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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2024年の日記  (最終更新日 : 2024/12/08)
1月の日記 総集編 ふかみどりの誘惑

1月の日記 総集編 ふかみどりの誘惑 (2024/01/03) 1月1日(月)の記 大地震と誤報
ブラジルにて


相変わらず眠りは浅い。
祖国の能登大地震の報は、時差12時間、こちらの午前4時台にX:ツイッターで知った。

ついでながらヨーグルトメーカーで発酵作成中の甘酒に、小アリがたかっていた。
電源を切り、小アリごと冷蔵庫へ。
・・・数時間冷やしても小アリは健在だったけど。

わが家でも用意したおせち料理を持参、親類の元旦の集いへ。
ここではNHK国際放送がかけ流し。
例年の正月のばか番組よりは、地震津波関係ばかりの方がよろしい。
それにしても同じ映像が何度繰り返されるのやら。
もう少し工夫はないものか。

と、こちらの午前11時過ぎ、日本時間の午後11時過ぎにふたたび震度7の大地震との速報。
志賀原発もそこそこのダメージを耐えていたようだが、これでアウトではないか。
311のあと(あのとき僕は日本にいた)福島原発の爆発を知った時のような、絶望感に襲われる。

あれ、いつのまにか先ほどのは震度3ぐらいに切り替わっている。
余震が続々だったが、先ほどの震度7は誤報だった由。
どうしてこんな誤報が起こるのか。

能登は日本の親友のルーツの地でもある。
他にも能登ゆかりの友人は複数あり。
今度の地震は、計画中のわがプロジェクトにも影響がありそうだ。


1月2日(火)の記 原稿イッキ
ブラジルにて


ニホンジンなんだし、正月三が日ぐらいはサケぐらい飲んでも…
という自分とたたかい、思い切って正月二日に一日断食。

さる10月からの訪日が続き。
暴飲暴食とまではいかなかったけれども、けっこうな飲み食いをしてしまったし。

して、懸念の昨年以来の原稿執筆にとりかかり。
そもそもの締切りをだいぶ延ばさせてもらい…

昨年から何度か書き始めてみたが、出だしは快調にいっても隘路に入り込んでしまい。
編集者の好意にすっかり甘えてしまったが、今度の仕切り直しでようやく自分のものになってきた感じ。

新暦の小正月ぐらいまでに書き上げられれば、と思いつつ。
朝から根を詰めてとりかかり。
おや、いったん書きあがってしまった。

ひと晩寝かすか、と思いつつもしばし間を置いて最初の推敲。
日本の編集者の正月休み明けに間に合ってしまった。

断食日なので、とりあえずのひとりカンパイもならず。

あとは先方に目を通してもらいましょう。
ハードルの高いメディアなので、リライト要求、さらにボツも覚悟のうえ。

それにしても周囲に散乱する参考文献をそろそろ片づけたいところ。


1月3日(水)の記 極東のデジタル後進国をなげく
ブラジルにて


さあ昨日、重かった原稿をとりあえず送ったし。
今日はもう一つの重いこと。

日本の特殊法人あてに送付した書類が年末に不備があるとして、そっくり送り返されてきた。
これが、普通郵便でである。
こちらは書留便で送っているのだが。

先方は日本国の公的年金の運営業務をつかさどる機関。
これは日本の官庁の機関と思い込んでいたが、かつて社会保険庁の業務だったものが西暦2010年に特殊法人化されたと今、調べてみて知る。

在外居住者の方は以下のPDFを参照くださいなどとこの機構のウエブサイトにはあるが、実際に在外居住者のことを考慮した参考になる記載も見本も見当たらず。

しかも問い合わせは海外からでも電話と郵便のみでしか受け付けられない由。
理由は明らかにされていない。

日本で2021年に発足したデジタル庁というのは、なんなのだ?

日本国の国籍保有者、年金支払者に不便とリスクを押し付けるばかりで、市民の血税で運営している特殊法人や官庁というのはなんなのだ?

日本国の国民・市民は公僕をやしなう滅私奉公の「僕」として血税を、年金を収め続けているのか。

普通郵便ですでに送付した書類を送り返して、事故があったらだれが責任を取るのか?
先方はなにせ普通郵便で送り返してきているので、国際郵便の事故などまるで想定する想像力もない。
そもそも先方のいう不備の書類というのも、こちらが「国際電話で」問い合わせをしてたらいまわしのうえの返答の際には触れられていなかったものだ。

こちらからの新たな書留料金もばかにならない。
まだ何回もこんなやりとりをさせられるのかな。


1月4日(木)の記 聖彼徳鉱泉
ブラジルにて


今日の件名を考え、キリスト教の主要人物の漢字表記を考える。
教祖イエスは…耶蘇。
ヤソ教といういう言葉には差別的な響きも感じていたが、「耶蘇」の当て時には特に差別的な意味合いもないようだ。

他がなかなかむずかしい。
おっと、ひとつ例外的なのがあった。
聖路加病院の、路加。
新約聖書の『ルカによる福音書』のルカだ。

して、イエスの弟子であり初代ローマ教皇とされるペトロ(ブラジルだとペドロ)は?
聖ペドロの表記は聖彼徳とな。
日本語になっているとは言いがたい中国語表記といったところ。

家族の湯治を兼ねたささやかな余暇で、サンパウロ州内陸のÁguas de São Pedro:聖ペドロの鉱泉 という鉱泉地へ。
人生で4度目である。

ブラジルの鉱泉地はせいぜい5か所ぐらいしか体験していない。
ここがサンパウロ市からいちばん近く(車でノンストップで2時間半程度)、一部で奇跡の鉱泉とも呼ばれているためのチョイス。

