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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2019年の日記  (最終更新日 : 2020/05/03)
5月の日記 総集編 初夏の書家

5月の日記 総集編 初夏の書家 (2019/05/06) 5月1日(水)の記 成城入湯
日本にて


今日も、きのう行った教会の早朝のミサに参加してみる。
なんと、今日は英語だった。
キリスト教は、教祖そのものの両親が今でいう難民として追われている間に生まれている。
難民、移動民、旅人に、尽くす、はともかく、もてなす宗教であるべきだと思うが。
日本のカトリック教会では「常連の教会員」が僕のような客人:旅人をなじるような事態もあった。
信者数の減少を嘆く前にすることがありそうですよ。

ふたたび富山妙子さんのところへ。
今日を富山さんと過ごしたかった。

千歳船橋駅付近で、ネットで探した在来喫茶で打合せ。
先方が1時間まちがえて登場。
そのあとの予定を仕切り直さないと。
夜の横浜での上映の前に、鎌倉で映画を見るつもりだった。
間に合わない。

「THE SPA 成城」という近くのスパリゾート天然温泉をフンパツするか。
今日は休日料金に跳ね上がるが、シネコンの大人の映画料金ぐらいか。
いわゆる黒湯である。
銭湯料金のところより、さすがに内湯も露天も広い。
壺湯をうたっておいて、壺がひとつだけとは驚いた。

循環泉か。
日にちの経った家庭風呂の湯のようなニオイがする。
これは黒湯に付随するものか、循環加熱の故か。
琉球畳の休息スペースに横になり、仮眠。
僕の心身は、これを求めていた。
映画に行ってもおそらく眠っていただろう。

さあ横浜パラダイス会館で上映。
主催の蔭山ヅルさんの選んでくれた2本に「ブラジルキリスト教+裏口入門」と銘打っておいた。
はからずもこの2本に、蔭山さんと料理提供の伊藤修さんがいたく反応してくれた。


5月2日(木)の記 めぐろカフェ巡礼
日本にて


訪日の翌日から、早朝より夜の上映の懇親までの奔走が続き、疲れ切った。
しばし、安息。

午後から、徒歩圏の挨拶回り、
連休中のため、訪問すべきお店の営業情報をネットで確認。
うち一軒は連休中休みか。

まずは学芸大学平均律さんへ。
先回の失礼のお詫びを兼ねて。

SUNNY BOY BOOKS さんは、店長の高橋さんがいた。
なにから話そうかというぐらい、話はある。
そして例によって、このちいさなスペースで僕を待っていた本が複数。
他にもわんさかお客さんが来るので、会計を済ませて失礼しよう。

まだ、間に合うな。
中目黒のアンダー・ザ・マットさんへ。
常連さんから、ラ米がらみの稀有な話を打ち明けていただく。

さあ明日からメイシネマ祭の三日間。
まさしく、ヤマ場だぞ。


5月3日(金)の記 メイシネマ祭開戦
日本にて


さあいよいよ今回の訪日ミッションの前半のヤマ場、三日間のメイシネマ祭の開幕。
連日の濃いプログラムを鑑賞するだけでも大変だが、僕は各回のゲストのトークの撮影を引き受けているのだ。
これは、けっこうたいへん。
今年でこの撮影も5年めだ。
どのようにメリハリをつけようか。

代表の藤崎さんが疲れ気味なのが気がかり。
上映の方は、見たかった『沖縄スパイ戦史』。
大切な仕事をしてくれた。

上映の合間に、明日の僕のプログラムでお配りする書き下ろし資料をコンビニでUSBメモリーからプリントアウト。
ダイソーで5円コピー。

本日の四つのプログラム、最後は中村高寛監督の『禅と骨』。
数奇な人生を歩んだ日系アメリカ人ヘンリ・ミトワさんが主人公。
アニメ、有名俳優の再現ドラマもあり、僕にはとても及ばないつくりだ。

だいぶ通常モードに戻った観のある藤崎さんに誘われて、今日のゲストの中村監督、金聖雄監督らとのミニ懇親会に。
藤崎さんは早めに席を立たれ、僕も明日の決戦のためにそこそこで失礼する。


5月4日(土)の記 IBARAQUI MEU AMOR
日本にて


さあメイシネマ祭二日目、いよいよ拙作上映の日。
今日の最初の上映作品はメイシネマ上映会の先輩、森田惠子さんの最新作『まわる映写機 めぐる人生』。
日本各地で映画上映にかかわる人たちを訪ねていく。
情報としても面白く、パンフレットはいい資料になる。

今年のメイシネマ祭、藤崎代表による驚きの選択。
『未来のアミーゴたち 神立キッズ&スクール』
『金砂郷に打つ』
という、僕の茨城三部作のうちの二本を選んでいただいた。
上映後、数人が絶賛のことばをくださるが、真に受けていいのだろうか?

