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岡村淳のオフレコ日記
     西暦2024年の日記  (最終更新日 : 2024/12/08)
4月の日記 総集編 映画は綿から生まれた

4月の日記 総集編 映画は綿から生まれた (2024/04/02) 4月1日(月)の記 コーン粒サイズの小ネタ
ブラジルにて


今日は親類宅で終日、過ごす。
午前中にお散歩とインスタのアートネタ探し。

少し歩いたところにある卸売系の大型スーパーまで行ってみる。
中央分離帯や小広場などの地面を覆う夏草に季節、そしてもろもろを覚える。

このスーパーのカフェスペースにはトウモロコシのジュースがある。
都市部では、田舎の味、といったところ。
じっさい田舎では売っていたことがあったっけ?
小瓶で10レアイス、約300円だからそう安いものでもない。

これは滞在先のお年寄りも「おいしい」と言っていた。
小瓶を買って飲まずに持ち帰る。

トウモロコシをミキサーでくだいたドロっとしたもの。
日本のネカフェなどのドリンクサービスにあるコーンポタージュ、あれをもっとドロッとさせて甘いもの、といったところ。

日本から来た人には珍しく、かつ口に合わないと言った人に会った覚えがない。

成分を見るとトウモロコシの他にサトウキビ製の砂糖、そして粉ミルクなどが入っている。
ねっとり感たっぷりだが、意外とさっぱりしている。

ブラジルの妙味のひとつだ。


4月2日(火)の記 ファヴェーラと高層住宅
ブラジルにて


正午過ぎに帰宅。
今日はムチャクチャなラッシュもなく、さほどの運転疲れもない。

一服して午後のお出かけ。
しばらく立ち寄っていない、もよりのファヴェーラ:コムニダージ:スラム街のあたりを通ってみることにする。

メインのあたりはパトカーの赤いライトの点滅が遠目に見える。
その辺は外して。

このあたりはわくわくぞうぞく、そしてなにやらサウダージ感もあるのだ。

メイン地区の向かいに高層住宅数棟の建築が始まって久しい。
近いうちにショールームもつくられることだろう。

サンパウロの各所でスラムの向かいに高層アパート群が建てられているのを看取する。
そのプロセスがここでは目の当たりだ。

管見では、サンパウロ市内のスラムは河川敷が多い。
河川の暗渠化とともにさらにスラムは拡大していく。
リオのスラムが山に向かっていくのと対照的だ。

このあたりはすでに暗渠化した河川の源流域ではないか。
高層建築現場の地盤が気になるが、昨今の日本ほどの手抜き工事はないように思うけど。


4月3日(水)の記 からしな日記
ブラジルにて


一日断食の翌日。
冷凍してあったオカユの残りをふたたび解凍。
味を足して断食の回復食とする。

昼食後、隣駅近くの水曜の路上市まで徒歩で。
この市はだいぶ規模が小さい。
ここも昼過ぎから野菜類の安売りが始まり、それがネライでもあり。

おや、今日は魚屋が出ていないな。
目的のレタスは購入。

白カブが一束、売れ残っている。
葉っぱもきれいな方だ。
他の野菜と一緒で5レアイス(約150円)にするという。
うーむ。
めったに買わないが、からし菜を買ってみるか。

こちらではMostarda:カラシの名前で売られる青菜で、日本語なら「からし菜」でいいと思っていた。
おや、検索してみるとそう簡単ではなさそうだ。
日本語のからし菜のレシピの応用が利くものかどうか…

