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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2022年の日記  (最終更新日 : 2023/01/01)
4月の日記 総集編 ブラジル竹取物語

4月の日記 総集編 ブラジル竹取物語 (2022/04/03) 4月1日(金)の記 雨天中止
ブラジルにて


スマホの週間天気予報を見ると、雨ばかり。
実際に雨がちの日々。

今日は在サンパウロの年配の邦人女性からご著書をいただくことになった。
午前中のご都合がよろしいとのことで、わが家近くの絵本喫茶店を提案。
天気予報は午前中も雨なので、気をもむ。

午前中は空から水滴が落ちることもなかった。

夜の気になるイベントに行ってみようか。
ずばり『MABUI』と題されている。
演じるのは、Lúcia Kakazu という沖縄系らしい女性。

Kakazu...嘉数か。
午後7時開演、午後6時から会場で入場券を配る由。
雨天中止、ともある。
スマホで徒歩だと約37分と出る劇場の屋外で行なうようだ。

午後は、降ったりやんだり。
家族の夕食を早めにこしらえて、思い切って徒歩で行ってみる。
この雨じゃあ…

こちらは秋分も過ぎ、夜がだいぶ早くなった。
いいウオーキングにはなったが、やはり今宵のMABUIは中止。
別の「屋内」の芝居もあるようだが、これは21時開演。
すごすごと帰りましょう。

道中、建築資材店で両面テープ、天然酵母ベーカリーでチャバタなどを買えた。


4月2日(土)の記 姦淫の女
ブラジルにて


「姦淫の女」、今の時世ではキツい響きの言葉だと思う。
だが、レンブラントの作品の邦題として定着している。
『新約聖書』の「ヨハネによる福音書」8章にあるエピソードだ。

カトリック信者は、主日と呼ばれる日曜のミサにあずかることが原則とされている。
いっぽう日曜に都合のつかない場合は、土曜の夕方以降のミサをその代わりにすることができる。

夕方、徒歩圏にあるチャペルのミサにあずかる。
読み上げられるのは明日の福音である、この「姦淫の女」のエピソードだった。

覚えている範囲でざっと書いてみる。
当時の「律法」では姦通した男女は石打ちの死刑、と定められていた。
イエスをなんとか陥れようとたくらむ男たちが、姦通の現場で捕らえたという女性を連れてきて、この女を石打ちで殺すべきかとイエスに尋ねる。
イエスは「あなた方のなかで自分に罪のない人のみが彼女に石を投げなさい」と答える。
男たちはひとりずつ立ち去っていく。
ひとり残された女性に、イエスは「もうそんなことをしてはいけないよ」と語る。
…といった話である。
興味のある方は、原典にあたっていただきたい。

さて。
2年ほど前のこと。
SNSで日本のカトリック横浜教区の女性の信者が、司祭(カトリック神父)から性暴力を受け、精神にもダメージを受けてしまったことを告発したことを知る。
世界的にカトリックの「聖職者」による性暴力が告発されてきているが、カトリック信者数が極小の日本も例外ではなかった。

そのことを、僕がブラジルでもお世話をした、日本の横浜教区に属するカトリック教会の役員をしているという知人にどう受け止めているかを尋ねてみた。

するとカレの言うのが、このエピソード。
自分に罪のない人のみがこの神父の事件をとやかく言いなさい、とおっしゃるのだ。
これには、キレた。
組織のなかでの権力者によるれっきとした犯罪をその権力にあやかる者が、イエスの教えを曲解しながら隠ぺいに加勢しようという訳だ。

今夕のミサの神父の話で、あらたに気づかされる。
この「姦淫の女」のエピソードでは、その女性の相手であった男が不在なのだ。
モーセの律法によれば、姦通の罪を犯した場合は男女ともに死刑なのだ。
それを、女性だけをあげつらう男たちのシステム。

勇気をもって、まさしく決死の覚悟で教会内の性犯罪を告発した女性に、そ知らぬ顔で規制の権威を守ろうとする教会の役員の男は、性犯罪に加担していると僕は思う。

このエピソードを実名は出さずにフェイスブックに書いたところ、その役員というのは自分のことだろう、もう自分は役員をやめているのだぞ、と書き込みがあった。
教会の役員の肩書きで、横浜教区の長の手紙を切り札としてブラジルに乗り込んできて、僕にあれこれさせておいて…
その後、なんの報告もないのだからそんなことを僕が知る由もない。

彼は自分が誇り高き隠れキリシタンの子孫であること、横浜教区にはこんな立派な業績もあるといったことを延々と僕のフェイスブックに書き込んできた。
で、あなたは何をしたのですか?
といった僕の問いはまるで無視だ。

宗教、キリスト教に偏見のある人には、それ見たことか、こいつらどうしようもないと思われたことだろう。
せっかく拙作を通じてキリスト教に関心が向き始めた人は、さぞげんなりがっかりしたことだろう。

が、あえて隠すことなく、問題の所在を考えていきたい。


4月3日(日)の記 マブイとヤノマモ
ブラジルにて


案内文の冒頭を翻訳すると…
「マブイとは、沖縄で精神世界をつかさどる女性たち、ユタやカミンチュたちが感知し、バランスを保ち、解放する振動のことである。…」

むずかしい。
日本人でもユタやカミンチュという言葉を知り、さらにその相違がわかる人はまれだろう。
日本語で「マブイ」を検索すると「沖縄方言で、魂のこと」とある。
ずっとわかりやすい。

ポルトガル語でこれを読んで、どれだけの人が…
こういうむずかしい表現を嗜好する人たち向き、ということか。

一昨日、雨天で中止となったパフォーマンス『MABUI』に再挑戦。
今日も朝のうちの予報だと雨だったが、空は持った。
劇場裏庭のスペースが舞台。
さっそく蚊がやってくる。