今日のプログラム終了後、森田監督らと近くの中華料理屋へ。
森田さんの作品の細かいことで気になったことなどを直接、うかがえるという特権。
紹興酒をロックでぐびぐびいただく。


5月5日(日)の記 嗚呼怒涛の三日間
日本にて


メイシネマ祭の三日間12プログラムの鑑賞だけでも相当な体力と気力がいる。
それに加えて各ゲストの撮影!
いやはや。
まさしく、三日間が限界。

おかげさまで、致命的な撮影ミスはなかったかと思う。

懇親会では『福島は語る』の土井敏邦監督夫妻、この作品の上映プロデューサーをつとめた飯田光代さんらとテーブルを囲んで盛り上がる。
常連の四宮鉄男監督が懇親会を欠席されたのが寂しい。

首、そして腰が痛い。
深夜1時まで営業の中目黒の銭湯・光明泉に行ってみよう。
屋上の、天井だけ開いた露天風呂。
ぬるめの炭酸水風呂があるのがありがたい。
ああ、よくぞ三日間乗り切った。


5月6日(月)の記 目黒の回転
日本にて


身心の疲れは抜けないが、早朝にめざめてしまう。
なにはともあれ、今回訪日の前半のヤマ場のメイシネマ祭を終えたので、爽快。

昼に、実家の血筋の女子小学生とデートの約束。
回転寿司、の僕の提案に乗ってきた。
実家からちょっとあるが、徒歩で行ってみる。

大連休の最終日、待ち客が大勢の場合なども考えるが…
意外と、すいていた。

回転レーンに流れる皿も控えめ。
少女は「桜肉」と書かれた皿をとった。
肉はかなり干からびた感じ。
「馬の肉だよ」
と言うと、彼女はビビって手に取った皿をレーンに戻した。

日本では、よく歩く。
夜、流浪堂さんへ。
明日の上映の打合せ。
流浪堂さんでの展示の撤収に来ていた書家の華雪さんをご紹介いただく。
彼女の字の絵葉書が値段も手ごろでいい。
小説家の星野智幸さんが共通の知人であることがわかり、盛り上がる。


5月7日(火)の記 初夏の書家
日本にて


大連休が終わったところで、今日から三日間、東京で上映が続く。
まずは富山妙子さんのところに寄ると…
思わぬ展開。
映像でどこまでフォローできるか。
これが、潮時かも。

そのあと、渋谷で段取り。

今日はいよいよ今期の鷹番ライブ上映のはじまり。
有志の方々が早くから流浪堂さんに待機してくれて、上映準備を手伝ってくれるのがありがたい。

今日の上映は奇作『明瑞発掘』。
連休明けにもかかわらず、多種多彩な方々にお集まりいただいた。
書家の華雪さんがお越しくださり、感激。
書に全身全霊で取り組んできた人ならではのコメントをいただく。
なるほど。

懇親会は、はじめての居酒屋に。
宣伝している生ビールは安いが、あとは高めだな。
体の節々の痛みもあり、少し早めにお開きとしてもらう。
午前1時まで営業の、近くの千代の湯に寄る。
ここの炭酸泉がぬるめでよろしい。


5月8日(水)の記 中目黒のかけあし
日本にて


今日は、ほぼ地元中目黒で昨年まで放送協会職員だった西川啓さんの欲張りイベント。
西川さんは「見せっこ」上映というが、彼が自分の上映作品を選び、僕の上映作品も彼が選んでいるという、いわば非対称的な力関係であるので僕はこの言葉を使わない。

連休明けの平日の夜、しかも彼の作品上映のあとで…
西川さんは2時間30分の僕の長編『ブラジルの土に生きて』をリクエストしてきた。
見る側のことも考慮しているつもりの僕としては、却下すべき要望である。
が、退職した西川さんへの贈り物としてお受けすることにした。

すると今度は西川さんが取材した在沖縄の写真家・石川竜一さんが上京することになったという。
急きょ、西川さんが石川さんを取材した番組も上映して、さらに石川さんとの対談も加えたいという。
二兎どころか、三兎も追うか。
こうなると、参加者の終電時間をまず考慮しないと。

いずれにしろ僕は、いちゲストのヴィジター。
だが、それなりに来場者の方々に気を配りたい。

西川さんが告知したリンクで石川さんのインタビュー記事を予習しておいた。
僕とはいろいろな意味で異質だが、ベースの部分で共感するところ多し。

それにしてもあわただしいイベントだった。
僕も反省しないと。


5月9日(木)の記 まどろみのアパレシーダ
日本にて


午後から富山妙子さん宅訪問。
絵解き物語の撮影のため、新たな機材も買って挑む。
うーん、むずかしい。
歩留まりまで、いけただろうか?
しかし通常では拾えないような発言をいただけた。

夜は西荻窪アパレシーダさんでの上映会。
記録的少人数かもしれない。
ますます集まってくれた人たちに感謝。
高校時代にブラジルに留学していたというニューフェイスの女子大生も参加してくれて、それだけでもありがたいこと。
上映作品は『リオ フクシマ 2』。

店主Willieさん、女将くみさんからそれぞれ大連休明け、イベント疲れでそもそもお店の客足もここ数日ひっそりしている、となぐさめていただく。
このおふたりのやさしさが魅力。

それにしても昨日そして一昨日はよくあれだけ集まってくれたものだ。


5月10日(金)の記 絶望から希望へ
日本にて


上映と撮影、疲れがたまっている。
今日の午前中は少しゆっくりするか、と身辺をチェックして…
蒼白。
肝心なものが、見当たらない。
牛山純一御大のもとでやらかしたら、自死でもすまされない。

あらゆる可能性を考えて。
おっとり刀で、世田谷へ。
いやはや、一件落着。
自分のおごりと怠惰を猛省。

小田急沿線の駅前のモーニングサービスで仕切り直し。
今日はアート展のハシゴだ。

まずは表参道のファーガス・マカフリー東京の白髪一雄展。
https://bijutsutecho.com/exhibitions/3692
この立体感。
実物を見に来てよかった。
スタッフにもお話を聞かせていただく。
来週の鹿児島ミッションに備えての予習のつもりだったが、ビンゴ!
アートとはなにかを探る貴重なひと時。

ついで、八丁堀の nca にて、ヴィック・ムニーズ展。
https://www.nca-g.com/exhibition/2019/vik_muniz_vik_muniz/
ヴィックは、グローバルに活躍するブラジル人アーチスト。
なにをしでかしてくれるか、わからない楽しさがある。
今回も期待を裏切らない絶妙な作品をものしてくれた。
アートを見て僕が笑うのは、彼の作品ぐらいだろうか。
今回はコラージュだ。
だが、富山妙子さんのコラージュとは発想が真逆で面白い。