ネットで調べていたここの古本屋(sebo)が面白そうだったが、これは旧知の古本屋の前身だったと知る。

一泊二日の湯治でも少しぐらいは効能ありや。


1月5日(金)の記 卓状地と楯状地
ブラジルにて


今日は早朝5時半から訪問先の町のカトリック教会でイエスの聖心の行列行事が行われるという。
早起きして教会に行ってみると、人数が集まらないと思って中止してミサだけ行なう由。
このあたりが田舎町らしい。

午前中にふたたび公営浴場にて入湯。
宿のチェックアウトは正午まで。

近くの町の気になる場所を訪ねてみることにする。
おお、そっちは卓状地になっているではないか。

卓状地も楯状地も先カンブリア紀の所産。
地質的にカッカしている地震大国日本では、世界地理の授業以外になじみはないことだろう。
わがサンパウロ州内陸部では随所にこれが見られるのだ。

この上までのぼる。
クルマのエンジンが苦しそう。

お目当ての場所はしっかり門が閉じられている。
また今度、ということに。
近くにそこそこの評価のレストランがあり、昼食はそこで。
卓状地の食堂の食卓につく。

卓状地のうえにいると思うだけで気持ちがいい。
空気も光線も違う感じ。
植生の相違までは見抜けないけれども。

人は、卓状地になにを求めるか。
わが乏しい南米大陸でのフィールドワークからの知見からすると、先住民たちはイニシエーションの場とすることがしばしばだったようだ。


1月6日(土)の記 閉じた裏庭
ブラジルにて


少し値が張って、買い出しにちと歩くことになるが自然発酵パンが食べたくなる。
パンと野菜類の買い出しに出る。
酷暑とはいかないが、そこそこの暑さだぞ。

メトロにしてひと駅半の距離のあたりに自然発酵パンを商うパン屋が三軒あり。
真ん中の店でオリーブの実たっぷりのフォカッチャを購入。

この先に、訪日の合間に見つけてお気に入り認定としたカフェあり。
店内の装飾品がいちいち意欲的で面白かった。
寄ってみるか。

ありゃ、閉まっている。
土曜も開けているはずだったが…

帰宅後にネットで調べると「一時閉店中」とある。
店には張り紙等も見当たらなかった。
「裏庭」といった名前のカフェなのだが。

ニワかには信じがたい…


1月7日(日)の記 イワシの弱点
ブラジルにて


午前中、日曜の路上市へ。
いまだ店を出していないところも少なくない。

うーむ、ダイコンもいいのがないな。
魚を買っておきたいが…

久しぶりにイワシはどうかな。
こちらのイワシは時期によって冷凍ものの時もある。
売り子のアニキに、これは新鮮なものかと聞くとそうだという。
うーむ。
すでに開いてパック詰めした半キロのものを買うが…
新年はじめは中央魚市場が閉まっているのでこの時期は新鮮な魚はありえないと消息通に聞いている。
それでいてこんな質問をしたのがヤボだったか。

たしかに、ふだんは三軒ある魚屋はここ一軒しか店を開けていない。

イワシは酢占めにしようと思う。
帰宅後に尻尾や薄皮の処理にかかる。
むむ、シロウト目にも新鮮とは言いがたい…
うわ、外から見えないパックの下の方のイワシは体表が茶色っぽいではないか。
薄皮が異常にむきにくいのも鮮度に欠くためか。

とはいえ、端切れをサシミでいただいてしまう。
ショウガをたっぷり効かせて。
まあ食べられないことも、あたることもなかったけれども。


1月8日(月)の記 エピファニー明けの月曜日
ブラジルにて


クリスマスの語に比べると、その0.1パーセント足らずしか日本語になっていない感のあるエピファニー。
漢字だと公現祭か。
Wordも変換しないようだ。
興味のある方は、検索されたい。

ちょうど日本の松の内が明けるのと同じ時期で、クリスマス飾りの片付けの時でもある。
さて。
今日は一日断食。

先週、日本に送った原稿についてはまだ先方から返しがない。
そのためアタマと作業を切り替えられないでいるのだが、原稿執筆のために疎かにしていた諸々に少しでも着手しておこう。

荒れるに任せていたこのウエブサイトのページの、草刈り。
あー、とくに「ただいま制作中」のページが廃屋状態ではないか。
とりあえず扉を開けて窓を開け、風通しを。

未整理のスマホ写真も少しお片付け。
夕食の準備、そして夕食の時間を自分の作業に使うと。けっこうはかどります。


1月9日(火)の記 嗚呼アイスオレンジコーヒー
ブラジルにて


天然発酵パンと野菜の買い出しで炎天下をあるく。
今日のアート/グラフィティ探しも兼ねて、しばらく歩いていないあたりまで足を延ばす。

ちょっとヤバそうな長い階段の歩道がある。
・・・行ってみるか。
♪この道は、いつか・・・

ああ!
こんな新作が描かれていた。
https://www.instagram.com/p/C15CaEFu_76/
画力、思想性ともにたいしたものだ。
しばし眺める。
気分は、美術館。
あとで@の署名を検索するが、該当するのが見当たらない。
こういうのに出会えるから、やめられない。