沖縄系だろうルシア・カカズさんのひとり舞台。
同じカカズ姓のリカルドさんが三線を奏でる。

ルシアさんがアマゾンの先住民ヤノマモのシャーマン、ダヴィ・コペナワさんの著書『天の陥落』を読み上げたのには驚いた。

ヤノマモと沖縄、両方をドキュメンタリーにしている人は僕の他にそう多くはないかもしれない。

在ブラジルの沖縄系の女性たちのポルトガル語での語りを重ねるなど、もりだくさん。
ルシアさんは昨今の米軍基地問題にも言及する。

「私は、いのりというのを知りません。
私にできるのは、ダンスです。」
そう客席に告げて、彼女はひとりで舞い続けた。


4月4日(月)の記 学園都市の神隠し
ブラジルにて


今日も夕方からお泊りとなった。
その道中、ふたたびサンパウロ大学キャンパスでのグラフィティのスナップ撮りをはかる。

先週は学園都市と呼ばれる広大なキャンパス内をテキトーに車を走らせて壁画面に遭遇した。
今日はナビにその学部名を入力して…

行きついたところは、どうも勝手が違う。
とりあえずクルマを停めて、歩いてみるが…

ない。
あの壁画面がないどころか、これといったグラフィティもない。
だいぶ歩くが、傍目からの挙動不審感はぬぐえない。

それ以上に、こっちが迷子になってクルマにたどり着けない思いも。
あ、歩き初めに気づいた取引銀行のATMが。
ちょうど現金を引き出したいところだった、晴れてキャンパス立ち入りの用件成立。

それにしても、先週、歩いた覚えのある道だが…
あの壁画の描かれた建物が見当たらない。

折を見てスマホの写真から撮影場所を分析してみよう。
まあ、いいウオーキングにはなった。


4月5日(火)の記 竹を編めるか
ブラジルにて


恥ずかしながら、撮影したまんまの動画素材が少なくない。
2年前のこれも、そのままだ。

日本の「愛竹家」橋口博幸さんがブラジルの大学での竹利用のワークショップに招かれた。
その際、ブラジル奥地で奉仕活動を続ける佐々木治夫神父が、零細農家の支援のための竹利用を啓発する講演をしてくれないかと橋口さんに依頼した。

橋口さんは快諾して滞在予定を延ばし、無償で2か所の講演を行なうことになった。
サンパウロからの橋口さんの往復の送迎を僕が引き受け、「ついでに」撮影したものだ。
特に誰に頼まれたわけでもない。

講演そのものの記録なら、今どき誰かがスマホで撮ればいい。
僕の流儀で撮るものが、なにかの役に立てば、と思って。
だがそれも撮りっぱなしでは、いけません。

まずは素材をデータにして取り込む作業。
うーむ。
橋口さんの講演は日本語で、現地の通訳の訳までは撮影でカバーしていない。
これのポルトガル語翻訳と字幕付けとなると大仕事となり、他の諸々の作業もあるので、とりあえずの日本語バージョンをまとめられるかどうか。

まあ、どうなるかやってみよう。


4月6日(水)の記 あみゆかば
ブラジルにて


まだこれといったタイトルも浮かんでいない、ブラジルの竹がらみの動画。
タイトルは登場人物の「言葉尻」をとらえてでっちあげよう。

さて、編集を始めてみるか。
基本的に僕はものごとを撮影した順番に、不要部分をカットしてつないでいく。
時系列に沿った、およそハッタリのないオーソドックス、地味な編集だ。

今回も、そのセンで…
撮影素材をチェックしながら。

お。
これを、このまま冒頭に置いてみるか。
シーンの意味についての裏取り作業も検索してすすめながら…

これは面白いかも。
映像編集の「快」を覚えるとき。

映像の編集:エジット、その初源は旧石器時代の編みものにさかのぼる、と喝破したのはロシアの映画監督エイゼンシュテインの由。
これを知ったのは衝撃だったが、恥ずかしながらエイゼンシュテインの原典には当たれていない。

さて「編む」について日本語で検索してみると、くらくらするほど奥が深い。
僕は自分の文章では「編む」というほどの作業はしていないし、僕の「編む」作業はもっぱら映像に限られていると思う。

やぶれたGパンなどの縫い物は時に手掛けるが、およそ編み物にはこれまた恥ずかしながら縁がない…

それはさておき、久しぶりの映像編集の「快」を覚え、作業もノッて冒頭の語り口をそこそこ固めることができたかも。


4月7日(木)の記 ブラジル竹取物語
ブラジルにて


深夜に目覚め、スマホをいじり。
スマホを消しても眠れず、諸々の思考。

まとめ始めた動画のタイトル…
『ブラジル竹取物語』。
ふむ。
悪くないかも。

タイトルバックにふさわしい絵はあるか…
起き上がってノートパソコンに灯を入れる。

既に入力した動画の素材をチェック。
うむ、とりあえずは…
秒数も短めだが、なんとかなりそうだ。

深夜にまでこんな作業をするのは珍しい。

日本の「愛竹家」橋口博幸さんにメッセージを送る。
彼は出先のようだが、敏速にこちらをノセる返しをくれるので、こちらもおだてられれば木登りぐらいはしてしまう。

「富山プロジェクト」はこの真逆だったな。
われながら、よく耐えた。

「竹取」という言葉を検索していくと、これまた面白い。
そもそもあの物語。
絵本などでは『かぐや姫』とされることがあるが、なぜ『竹取物語』と題されたのか?
これが面白かった。
https://toyokeizai.net/articles/-/359100


4月8日(金)の記 ヨーグルトをググる
ブラジルにて


「もったいない」精神は時にはイノチに関わる事態を招くと肉親の例を見ておきながら…

午前中、冷蔵庫をのぞくと、そもそもスキマが乏しい。
ヨーグルトメーカーの容器に入ったままの自家製ヨーグルトの残りを空けようか。

ホエイの部分が多く、粘性がなくなりほぼ液体になっている。
変色やカビは見当たらず、ニオイも異臭はしない。
食べてみると…ヨーグルトというより牛乳に近い感じ。
吐き出したくなる味ではない。
これも冷蔵庫の奥の方にあったグアバのジャムと一緒にたいらげてしまう。

しばらく様子をみるが、吐き気も腹痛も下痢もなし。
ヤレヤレ。

午後もだいぶ経ってから、出先で…
どうも胃のあたりが重い。
歩行困難やトイレを探すほどまでのことはないのだが…

帰宅後、キーワードで検索。
まあ当たり前だが、異変を感じるヨーグルトは食べるべきではないというのが鉄則。
実際にヨーグルトを食べて腹痛になる可能性まではいくつかのサイトに書かれているが、その際どうしたらよいというアドバイスは見当たらない。

