山上映でお世話になった、田中美保さんの蟲文庫を訪ねる。
この、ここちよい時空。
蟲文庫さんの余韻とパンパンになったキャリングケースを引きずって、いったん東京の実家に戻って荷物の仕切り直し。

さあ、明日朝イチで秋田だ。
このタビも、終わりが近い。


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