明日から旅が続く。
渋谷ヒカリエd47ミュージアムの『発酵』展も見ておく。
気になる書物を何冊か購入。

帰路、中目黒のカフェ、アンダー・ザ・マットさんへ。
西川啓さんがいる。
先週の反省と、今後を話す。
話せば、ますます共通項が出てくる。


5月11日(土)の記 信濃路の読経
日本にて


とりあえず電車の人身事故の影響もなく、新宿バスタに着けた。
人ごみ。
椅子に座り切れない人たちが、ごちゃごちゃ。
な、なんだ、この長蛇の列は。
女子トイレの順番待ち。
これでは、発車時刻に間に合わない人も少なくないだろう。

僕の乗車した松本行きバスは、トイレがない。
構内のトイレに間に合わず、バスのトイレに望みをかけた人はどうなる?
おもてなしや気配りとは程遠い日本、すごい。

新緑の中央道、息を呑む。
なんとも心地よい。
長野松本ヤマベボッサさんでの『アマゾンの読経』ライブ上映会。
オーナーの増田さんが2階のテレビモニターでも同時鑑賞できるようにセッティングしてくれた。
僕は映写技師として上映中は階下のプロジェクターの横にへばりつき、休息タイムは2階にも油を売りに行く。

これといった映写事故もなく、ありがたし。
上映後のトーク、質疑応答が収まっても、名残惜しそうに残ってくださる方々が少なくないのがうれしい。

昼も夜も女将のしえさんの、こだわりの食材の手料理をいただく。


5月12日(日)の記 祐天寺の曼陀羅
日本にて


信州松本で目覚める。
勝手に起きて、午前6時過ぎに失礼しますと伝えておいた。
ヤマベボッサのしえさんは、早朝からわざわざコーヒーを淹れてくれる。
恐縮。

グーグルの指示を参考に、ひとつ裏通りを歩いてみる。
神社の古木、カトリック系幼稚園など、いろいろな発見があって面白い。

カトリック松本教会の日曜早朝のミサに預かる。
あ。
祭壇にブラジルの守護聖母アパレシーダ像が。
この教会では月に一度、ポルトガル語のミサも行なわれているという。

帰路、教会の掲示に驚くべき文言を発見。
スマホ撮りして、考えたあげくフェイスブックとツイッターで拡散。
(後記:そのシェア先でひどい誹謗中傷をいただくことになる。)

10時台出発のバスに間に合った。
温泉も袖にしての、早帰りの理由はふるさと祐天寺。
春の特別寺宝公開と当麻曼陀羅の絵解きがあるのだ。

絵解きは14時から。
若い僧侶が本堂で行なう。
目黒区重要文化財だというこの曼荼羅は西暦1728年のもの。
当麻寺のものの四分の一の模写だという。
縁に描かれた仏典に基づいた物語など、解説がなければ凡俗にはわかりようがない。
絵解きは各回、別の僧が担当して、語る内容も異なるという。
他も聞いてみたかったな。

自分の方の、今後の絵解きミッションに備える。


5月13日(月)の記 鹿児島の午前様
日本にて


今日から一週間のジャパンレールパス使用。
品川発午前7時10分のひかりで、まずは新大阪へ。
新大阪から、さくらで鹿児島中央へ。
車内では、睡眠と読書。

鹿児島中央駅に畏友の愛竹家、好漢橋口博幸さんが迎えに来てくれる。
先回同様、まずは伊場カレーさんで伊場さんにお任せの一期一会カレーをいただいて身心を引き締める。

橋口さんのお宅から徒歩で、明日の件でのご挨拶と打ち合わせ。
いざ。

3月の鹿児島上映で出会った地元の新聞記者さんが僕に取材をしたいという。
格安で予約できた市内の温泉付きホテルに来てもらう。
ロビーで、聞かれるままにお話しする。

一段落すると、記者さんからイッパイ誘われる。
その行きつけのお店は、先回3月の上映会場MOJOさんの階下だった。
橋口さんには明日に備えて今晩は静養させていただく、と伝えてあったが、このお店まで来てもらった。
記者さんと橋口さんは屋久島談義で盛り上がる。

そろそろ、と橋口さんが切り出してくれたのはすでに日付が変わってから。
宿に戻ると、温泉はおしまい。
飲み屋での受動喫煙のタバコ臭がきつい。
部屋付きのバスルームで洗髪。

明日朝からビデオカメラ持参で勝負。
大事な撮影があるときは、きちんと早めに宴席を辞退しないといけない、と反省。
気が弱くて。
とにかく休もう。


5月14日(火)の記 鹿児島の二毛作
日本にて


鹿児島の宿にて、早朝入湯。
ついに、この日が来た。
撮影機材を準備して、橋口さんにピックアップに来てもらう。

橋口さんに紹介していただいた若い女性の作画シーンに挑む。
彼女には障害がある。
現代社会のいわゆる健常者が理解しているようにビデオカメラのことを認識しているかどうかは、わからない。
そうした理解をもとにしないと、カメラというのは武器であり、暴力の象徴のような凶器ととらえられてもおかしくない。

事情により2か月ほど作画を控えていたとのことで、今日、作画をするかどうかもわからない。
一期一会。
彼女の反応に、アマゾンの未接触部族が重なる。
彼女が尋常ではない強い力を持っていることは、鈍い僕にもしょっぱなから察せられる。
距離感のアタリを試行錯誤しつつ。