…当たった場合は…ヨーグルトなどおナカにやさしいものを摂りましょう、というブラックジョークみたいのもあり。

日本から持参した陀羅尼助丸を服用するか。
これもだいぶ残り少なくなってきた。
家族の夕食はなんとか用意して...
自分は食事を控えて横になる。

ガジュツの粉があったな。
どうもこれの方が僕には効きそうだ。


4月9日(土)の記 オマケにまけて
ブラジルにて


どうも、オマケやら付録やらに弱いようである。
資本主義、消費社会の落とし子(あ、この語はWordで変換できないのか…)だけのことはある。
想い出すのは幼少の頃のグリコのおまけ。
キャラメルに別箱で付いていて、プラスチック製の自動車など種類は豊富だった。
当時のお小遣いで気軽に買える金額ではなかったかと。

よく覚えているのは明治製菓のお菓子だったかと思うが、手塚プロのアニメのカラーフィルムがひとコマついてきたことがあった。
いま思うに35ミリサイズだろう。
これも安いものではなく、わずかしか入手できなかった。

さて。
「マテ王」というマテ茶チェーン店で、フリーダ・カーロをデザインした大型コップが特典として出されていたのを知った。
数は3種類。
邦貨にして500円程度のミニポンデケージョを買うと、その容器としてもらえるという次第。

これの写真をフェイスブックにあげると日本の友人知人にも好評だ。
まずは3種ともゲットしたい。

今日は午後から先回とは別の「マテ王」の店へ。
先回とは別のショッピングモール内。
いやはや、土曜午後のショッピングモール。

フリーダセットはゲットしたものの、空席がない。
日本の未明のマクドナルドみたいにイートインのテーブルに突っ伏して眠っているのまでいる。
回収スペースにトレイを置いて、空席待ち。

とりあえず写真を撮ってさっそくフェイスブックに上げる。
想えばブラジルでは昨今はフリーダはゲバラをしのぐぐらいのアイコンとなってイメージが流布している観あり。


4月10日(日)の記 はらのさかな
ブラジルにて


路上市へ…
焼き魚用の魚を買うつもり。

店のあんちゃんはこちらでアンショーヴァ、日本人はなぜかマスと呼んでいる焼き魚用の定番を「脂がのってるから」と強く勧めてくる。
和名は、アミキリ。

アニキが選んだのをはかってもらうと2キロ弱、邦貨にして1800円以上。
キロの価格は牛肉より高い。
そのうえ、こっちはアタマに骨にしっぽ、ハラワタ込みだ。

もっと小さいのないの?
と聞くと、
小さいのは冷凍ものだからこっちがいいよ、とのこと。

まあ2食分はいけるだろうし…
買うか。

丸ごと買って、わが家で解体。
ウロコを削って、さてさばくか。

おお。
まるでソーセージのように張り詰めた内臓。
卵巣ならホクホクだが…

どうやら消化器官。
何を呑み込んだのか、ひらいてみる。
ギョギョ。
魚のなかから、サカナ。
イワシぐらいの魚を丸ごと呑み込んでいたようだ。

まだ消化途中で、青肌や骨も顕著。
いやはや、これも含めての重さか。

頭やはらわたをごみ箱に捨ててから…
魚が呑み込んで消化途中の魚というのは、意外とグルメな味わいかも?

…これは発想のみで試すには至らず。

さて今宵は鉄板でトロピカル風ヤキザカナにして、大好評。
残りの半身は味噌と粕のミックスに漬けた。


4月11日(月)の記 場末萌え
ブラジルにて


ラテンアメリカの「場末」に出会ったのは中学生時代にさかのぼる。
といっても、これは映画での出会い。

『明日に向って撃て!』だ。
アメリカ合衆国で銀行強盗を続けたブッチとキャシディは、ボリビアに高跳びすることを計画する。
そして鉄道でたどり着いたボリビアの駅…

ボリビアという国名を知ったのは、この映画だ。
もっとも映画のロケ地はメキシコだったというが、ラテンアメリカには変わりはない。

さあ今日も午後から泊まりで「ますらを派出夫」役だ。
クルマでの道中どこかでグラフィティを採集したい。
ここのところサンパウロ大学が続いたので、ちとショバを変えるか。

幹線道路のインターチェンジにある駐車場にとめて探し歩くか。
そこそこ歩き、高級住宅街で思わぬ発見。
https://www.instagram.com/p/CcONBb-P-Ya/
やれやれ。

クルマの見えるところにあるランショネッチ(軽食店)で一服するか。
昼食時間はとうに過ぎ、ぼちぼち勤めの終わる時間で客はまばら。

街道脇の場末感が旅情を刺激。
ついスナップ撮り。
さっそくフェイスブックに上げてみる。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10225589497579270&set=a.3410845544903 ¬if_id=1649705372138228¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif

これまでサンパウロのカフェの写真が好評だった。
今日は…
「場末萌え」と書いてみる。

じゅうぶん手アカのついた言葉かな。
おや、検索してみると、ヒットなし。

これはこれで奥が深そうだけど。
まあ、場末の方がキラクでよろしい。


4月12日(火)の記 目前の非常線
ブラジルにて


午後、出先から帰宅となって。
今日のグラフィティ採集をどうするか。

先週は帰路、渋滞道路の横道に入ってクルマを停めて歩いてみた。
グラフィティはそこそこのものを拾えたが、いくつかヤバい思いもした。

今日は出先の駐車場にとめてある車に荷物を置いて、この近くを歩いてみるか。
このあたりは何度となく採集に回っている。
今日は別方向に。

付近は高層アパート、倉庫類、大学、スラム…
さあこれで今日もそこそこウオーキングの歩数にはなる。
ぼちぼちのグラフィティも工面した。

蟻道のようなスラムが交差する大通りを歩いて戻る。
お、軍事警察のパトカーが。
都合4台。

いずれも僕のすぐ脇で止まった。
おお、拳銃を半構えで降りて来るではないか。
別の警官はトランクに積んでいたらしいコーンを並べ始めた。

あっという間に非常線が張られて、後続車は通行止めとなった。
こちらも立ち止まって見ているのもはばかれる。

軍警が待ち伏せした犯罪グループがやってきて銃撃戦、流れ弾が飛んでくる可能性もあり。

スリリングな町である。


4月13日(水)の記 南溟の覚醒の覚醒
ブラジルにて


奇しくもどちらも鹿児島つながり。
『ブラジル竹取物語』の編集作業を中断して『南溟の覚醒』のYouTube版編集に取り組んでいる。

『南溟の覚醒』は西暦2012年、ちょうど10年前に撮影して翌2013年に編集して関係者にDVDを焼いて謹呈していた。
それにとどめてはモッタイナイ、気がかりな作品だった。
よっしゃYouTubeにあげてみっかと発心したものの、マスターのデジタルテープが見つからないでいた。
この度ようやく発見。

