サンパウロで都道府県を食べる‼ (2020/12/18)
サンパウロで都道府県を食べる‼(西暦2004年8月発表)
ブラジル料理もいいけど、大味だし、やっぱり日本の郷土料理の方が…とおっしゃるあなた! 北海道のニシンから沖縄ソバまで、日本列島の味をいっぺんに存分に食べ歩きたいというあなた! これはもう、サンパウロの日本祭りに来るしかありません。
ブラジル日本都道府県人会連合会が毎年7月に主催する日本祭りは、もうすっかりサンパウロ市の名物となりました。 7回目を迎えた今年(2004年)の人出は、3日間でなんと45万人。 これはもう事件です。
会場には在ブラジルの各都道府県会や福祉団体、日系企業などがブースを開き、芸能ショーも合わせて開かれます。 なんといっても名物は各都道府県人会のお国自慢の郷土食。 フェスチバル・ド・ジャポン(日本祭り)が郷土食フェスティバルとも呼ばれる所以です。
| コロナ禍で閑散とした東洋人街の大鳥居付近(2020年11月) |
| ここで社会科のおさらい。 日本の都道府県はぜんぶでいくつありますか? はい、47ですね。 そのうち今年は37の都道府県人会が参加してそれぞれの郷土食を提供したのですから、快挙といえるでしょう。 北海道の焼きニシン、秋田のきりたんぽ、山梨のほうとう、愛知の味噌カツに長崎ちゃんぽん、熊本の芥子レンコンに沖縄ソバ等々といった名物がズラリ。 変わったところでは、茨城のダチョウ餃子。 茨城に日本最大のダチョウ牧場があるのにちなんだとか。 アマゾン取材等でだいぶゲテモノもいただいてきた私も、ダチョウは今回が初めて。 なかなかヘルシーでしっかりしたお味でした。
あの県、どんな名物があったっけ? なんていう県も思い浮かぶでしょう。 当のその県人会も苦労しているようで、郷土食として、やたらにヤキソバやテンプラ(かき揚げ)が多いのが特色です。 ヤキソバごときが郷土の味とは情けない、という同胞もいます。 しかしこうした当地でもポピュラーになった料理の方が一般ブラジル人には受けるようで、延々長蛇の列。 興行的には大成功です。 舞台裏をのぞかせてもらうと、いずれの県も日本の高校の文化祭のようなノリがあふれています。 料理にはシロウトのようである県人会の一世のお年寄り、そして日系二世・三世の若者たちがハッピなどを着て、テンプラの油にまみれて汗だくで奮闘しています。 売り上げは、貴重な県人会の活動資金。 口うるさいブラジル人がカキアゲひとつのために10分、20分も列に並んで文句も言わないのは、そんな熱気にうたれるせいでしょうか。
私の一番の楽しみは、人に会えること。 今年も思わぬ出会いがいくつもありました。 ついついお酒も進みますが、そこはお祭り、お祭り。
この日本祭りの当初の目的は、各県人会の後継者を育てるきっかけづくりでした。 私自身、日本の郷土食なんてブラジル人にウケるの? と心配で、こんなに大きなイベントになるとは予想もしませんでした。 今、人出でごった返す会場を冷や酒をいただきながら眺めていると、感無量です。
日本人と日本文化は単一で変化に乏しいもの、とブラジル人も、そして私たち日本人自身も思いがちです。 しかし日本文化は料理ひとつとっても、こんなに多様性に満ち満ちていたのです。 日本文化とは縁遠かった日系の若者が祖先の食べ物を通じてそれを体感していく。 さらに一般ブラジル人たちもヤキソバとテンプラ以外のエタイのしれないものにも、好奇心が手伝って少しずつ手を出し始めているのがわかります。
食べ物の力は強い! 再録メモ:
16年前の記事ですが、へー、オレはこんな文章も書いていたのかと意外な思いがしています。 そもそもワタクチはヘンクツですが、ヘンクツが高じてもはやこの日本祭りに行ってみたいという気もなくなりました。 イベントの巨大化とともに大イベント屋さんが仕切るようになったようで、ますます僕の関心から離れていきます。 日本祭りの方は、どういう理屈でしたか、ギネスブックへの登録を申請しているとか。 ちなみに今年2020年はコロナ禍により、ナマのイベントは中止で11月に「ライブ日本祭り」というのがオンラインで開催されました。
(西暦2020年12月18日 記)
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