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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2020年の日記  (最終更新日 : 2020/06/03)
5月21日(木)の記 ジュゴンの目 (加筆しました)

5月21日(木)の記 ジュゴンの目 (加筆しました) (2020/05/21) ジュゴンの目
ブラジルにて


サイの目というぐらいだから、サイコロに動物のサイの骨や角を用いるなら合点がいくが、ジュゴンの骨とは。

ついにわがブラジルはコロナの死者増加率で世界のトップになった由。
サンパウロでのコロナ禍巣ごもり中、まさしく濫読をしている。
それぞれを読み終えることなく、他に手を出すのだから始末が悪い。

というわけで今回、ブラジルに戻ってから読み終えた本の数はさして多くはない。
そのなかでズバリ沖縄がテーマの本が2冊ある。

ひとつは東畑開人さん著『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』(誠信書房)。
鳥取は倉吉の「倉吉ブックセンター」さんで、拙作上映中に目に留まった一冊。
書籍ソムリエの円谷店長に「お目が高い」と言われて買わざるをえなかった。

読んでみて、この本を発掘して平積みにする円谷さんこそ「お目が高い」と言わざるをえない。
臨床心理士である著者が、沖縄にはユタなどの伝統的ヒーラーとはまた異なる「野の医者」がやたらに多いことに気づき、その人たちに「治療」を受けながら個々の歩みを聞いていく。
スピリチュアル系について、そして沖縄についてあらたに教えてもらうことが多かった。

さて新たに「出土」したのが『沖縄のジュゴン 民族考古学からの視座』。
盛本勲さん著、ずばり沖縄の榕樹書房発行。
この本は沖縄は八重瀬町の「くじらブックス」さんで出会った。
こういう本が読みたかった!

くじらブックスを家族で経営する渡慶次(とけし)さんとは古書店ウララの宇田さんコネクションで知り合ったが、故上野英信も絡んでいたりして奥が深い。
くじらブックスへは那覇市内からバスで往復、お店でのまったり滞在と飲食も含めて半日をかけたが、まことに充実した旅のひと時だった。
小ささがウリのウララさんからすると、くじらと称するだけあって首里城内にでも入ったようなスペース。
選び抜かれた新刊と古書が並び、琉球陶器や喫茶、食事も楽しめる。

僕自身は『すばらしい世界旅行』の『ナメクジの空中サーカス 廃屋に潜む大群』がデビュー作としている。
実は、名前の上ではその前に『幻の人魚を喰う ジュゴンの海に潜る』という番組でディレクターとして登場しているのだ。
フィリピンの離島の漁師たちが定置網にかかったジュゴンを捕らえて食べる、というお話だ。
もっとも僕はジュゴンそのものを食べることも見ることもなかった。
先輩ディレクターが取材したジュゴン漁のムービーフィルムをもとに、漁師たちの日常などを追加撮影して番組をまとめろという、いわば敗戦処理投手のような役割だった。
日本映像記録センター入社から1か月も経たないうちから、新人のオカムラをフィリピンに派遣して帰ってくるごとにどやしつけて、たかが追加撮影のために合計3回もフィリピンに行かせた、と牛山純一プロデューサーは得意げに語っていたとか。

西暦1982年、そもそも文献資料も乏しい時代である。
日本映像記録センターの図書室にあった、平凡社の百科事典だろうか、それにジュゴンは沖縄ではザンノイオと呼ばれてその骨が遺跡からも見つかっている、といった短い記載があったことを覚えている。

沖縄の海のジュゴンを守れ!というのはもちろんけっこうなことだ。
だがもっとジュゴンのこと、人との関係が知りたい。
この本を読むとジュゴンは先史時代から現在まで、沖縄の人たちに重宝だったことがよくわかる。
肉は美味で薬用効果もうたわれ、骨まで利用され尽くしていた。
本土の中世相当のグスク時代にはジュゴンの骨がサイコロにもされていたという。
ジュゴンの骨でつくった用途不明のナゾの蝶型骨製品というのも気にかかる。

事情もわからない都市浪費者があげつらうのも気が引けるが…
沖縄のジュゴン漁の主な方法は、ジュゴンの尾鰭を叩き折り、ジュゴンが痛み苦しんで暴れまわって消耗させて殺すというのが衝撃。

さて、それにしてもまさしくわが幻のデビュー作「幻の人魚を喰う」、どこかにVHS録画テープがあるはずなのだが見当たらない。
日本の実家からブラジルに持参したように思うのだが。

サイコロ占いで探してみるか。


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