昼まで。
おかげさまで、そこそこ撮れたかと。

午後は彼女が通う施設に母親が連絡を取ってくれて、諸条件があるものの撮影の許可をいただいた。
カメラ持参で寄り添うが、撮影はしないことにした。

さてさて。
いったん宿で仕切り直して、入湯。

夜から先回もお世話になった天文館のMOJOさんで『郷愁は夢のなかで』の内覧上映会。
西佐市さんの故郷での、はじめての上映だ。

来場してくれた方々に、がっつり受け止めていただく。
懸念の「霊障」も大事までには至らなかった。
最近は、もっと字幕があってもいいのでは、との声が少なくないこの作品。
地元鹿児島では不要論ばかり。
かつてお年寄りに聞いたという正調鹿児島なまりへのサウダージの声多し。
想えば、西さんにはじめてビデオカメラを向けた時の思いは、今日の午前中に近いものがあったかな。

橋口さん、MOJOさんに感謝。
西さん、ありがとうございました。


5月15日(水)の記 鳥取燃ゆ
日本にて


鹿児島の宿の徒歩圏にザビエル教会がある。
早朝のミサに預かる。
日本のカトリック教会のミサでは、僕あたりが訪ねると年季の入ったご婦人から怪訝不審排他の目でにらみつけられることがしばしば。
ここでは、何人もの方から気を遣っていただいた。

さあ大移動だ。
九州新幹線さくら号で岡山へ。
岡山から特急で鳥取駅へ。
上映仕掛人の川口さんが迎えに来てくださる。
予約していただいたのは「しいたけ会館」という温泉ホテル!
積年のしいたけトラウマに挑戦だ。

ここのところ、やたらに鳥取がらみのものが目についていた。
定有堂書店という本屋のブログ記事を読み、気になった。
なんと今回の上映チームはこの書店の入り口に今日の上映のポスターを貼らせてもらっていた。

いやー、すばらしい書店。
旅先での禁断の書籍買い込みをしてしまう。
僕の読みたくなる本がどうしてこんなに平積みしてあるのだ?
しかも文庫や新書で、お値段もお手ごろ。
最高級にすばらしい新刊本屋だ。

これまたナイスなコッペパン屋さんで腹ごしらえ。
いざ、上映会場へ。
わたくし自ら機材を設置。
岡村ソロの上映で、これだけ人が集まってくれることは、なかなかない。
主催者の皆さんの人脈と奔走の賜物。

して、上映後にはスタッフの手作りおにぎりとお茶が振舞われるという感激の趣向。
そして『あもーるあもれいら 第一部・イニシエーション』にとっても、言わせていただければ作品のちからに見合う、しっかりとした受け止めをしていただいた。
鳥取にもゆかりがあり、アモレイラの保育園の創始者である故マルゴット神父からの贈り物か。
会場の皆さんから、第二部第三部の上映を切望していただく。

懇親会を終えて、温泉の時間に間にあった。
この半年間で3回目の鳥取、ようやく温泉入湯がかなう。


5月16日(木)の記 関学の浦島太郎
日本にて


鳥取で出発前に温泉入湯。
さあ今日から関西三日間連続上映ミッション。
あえて不便な山陰本線乗継で行こう。

日本海に面した集落に散在する民宿。
なにもない感がいい。
こういうところで泊まってみたい。

乗り継いで、新三田駅着。
こちらの方が、見事に何もない。
コンビニがあるが、イートイン席は地元系の老女たちが占拠。
関西学院行きのバスの接続が悪く、そもそもどのバスに乗ったらいいのかわかりにくい。

学生たちは大荷物とともに路頭に迷っているストレンジャーなど、まるでスルー。
バスのなかで女子学生に聞くのを控えて男子学生に尋ねるが、まことに見事に無視された。
気分は、浦島太郎:西佐市さん。
それを見かねたらしい女子学生がどこで降りたらいいか、教えてくれる。

上映主催の津田先生はヤフーメールから僕のホットメール宛てに道順を送ってくれていたようで、僕のスマホには届いていなかった。
ヤフーとホットメールでは、こうした事故多し。

今日はリクエストにより『狐とリハビリ』と『郷愁は夢のなかで』という、中目黒以来の欲張りプログラム。
時間が迫り、質疑応答は三田駅前の洋風居酒屋に持ち越し。
映像を専攻する学生たちだけあって、『狐とリハビリ』にも意外なうれしいコメントをいただく。

津田先生のご厚意で一般にも参加を呼び掛けたいとのことだったが、以前の関西の学校での僕の上映で許しがたい行為をしたオヤジがいたので、慎重を期した。
一般の参加のハードルを高くしたが、それでもなんと和歌山、岡山、京都からの参加者あり。
さて、僕の今晩の泊まりは京都のカプセルホテル。
三田の懇親会を発つ時間は京都からの人に合わせればいいと思っていたが…
ちょっと心配になって声をかけると、この人、まるで帰りの電車の時間を考慮していなかった。
あわてて出発。
なんとか京都駅にたどり着いたのは、日付が変わってから。

イヤハヤ。


5月17日(金)の記 戦前生まれの少女たち
日本にて


京都のカプセルホテルにて、朝を迎える。
関西のシンパから、開催中の面白いイベントをいくつか紹介してもらっている。
夕方の上映まで、ハシゴしようかと皮算用をしていたが…

身心、疲れ切っている。
カプセルホテルを連泊としたので、夕方まで安静にしていようかとも思うぐらい。
とりあえず朝湯と朝食。
ふたたび巣に戻って横になる。

おすすめいただいたうち、大阪の南蛮美術館は5月と11月のみの開館の由。
ここだけでも、行っておくか。
おとといは、鹿児島のザビエル教会で聖体拝領をしているし。

行ってよかった。
これといった解説もない展示物が少なくないが、おとなう人もまれで、こころゆくまで雰囲気に浸っていられる。
大阪駅との間に、ブラジルテイストを打ち出したカフェを発見。
ランチをフンパツ。
スタッフにブラジルから来たと伝えるが、特に乗ってこない。