とにかく暑い。
アヴェニーダにあるなじみのカフェに寄るか。
おや、昼どきだが他に客はいない。

おいしくないのは承知で…
アイスオレンジコーヒーというのを頼む。
ポンデケージョのグアバジャム入りというのも。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10229571856535755&set=a.3410845544903
・・・いずれも単体でいただいた方がよい感じ。
ところが単純なアイスコーヒーがないのです。

帰宅後にコーヒーとオレンジジュースというのがそもそもアリなのか調べてみる。
ありゃー、日本語でも出てくる出てくる。
けっこう世界各地、特に南国でたしなまれているようだ。
家人に話すと、非日系の友人のうちでおばあちゃんが残りのコーヒーを冷やしてオレンジジュースと混ぜてしばしば出してくれるという。

僕自身がコーヒーにミルク系と砂糖以外を入れることに偏見があるのかも。
アルコールのカクテルには寛容なのだけれども。


1月10日(水)の記 「豊かなる解放」
ブラジルにて


思えば年末年始と、日本に先週送った原稿関連の資料と書籍ばかりを読んでいた。
担当者がこれのチェックにかかるまでしばらく暇がいる模様。

こちらは期限未定のいわば「中有」の時。
拙稿が成仏なるかどうかは、神のみぞ知る。

さて、そんなときになにを読むか。
次のプロジェクトの関連文献の他に…

『私は死後の世界を見た』
中岡俊哉著、「豊かなる解放 潮文社リヴ」というシリーズ。
潮文社について検索すると、すでに存在していない。
中岡俊哉さんの名前にはまさしく子ども時代から親しんできた。

これは古本買い。
後ろの見返し部分に「まんだらけ海馬」のチケットがあった。
中野ブロードウエイの4階。
ここではだいぶ買い込んでしまった。

この本の第一刷は西暦1977年。
まだ「臨死体験」という言葉が流布していない時代だ。
それでいて、その後の臨死体験ブームで明らかになってきた知見ともほぼ合致しているのが興味深い。

特に参考文献もあげられていないが、「死後の世界」ネタだけでは紙数が不足したようだ。
そのため水増ししたとみられる「新聞記事になっている幽霊目撃」という章がまた面白い。
こっちの方は今もある全国紙・地方紙の日付入りで幽霊がらみの記事が採録されているのだ。
当時の記事だから登場人物のフルネームに年齢、住所まで丁寧に明らかにされている。

まーよくもこんな話が一般紙の記事になったと思うところだが、それぞれのその後もトレース可能かもしれない。
そんなもの好きが僕以外にもいればの話だけど。


1月11日(木)の記 ブラジルのハイパーリアリズム
ブラジルにて


町に、アートを見に行く。
ストリートアートではなくて、ミュージアム施設の「囲い」のものを。
カッコイイ?

一昨日、坂の多い住宅地でグラフィティのマスターピースに出会って…、
囲いのなかのムゼウ(ミュージアム)にいるごとく、いろいろな角度からしげしげと眺めてしまったのがトリガーとなったか。
https://www.instagram.com/p/C15CaEFu_76/
通常は町なかでスマホを出すことも家人にたしなめられるほどの治安状況。
ストリートアートには、じっくり鑑賞するのがむずかしいという難点があり。

また今週初めから半年近く前の日毎の日記を月ごとに少しまとめてみて…、
あの頃の自分は貪欲なまでに映画や展示の鑑賞に動いていたことに引け目も感じたか。

調べてみるといまだ年末年始時期のせいか、イベントそのもののない施設も少なくないが…

「ブラジルのハイパーリアリズム」展というのを、どセントロのカイシャブラジル文化センターで開催中と知る。
これに行ってみるかな。

ブラジル人のGiovani Caramelloという作家の作品。
振り返ると、もう10年!になるのだが、オーストラリア人のRon Mueckという作家のハイパーリアリズム作品群がブラジルで展示され、かなりの人気を博したことがある。

Giovaniさんは独学で3Dコピーをもとにこの境地に達したという。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10229586183613923&set=a.3410845544903

この人たちの題材に共通するものが面白い。
実物だったら、正視していられないようなものもしばしば。

ポルトガル語のHiper-realismo はWikiで34か国語で展開されているが、なんと日本語がないではないか。
韓国語・中国語等々はあり。

日本にもホキ美術館のような写実絵画に特化したミュージアムもあるのに。
祖国は二次元どまりか。

カイシャブラジルでの併設展も、近くの単館展示施設の展示もさほど重くなく、作家としての自分にとって刺激的でした。
あらたによろしいカフェも見つけたよ。


1月12日(金)の記 訳アリでピニェイロス
ブラジルにて


昨日はプチアート三昧したし。
明日は人に会うし、今日は自宅作業のつもりで。

昨日の展示でこれはぜひあの人に見せたいと思うものをスマホ撮りしてある。
ひとりは能登ゆかりの方で、お見舞いの挨拶もしそびれていた。

今日、昨日の写真とともにお見舞いのメッセージを送る。
さっそく交信となり、もうひとつ気になっていた展示にも言及。

あと送りしていると終わってしまう。
思い切って、行く。

会場にはお目当て以外の展示もあり、思わぬ知人のいい仕事を見ることができた。
・・・カフェでも飲みたいが、どうもここのカフェは値段以外のお高さが性に合わない。

スマホ調べの最寄りのカフェへ。
ずばり雲行きが怪しくなり、雨宿りのカフェとなる。


1月13日(土)の記 昼飯の食べどころ
ブラジルにて


日本から派遣されてきた人から、知人を介して会いたいと連絡あり。
今日の午前中、先方の住まいの近くのカフェでお会いすることに。

日本の共通の知人の話をしたり、こちらの事情をほとんど存じないようなのでそのあたりの話をしたり。
昼どきになってしまった。
先方は、アルコールをたしなむのだが、先日はワインの里に行きながら誰も飲まないのでぶどうジュースを、という痛恨の話をされていた。

