11月12日(木)の記 BORI CAFE (2020/11/12)
BORI CAFE ブラジルにて
「麦も涙する。」 光州事件を訴える富山妙子の作品群より。
昼に友人夫妻と東洋人街で会食することになった。 お互い、渡したい資料があるのだがパンデミックにより、ずっと機会を逸していた。
場所も時間もお任せして、東洋人街の中華料理屋で待ち合わせることになった。 ところがそのお店がお休みで、そのあたりを歩いて回る。 そもそも開いている店がこんなに少ないとは。 東洋人街では数少ない韓国料理店が開いていた。 アンニョンハシムニカ。
夫妻それぞれと話が弾む。 まずはガラガラヘビについて。
今日は先方は車であり、こちらも今晩からオンラインイベントが続く。 ぐっとアルコールをこらえる。 帰り際、レジにBORI CAFEと書かれたチラシがあるのに気づいた。
待ち合わせ場所までメトロのサンジョアキン駅から歩いてきて、この名前の小さなカフェが目についた。 東洋系の若い人がひとり店内にいた。 レストランのカウンターのコリアンのおばちゃんに、このカフェもコリアンの経営かとポルトガル語で聞いてみる。 Sim(はい)、とのこと。
帰りにこのカフェに寄ってみた。 パンデミック以来、家族以外との外食もカフェに立ち寄るのも今日は初めて。 このカフェは店側ひとりに客僕ひとり、しかも吹きっさらしでウイルス感染の可能性は極めて低いと見た。
まずメニューを見てBORI茶というのを頼んでみる。 それからBORIとは麦のことだと教わる。
お店の若い人はブラジルで生まれたコリアン二世だった。 彼女の親が子供だった頃、朝鮮戦争に従軍した祖父が子供を連れてブラジルに移住したという。
こちら時間の今日の夜から始まる予定の40年前に起こった韓国の光州事件と画家・富山妙子をめぐる日韓のオンラインシンポジウムについて話す。 どこまでわかってもらえたかどうか。
勘定となり、釣りの小銭がないので階上からとってくるという。 いいよ、とっておいてというが、それはだめ!と制される。
お釣りをもらい、いいお店だ、また来るよとポルトガル語で伝える。 彼女は「カンサハムニダ」と深く腰から頭まで下げた。 こんなに深々とした礼のしぐさを、実生活では久しく見た記憶がない。
彼女はナチスの強制収容所に連行された女性のように髪を刈り上げて、手のひらには爬虫類のタトゥーがあった。 人を見かけで判断してはならないと改めて教わる。
そもそも麦でつくったコーヒーというのがあったな。 ひょっとしてこのカフェには麦コーヒーがあるのかな。 なにか口実をつくって、また東洋人街に行こう。
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