そもそもこのブラジルからし菜、こちらの料理で食べた記憶もあまりない。
検索すると、菜食志向むけのサラダ類が主のようだ。

そもそもカブの葉もこのからし菜も、いたみが早そうだ。
うーむ、夜には両者ともこれといった利用法が思いつかず。
明日にまわすか。


4月4日(水)の記 カラシナの根回し
ブラジルにて


何度か冒頭から読んでは、ほどなくそのままになっていた岩波新書の『新つけもの考』。
今回は記録突破で未読のところまで達成。

面白いのだ。
ふむ、広島菜、野沢菜、高菜が「日本三大菜漬け」か。
広島菜というのにはとんと縁がないが、5月の訪広の際にでも。

あ!
この本のなかに野沢菜の原図というのがあり、それに「蕪種」の文字が。
そうか、野沢菜はカブだったのか。
伝承では長野は野沢温泉村の住職が西暦1756年に京都遊学、天王寺カブを持ち帰ったのがはじまりとされる。
これが茎葉ばかりが異常に生育して、根が利用できなかったとな。

奇しくも昨日、白カブとカラシナを買ってきた。
特にカラシナは一日でだいぶ葉が黄ばんできた。
調べてみるとカラシナも白カブも野沢菜も、いずれもアブラナ科アブラナ属:Brassica属である。

カラシナを洗う。
ナルホド、根っこの部分が生育の悪いカブのように白くなっている。
いままでは茎から下は「削除」していたが。

白根の部分も刻んで、まずは厚揚げを細かく刻んだものと炒めものにしてみる。
白根の部分も加食で、ちょっとしたアクセントになるではないか。

まるで農業経験がないため、いまさらこんなことを知った次第。
さて、白カブの方はどうしよう。


4月5日(金)の記 古都ラーメンの黄昏
ブラジルにて


今日は朝からイレギュラーな案件が重なっているところに。
いきなり日本からの音声通話。
こういうのはほとんどが先方の操作ミスなのだが。
これは違った。

・・・愉快ではない。
この件のサワリを別件でやり取りしている日本の友人に伝えた。
絶妙の返しをいただく。

さて。
夜、家族と外食。
近くのラーメン屋がいいという。
サンパウロでのラーメンブームとともにできた店。
ほんの数回、行ってみたが、決しておいしいとは思わなかった。

それでもその後も特に週末などは入店待ちの客がたむろしていることしばしば。

小ぶりの学校の体育館ぐらいの広さはある。
金曜の夜で占有率は半分弱か。
広い店内の装飾に目を引くものなし、というかそもそも装飾がない。

前菜に鶏唐揚げを頼み、メインは醤油ラーメンにしてみる。
・・・唐揚げがやってきたのは、ラーメンをほぼ食べ終えるころ。

ラーメンは…スープにパンチが効いていないというか。
曖昧中途半端な味。
モヤシがのっているが、べちょべちょのいためすぎ。
二切れのチャーシューの味はまあよろしいか。

このラーメンで邦貨1200yenとは。
自分でラーメンを作りたくなった。
あらためて自分からここに来ることはないだろう。

この店は、日本の古都の名前を付けている。
開店時に由来を訪ねたが、なにという理由も聞きだせなかった。
狙撃事件よりずっと前だったな。


4月6日(土)の記 衝撃のスシ
ブラジルにて


サンパウロの中央卸市場に近いあたりの高級の部類に入るシュラスカリア:ブラジリアンバーべキュー店で会食をすることになった。

サラダバーを一瞥。
スシコーナーがある。
マキズシ・ニギリとサシミがずらりと並んでいる。

マグロの赤身…
変色がすすんでいて、ちょっと箸をつける気になれない。
横に並んでいるクリーム色のは、サメのサシミである。

マキズシのなかに、同定不能のものが。
細巻きの断面にクリームチーズをのせ、さらにその上に緑とオレンジ色の透明のゼリー状のものがかけられている。
なんだろう?