まずは素材をデータ変換して入力。
微編集をしながら関係者に連絡、了解、確認を取る。

ブラジル生まれの画家の森一浩さんが日本のホームグラウンドの鹿児島枕崎の文化センター「南溟館」で個展を開いた。
それにしても「南溟館」とは、なかなかネーミングだ。

そのオープニングに枕崎を拠点に活躍するタレントにしてミュージシャンのちゃんサネさんが仲間と共に即興ライブ演奏を披露する模様を撮影したもの。

画家X音楽家4人X記録映像作家の三つ巴のセッションだ。

音楽家が画家の作品に触発されての作品や演奏というのは…
とりあえず思い浮かぶのはムソグルスキーの『展覧会の絵』。

これはどういう由来だっけ。
検索してみると…
あ。
『展覧会の絵』のなかに『キエフの大門』があった。
…いま、なにを手掛けていても、ロシアに寄るウクライナ侵略戦争に行きついてしまう…


4月14日(木)の記 大道大異
ブラジルにて


わが家での主夫業と動画編集、それに「ますらを派出夫」業で週が終わってしまうのもシャレにならない。

午後から思い切ってカルチャー求道に出る。
まずは…ジャルジンス地区のギャラリーへ。
Reboloというブラジル人画家の展示。

…富山妙子さんの第2次大戦後まもない頃の作品を彷彿させる構図と筆さばき。
時代の故だろうか。
あとで資料を見ると、Reboloの方が富山さんより20年早い生まれだった。

さあそこそこ歩いたし、Reboloの余韻も大切にしたいし、メトロの夕方のラッシュは避けたいし、夕食の支度もある…

でももう一軒ハシゴするか。
少し迷って、IMLで始まったばかりの森山大道展を早見することにする。
あの日本の写真家の森山大道さんの展示だ。
森山さんはブラジルのミュージアムでも見かける数少ない日本の写真家だ。

おやこれはまたダイナミックな展示。
ちなみに入館時に2度のワクチン証明書と身分証明証の提示を求められるが、入館はロハ。
日本なら1000yenぐらいは取られそうだ。
して場内は写真撮影が基本オッケー。
日本とは大違いだ。

もう今日はホントにざざっとにする。

上下階に分かれての大展示。
お、きちんと外光を遮断したプロジェクションもある。
コの字型に配置した3面の大スクリーンにそれぞれ別のモノクロスチ―ル写真を映し出していく。
音声は…日本の都市部の雑踏のもののようだ。
それでいて人もいなさそうな雪景色が映し出されたり。
音楽じゃないのが面白い。

まあそれにしても日本のPTA系が目くじら立てそうな写真、今の僕ならNGで即、削除しそうな写真が堂々とこの国際的な場で展示されているのが痛快。

うー、ラッシュにかかってしまう。
また来よう。
といいながら、サルガドの大アマゾン展もまだ再訪していない…


4月15日(金)の記 フリーダ巡礼
ブラジルにて


今日は聖金曜日の休日。
天気もよく、暑からず。

思い切って歩くか。
東に徒歩片道3000歩ほどのところにあるショッピングモールまでくだる。
マテ茶チェーン店で限定配布中のフリーダ・カーロ柄の特製コップが目的。

3種類のうち2種は入手済み。
…今日の町なかは、ふだんの日曜以上に静か。
犯罪者もお休みな感じでありがたい。

さてさて。
ナントお店では僕の前の客でフリーダセットがおしまいとなった!
ツッコミを入れたいが、あとの客がいるので断念。
いやはや。

…わが家の北方二駅の距離のショッピングモールがあるが。
ここからだと…
スマホを繰ると徒歩で40分以上。
少し迷って、歩く。
今日は祭日だし、向こうの方が人出は多そうで、もうないかも。
ま、グラフィティ未踏査地帯にアタリをつけておくこともできるし。

今日のワンショット。
https://www.instagram.com/p/CcYdgsRPcgu/

歩くのは嫌いではない。
…フリーダは小児麻痺に加えて交通事故に遭い、生涯歩行にも不自由したことに想いを寄せなければ。

おや、こんなところにもファヴェーラ:スラムがあったか。
このあたりは賑わいあり。

さて、ハシゴのショッピングモールに到着。
こちらにはまだ見たことのない柄のフリーダコップがあった。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10225608635857715&set=a.3410845544903&type=3 ¬if_id=1650048641022099¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif

この店もセットのポンジケージョが不足していたが、便宜を図ってくれた。
ここからも家まで歩いて、今日の歩行は12000歩を超えた。


4月16日(土)の記 源泉のフリーダ
ブラジルにて


イースター3連休の中日。
朝イチでミネラルウオーターの源泉へ。

道はがらがらなので、別のルートに挑戦してグラフィティ探し。
アナ場を見つけたが、ちょっとヤバい。

ミネラルウオーターだが…
10リットルのタンクをウオーターサーバーに取り付けていたが、この容器の内部に藻が生える事態が発生。
口の狭い容器で、なかに生えた藻の除去は非常に難しい。

ポルトガル語と日本語で検索をしてみたが、ひかりのある所だと日数と共に藻が生じるのはしばしばあることだとわかる。
夏場は10リットル容器の使用を控えるか。

さて、水を汲み終えて。
付属のカフェが今日も開いていた。
いっぷくしてスマホいじり。

おや。
またアイツが来た。
小柄、メガネ、やせぎす。
中年のインテリ崩れ、日本でいえばシンサヨク崩れといった感じ。
先日はカフェのカウンターのなかにいる女子相手に政治家はドロボーだ、メディアもドロボーだ、と延々とつぶやいている。
勤務中の女子は時折り、気のない相槌。