ではアルコール込みでアルモッソ:昼食をご一緒に、ということに。
土曜はブラジルのナショナルプレート:フェイジョアーダの日だが、これはどこでも食べられる。

ここから歩けば歩けないでもない距離にファヴェーラ:コムニダージ:スラムがある。
そこにある飯屋に行ってみたかった。

この初対面の彼女は、リスクを承知で行ってみたいという。
こっちもひとりではそのあたりには出没してもメシまでは食べるに至っていなかった。
・・・先方は12時もそこそこ過ぎてからようやく準備、といったところ。
ヤバい雰囲気が、たとえばわが家の近くにあるファヴェーラよりだいぶ少ない感じ。

路上のテーブルに自分らでイスを並べて。
うむ、料理もよろしい。

酩酊冷めやらぬおじさんが「ういー、ニホンジンよー」と寄ってくる。
緊張するが「よい食事を」と言って歩き去って行った。

店内にはブラジル北東部の食材も売っていて、お土産に買って帰る。
これはいい体験ができました。


1月14日(日)の記 エステリの虐殺
ブラジルにて


日本人の友人がパラグアイ滞在中で、時折り便りがある。
そんなこともあり、昨年、西荻窪のAparecidaさんで見つけてゲットした小説『パラグアイの緋い雨』(西暦2001年、山崎陽亮著)を読んでみる。

冒頭だけ読んで止まっていたのだが…
今回はやめられなくなった。

パラグアイに亡命したニカラグアのソモサ前大統領の暗殺事件(西暦1980年)を報じる日本語の新聞記事から始まる。
紙名は「旭新聞」。
(いまこの紙名を確認して、こりゃひょっとしてこの事件そのものもフィクションかと思いきや…、これは史実だった)

これをもとに、序章を経て物語ははわれらがブラジルのリオデジャネイロから始まる。
主人公は、ブラジルまで流れてきた物憂げな日本人の大学生。
彼は思わぬ話からいっきに中米に飛ぶ。

故・船戸与一の世界を想い出させる設定とストーリー展開だ。
そして恥ずかしながらこの小説で、初めて中米ニカラグアのエステリの虐殺事件を知った。
1978年9月20日からの三日間で人口3万人のエステリの町のおよそ3千人の市民がソモサ独裁政権の軍隊によって虐殺された。
虐殺の手口は、大日本帝国の皇軍を踏襲したかと思わせる凄惨極まりないものだ。

いままさに、現在進行中でパレスチナのガザで虐殺が行なわれていることにニュースで接している。
この虐殺へのマニフェストは、僕が日毎にフォローしているサンパウロのストリートアートからもうかがえる。
いっぽう、よりメディアに乗りにくい、アフリカなどでの虐殺にも目を向けるべきとの主張がSNSで伝わってくる。

人口3万人の町の3千人を短期間に虐殺するというのはそうとうなものではないか。
日本軍は1945年にマニラでどれほどの市民を虐殺したか。

日本と日本人が加害者である虐殺はいわずもがな。
わがラテンアメリカで行なわれた・行なわれているこうした虐殺に目をそむけないでいたいと思う。


1月15日(月)の記 小正月の小断食
ブラジルにて


さて、今日は一日断食。
液体は補給するが、砂糖入りはNG。
コーヒーを服用する断食法もあるようだが、僕は避けることにしている。

断食日には通常よりかえって外のカフェがしたくなる。
カフェに行って、カフェを飲まなければいいのだが…、
ミネラルウオーターだけオーダーというのもナニだし。
どの店にも茶類があるわけでなし、マテ茶を頼んでもはじめから砂糖入りだったり…

して先週、思わぬ穴場を見つけてしまった。
隣駅近くの大教会の地下のカフェ。
ここは縁日、ミサ後などを除けば、がらんとしている。
ティーパック類が何種類かあり、お値段はわが家の下のカフェの半額程度。

こうしたケースで僕がスペースとしてのカフェに求めるのは、少しなにかが読めること。
ここなら、それもオッケー。

今日は「バニラ風味の桑の葉茶」というのを頼んでみた。
うーむ、ほんのり甘いがこの甘みはなんだろう?

お湯の量が少ないが、この値段で「替え湯」を頼むのも気が引ける。


1月16日(火)の記 ピンクレモネードはお好き
ブラジルにて


今日も日中、そこそこ暑い。
朝からあらたに原稿の手直しなどをして…

火曜日の路上市まで足を延ばすことにした。
出遅れてしまい、すでにほとんどが店じまい状態。
レタス類とケール:コウヴェのみを購入。

どこか冷房のきっちり効いているカフェでいっぷく:水分補給したい。
わが家の近くで躍進中の日系飲食チェーンが開けたカフェに久しぶりで行ってみるか。
・・・寅さんが実家のとらやに戻ってきた時のように、いったん店を通り過ぎてからUターン。
そこそこ席が埋まっていたので、見合わせようかなと思ったが懲罰房のような一人席がひとつ空いていたので。