甘い。
ジャムだ。
寿司にジャムをかけるとは、絶句。
さすがに醤油をつけずに、試食。
繰り返したいお味ではないと確認。

スシのネタが、ネタになる。

生ガキもあったが、小ぶりでこれといった感慨もないお味。

さすがに肉はよろしかったが、改めてそう食べられるものではないと実感。


4月7日(日)の記 マラソン襲来
ブラジルにて


昨日からお泊りの出先の高層住宅に面した大通りがマラソンで通行止めになると昨日、知った。
午前6時から11時まで。
これを知らないで車でやってくると、たいへんなことになる。

このあたりはサンパウロ市を貫く河川敷に沿った幹線道路に近く、この幹線道路も数キロ毎にかかる橋も一方通行になっている。
付近の道がひとつ閉じてしまうと、たいへんな遠回りとなってしまい、目的地にたどりつけるのかどうかもわからなくなってしまう。

わが滞在先の向かいに給水スポットが設けられ、プラスチックコップのミネラルウオーターが配られる。
参加者はミドルクラスより上限定といったところか。
移動式公衆トイレも設置されて。
「平山さん」はこういうのの掃除はしないのかな。

朝のお出かけから帰ると、もう走者は見当たらず。
大通りを覆う水色のミネラルウオーターの空きコップ群がからからと風を受けて転がり続け、シュール。
清掃スタッフがゆるく仕事をしている。

付近のファヴェーラ:コムニダージ:スラムの住民がこのマラソン行事をなんと見るか聞いてみたいもの。


4月8日(月)の記 京城通信
ブラジルにて


ちょうど昼時刻にわが家に戻る。
わが共同住宅では、8日か9日、つまり今日か明日に各戸のガスの検査があるという。
時間は午前8時から午後8時までの間。
その時間にしかるべき人間が在宅していないと、そこのガスは閉じられたままになるそうな。

そもそも前日までに日にちはどちらかもわからない始末。
炊事はもとよりシャワーの温水もガス仕立てだから、ガスがないとお手上げである。
わが棟の門番に聞くと、わが棟には今日の午後に来る見込みの由。

かなりあいまいなので、ネイティブブラジル人の住民たちが混乱している。
僕あたりがうろたえるのも、むべなるかな。
そんなわけでガスの件が片付くまで外出もできない。

で、ネットフリックスの途中まで見ていたドラマの続きを見ることに。
『京城クリエイチャー』。
第二次大戦中の日本植民地下の朝鮮・京城が舞台。
日本軍は現地住民を拉致して病院の地下で人体実験を繰り返し、想像を絶する怪生物をつくり出してしまった。

病院に潜入した朝鮮人の女性探偵:ヒロインが狂気の実験を繰り広げる日本軍将校に日本語でぶつけるセリフを何度も聞き直して書き起こしてみた。
「あんたたちのその稚拙な劣等感を隠せると思うのか。」

聴き取りにくいが、こんなところだろう。
言葉はかたいが、それ以上に重く、深い。

周辺国の人たちに対する日本人の異常なまでの差別意識は、自分たちの稚拙な劣等感の裏返しと考えるとわかりやすいかもしれない。

いまかいまかと夕方まで待って。
ガスの点検はあっけなく終わった。

いまさら炊事をする気も起らず、今日は外食だな。


4月9日(火)の記 アートとファサード
ブラジルにて


先週から、ブラジル国際ドキュメンタリー映画祭が始まってしまった。
これはオンラインでは作品もプログラムも確認しにくい、僕には。

昨日は月曜で上映本数もわずかだった。
まずは今日、どれかテキトーなのを見に行って紙のプログラムを入手してきたい。
どれにするか…

サンパウロ文化センター:CCSPのシアターでの夜の上映作品にしよう。
いまはどんな展示をやっているか、アートの方の写真も拾えるかもしれない。

第33回CCSP展示プログラムというのを開催中だった。
いわば、現代アートのその先にあるような展示品が並ぶが…

レシートの紙を並べたり、トラックのシートに描き込んだり。
いまひとつ、快を伴なう驚きも喜びも僕には感じられない。
美しいともさして思えない。
そこいらのグラフィティの方が僕には面白い。

インスタ「今日のアート」はどうするか…
即撮の僕としてはかなり狙って、常設展示のこれを撮る。
https://www.instagram.com/p/C5j53R-OS6h/