ふたたび京都の巣に戻り、仕切り直して高槻へ。
まずはチリ帰りのシニアなアミーゴと喫茶。

さあ上映と撮影だ。
今日の会場は設備の新しい視聴覚室で、操作もらくちんで映像も音声もばっちり。
『下手に描きたい』『狐とリハビリ』の上映のあとで、ゲストの水戸喜世子さんに富山妙子さんについてのお話をうかがう。
すばらしかった。
僕が富山さんと深くかかわるきっかけとなったのが、水戸さんだ。
今日も主催してくれた「たまい企画」さんのはからいで水戸さんご自身のお話を撮影させていただく機会もあったが、内容はすばらしかったものの、撮影者としては失敗だった。

そもそも水戸さんに、富山さんと同じ輝きを見た。
水戸さんが富山さんを、少女と呼ぶ。
すごい友情だ。
映画『ジュリア』を想い出す。

今回は、その失敗を活かすことができたと思う。
懇親会の後、わが自主制作作品2作品に登場しているアミーゴとしばし旧交を温める。
お互い終電が迫り、松屋でハイボールをイッパイ早飲み。


5月18日(土)の記 京都東奔西走
日本にて


今日は京都で昼と夕がたのダブルヘッダー上映。
そのあとの懇親会にも出頭してから、最終のひかり号で帰京という強行スケジュール。
京都駅近くのカプセルお宿に荷物を預けて、京都大学吉田寮まで歩いて行ってみることにする。
スマホで検索すると、1時間以上。

主に鴨川沿いに北上することにする。
鴨川縁で、もしやまさかのナメクジにも遭遇。
トイレ休憩も含めてどこかでモーニングサービスでも、と思うが意外と該当の店がない。

目的地至近で吉田寮上映の橋渡しをしてくれた若林さん、そして「たまい企画」の古玉さんと遭遇。
吉田寮入り口に僕の上映を告知するタテカンがあり、感激。
上映前に、ここのドキュメンタリー映画をつくった若林さんに寮を案内してもらう。
これは、すごい。
京都のかけがえのない文化遺産だ。

僕の自主制作作品紹介映像に引き続き、『勝ち組老人』『狐とリハビリ』を上映。
京都精華大で教鞭をとり、富山妙子さんと親しいレベッカ先生も来てくれて盛り上げてくれる。
質疑応答、つかの間の懇親も手ごたえあり。

邦人熟女二人とタクシーで、下京の次なる上映場所へ。
こちらは主催の又川さんと僕の二人で会場設営。
『橋本梧郎と水底の滝 南回帰行』を上映。
おなじみの懇親会場「河」さんで僕だけビールの早飲み、ミックス鉄板焼きの早食い。

徒歩にてまずは荷物のピックアップ、次いで京都駅へ。
ひかり車中で濃厚な旅の発酵音を聞きながら身心を休める。
よくぞ、この旅を消化した。
明日は、日帰りで山形だ。


5月19日(日)の記 都のラザロを山形で
日本にて


朝イチの新幹線で山形へ。
施設に入居する叔母の見舞いがメイン。

この機会にカトリック山形教会のミサにあずかってみよう。
日本人の司祭は説教で都(京都)のラザロの話をした。
京都からやってきた僕は、びっくり。

都のラザロは、江戸時代初めの人。
https://www.cbcj.catholic.jp/wp-content/uploads/1988/08/tomas.pdf
彼は京都出身のおそらくハンセン病患者で、なにかの理由でフィリピンに渡っていた。
キリスト教が禁教とされていく日本への布教を試みる宣教師たちの通訳を務めることになるが、琉球で捕らえられ、長崎で殉教を遂げる。
一向にはルイス・ロレンソというフィリピン人もいて、彼も殉教、フィリピン人初の聖人となる。
神父はこのふたりの友情を描いた小説があると語ったが、何語で書かれたもの等、詳細は不明。

寒河江で、地元出身の写真家・鬼海弘雄さんの写真展を開催中と教えてもらう。
叔母の見舞いのあとで寄ってみる。
日本の市井の、ちょっと変わった人のポートレイトだが、キャプションが面白い。
撮影者と被写体の人物の関係がうかがえるのだ。
肖像の収奪と言えそうな写真が今日でも幅を利かせているだけに、鬼海さんのありかたがうれしい。

山形から日帰り。
さあ明日は富山さん訪問、そして上映だ。


5月20日(月)の記 成城入湯とラテンアメリカ探訪
日本にて


午前、世田谷の富山妙子さんを訪問。
国内の旅の成果の報告と今後の打合せ。

「旅の重さ」が身心に。
このままでは危ない。
千歳船橋駅からシャトルバスの出ている日帰り温泉「成城SPA」をフンパツすることに。
5時間まで、ランチ付きコースで2000yen、仮眠可なら、考えようによってはオトク。

ひとつしかない壺湯はここで唯一のかけ流しのようだ。
珍しく空いた隙に入ってみるが、この湯は加温時間経過によるものらしい臭みがない。
その分、コールタールっぽいニオイあり。

温泉入湯、メシくって仮眠、いやはやこれを身心が求めている。
いくらかリフレッシュできたぞ。
さあ夜の上映だ。
「ラテンアメリカ探訪」という講座にお招きいただいた。
場所はオタクの聖地アキハバラ駅前。