壁に掲げられた写真入りメニューのピンクレモネード(ずばりPink Lemonade)というのを頼んでみる。
おや。
写真は薄いピンク色の液体だが…

https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10229606820369829&set=a.3410845544903&type=3 ¬if_id=1705428919448943¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif
これ、何色に見えますか?
はだいろ、ではないにしても…
これはベテハバ:ビーツかアサイーの色だ。

下にたまっているのを混ぜてくださいと言われるが…
どうやら沈殿していたのはいちごジャム。

そもそもの味は、なにとも言いがたし。
いずれにしても料金は無収入、出銭ばかりのワタクチにはキョーレツ。
昨日のお茶が、7杯以上飲めるプライス。

帰宅後に検索して、そもそものピンクレモネードはなにを使用しているかのレシピも千差万別と知る。
ブルーベリーにピンクレモネードという品種もあるではないか。

・・・さすがにストロベリーというのは見当たらないけど。
この店のストローは紙製だったが濡れてからの舌触りがキモチわるく、使わなければよかった。


1月17日(水)の記 セカンドかサードか
ブラジルにて


さあ今日の午後から二泊三日のまかない兼日本語ホスト業だ。

わが家から車でダイレクトに先方に、というのもちょっとアレな感じ。
そう、サード・プレイスに寄りたい。
サード・プレイスとは「自宅や職場とは隔離された、心地のよい第3の居場所」のこと。
通常、自宅で作業の僕にはサードどころがセカンドもないと思っていたが、ここのところまた頻繫となってきたこの奉公先がセカンドともいえそうだ。

して、今日も奉公先の手前のサンパウロ大学で寄り道。
ウオーキングにアート探し、そしてカフェでちびっと読書。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10229611583328900&set=a.3410845544903 ¬if_id=1705519811766293¬if_t=feedback_reaction_generic&ref=notif

学園都市とよばれるサンパウロ大学のキャンパス。
まだまだ未知のところばかり。
こころみに、僕が少しは通った早稲田大学の、本部キャンパスと比べてみると。
ワセダの本部は、124,671㎡。
サンパウロ大学は、4,300,000㎡。
スマホの計算機で計算すると、ざっとこっちが35倍。
もっと広い気もするけれど。
早稲田は、誠に息苦しかったなあ。

年末休暇中もそこそこ人がいたと思うけど、今日はそれよか少ないぞ。
着生植物や地衣類が覆う小枝が落ちているのが目につく。
これといったのがあれば持ち帰ってみようか、いずれ。


1月18日(木)の記 ニッケイのネガ写真
ブラジルにて


昨日午後から明日まで、こちらで身内の年寄りのまかない担当の泊り当番。
不足している野菜とワタクチ用のアルコール燃料の買い出しに出る。

このあたりはわが家と違って、ちょいとした買い物がひと仕事。
2000歩近く歩いたところに日系とおぼしき巨大スーパーチェーンがあるのだが。

どうもここは不審なことが多い。
昨年9月に店内で向こうから店のカードをつくらないかとポンビキされて。
このチェーンは会員になっていないと割高になる商品が多いのだ。
さんざん個人データを提供して待たされて、システムのせいでまた後日と言われて。

その後、担当の女からこちらの証明証類をスマホ撮りして送ってくれと連絡があり。
あとはできあがったカードを郵送すると昨10月にメッセージがあって、そのままナシのつぶてとなった。

今日、その件をクレームすると、昨年9月にシステムが許可しなかったと言う。
そのあと、10月にこの連絡があったのだぞとスマホ画面を見せても9月にはじかれている、の一点張り。
詐欺ではないか。

日頃、こちらのデータをもとにまさしくポンビキの類の電話やメッセージがひっきりなしだが、こういうところからデータが流出しているのではないか。

ここはホントに日系の経営かと検索してみる。
創立は日系人。

おやおや、ネット上にいろいろトラブルが出てくるぞ。
リオの店ではレジの女性がトイレに行きたいと何度も申し出ても「許可」されず、彼女は自分が失禁してしまったところを客にスマホ撮りさせて訴えたと。

この手のニュースが続々。
ブラジル日系経営のどす黒い部分を垣間見る思い。
ニッケイの自画自賛ばかりがこちらの邦字紙やSNSに散らばっているが、こうした暗部をこそ見つめていきたい。

そんなところ使わなきゃいいでねえのということになるが、このあたりはホントに他がないのだ。


1月19日(金)の記 わが家で舌禍
ブラジルにて


昼前まで出先で過ごし、オンライン作業など。
渋滞状況をアプリで折に触れてチェック。
1時間程度の運転で帰宅できた。

さあ出先での台所仕事が続いたせいか、昼は近くで外メシを、のつもりが。
食糧棚にこちらで買った韓国製ロブスター味のカップ麺があるのに気づき。
なんでこんなのを買ったのか、安売りだったのだろう。
これを食べてみるか。

ロブスター味というのがよくわからない。
日本のカップ麺に比べると、かやくが異常に少ない。
ミニチュアのようなナルトがひとつ…

うわ。
舌を噛んでしまった。
噛み切るまではいかなかったが、かなりの深手。
鏡で見てみるが、どうしてこんなふうに嚙んでしまったのか、再現もむずかしい思い。

舌をかむ、舌癌、などを検索。
歯科治療の不具合からこういうことになるとも。
思い当たる節も。

昨年の訪日で、仙台を経由して牛タンをいただくというのは見合わせたのだが。


1月20日(土)の記 コミックジャーナリズム最前線
ブラジルにて


午後から、コミック専門の出版社が主催するトークショーに行ってみる。
最近、すすめられて読んだ『A COLETA』という作品の著者Pedro Vóが出席するとのことで、どんな人か見てみたい。