さて今宵の映画。
『ANNA MARIANI - ANOTAÇÃES FOTOGRÁFICA』。
ブラジルの写真家について、ぐらいの予備知識だけで見てみる。

これは大当たりだった。
ある程度の年齢になってから写真を始めたブラジルの女性が北東部に通い、無数のファサードを写真に収めていく。
ファサードという日本語は一般的にはなっていないと思うが、装飾を伴なう建物の正面の部分、といったところか。
ブラジルにはヨーロッパから伝わり、貧困地域として知られる北東部の民家にすばらしいヴァリエーションと美を伝えてきたことを知る。

サンパウロあたりでも見られるが、僕はきちんと認識していなかった。
彼女のこの仕事は、ブラジルはもとより国際的に評価されていく。

かつてミナスジェライス州の教会の鐘付きのメロディのヴァリエーションをとらえたドキュメンタリー映画を見た。
その感動を思い出す。

見に来てよかった。
今後もブラジルで生きていくうえでの喜びをいただいた。


4月10日(水)の記 映画は綿から生まれた
ブラジルにて


次回訪日、その前の他州遠征、もろもろの宿題もあるのだが…
ブラジル国際ドキュメンタリー映画祭は、今度の日曜まで。
明日はまた泊り当番となってしまい、明日は物理的に映画を見に行くことは出来ない。

今日、思い切って外国もの2本のドキュメンタリー映画を見に行くことにする。
まずは英題『THE WORLD IS FAMILY』というインド製作の映画。
拙作『ブラジルの土に生きて』をいろいろな意味で思い出した。
この映画の女性の主人公も陶芸をたしなむのだ。
なんとイギリスで作陶するバーナード・リーチのフーテージにお目にかかった。

もう一本はイランとイギリスが製作国で、
『CELLULOID UNDERGROUND』。
厳しい統制下のイランで映画フィルムを集めて、当局からの弾圧を受けながらもフィルムを守り抜いたシネフィルの話。
制限や弾圧があると、よけい燃えてしまうのだな。
この人の命がけの尽力のおかげで永久に失われることを免れたフィルムが少なくないという。

このなかで映画フィルムの原料はセルロイドであり、そのセルロイドは植物:綿からつくられるという解説があり、綿採集のフーテージが用いられていた。
ええ、映画フィルムは植物からつくられていたのか!?

僕が銀幕に愛を誓ってから約半世紀。
恥ずかしながら映画フィルムは石油化学製品と思いこんでいた。
最近、些少ながら入金もしたウイキペディアを繰ると、セルロイドの原料は硝化綿や樟脳の由。

映画の起源を旧石器時代の洞窟壁画に求めることにいたく感動したものだが、フィルムの原料が植物であることも合わせると、ますます趣深くなりそうだ。

綿から生まれた映画。
それを代表する映画人は…、ジョセフ・コットン。


4月11日(木)の記 持参の文庫本
ブラジルにて


今日は午後からこちらの身内の老人の付き添い料理人としてお泊り。
先方の手前にあるサンパウロ大学学園都市内で一服していこう。
構内にあるお気に入りのカフェで、何度目かの読み返しをしている石牟礼道子さんの『苦界浄土』文庫の新装版をカフェをすすりながら読もうと思う。

おやー。
学園都市内のメイン通りと交差してお目当てのカフェに向かう道が通行止めになっている。
このあたりは一か所を閉められると、相当の回り道をしなければならない。
・・・そうもゆっくりできないし。

別の売店を見つけるが、ちょっと書を開く雰囲気のところではない。
向こうに着いてから、夜にでも読むか。

今回はなんだか今までのなかでいちばんよく『苦界浄土』を読み込めている気がする。
文学としては、今どき軽く響くかもしれないが、縄文期まで書き手のシャーマミスティックな心性が垂下していっている感あり。
記録としても傑出していると思う。

この名作が出版されるまでは、かなりの苦労があったそうだ。
同志の上野英信さんが原稿を持って東京の出版社をまわったという。
伝手のあった岩波書店に持ち込むが、岩波の編集会議にかけられたものの誰ひとり一人この本を出版することに賛成しなかったと上野師は書いている。

