フェスタ・ジュニーナが熱い! (2020/10/29)
フェスタ・ジュニーナが熱い!(西暦2004年7月発表)
6〜7月頃にブラジルを旅行してみると、街で奇妙な子供たちを見かけることでしょう。 新品なのに破れた麦藁帽子にヒゲ面。 これまた新しいのに継ぎだらけの野良着を着た男の子。 頭にいかにも作り物の三つ編みをして、顔にソバカスの描き込み、ハデハデの柄のドレスを着た女の子。 いったい何事でしょう?
そうです、これはブラジルの国民的行事、フェスタ・ジュニーナ(六月祭り)の出で立ちなのです。 ブラジルではカーニバル以上に生活に溶け込んだポピュラーなお祭りで、この時期の学校の恒例行事にもなっているのです。
このお祭りはヨーロッパに起源があります。 キリスト教の聖人・聖ヨハネの祝日が6月24日にあたり、その直前が北半球の夏至のため、夏を迎える火祭りや収穫祭が重なりました。 さらに聖アントニオや聖ペドロといった人気のある聖人の祝日が六月にあることから、これらが習合したお祭りとなりました。 聖ヨハネを意味する「joanina」が六月を意味する「junina」と混同され、六月祭り:フェスタ・ジュニーナと呼ばれるようになって、ポルトガルからもたらされたのです。
16世紀にブラジルへやってきたイエズス会の宣教師によると、焚き火を行なう聖ヨハネ祭りは、インディオと呼ばれる先住民たちにバカ受けしたとのこと。 先住民たちは衣服が燃え、肌が火傷するほど火祭りを楽しんだといいます。
北半球の夏至は、ブラジルの暦では冬の始まりです。 フェスタ・ジュニーナはブラジルの冬の風物詩となりました。 会場にたくさんの小旗を飾り、クアドリーリャと呼ばれるダンスが始まります。 田舎風の衣装をまとって男女にわかれ、アコーデオンの伴奏に合わせて踊るのです。会場には模擬店や子供の遊技場も設けられます。 トウモロコシやピーナッツ、ココナッツなどで作ったスナック菓子、それにビーニョ・ケンチ(ホットワイン)やケントン(サトウキビの焼酎カシャッサにショウガやニッキを入れて暖めたもの)などが定番です。
ブラジル人の心の故郷といわれる東北地方では、フェスタ・ジュニーナはさらに盛んになります。 カンピーナ・グランデやカルアルといった町では、それぞれ150万人もの観光客を迎えて音楽ショーなどで賑わいます。 こちらは今日ではビール会社や携帯電話会社などがスポンサーとなって大型化する一方で、そろそろ日本人相手のパッケージ旅行も現れるかもしれません。
今年(西暦2004年)の6月、ブラジルのルーラ大統領は官僚や友人たちをブラジリアの農園に招き、参加者は田舎スタイルに郷土料理を持ち寄ってフェスタ・ジュニーナを楽しみました。 MPBの大御所で文化大臣のジルベルト・ジルがアコーデオンの伴奏で歌を披露するという豪華版田舎祭りでした。
フェスタ・ジュニーナは7月いっぱいぐらいまでは催されるため、この記事がアップされる頃は、まだ間に合うかもしれません。とはいっても、いきなりブラジルは遠すぎる? いえいえ、日本の日系ブラジル人住民の多い地域では、少しずつフェスタ・ジュニーナが年中行事化してきているのです。 カーニバルはちょっとハデ過ぎて・・・という方には格好のブラジル入門のチャンスです。 田舎ダンスはともかく、まずは売店の料理とドリンクでブラジルの故郷の味を試してみませんか?
ジュニナ祭 継当て無くて ベソかく子 (「ブラジル俳句・季語集 自然諷詠」より)
| ブラジル北東部風の布飾り (サンパウロの北東部料理店にて) |
| 再録寸言: このもとの連載がオンラインで公開されていた期間で、もっとも問い合わせが多かったのがこの稿でした。 日本語でこのブラジルのフェスタ・ジュニーナについて検索してみると、いかに「使える」ものが少ないかがうかがえました。 わが本業の映像作品でも、テレビ時代のものも含めてブラジルのカーニバルが登場するものは1本しか思い当たりません。 いっぽうフェスタ・ジュニーナの方はざっと数えても5作品ほどで紹介しています。 この再録をアップする時期のブラジルは、ハロウインと「死者の日」が間近にせまっています。 ブラジルの「死者の日」の行事も面白いのですが、これは骸骨の登場で知られるメキシコに比べると、はるかに見劣りがします。 「六月まつり」も「死者の日」もカトリックの行事に由来します。 メキシコでこの「六月まつり」にあたるものはどんなものかと調べてみると、聖ヨハネや聖アントニオなどにまつわるものが局地的に行われている程度で、「六月まつり」の規模に関してはブラジルが圧倒的に勝っているようです。 いっぽう今回、写真で紹介している六月祭りにつきものの紙や布の飾りについてはメキシコの方が圧巻のようです。 メキシコでは紙飾りはパペル・ピカドと呼ばれて、これが巧妙になったのには中国人移民が貢献していることを最近、知りました。 (西暦2020年10月 記)
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