この作品はブラジルで廃品回収を行なう人に実際に取材をして描いたもの。
この手をJornalismo em quadorinhos ということをはじめて知った。
アメリカ合衆国のComics journalism に由来する言葉。
この流れは日本ではわずかに紹介されているようで、コミックジャーナリズムについては日本語でも検索すればある程度つかめることが自分で調べてわかった。

この作品を読んで、サンパウロでも身近でありながら見えにくい・見ようとしていない廃品回収業者に対しての市民の側の差別の激しさを知る。
そして僕自身もその市民の側にいることに気付かせてもらった。

1990年代以降、ブラジルでもさんざん環境教育が喧伝されていながら、多くの市民は基本的なゴミの分別もおこたっていること。

今日はこのコミックに実名で登場する女性二人、男性一人の回収業者もかけつけた。
三人ともおしゃれでかっこよかった。

余韻とともに、近くのショッピングモールでアイスティーをいただく。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10229626455220688&set=a.3410845544903


1月21日(日)の記 闇の奥の移民
ブラジルにて


冷凍庫のムール貝のむき身を解凍してある。
路上市の魚屋で、サシミでもいけるよ、と小ぶりのイカをすすめられて。
昼はパエジャをつくる。

昨年からの訪日で、実家に置いたままだった積ん読の本をちびちびとブラジルに運んでいる。
その一冊、若槻泰雄さんの『移民 原始林に挑む日本人』(1966年)を読んでみる。
古本屋で買ったのだが、どこで買ったのかは失念してしまった。

面白い。
面白すぎる。
若槻さんの本は久しく読んでいなかった。

なんといっても実録、そして反骨の姿勢がここちよい。
『闇の奥』をも想い出すではないか。

検索してみると、これだけすごい人についてWikiのページやそれに準じるものもないようだ。
いっぽう僕がノーチェックだった著書が、南米移民もの以外にもそうとうあることをいまにして知る。

日本で古本屋をまわる楽しみ、ないし課題が増えた。
いま読んでいるこの本も、いまやかなり入手が難しいようだけれども。


1月22日(月)の記 嗚呼ビデオ編集
ブラジルにて


映像、動画、ビデオ・・・
そのあたりの言葉を自分なりにどう使い分けようかと思って調べていて、めんどくさくなってきた。
技術の進歩/変化にコトバが追い付いていかない。

今日は数か月ぶりの「ビデオ」編集作業に取り掛かろう。
さて、日本の友人への捧げものとしてつくったビデオのデータ化、オンライン化を図ろうとして。
編集データが見当たらず、往生した。
なんとか見つける。

まずは見直す。
うーむ。
アスペクト比を直そう、これはさほどの手間ではない。
ああ、これは。
いったん完成させてから、関係者が提供してくれたデータの間違いがわかり、それを応急処置でごまかしたナレーション箇所が厳しい。
・・・つくりなおしてみるか。
さらにいま、聞いてみて、耳で聞いただけでは変換しにくい語句3か所を字幕で補うことに。

いやはや、それでもなんとかおかげさまで一日仕事で片が付きそうだ。


1月23日(火)の記 『聖アントニオの舌』
ブラジルにて


さる金曜の「舌禍事件」について、ふと思い当たることがあり…
検索。
わが家にドンピシャの本の在庫あり。
坂東眞砂子さん著『聖アントニオの舌』、角川文庫。
文庫版は西暦2000年発行。
現在のイタリアから探る中世の世界の短編エッセイ集。
ほとんど記憶になく、読み返すが実に面白い。

坂東さんといえば『死国』など四国を舞台にした伝奇もの専科と思い込んでいたが、こんないい作品群もあり。
たしか同年代だったかと…

おう、同じ年で彼女が早生まれだ。
え、もう亡くなっていたとは!
死因は、舌癌。

高知出身。
宮本常一のあの名作へのオマージュといった作品もあるようだ。

四国の民俗を踏まえたうえでのイタリア留学。
カトリック信者とはならずに日本人の小説家としての好奇心でイタリアの土俗の「瘡蓋(かさぶた)」を掘り下げていただき、貴重極まりない。


1月24日(水)の記 国司さん逝く
ブラジルにて


日本の関西の友人が、セニョール国司が亡くなったと知らせてくれた。
まさか、亡くなるとは。

国司さんは元・共同通信の記者。
東京出身だが、関西を拠点にして長い。
関西で開かれた僕の上映会に来てくれたのがご縁のはじまりだった。

記者時代にスペイン滞在歴があり、ご縁をいただいた後でJICAの専門家としてチリに派遣された。
現地でキクイモの活用の普及、というユニークな活動をされていた。

国司さんにはいろいろ面白い人、ことを紹介していただいた。
僕も紹介をしたが、こちらがいただくことの方が多かった。
最近の術後がかんばしくなく、昨年、神戸を通過する際にお見舞いをと連絡してみたが、それもしんどいとのことでそのままになってしまった。

想い出は尽きず。
そういえば、あの人の本名は?
僕は国司三郎、としていたが、「邦」姓での投稿、「四郎」名で書かれていたこともあったかと。
ふたたび関西の友人に聞いてみる。