このエピソードをかみしめる日々である。


4月12日(金)の記 Black Box Diary
ブラジルにて


まずは出先からの車での帰宅。
今日は金曜なので覚悟をしていたが、割とスムースに帰宅がかなった。

午後からブラジルドキュメンタリー映画祭のプログラムのハシゴ。
本命は『Black Box Diary』、伊藤詩織さん監督の今年が製作年となっている最新作だ。
インターナショナルコンペ部門である。
そもそもこの映画祭のコンペ部門で日本人の監督の作品が上映されたことがあるだろうか?

ひょっとして伊藤詩織さんもこちらに来ているのかな?
あの女性は…、うむ、違うな。

開演時間となり、スタッフと英語で話しながら本人がやってきた。
英語で「金曜の夜にお楽しみいただけるような作品ではなさそうですが」とユーモラスに語って場内を沸かせてくれた。

映画祭のラバキ代表は作品を絶賛。
「世の中を変えようとするドキュメンタリー映画は少なくないが、それをかなえつつある稀有な作品」
「つらい事件が偉大なドキュメンタリストを生んだ」と語る。

映画の方は、よくここまで撮って・録っていたと驚く。
性犯罪の被害者の女性が主人公で、しかも本人が監督を務めているのだ。
ひとつ間違えるとみていられない作品になりそうな懸念あり。
が、それを見事にクリアしたと思う。
伊藤さんの本気そして覚悟、さらに良質な支援者の存在の故だろう。

質疑応答では質問がきちんと彼女に伝わっていない感もあり。
こちらも早口でむずかしいポルトガル語はよく聴き取れないし、英語はなおさら。
時間がおしているとのことで、ほどほどでお開きとなる。

会場には日系人らしき人はちらほら見えたが、日本人一世というのは僕だけのようだ。
日本語で伊藤さんに話しかけてみる。
伊藤詩織さんはこれまでテレビドキュメンタリーを手掛けていたが、劇場公開作品は初めてだと語っていた。
それもあって自己紹介で牛山純一プロデューサーの名前を出してみるが、特にリアクションなし。

この映画の気になる日本での公開については、いまのところ予定はないとのこと。
日本でもろもろのことどもに苦しむ人たちに力を伝えてくれる作品だと思う。

帰宅後に伊藤詩織さんのフィルモグラフィ等を検索。
彼女はテレビドキュメンタリーと言っても日本のテレビとは離れて世界各地のテレビ局とドキュメンタリー番組を制作していたのだ。

わが牛山純一ドキュメンタリーの、もとから抱える問題と限界を考え直している。
そして奇しくも、伊藤詩織さんの事件のもみ消しに自民党総裁・首相が動いたとみられることにこの作品でも言及されているが、牛山プロデューサーの「南ベトナム海兵大隊戦記」を放送中止に追い込んだのも時の政権を握る自民党の幹事長だったのだ。


4月13日(土)の記 THE STORY OF LOOKING
ブラジルにて


Mark Cousins。
ブラジル国際映画祭でこの監督の特集上映をするぐらいだから、知る人ぞ知る存在なのだろう。
日本語でも検索してみる。

ふむ、マーク・カズンズというのか、日本語では。
長さ930分という彼の映画が『ストーリー・オブ・フィルム 111の映画旅行』の邦題で日本でも上映されているようだ。
なるほどそれでこれだけ映画に詳しいのだな。
映画評論家としても紹介されている。

彼の映画『THE STORY OF LOOKING』を見て、今年のドキュメンタリー映画祭詣では締めようと思う。
眼の手術を控えた彼がヴィジョンについて語る映画の由。

自分の視覚の想い出、自身の色彩観をモノローグで述べ続けて映画にしてしまうのだからすごい。
自身の下腹部を強調するようにも見えるカットもいくつか用いている。
とても僕にはできない芸風だ。