PARCおかちゃん講座OGOBが複数、集まってくれて心強い。
かつて立教大学ラテンアメリカ研究所での僕の上映に来てくれていたという人も複数。
チョイスしていただいた作品は『ブラジルのハラボジ』。
近くの居酒屋で懇親会。


5月21日(火)の記 烈風豪雨の主戦場
日本にて


身心も少し休めたいし、残務雑務はたまる一方。
が、離日が来週に迫り、今週末は北海道ミッションだ。
おそらく必見のドキュメンタリー映画『主戦場』をみておきたい。
今日しかないか…
満席状態が続いているという。
しんどいが、朝イチの回を目指すか。
何度も挫折変節しそうになりながら、実家を出家。
外は、傘も支えていられないような烈風と雨ではないか。

防水のはずの、そこそこ知られたメーカーの運動靴のなかはぐしょぐしょ。
さすがに映画館はがらがらだ。
久しぶりに、ほぼ眠らないで鑑賞。
よくぞこうしたドキュメンタリー映画をつくってくれた。
ひたすら会話を聞き取らなければならず、個人視聴ではないのでうっかり聞き漏らした個所をその場でリピートとはいかないのが残念だけど。
パンフレットで内容がかなりフォローされているようだ。
ちゃんと読まないとな。

足元はぐちゃぐちゃだが、渋谷で一服ランチ、買い物。
帰路、祐天寺でCoffee Caraway さんに寄る。
大連休中はお休みだったので、これが今回の訪日で初見参。
コーヒー関連の諸々の話題で盛り上がる。
夜、学芸大学方面にも足を延ばしたかったが、疲労と諸々の作業が山積みのため、断念。


5月22日(水)の記 鷹番千秋楽の水彩画
日本にて


さてさて。
今日は二人分、僕と富山さんの昼食のお弁当を買って富山妙子さんのお宅へ。
いよいよ。

画家本人による絵解きシリーズ第三弾。
本命。
「狐シリーズ」の『桜花幻影』についてお話を聴いて撮影。
…、まあ、こんなところかな。
ぐったり。

いったん目黒の実家に戻って仕切り直し。
一服して、今晩の上映の準備。
なぜか今晩上映の『サルヴァドールの水彩画』のDVDが一枚しか見当たらなくなっている。
新編集システム用につくり直して、複数枚、焼いた覚えがあるのだけれど。
消耗品…
手元の一枚をチェックすると妙なフリーズ現象が起こるが、これまたなぜかDVDクリーナーが見当たらない。
これから焼き直しの時間もない…

現場ではさらにプロジェクターとデッキの接続不良が生じるが、上映慣れした来場者のアドバイスで我に返り、致命的なことにならずに済む。
今日の鷹番上映会、今日も来場者の皆さんの協力のおかげで乗り越えられました。

『サルヴァドールの水彩画』はあまり上映の機会のない作品で、これといった作品論にも恵まれていなかった感あり。
ようやく今日の上映で、封印を解かれた感を新たに抱く。


5月23日(木)の記 ミッションのあわいに
日本にて


明日は早朝出家で北海道に向かう。
来週の月曜に帰京、火曜に富山さんのところにうかがい、水曜に離日だ。
離日前に二日間が理想のおかたづけタイムが厳しい。

今日は外回りの「公式予定」を入れていない。
身心をやすめやすめ…
少しでも片づけに着手。

まずは札幌からの帰りのフライトを早い便にチェンジ。
これで月曜の午後が少しは使えるぞ。

北海道では撮影もある。
上映素材、撮影機材、土産、身の回りの品に抜かりはないかな?


5月24日(金)の記 さっぽろ縁々
日本にて


早朝の祐天寺を出家。
東急→京急鎌田という利用者サービス不在の祖国の恥の部分を歩いて羽田空港へ。
人身事故もなく、助かった。

短い時間のフライトなので、窓側の座席とした。
本州を抜けて北海道島へと向かう機窓の、陽光にうねる海面に息を呑む。
新千歳空港、東京よりあったかではないかな。

今日の午後の上映会を仕掛けてくれた水上さんは、いつもナイスなナヴィゲートをしてくれる。
今回は札幌朝鮮学校の見学をアレンジしてくれた。
日本の朝鮮学校ではじめてつくられたという資料館も見学させてもらう。

さっぽろ自由学校「遊」関連スペースでの上映。
『狐とリハビリ』と『ブラジルのハラボジ』の上映だが、集まってくれた人たちの濃さにたまげてしまった。
東京の大学で美術を学んで、四谷の喫茶店での富山妙子さんによる勉強会に出席して、将来についての相談で富山さん宅を訪ねているという女性が来てくれた。
機材設置と操作を担当してくれた人は、牛山純一プロデューサーの『生きている人間旅行』シリーズの録音マンをしていたという。
ご当地関連トークで僕が従軍慰安婦記事問題の植村隆さんとの学生時代の関係を話すと、植村さんサポーターたちが名乗り出てくれた。
…といった調子である。

今晩は劇団黒色テントOBOGの及川さん藤沢さんの営む札幌市簾舞の民泊カフェ『虹のしっぽ』にお世話になる。
ここまでくると、空気がますますおいしくなる。
及川さんも富山さんとは黒テント時代に縁があった。
探し出してくれた1981年発行の『流動』という雑誌の富山さんの対談記事!!