國司和宏、が本名らしい。
ちょび髭のにたにた顔。
もういちど、飲みたかった。


1月25日(木)の記 古書の毛髪
ブラジルにて


今日はサンパウロの町の470年目のお誕生日。
よってサンパウロの町は祝日。

午前9時からのカテドラルでの記念ミサが気になるが、フェイジョアーダの作成を始めてしまった。
来年、にするか…

さてこれも昨年の訪日で見つけた奇書を読んでいる。
『アマゾンの呼び声』、プライス著・秋永芳郎訳。
講談社少年少女世界冒険全集のなかの一巻。
なんと僕の生まれる前年の発行。
かなり紙の劣化が進んでいる。

ちなみに原題は『AMAZON ADVENTURE』。
だいぶ控えめな邦題だな。
アメリカ人の探検家兼動物商の父親が高卒・中卒の10代の兄弟のわが子を連れてエクアドル領アマゾンから猛獣狩りの川下りを行なうという、なかなかの設定。
「土人」はじめ昨今では使用もむずかしい訳語だけでも興味深い。

さてさて。
寝転がってページをめくっていくと、毛髪が出てきた。
10センチぐらいの黒髪だが、わが家族は僕も含めてこんなに細髪ではない。
こういうもの除去用のシールに付着させて処理。

さらに同じ人物のものとみられる毛髪ふたたび。
都合、4ヵ所に毛髪アリ。
仰向けになって読まないでよかった。

僕のもともとの古本への偏見は、この辺にあった。
ところがオシャレで新刊書店より清潔感のある流浪堂さんのような古書店との出会いがあり、新刊より古書の方になじむようになってきたのだが。
流浪堂さんで求めた本では、店頭100円均一のものを含めてこうした気持ち悪いものが出てきた覚えはない。

今後、なじみの古本屋さんにこうしたこぼれ話を聞いてみよう。
それにしても、一冊から4本とは。


1月26日(金)の記 ふかみどりの誘惑
ブラジルにて


最近、数十年前に日本から担いできたクレヨンと色鉛筆を取り出していじる機会があった。
僕の世代が幼少になじんだ色のなかでは「はだいろ」というのが祖国でご法度となって久しいようだ。

「ふかみどり」はどうだろう?
日本の行政による無体な樹林の伐採と地球の温暖化・日本の亜熱帯化で祖国のふかみどり相も色めき立っていることだろう。

午後、自家製酵母パンの買い出しに出ることに。
こころみにスマホで検索すると、わが家からメトロにして2駅ほど南の方に未知の自家製酵母パン店がオープンしたようだ。
ダメもとで行ってみよう。

いかにも開店ほやほや、試行錯誤中といった観の店で、そこそこ期待できるかも。
さて読書用の新書も持参したのだが、適当なカフェがない。
あたりを彷徨しているうちに、市内ではまれなふかみどりの一角が目に入った。
公園だ。
パンデミックたけなわの頃に入ったことがある。
こんなに緑が濃かったか。

入り口を探して入ってみる。
ああ、こういう空間を僕は求めていた。
さっそく藪蚊が寄ってくるけれども。

もう少しわが家に近ければ。
近隣住民をうらやむ。


1月27日(土)の記 みはてぬSEBO
ブラジルにて


昼前に、ミネラルウオーターの源泉まで給水に行く。
このついでの課題あり。

源泉の付近を散策していて、閑静な住宅街のなかにseboを見つけていた。
seboとはポルトガル語で古本屋のこと。
この語には獣脂、脂肪といった意味があるのだが、なぜ古本屋がこの語で呼ばれるのかは諸説あり。

多くの人間が手に取った古本は指の脂で汚れているから、というあたりか。
ああ、あの古本の毛髪事件を想い出す。

さてこの古本屋、あえてたとえるとゴミ屋敷の観あり。
扉は閉まっていてひと気はなく、ブザーを押してくださいと手書きの表示がある。
そうとうに入りにくい。
しかも店の前の街路樹のあたりにややアグレッシヴな物乞いの男がいついているのだ。
はじめてこの店を見つけた時、気にはなったが入店はためらってしまった。

二度目の時は覚悟を決めて、まず店の前を通り過ぎて、近くの食堂で昼食をとった。
食堂にて、スマホでこの古本屋についての情報・評判を確認。
スキな人間にはこたえられない店のようだ。

して、食後に立ち寄ると「昼食外出中」の掲示が出されて扉はすべて閉められていた。
立ち止まると物乞いが「金よこせよ」と命じてくる。
物乞いから強盗に変じてもおかしくない怖さがある。
そそくさと立ち去ることにした。

そして、三度目の正直。
昼前にseboに着いた。
居つきの物乞いは街路樹の根元にしゃがんでスマホに見入っている。

店のブザーを押すが、店内に音が響いている気配がない。
反対側に裸電球が吊るされていて、それを引っ張って呼び鈴を鳴らされたしとの表示があるのに気づく。
何度か鳴らすが、店内ではネコらしいのが動く気配のみ。
背後の物乞いの男が気にかかる。
seboで「脂汗」をかく思いだ。

いったん立ち去って、少し周辺を歩いてからまた呼び鈴を鳴らすが応答なし。
・・・またにするか。

物乞いの男に店はどうなっているのかと聞くとなると、その見返りに金銭を出さざるを得ないだろうし、それもシャク。

ひょっとして、この物乞いがオーナーだったりして?
あらためてスマホでこの店についてのコメントを調べているが、さすがにそうした言及はない。


1月28日(日)の記 粉わさびの復活
ブラジルにて


今日は昼前から賄い夫としての泊り当番。
昨日、わが家で溶いてつくった粉わさびを持参しよう。

祖国でも久しく粉わさびを目にした覚えがない。
市場をチューブわさびが制圧して何十年になるか…
検索してみると、日本でのチューブわさびの誕生は西暦1972年。
登場から、すでに半世紀以上か。