こういうオトコにはなりたくねえな、と思っていた。
どうやら常連か。
他に複数連れの客がいない時に、女子目当てもあって来ているのかな。
こちらはそろそろお勘定を。

するとこの男子が僕の目を見て「フリーダ・カーロ」と言ったのだ。
え?
オレのスマホの映像を見たのか?
でも、ここでは昨日のフリーダのカップの写真ページは開いていないはず…

驚いてオトコに聞き返すこともなく、勘定を女子に頼む。

オトコは女子への会話を続けた。
どうやら女子は腕にフリーダにまつわるタトゥーを入れていて、オトコはそれを知って「フリーダかよ」といった時にたまたま勘定を払いに来たワタクチと目があったようだ。

フリーダがらみのタトゥー、気になる。
ずばりフリーダの似顔絵といったところか。

というわけでフリーダのアイコン、こちらの女子に人気のようです。


4月17日(日)の記 イエスは「おはよう」と言った
ブラジルにて


今日は、復活の日。
十字架で処刑されたイエス・キリストが洞窟の墓のなかから復活したとされる日だ。

その様子については新約聖書のなかでも記載が微妙に異なっている。
ポルトガル語でわかりにくいところがあり、日本語の聖書を参照するとまるで異なる訳がされていて、ますます混乱。

午前中、運転手役。
帰路、国内線の空港近くでグラフィティ採集散策。

昼近くに路上市で買い物。
シシリアレモンとペルー産アスパラガスを安く買えた。

さあ、一周忌を迎える森田惠子監督関連の映像をまとめねば。


4月18日(月)の記 学園都市を走る
ブラジルにて


今日も午後から泊まりで「ますらを派出夫」だ。
こちらの昼食の準備のついでに、出先での夕食のオカズを何品かつくっておく。
島豆腐の野菜炒めと、おから。

さて出発。
今日のグラフィティはどうするか…
サンパウロ大学の手前のジャンクションの駐車スペースにクルマを停めて歩くか。
…街道沿いに踏査するが、意外に乏しい。
光線具合がイマイチだが、ジャンクションの立体交差部で以前から目を付けておいたのでお茶を濁す。

今後のためにサンパウロ大学のキャンパスも少し車で回っておこう。
あのグラフィティのある建物も再確認しておきたい。

…テキトーに走らせるが…
けっきょくグラフィティの建物は探し出せなかった。

おう、意外と起伏もあるではないか。
通行可能な車道はじゃんじゃん行ってみる。

かつてこのキャンパスに学んだアミーゴが、キャンパス内でマジックマッシュルームを見つけてトリップした、と語っていた。
なるほどこれぐらいの森があれば幻覚キノコが生えていてもおかしくなさそうだ。

ちなみに学園都市と呼ばれるここの広さは…
370万平方メートル。
東京にある場所と比較してみると…
皇居の約1.5倍だ。

以前から気になっていたキャンパス内のミュージアムの場所を知る。
まるで開館している雰囲気はないけど。

学内での労働者数も相当なものだろう。
強盗強姦ぐらいもありえるだろうが、町なかほどのヤバさは感じられない。

お化け話はどうだろう?
関係者に聞いてみよう。


4月19日(火)の記 100% FAVELA
ブラジルにて


午後、ラッシュになる前に家路につきたい。
今日のグラフィティ採集兼ウオーキングはどうするか。

出先の駐車場に車をとめておいて、少し歩き込むことにする。
想定した方向はそこそこのリスクが予想されるので、グーグルのストリートビューで感触をつかんでおく。

手前のキケン地帯を足早に通過。
その先の警察の敷地には、さすがにグラフィティもピシャソン(落書き)も見当たらないな。

まわりこむと、けっこうな規模のファヴェーラ:スラム地帯がある。
ここには四半世紀前に取材で何度か通った。

当時よりぐっと濃くなった観あり。
それらしくなるとともにグラフィティも散見する。
が、とてもホイホイとスマホを取り出して構えられる雰囲気ではない。

グラフィティのスナップ撮りと日毎のインスタグラム上げを開始してそろそろまる二年になる。
グラフィティの描き手からは感謝されるばかりで、クレームを受けたことはない。
しかし、その周囲に生活する人が自分たちの領域でストレンジャーがカメラを構えることをよしとするかは別問題だ。
シュートとは暴力的行為になりうることをこころにとめておかなければならない。

大通りに面したシャッターにブラジル国旗が描かれ、そのうえに『100% FAVELA』と書かれたものがある。
これなど食指をそそるが、全体を画面に収めるには交通量の多い車道でかまえなければならない。
かなり目立つ行為であり、やめておこう。

大通りの反対側にあるもので、とりあえず。

前世紀末にここに何度か通った頃にグラフィティがどうだったかはまるで記憶にない。
当時もある程度の興味は持っていたので、あればそれを写り込ませたショットも撮っていそうだが、うーむ。


4月20日(水)の記 オオアリクイの川
ブラジルにて


4月22日に一周忌の迫る森田惠子監督祈念動画の編集はじめ、押し迫った作業は列をなし…

「忙しい」は字のごとく心を亡くす状態。
こころをなくして、相手の心に響く作品がつくれるはずもない。
イナカノキムスメシャブヅケだぜ、の真似事はできない。

可能な限りアートか自然のシャワーを浴びて、こころの糧としなければ。
というわけで、インスタグラムに流れてきたサンパウロ市内のショッピングモールで開催が延期されたというブラジルのアーチストたちの展示に思い切って行ってみよう。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10225639014497162&set=a.3410845544903&type=3 ¬if_id=1650573491127132¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif

ショッピングモールは似たような名前が多いのだが…
これはまさしく未知のところで、メトロの新駅タマンドゥアテイ駅が最寄りのようだ。

市内とはいえ、知らないところに行くのはワクワクする。
運転じゃないから気がラク。
ちなみにタマンドゥアテイとは…先住民の言葉で「オオアリクイの川」の意とのこと。
なぜ先住民がそう呼んだかまではわからない。

