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岡村淳のオフレコ日記
     岡村淳/住めばブラジル (改訂版)  (最終更新日 : 2023/03/10)
ブラジルの古代遺跡! [全画像を表示]

ブラジルの古代遺跡! (2022/01/24) ブラジルの古代遺跡!(西暦2004年12月発表)

えっ、ブラジルの古代遺跡ですって?
これは一部の「通」の人にしか知られていないといっていいかもしれません。
実はブラジルは世界でも有数の岩絵遺跡の宝庫なのです。

岩絵とは、先史時代の人たちが岩壁に顔料を塗ったり、彫刻をしたりして残した絵画類です。
描かれている絵柄は、人物や動物などから意味不明の抽象的な模様まで実にバラエティに富んでいます。
地域的にそれぞれ特色が見られますが、ブラジルでは北はアマゾン流域からノルデステ(北東地方)の乾燥地帯、そしてブラジル南部まで幅広く分布しています。
そもそもこうした岩絵が描かれた時代には現在の国境も存在しませんし、岩絵の存在は南北アメリカ大陸はもちろん、南極を除く各大陸に広がっています。
ブラジルは国土も広いので、こうした岩絵も多種多様なものの研究者の数も限られ、地元の人しか知らないような未知の岩絵群の宝庫でもあります。

私は日本で学生時代に考古学を専攻していましたので、ブラジルに移住してからは知られざる岩絵遺跡の数々にすっかり魅せられてしまいました。
とくに専門家も知らない未知の岩絵に出会った時の喜びは格別でした。

普通は古代の遺跡といっても石造りの巨大な建造物でもない限り、地中に埋もれていることがほとんどで、その全貌を知るためには発掘調査をしなければなりません。
しかし岩絵遺跡の場合は、その場所にさえ行けばズバリこの目で見ることができるのです。

そもそも遺跡から発掘された石器などを見るだけで古代人の生活に思いを馳せるのは、なかなかむずかしいことです。
たとえば現代のある家庭にある包丁と金槌(かなづち)を見て、使っている人の暮らしを想像しろというようなものですから…。

いっぽう岩絵の方は、美術のジャンルで研究されることもあるアートです。
古代人が、他人に見られること・伝えることを意識して、狩猟や踊りなどの生活の中の重要なシーン、さらに天文や神話などを描いたものですから、それを見ることで彼らの生活、そして精神までうかがうことができます。

しかも広大なブラジルには、未発見・未発表の岩絵遺跡がウジョウジョとあるのです。
新発見の喜びというのは格別なものがあり、私も一時はだいぶハマっていたものでした。
しかしカネもかかるし、きりがないのでほどほどにすることにしました。

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岡村が1990年代に日本で発表したブラジルの岩絵遺跡に関する記事類。学術誌にも寄稿した。
観光旅行でアクセスできる有名な岩絵遺跡としては、UNESCO(ユネスコ)の世界遺産にも登録されているブラジル北東部、ピアウイ州のセラ・ダ・カピバラ国立公園があります。
カーチンガと呼ばれる乾燥地帯の岩山に描かれた数千年前の岩絵の数々は、見るものを圧倒します。
専門家も悲鳴を上げるほどの量の岩絵群!

さて先日まで私はドキュメンタリー作品の仕上げのため、訪日していました。
考古学青年の前には怪獣少年だった私は、ブラジルで待つ息子に怪獣グッズを買うのを口実としてゴジラ映画シリーズの最新・最終作『ゴジラ FINAL WARS』を見に行ったのです。
モスラの棲むインファント島の洞窟のシーンでビックリ!

モスラとガイガンの決闘場面の描かれた岩面の下に、セラ・ダ・カピバラにある2人の人物が向かい合って踊る岩絵があるではありませんか!
岩絵を描いた数千年前のインディオには著作権は存在しないでしょうが、ブラジルの岩絵は、世界に誇る日本の怪獣映画にまで影響を与えるとは!

観客のなかで私の他に、こんなことに気づく人はおそらくいないことでしょう…。
岩絵ネタはつきませんが、とりあえずまずはこの辺で。
(西暦2022年1月24日加筆)

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一昨日、サンパウロの近所でスナップ撮りしたグラフィティ。
再録寸言:
先史時代の岩絵について岡村は世界的な権威である故・木村重信先生の薫陶をたまわりました。
学生時代から研究をつづけた縄文文化との関連も含めて少なからぬ独自のウンチクがありますが、このライトエッセイではほんのサワリの口上にとどめています。
木村先生は美術研究者として岩絵に取り組んでいましたが、考古遺跡としてではなく美術品として岩絵に接する姿勢は僕にとって貴重でした。
現在、岡村はブラジルのグラフィティを日毎に採集してインスタグラムにあげる作業を続けていますが、かつての奥地での岩絵探しの延長のような気分でいます。
https://www.instagram.com/junchan117/
想えば岡村がブラジル移住後に最初に手掛けて日本で放送することになるテレビ番組は「ブラジルの心霊画家」でした。
いっぽう移住後に調査を開始していたのが、この岩絵遺跡群についてでした。
ブラジルの心霊アートおよび先史アートという、まさしくマージナルな領域からアートに取り組むことになりました。
そうしたベースをもとにブラジルに帰化したトミエ・オオタケ先生、ブラジル生まれの森一浩さん、さらにちょうど60年前にブラジルを訪問した富山妙子さんの記録を手掛けることになります。
今後は2021年末に開局したYouTubeの『ウルトラJ:チャンネル岡村淳 Ultra J :CANAL JUN OKAMURA』 https://www.youtube.com/channel/UCoi76qjBFhyhpPkndSdV3GQ
も活用してこうした作品群も紹介していくつもりです。
ご期待ください。


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