サンパウロの日本食材店でブラジル国産!の缶入り粉わさびを見つけた。
なつかしくもあり、買っていた。
昨今は粉わさびの溶き方を知らない人も多かろう。
少量の水で練ってから、数十分はフタをするか容器をさかさまにして密封、寝かせておくこと、と記憶する。

ブラジルでもニホンショク流行りとともに輸入品・ブラジル国産のチューブわさびが出回るようになって、これも久しい。
数年前に中国製のチューブわさびが破格の値段で売られていて、買ってみた。
これが!
殺人的な辛さだった。
そもそもワサビはこれぞ「日本スゴイ」の日本国産のものである。
それを、慣れない中国人がいきなりこれを使ったらどんなことになるか。
あるいはこれは外箱に怪しい日本語の記載もあり、中国人の使用を前提に生産されたものではなかったのかも。

捨てるのもシャクで、これはそこそこ使うまでに年月がかかり、使用の度に涙を流したものだ。

さて、溶いた粉わさびを使って出先で試してみたい料理に挑戦。
チリ産養殖サーモンを解凍。
作成済みの粉わさびを薄口醬油とみりんで溶いて、これに薄切りにしたサーモンをマリネにして。

ツマとして薄切り、水にさらした白・紫のタマネギを敷き、ポン酢しょうゆを合わせておく。
ワカメや小ねぎをいろどりに。

うむ、悪くない。
粉わさびのまろやかさを活かす。
のろいの殺人わさびへのリヴェンジ。


1月29日(月)の記 白木耳・銀耳
ブラジルにて


わが家の食糧庫に久しくあった中国製の乾燥白キクラゲ。
もうワケアリ状態だ。
でももったいない。

日本語でレシピを調べると、こんなかんたんなのでいいのかいなというのもある。
クラゲの代用を考えればいいかもしれないが、クラゲは食べたことはあっても料理したことはない。
さる週末に非日系の訪問客に供して、好評だった。

残りを賄い先に持参。
今日は欧州からの身内の夫妻がやってくる。

夜の一品に加えるか。
昨日はブラジル製の寿司酢を使ってみたが、なんともまずくなった。
ブラジル製には違いないが、米酢、みりん、薄口醤油類で味付け。
昨日は青のりを加えてみたが、今日はヒジキで。
小ネギにローズペッパー。

食通のおフランス人の口にもあったようだ。
日本人の老刀自は何度も「これはキャベツですか」と聞く。
たしかにゆでたキャベツに似ているな。

効用を調べると薬膳用の食材、抜群ではないか。
お値段はどれぐらいだったかな。


1月30日(火)の記 マネキンの招き
ブラジルにて


今日は一日断食のつもり。
奉公先を午前7時前においとま。
この時間でもすでに通勤に向かう自家用車の多いこと。

帰宅後、小休止。
ほっとけば一日中だらだらしてしまう。

午後、思い切って出る。
隣駅近くにあるカトリックの「サンクチュアリ」まで行ってみる。
この語の日本語への訳し込みが微妙。
検索してみると、同名の日本製ネトフリドラマがあるではないか。

して、サンクチュアリの地下でこんな写真を撮った。
https://www.facebook.com/photo?fbid=10229674798389237&set=a.3410845544903
これをインスタの「今日のアート」にあげようかどうしようか…

迷った末、インスタには近くの教会付属施設のアンチーク売り場にあった油絵を撮ったものにする。

この写真はフェイスブックにあげてみた。
すると、日本の知人からこんなコメントが。
「本当の『人』でありましょうが、何だかマネキンじみて見えます。」

え、これがホントの人に見えるって、ホント?
こういう想定外のコメントをいただけるから面白い。
この機会にマネキンという語について調べてみよう。

ウイキによると、
マネキン(仏: mannequin)は、店頭において各種商品の宣伝・販売促進にあたる販売員(宣伝販売促進員)や、その職種を指す。服飾品の販売から使われるようになった用語であるが、食品の試食・実演販売などにも用いられている。
単に「マネキン」と言った場合は、衣服の展示に使われる等身大の人形(マネキン人形)を指すことも多い。

とな。

そうか、ほんらいは職業を指すのか。


1月31日(水)の記 あなたはあなたのままで
ブラジルにて


こちらがメインに据えていた件では先方から連絡が途絶え。
迫ってきた次回訪日ミッションについて、先方とのやり取り。
イレギュラーに入ってきた頼まれごと。
そして、さらに・・・

血液逆流クラスのことも。
いっぽうそのまた逆の驚きの知らせもあり。

深夜に覚醒した時にスマホなどいじらなければよさそうなものだが。
急ぎの件もあれば、新たな案件を眠れぬ夜にうつろとうつらのあわいで思いめぐらすのも悪くはないみたい。
そんなときのせっかくの思い付きは書き留めておかないといけない。

すっかり忘れていることについて日本の知人にメールでお尋ねした。
なんとも驚きの返信をいただいた。
こんなこともあったとは。

はらわたの煮えかえることへの対処も含めて。
歌の文句じゃないけれど。
あなたはあなたのままでいいんですよ、というお告げをいただいた気すらする。

そうさせていただきましょう。



 


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