2月8日(月)の記 「カレーの木とワサビの木」 (2021/02/08)
「カレーの木とワサビの木」 ブラジルにて
昨日付で少し触れた『香辛料の民族学』(吉田よし子著、中公新書)の副題が「カレーの木とワサビの木」。 ようやく読了するが、これは座右の書クラス。 発掘したのは西暦1988年の初版本で、鉛筆(シャープペンかな?)のラインもあるから一応は読んでいたのだろう。 まるで記憶にない。
今回、再読してこの30余年でいかに僕が変化したのかがわかる。 ただ料理を食べる側から、食材を選んでつくる側になっていた。 あと30年したら、食材もつくる側に、はないだろうけど。
今日もこの本の記載についてさらに知りたくて、いったん本を置いて何度となくノートパソコンに向かう。
例えば… ・日本では都市部の雑草になっているアリタソウという和名の植物には駆虫作用があり、アメリカ大陸の先住民が活用して今日のメキシコ料理にも欠かせない、とある。 ブラジルでもこの植物は利用されているのだろうか? ・オレガノと呼ばれる植物ほど、いろいろな場所で別の種類の植物が用いられるハーブはないだろう、とのこと。 こちらの食材店で「ペルー・オレガノ」として売られているものがあるが、これの正体は? ・バジルの種子は水に漬けると膨張してカエルの卵のようなゼリー状になり、こうして料理に使われているという。 チア・シードも同様に水で膨れるのだが、その相違は?
…、といった塩梅である。 食材の多様性について、自分の知らないことの膨大さに驚くばかり。 豊かなフィールドワークと実践、そして観察と科学の伴なうグルメと民族学の融合。 読後の一言は、「ごちそうさまでした!」
巻末の部分を書き出しておこう。 「森林浴などで私たちが吸収する揮発性物質の多くはテルペン、それもモノテルペン類が多い。香りのよいハーブは、すでに述べたようにさまざまなモノテルペン類を含んでいる。つまり小さいながら立派な「大気のビタミン」源である。ミニガーデンのハーブの散歩道でも、都会生活でささくれ立った神経を労り、活気を与える効果は決して小さくない。 いずれはこういった匂い成分の、人間に対する作用がもっと詳しく分かるであろう。そして街路樹もその発散する成分によって、住宅街、学校、病院、ビジネス街などに適したものが植えられるようになるかもしれない。現代科学の粋を集めたその成果が出てみたら、実は昔の、または今も昔ながらの生活をしている熱帯の発展途上国の人々が、家のまわりや道路そして畑等のまわりに植えている植物と、かなり高い確率で一致するのではないだろうか。」
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