ブラジルの二大悪魔を観光制覇! (2020/09/21)
ブラジルの二大悪魔を観光制覇!(西暦2004年6月発表)
ブラジルの二大悪魔をご存知ですか?
悪魔といっても「あくまでも」観光悪魔。
より有名なのが「悪魔のノド 」(GARGANTA DO DIABO)。 そう、あのイグアスーの滝のメインスポットです。
もう1匹の悪魔は、サンパウロ州の奥地に潜んでいました。
その名は 「悪魔の洞窟 」(CAVERNA DO DIABO)。 サンパウロ州最大の鍾乳洞です。
これまで確認されている洞窟の長さは、およそ3200メートル。 そのうち約400メートルが観光用に開放されています。 ルートに沿って照明はもとより、歩道・階段・手すりなどが整備されているため、子供からお年寄りまで軽装で気軽に悪魔制覇を楽しむことができます。
場所はサンパウロ市から西に約280キロ、その名もエルドラード(黄金郷)郡のジャクピランガ州立公園内。 道中には大西洋海岸森林と呼ばれる熱帯雨林地帯が広がり、ヨーロッパ人の到来と開発以前の新大陸の姿をしのぶことができます。
エルドラードに近づくと、一面のバナナ畑。 黄金郷の黄金の正体はバナナだったのかと思うくらい。
| 黒人女性のグラフィティ(サンパウロ市)。 頭部に信仰・家族・連帯・平和・教育・愛・ 持続・抵抗 を抱く。 |
| 悪魔の洞窟は、公式には20世紀の始めにドイツ人の博物学者に発見されたことになっています。 しかし現地人には、はるか以前から知られていました。 このあたりはキロンボと呼ばれる、大農場などから逃亡した黒人奴隷たちの隠れ里だったのです。
なぜ「悪魔」とまで称されるようになったかには、いくつかのミステリアスな説があります。
私のガイドをしてくれたキロンボ出身の青年は、こんな話をしてくれました。 村の作物を洞窟のなかに貯蔵しておいたところ、ある日、跡形もなくなってしまった。 ある時は洞窟の奥に不気味な火が見えた。 ・・・こうした怪現象が続いて、悪魔の仕業といわれるようになったというわけです。
名前こそおどろおどろしいものの、洞内はよく整備されています。 私の暗所恐怖症の息子も、日本から訪ねてきた70代半ばの私の母親も楽にまわることができました。
5億年前の先カンブリア期に始まったという鍾乳洞のさまざまな造形は、あっぱれのひとこと。 日本でも鍾乳洞の自然の造形に、さまざまな名前がつけられていたのを思い出します。 こちらは連想とネーミングがいかにもブラジル的で、キリスト教などの影響がうかがえるのが面白いところ。
カテドラル、洗礼盤、東方の三賢人など・・・白雪姫にピザの斜塔なんてのもありました。
私が家族連れで悪魔の洞窟を訪ねたのは、年末年始の休暇の時期でした。 南半球のこちらは夏盛り、海岸の観光地に向かう道路は通常のサンパウロ市内をはるかにしのぐ大渋滞。 いっぽうこちらは道路も快適ながら、心細くなるほどガランガランでした。
人ごみの海岸で灼熱の太陽を浴びるのもいいけれど・・・ 地球の歴史、キロンボの秘史などに思いをはせながら、地の底の冷気でしばし頭を冷やすのも、ブラジルの一味違った夏の楽しみ方だと発見しました。
採録寸言: 「悪魔の洞窟」は私が家族と訪問した後、整備不足から閉鎖されたという報に接していました。 現在はどうかと調べてみると、西暦2018年には粋を凝らしたゲートも築かれたとのことですが、いま現在はCOVID-19流行のため、ふたたび閉鎖中でした。 悪魔のウイルス。 かなり換気のよさそうな巨大な洞窟であり、この時期のアナ場だと思ったのですが。 (西暦2020年9月21日 記す)
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