市内東方、メトロは地上を走り…
だらりんと開けたところ。
ショッピングモールは意外と駅から近かった。
このだだっ広さはなんだ。

さて肝心なアート展。
ブラジルのモダンアート100周年にちなんだ現役アーチスト展のようだが…
え、これだけのスペース?
広大な建物のなかの、町なかの個人画廊程度の空間だ。

だが、なかなかの見ごたえがあるではないか。
https://www.facebook.com/jun.okamura.733/posts/10225635510849573?notif_id=1650502627942168 ¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif

繁華街でもなく、平日の日中で人出もまばらだが、それでもちょいちょい人が入ってくる。
高級画廊や上から目線のミュージアムの客層と違い、まさしく庶民、その辺のおばちゃんたちが寄ってきている感じがよい。
彼女たちがこれらの絵に魅かれて写真を撮り合う。

アートのあるべき姿、グラフィティに近いものを見る思い。
なんだかまた来たくなるではないか。

アリクイならぬアート喰い。
ここにきて悔いなし。
さあ帰って『森田惠子監督のメイシネマ祭 銀幕の夢』の編集作業を再開しよう。


4月21日(木)の記 日毎グラフィティ撮り2周年
ブラジルにて


今日のブラジルはチラデンテスの休日。
日毎のグラフィティ探しとスナップ撮り、インスタグラム上げを開始してまる二年になる。

我ながら、よくも毎日…

家族の用事で、午前中からクルマを繰る。
今日はその帰路でグラフィティをキメたいと思う。
すでに自動車での道順の予行演習はしてあった。

クルマをとめて、目を付けておいたあたりに行ってみると…
光線の具合があずましくない。
むむ。

オプションを求めて付近を歩く。
あのトミエ・オオタケ先生のお宅の前も歩く。
ここも取材で何度も通った。

トミエ先生はブラジルを代表するアーチストとなり、サンパウロ市内をはじめブラジル各地の野外スペースに巨大な作品を提供したが…
肝心な自分の住まいとその周辺は、このありさまか…

まあ、人のふり見てわがふりを。
いやはや意外とこのあたり、歩いても歩いても、せっかくの2周年にふさわしいようなグラフィティがない。

おお、この街道まで歩いてしまった。
今日は交通量も少ないから、これを撮ってみるか。
https://www.instagram.com/p/CcokZc1LiZZ/

夜は思い切って映画へ。
アニメのドキュメンタリーとは、どんなか。
『FREE』、これはこの時期に見ておいてよかった。

暗くヤバいと知りながら往復、歩いてしまい、今日は14000歩超えのウオーキングとなった。


4月22日(金)の記 銀幕の再生
ブラジルにて


今日は森田惠子さんの一周忌。
森田さんとは、メイシネマ祭で親しくさせていただいていた。

メイシネマ上映会代表の藤崎和喜さんは、パソコンやスマホをたしなまない。
その藤崎さんが岡村へのメッセージを在日本の僕の友人にハガキで送り、それを友人が写メに撮ってメッセンジャーで送ってくれた。

今年5月4日のメイシネマ上映会で、僕が2019年のメイシネマ祭参加の各監督たちのトークを撮ってまとめた未公開の作品を上映する、というお知らせだった。
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000119/20220417016617.cfm?j=1
2019年には森田さんの遺作となった『まわる映写機めぐる人生』のメイシネマ祭での東京初公開の様子と森田さんのトークおよび質疑応答、そして三日間のメイシネマ祭での森田さんの上映スタッフとしてのかいがいしいはたらきぶりをビデオに収めている。

これまでメイシネマの上映スケジュールなどのSNSでの告知は森田さんがひとりでこなしていたが、それを私が全面的に引き受けましょうという人は出てこないようだ。
在ブラジルで訪日はかなわない身ながら、拙ウエブサイト、フェイスブック、ツイッターで告知を行なう。

と同時に、森田さんの一周忌の祈念と今年のメイシネマ上映会の告知を兼ねて、2019年の記録から森田さん関連部分を再編集してYouTubeにあげることを思い立った次第。

まずは国際電話で藤崎さんにこの考えを伝えて賛同の意をいただいた。
ということで手掛け始めて…
編集済みの作品からの再編集ではものたりず、あらためてオリジナル撮影素材から未使用分も含めて編集を始めた次第。

『森田惠子監督のメイシネマ祭』と題してみたが、もうひと芸ほしい。
『銀幕の再生』という言葉が浮かび、これを足してみる。

事前に関係者への手配も行ない、なんとかお命日にYouTubeの一般公開にこぎつけた。
https://www.youtube.com/watch?v=ccNbMSAuvVc

いやはや。
おっと、明日23日は飯田橋Wild Pitchさんでの岡村作品再登板とオンライントークだ。
「環境大国ブラジルと日本」と大ぶろしきのタイトルを掲げてしまったこともあり、にわか勉強体制に入る。

こっち時間の土曜午前6時半からZoomのテスト開始の予定。
さあどうなるか。


4月23日(土)の記 飯田橋再暴投
ブラジルにて


Wild Pitch とは野球の「暴投」のことだそうである。
ワイルドピッチは野球用語として日本語にもなっているが、改めて検索すると「悪送球」とも訳されるようだ。
これを店名にするとは、なかなかワイルドである。

東京飯田橋のバーWild Pitchさんでの今年1月のデビュー戦に続き、ふたたびお声をかけていただいて2度目の登板上映、当日となった。

浅い眠りからこちらの午前6時に登板ならぬ起床。
Zoom出演の場面セッティングにかかる。

今日のテーマは「環境大国ブラジルと日本」と大ぶろしきを広げてしまった。
SNSでのこのイベント告知では先回以上のイイネやシェアをいただいたが、これが実際の参加者数には比例しないのは常のこと。

ざっと計算すると人口当たりの日毎の新規コロナ感染者数は日本の方がブラジルの5倍以上のようで、こちらも「ぜひご参加ください」とは申し上げられない。

さて今回、少数だがかえって濃厚な集いとなった。
質疑応答も出応え存分にあり。
上映した『ブラジルのユーカリ植林と日本』そして『環境都市クリチバ』はざっと30年近く前の取材の作品だが、クラシックを超えた新しさと今日性があると参加者の方々から教えていただく。