富山さんの釈迦掌中で北海道まで来た感じ。


5月25日(土)の記 札幌の煙の向こう
日本にて


札幌市の聖地簾舞で朝を迎える。
なんと、午前4時前から明るくなるのではないか。
東京から、そんなに東に来ているのか。

いよいよ。
今日はこの民泊カフェ「虹のしっぽ」を経営する mokele mbe mbe Project の藤沢弥生さん及川均さんによる借切り市電での演劇『煙のむこう』の初日である。

今回の来道は明日の書肆吉成さんでの上映会がメイン。
なんとその時期にこのお芝居を札幌でお披露目予定と聞いて、友情撮影を申し出た次第。
これまでの日本各地での『煙のむこう』市電公演では藤沢さんのひとり芝居だったが、今回はおふたりの黒色テント時代の先輩女優・新井純さんが特別ゲスト出演するという。

今朝、新井さんにご挨拶。
気さくで知的で気配りのある方で、安心。
武州世田谷三宿のご出身と聞いて驚く。

札幌市中の、前世紀70年代を彷彿させるジャズ喫茶でレトロに早い昼食。
市電停留所前のショッピングモールの食堂階の広場に荷物を置いて、準備。

このお芝居は「浦島太郎」をベースにしているとは聞いているが僕も初見、詳細はわからない。
市電車両内での公演なので、僕の撮影ポジションも固定位置だ。
上映とは桁違いの緊張。

後部乗車口脇での撮影のつもりだったが、音響装置を後部に設置することから、急きょ前方入口脇に移動。

なんとも、すごい芝居だった。
藤沢さんの独演部分もさることながら、今回、付け足したという新井さんのパートが見事にはまっている。 
すでに真夏日の日中の、移動する市電内での公演なので、光量ががらがらかわるが、それも走馬燈効果か。
おかげさまで撮影、致命的な問題はないと思う。

この撮影素材の編集とDVD焼きは訪日中には厳しいと思っていた。
「虹のしっぽ」さんのテレビモニターにつないで試写してもらうことを今さらに思いつく。
接続もうまくいった。
一同是非に、とのことで夕食後に2階のラウンジスペースで試写。
記録映像作家として、至福のひとときでもあった。
翌日にも公演があるため、すぐにフィードバックが可能となった。

スポーツチームお付きの映像マンもかくや。


5月26日(日)の記 北の珍本美食
日本にて


札幌市簾舞の民泊カフェ「ほっぺた館」の客室は霊峰の景観、ハンモック椅子など、まことに快適。
朝のカフェをいただき、猛暑日だという今日も市電公演に挑む一堂に暇乞い。

はじめて札幌駅からバスでここを訪ねた時、バス車中からカトリック教会らしきものを見つけていた。
カトリック山鼻教会。
日曜のミサの時間を調べて、参加させていただこう。
なんと今日から、日曜なのに神父不在、そのためミサは成立せずに集会祭儀となるという。
北海道でも司祭(神父)不足は深刻の由。
かつて、水戸の教会でも日曜に神父不在でミサが成立しなかったことあり。
地元のカトリックの施設でつくったという納豆が販売されていて、これはいいお土産だ。

札幌駅近くの宿まで歩いてみよう。
道中、北海道名物となったスープカレーをいただいてみる。
なるほど、スープのカレーだ。

昼過ぎなので、宿に荷物だけ置かせてもらうつもりだった。
が、入室してもいいとのこと。
掃除が途中でシーツと蒲団をはがした状態だった。
疲労がたまっているので、少しでも横になっておく。

午後の上映会場、池内地区の丸ヨというショッピングモールの書肆吉成さんのブランチ。
僕のスマホ撮りの写真群も展示してもらっているので、一昨日にすでに訪れていた。
古書店だが、意欲的な中小出版社の新刊本の品ぞろいも大型書店の追随も許さないほど。
上映のギャラがご破算になるぐらい、買い込んでしまう。
富山妙子さん関連の書籍を中心に。
吉成さんと久しぶりにつながったのも、僕が富山さんの書籍を探していたのがきっかけだった。

上映設備は音響が考慮されていなかったようで、危ないところだったがなんとかなった。
参加人数は控えめだったが、集まってくれたのはいたく濃い方ばかり。
上映作品は『消えた炭鉱離職者を追って サンパウロ編』。
富山さんとのご縁も、この作品が契機だったな。

仕掛人の吉成さんは体を痛めて、今日は最初だけで失礼するとのことだったが上映後までいてくれた。
そして僕のトーク内容にちなんだ書籍を店内から即興で探し出して会場に並べてくれるではないか。
これは楽しい趣向だ。
岡村ライブ上映は、古書店と相性がいいのだ。

初対面の有志たちと懇親会。
僕の望みを受けて、地元の食材の店に案内していただいた。
ホタテの握り、サケの珍味メフン、北海道産ワイン…
ありがたし、のひとこと。


5月27日(月)の記 熊谷さんと作兵衛さん
日本にて


クラシックなビジネスホテルから、荷物を転がしながら札幌駅へ。
どこか「道中」モーニングサービスのある店でもないかと見渡すが、どうやらない…
(東京の実家に戻ってノートパソコンを開いてから、今回の宿は700円余計に前払いして朝食付きのプランだったことがわかり、歯ぎしり。)

帰路の飛行機も窓側にしたが、翼が視野のほとんど。
ふたたび鎌田歩きで、まずは祐天寺の実家へ。
どこかでランチサービスでも、と思うが、へたをすると午後の行程に差し障る。

タイムアウトにより見ないで、と思っていた東中野ポレポレでの上野英信展と、熊谷博子先輩の『作兵衛さんと日本を掘る』へ。

ロビーに熊谷さんがいるではないか。
お嬢さんを紹介される。
『作兵衛さんを掘る』はいい意味でオーソドックスで手堅い映画だった。
それでいて熊谷さんらしい、本人が出てきて自分の娘の話までするシーンもあるのが熊谷ウオッチャーを楽しませてくれる。
いろいろな意味で、僕にはできない映画で刺激的。