Wi-Fi回線落ちやZoom音声不具合も生じたが、お店のニッキーさんはひとりで接客と飲食のサーブもしながらよく対応してくれた。

昨年末の東大のオンラインイベントのひどいでたらめさがあらためてよくわかるというもの。
あの時は主催者が主賓の僕に対する悪意と憎悪に満ちていて、上映作品と参加者へのリスペクトを欠くという、あってはならない事態が重なった。

ニッキー監督からさっそくあらたな登板要請をいただき、うれしい限り。
ワイルドにいこう。


4月24日(日)の記 ブラジル竹取物語に備える
ブラジルにて


22日の森田惠子さんのお命日に合わせた動画のアップ、そして23日の飯田橋ワイルドピッチさんでの上映とオンライントーク等々で中断していた『ブラジル竹取物語』編集作業は明日、再開しよう。
とはいえ、明日は午後から「ますらを派出夫」業で泊りとなるため、またテンポがあくけれども。

それに備えて、これまでめぼしいところしか目を通していなかったポルトガル語の『竹の種類』という冊子を辞書と共に最初からちびちびと読んでいる。

世界じゅうに分布する竹はおよそ70属1300種。
うちブラジルでは34属232種が知られている、とな。
ブラジルのタケなど、まるでイメージのわかない方々の方が圧倒的だろう。

「タケの種類で、有用でないものはない」。
これは資源として竹を活用するための概説書だが、そこにこう書かれているのは頼もしいし、重い。

これまでこれすらきちんと読んでいなくて、恥ずかしいけど。

拙作の方は、なかなかトンデモなシーンから始めるつもり。


4月25日(月)の記 度犬平人間
ブラジルにて


わが団地の横の道にフィックス状態となった「日本食」のフードトラックで2度目の買い物。
この店のロゴに書かれたナゾの文字の意味を知りたかった。
https://www.instagram.com/p/CcyQtGsPB-U/

先週、その狙いもあって初めてここで買ってみた。
非日系のおばちゃんがアテンドして、日系らしい大将はスマホから顔を上げずにとりつくシマがなかった。

今日は大将に直接、声をかける。
「『度犬平人間』とは?」
大将いわく「知らないよ」。
日系らしいデザイナーが作ったもので、読みも意味も知らない、とのこと。
自分の店のロゴなのに、そこに書かれた文字にまるで関心がないとは。

ちょっと見た感じでは中国語風でもあり、たとえば「犬」と「大」とか、漢字の間違いも想定される。
この5文字で検索してみると、イヌがらみのものが羅列されるが、この5文字とは乖離したものばかり。

読みをあてたものだとしても、ドケンペイ?
これで検索すると「ど憲兵」と表記されたが、まともなヒットなし。

「AIKO DESU」の店名についても聞いてみたが、「AIKOは人の名前じゃないの?」ぐらいでこれまたどーでもいいようだ。
少なくとも日本の「皇孫」崇拝ではないと見た。

こんなことに思い煩って散財したこっちが愚かだったか…

ブラジルの日系人スゴイ、の一面を思い知った。


4月26日(火)の記 無窮花を聴く
ブラジルにて


今度のクルマになってから、初めてカーステレオ持ちの分際となった。
ふだんはクラシック中心のFM局にフィックスしている。

スマホ音源の曲をクルマで聴くのは今回が初めてだと思う。
昨日、畏友の伊東乾さんがYouTubeにアップした『無窮花 試奏2』を何度となく聴いている。
https://www.youtube.com/watch?v=iA6zJSfAsdw

僕は「ウンチ」:運動神経音痴(この語はマンガ『巨人の星』で接したと記憶する)であり、音楽の知識全般に欠ける「音痴」であると自認している。

それでもこれを聴いてぶったまげた。
ピッコロ一本、6分以上の演奏である。

昨日午後、家を出る時に「出家」の虚無僧の気分で拝聴しますと伊東さんにメッセージを送ったところ…
この曲は「普化宗の虚無僧・黒澤琴古が創始した琴古流尺八本曲の手法が背景にあります」と教えてくれた。

コムデギャルソンという言葉を想い出すが、検索するとナント日本のブランド名なのか。
仏領日本だな。

ちなみに「無窮花」はムクゲのことで、韓国の国花だという。
てっきり韓国は鳳仙花かと思い込んでいた。
ムクゲのポルトガル語名を調べてみると「シリアのハイビスカス」という言葉だった。
ずばりラテン語の学名が「シリアのハイビスカス」だった。
して、植物としてのムクゲは中国起源…

ピッコロで日本の虚無僧ゆかりにして韓国の国花名をいただく曲を奏で、それをブラジルサンパウロの交通ラッシュのなかで聴く。

僕は拙作に基本的に音楽を用いなくなって長いが、ちょうど久しぶりに音楽に助けていただきたい作品を手掛けてみようかと思っていたところ。

さて「コムデギャルソン」の語の意味がわからない。
ポ語だとガルソンはレストランの給仕のことだが…

あ、ようやくあった、「少年のように」か。

車中で計画中の音楽使用作品についてのアイデアが湧く。
さらにローテク、マニュアル仕様でいってみるか。


4月27日(水)の記 ペドロコスタの夜
ブラジルにて


今日は一日断食。
昼食夕食の準備は免責となる。
この機会を利用して…

見るか。
ポルトガルのペドロ・コスタ監督の『Vitalina Varela』。
なんとこの映画、日本で『ヴィタリナ』の題で公開されていた。

なにで読んだか、とにかく照明の暗い映画とのことで、これから撮影を考えている拙作のヒントに、とも思って。
ポルトガルで夫を亡くして訪ねてくるカーボベルデの女性の話。
カーボベルデは単純にポルトガル語の国と思っていたが、いったいこの言葉は?

調べてみると「カーボベルデ・クリオール語」と日本語で称される言葉とな。
それにしてもこれだけ画面の暗い映画は僕には初めてかも。
それでいて、美しい。

「光なかれ。」
ペドロコスタの夜は暗い。


4月28日(木)の記 イスカリオテでない方のユダ
ブラジルにて


『ブラジル竹取物語・序章』の編集、佳境に入る。
当初から、いくつかハードルにぶつかるが…
作品のキーパーソンの「愛竹家」橋口博幸さんがよくアテンドしてくれていて、こちらの疑問質問に敏速に応じてもらっている。
そのおかげで、ここちよく次の段階にすすめている。

「責任」とはレンポンスのことと思うが、橋口さんのレスポンドはあっぱれだ。
さて映像編集作業はつい時間を過ごしてしまう。
おおゴミ出し、ああ買い物、おやもう昼食準備…
どころか、もう夕方だ。

今日のウオーキング、グラフィティ採集をどうする?
今日はサンジューダスの縁日。

わが住まいのひと駅隣のメトロの駅名にもなっているサンジューダス教会方面に向かう。
サンジューダス。
直訳すると聖ユダ。

カトリックの聖人というのはただでさえややこしい。
イエス・キリストをユダという弟子が裏切ったことは、アーメンソーメンかんけーない方々にも知られていることだろう。

この裏切りのユダとは同名異人のイエスの弟子というのだから、ややこしい。
裏切りのユダはイスカリオテのユダと呼ばれるが、この「イスカリオテ」の意味も諸説あってますますややこしい。

僕の訪ねようとしているユダは、タデウのユダとも呼ばれる。
この人のことは新約聖書成立の時期からややこしかったようで、このユダのことは新共同訳の聖書だと「イスカリオテでない方のユダ」と書かれているほどだ。

この、「でない」方のユダは聖人とされ、ブラジルでは人気が高い。
その記念日が28日なので、毎月28日の聖ユダ教会の賑わいは相当なものだ。

この日に教会関連施設のなかで開かれるアンチーク市が僕のいちばんのねらいだったが、17時近かったせいか、もうおしまいの気配だった。
28日は大聖堂旧聖堂チャペルそれぞれで何度もミサがたてられる。

ちょうど大聖堂で17時のミサの始まるところ。
現在編集中の『ブラジル竹取物語』の主人公はあのフマニタスの佐々木治夫神父でもある。
…夕食準備を理由に目前のミサを失敬することも考えるが…いのりましょう。

さてブラジルで人気が高いとされる聖ユダだが、聖書そのものの言及はわずかだ。
それ以外の伝承はいろいろあるようだが、実像はよくわからない
それでも「絶望と敗北者の守護聖人」とされて、このコピーの力か、願をかける人が多いようだ。
一説に裏切りのユダと同名のため、こっちのユダのことも忌避、忘却されることになってしまったとか。

「アベ」「スガ」といった姓、「シンゾウ」「アキエ」といった名前を授かったために不本意な思いをしている人たちのシンパシーを買いそうだ。


4月29日(金)の記 サンパウロで知る紹興酒のヒミツ
ブラジルにて


東洋人街の日系医療機関の予約が朝8時。
その後、友人に渡すソコソコの量と重さの荷物があるのだが…
メトロの混み具合が心配。

ところが、東京目線からするとガラガラでひと安心。
カフェで新入り客が空席待ちになる時間まで友人とバカ話。

そのあとで買い物。
新しくできた中国系の大型食料品店で…
お目当ての薬草はあった。

紹興酒も買うか。
他の中国系の店も見ているが、ここがちびっと安そうだ。

どれどれ…
横並びの半額のものがある。
なんだ、この安さは。
目を凝らすとポルトガル語で「料理用」とある。
それで安いのか。

横並びのも見てみるが、料理用と書かれているものが多いではないか。
ずばり漢字で「加飯酒」と書かれているものも。
文字通り、飯に加える酒ということか?

そもそも紹興酒系は、他の酒類と別の調味料系に並べてある。
そこいらにいる非チャイニーズ系の店員に聞いても僕の質問への然るべき答えは期待できないだろう。
本国人を探して聞いてみても、お互いのポ語能力では意思の疎通を欠きそうで、そもそもメンドクサイ。

まあとりあえず、せっかくなので無難な値段なのを一本、買ってみる。
料理酒みりんもサケのうち、だ。

紹興酒のザラメと氷、レモンを注いだのが飲みたいのだ。

帰宅後、検索してみると…
うう、奥が深い。
https://bci.hatenablog.com/entry/liaojiu

そもそも中華料理には紹興酒、という発想、そして僕の好みの飲み方が日本文化のなかのゆがんだ中華観のようだな。
今度、言葉でコミュニケーションのはかれる中国人に会ったら聞いてみたいが、その人の出身地によってかなり異なりそうだ。

いずれにしても、このゆがみではあまり先方を傷つけてもいないようにも思うけど。


4月30日(土)の記 ヒトデ食堂
ブラジルにて


天気は雨模様で冷え込むが…
家族4人でと願ったが、連れ合いに用事ができた。
バカボンドのパパと子供二人の3人で行くことに。

どこか空気と眺めのいいところで昼食を。
湖畔の飯屋がチョイスされた。

サンパウロ市民の水瓶である貯水池の湖畔で。
海岸まで行く半分以下の距離と時間だ。

パンデミックになってから一度行っているが、今日は別の場所と店にしてみるか。
…店名は日本語に訳すと「海の星」、ヒトデのことだ。
ネット上の評価は、ややいい方が多いが、けちょんけちょんもいくつかあり。
行ってみないとわからない。

わが家からだと、高速料金を2回払うコースだと運転は楽で時間も速い。
行きはフンパツ。
グラフィティ状況も見ながら…

霧雨の湖畔に到着。
このあたりは勝手がわからないが…
クルマを停めて、ヒトデ食堂へ。

薄暗く人けもなく、えらい場末感。
どうする?と子らに問いかけ、ままよと入って窓際湖畔の席へ。

海産物がメイン。
バデジョという魚の料理を頼む。
あとで調べるとタラやオヒョウの仲間。
けっこういけた。

週末は13時前がオススメとネット情報にあった。
たしかにじわじわと客が入ってくる。
バカボンドのパパは運転手なのでアルコールはご法度、無念。

雨は上がり、子供二人と水位の低い湖畔を少し散策。
他にも飯屋がいくつかあるが、ヒトデが無難だったようだ。

なんだか外国に来たような。
なんとなく小津映画の気分もあり。

帰りは無料ルートを通ってみた。
グラフィティ状況を見るにはいいが、道も交通状況もごちゃごちゃで疲れた。






 


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