上野英信展…
富山妙子さんに寄り添うことになった分際として、必修科目。

さらに2カ所、友人知人との待ち合わせと訪問。
実家に戻ってゴミ屋敷状態となっているスペースにため息をつきながら、出ニッポンモードに切り替え。


5月28日(火)の記 ラッキーカレー
日本にて


出ニッポン前日。
まずは朝イチで富山妙子さんのお宅へ。
暇乞いとともに、ビデオ機材を持参。
昨晩、遅かったとのことで、お疲れの様子。
「絵解き編」で1カット、まともに撮れていないのがあり、気がかりだった。
なんとか、撮らせていただく。
つながるかな。

最寄りの駅前のお店でプロジェクト主任と打ち合わせ。
バス乗継ぎで実家に戻ろう。
三軒茶屋乗換え。
小腹がすいたが、実家の冷蔵庫も片づけないとな…

思い切ってマクドナルドへ。
ハッピーセットを注文。
付録のえほん『ラッキーカレー』をもう一冊ほしかった。
これを鹿児島の伊場カレーの伊場さんに送ろう。

薩摩の愛竹家、橋口さんの案内で今年2回、伊場カレーさんを訪ねている。
ここのお任せカレーが面白い。
ゴボウだったりイチゴだったり、その時でトッピングが変わる。
伊場さんひとりで店を切り盛りしている。
話をうかがう機会があったが、まさしくカレーの求道者。

マクドナルドの付録の絵本は、ハズレがない。
ハッピーセットのチーズバーガー、小ポテト、ドリンクに付録で500円足らずというのはおトク感あり。
昨晩、流浪堂さんに寄った帰りに荷物の仕切り直しから学芸大学駅付近の昔ながらの個人喫茶に寄ってみた。
カウンター席に座ってオーダーをしてから、しまった!
死角のテーブル席の男がタバコに着火中。
毒煙を浴びせられて、アイスコーヒー一杯で550円だ。

今回の付録えほん『ラッキーカレー』はカレーにまつわる奇想天外なストーリーで、カレー道をゆく好漢伊場さんにぜひお届けしたかった。
スマートレターでお送りしよう。


5月29日(水)の記 墜ちた翼
日本→大韓民国→


書籍に調理具。
荷物がだいぶ重くなった。
通常ならアウトだろう。

エチオピア航空をさんざん乗ったので、ゴールドステータスに成り上っている。
成田の専用カウンターで、よけいなこと言われないで荷物オッケー。

ANAのラウンジが使える。
ANAの国際線のラウンジには、時期替わりで日本の都道府県をチョイスして、その地域の銘酒をいくつか味わえるサービスがあった。
ラウンジ内のバーの入り口には数十種類の日本酒の一升瓶が飾られている。
バーにあるモニターには「國酒」と映し出されて日本酒のことをうたいあげている。

だが、はて、飲用できる日本酒が見当たらない。
そもそもバースペースにスタッフがいない。
近くの女性スタッフに日本酒はありますか、と尋ねると「ありません」と言われた。

恥ずかしくないのかな。
こっちが恥ずかしい。
内閣総理大臣から、国を代表する航空会社の国際線のラウンジまで。

祖国日本の失墜の速度と度合いは、想像以上のようだ。


5月30日(木)の記 めぐる大陸
大韓民国→エチオピア→ブラジル


エチオピア航空の機内映画…
日本映画はいつも二本。

今回は以前にもかかっていた『寝ても覚めても』と、『万引き家族』!
他の映画を優先しよう。
そもそも今回は僕の座席のモニターの調子が悪い。
二度、客室乗務員にクレームしてなんとかなる。
英語でも「re-set」というのだな、こういう時は。

『オーストラリア』という165分の長編に挑戦。
うとうとしては、巻き戻し。
第2次大戦中の日本軍によるオーストラリアの攻撃がヴィジュアルに再現されていて、貴重。
このカッコイイ女優、ニコール・キッドマンに似ているなと思っていたら、本人だった。
(のちに調べて、彼女はオーストラリア人だと知る!)
アボリジンの混血の少年との友情というのもいい。
日本軍が、オーストラリアの国土に上陸してアボリジンを虐殺するシーンがあるが、さすがにこれはフィクション。
しかしもし「皇軍」が実際にオーストラリアに上陸していたら、これぐらいやりかねなかったろう。
オーストラリア軍の看護婦たちを皇軍兵士たちが強姦、虐殺したという現実の事件(バンカ島事件)は今年になってあらたな事実とともに報道されている。
日本、スゴイ!

そのほか『Father to Son』という日本ロケもした台湾映画、ブラジルのゴイアス州産の映画を見る。

エチオピア経由、ブラジルに無事到着。
家族のもとにたどり着く。
お疲れさまでした。


5月31日(金)の記 うらはうらまない
ブラジルにて


無事にブラジルの家族の元に戻った翌日。
安楽なひと時。
時差ボケがなかなかきついけど。

まずはでれでれごろごろと、起きている時は気ままな読書。
鳥取の定有堂書店さんで買ってきた『裏が、幸せ』(酒井順子著、小学館文庫)をメインに読み進める。
わが意を得たり、新たな気づきと学びの多い本。

裏は不満を表に出さない。裏は糾弾しない。裏が裏に取って代わろうとも思っていない。
(前提書、宮下奈都さんの解説より。)


そういえば、鳥取での上映会で「地球の裏側から来た…」と紹介されたっけ。

今回、日本のクレジットカードの景品のグリルパンを担いでいた。
なかなかにつらいが、午後、起き上がって徒歩圏の冷凍食品店まで買い物。
ピカーニャと呼ばれる牛のイチボ肉を購入。
ふむ、グリルパンのピカーニャ、悪くないぞ。


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