さあ訪日まで…、
そうだ、あとひとつ別の気になるプログラムもあるのだが。
奇遇なことにそれもMinamataでつながるではないか。

自作のまとめはどこまで追い込めるかな。


4月14日(日)の記 えひめ愛とグァラナ
ブラジルにて


明後日未明から隣州に向けて出家の予定。
その前に目鼻を付けるべき原稿作業がある。
そのことをアタマで練りつつも、作業は明日からいっきに取り掛かることにしようか。

午後から途中まで見ていたネットフリックスのドラマ『離婚しようよ』の続きをいっきに見る。
東京と愛媛が舞台。
離婚に踏み切ろうとする夫妻の夫は愛媛が選挙区の若き世襲の与党政治家。
妻は愛媛が舞台のドラマで国民的アイドルになった俳優。

愛媛はまんざら知らない県ではないので、作品で打ち出される「えひめ愛」が楽しい。
日本語版にポルトガル語字幕で見ているのだが、ときおり気になる部分があって見返したりするのも一興。
このドラマでは、特にそれが多い。
ブラジルの文化に適応させたこの意訳が楽しく、スマホ撮りしてフェイスブックに上げてみた。
https://www.facebook.com/photo/?fbid=10230085308571735&set=a.3410845544903

オカムラにくしのあまり、僕がウエブにあげる画像・動画を虎視眈々と検閲して関係者にいいつけている輩がいるようだが、こんなのまでいちゃもんをつけてくるかな。


4月15日(月)の記 機内用バッグを畿内の旅にも持参すべきか否か
ブラジルにて


さあ今日は一日断食をする。
次回訪日までに…あと一回か。

昨年来、のたうち回っている原稿に加筆。
今回の出版社の校正システムがよく呑み込めないまま作業。

さて。
機内持ち込み用のバッグを思い切って買い替えようと思う。
これまで使用してきたものの大きな難点は、転がすとかなりの騒音がすること。
キャスター部分に油をさす等してみたが、改善されず。

隣駅近くのカバン屋に行ってみる。
伸縮ハンドルとキャスターの付いたもので。
これまではリュックサック型のものを使ってきた。
ふむ、手提げ型のものもあるではないか。
模様替えしてみるかな。

問題は大型のノートパソコン愛機の入る大きさであること。
手提げ型は大中小のサイズあり。

中サイズでノートPCは楽勝でいけそうだ。
はてこの大きさで機内持ち込み可能だろうか?
店員の女性いわく、中までなら可、そのための大きさとのこと。
まあ、これにしてみるか。

値段も想定より安く収まった。
小分けスペースがもう少し欲しいところだが、贅沢までは申せません。

明後日からの隣州の旅でさっそく使ってみるか。


4月16日(火)の記 ジッパーひとからげ
ブラジルにて


ウエストポーチのジッパーが壊れているのに気づいた。
これは最後の訪日から帰って来た後、つい最近に買ったはずだ。

これまで何年か使っていたものの傷みが激しく、買い替えることにした。
路上に品物を並べるおばちゃんのところで買ってみたのだが。
モノは中国製である。

明日から遠距離運転の旅だ。
今日中に善処しよう。

まずはおばちゃんのところに行ってみる。
「これ、買ったばかりでもう壊れたんだけど」
「そんな問題、いままで一度も起きてないわよ」
まるでこちらが悪者である。

あらお気の毒、別のを安くするからぐらい言われればまた壊れそうなものでも買ってしまうところだったが、こうこられては。
「こんなの、どこか修理に出せばタダで治してくれるわよ」
と世間知らずというか無責任の極みの発言。
すでにジッパーの金具の底部が割れているのだ。

もう二度とここでは買わない、身内や知人には買わせない、ぐらいしかない。
さて、どこに買いにいくか。

けっきょく昨日、バッグを買った店まで歩く。
ここでは伸縮が効いて財布に携帯電話までぴっしる収まるのをすすめてくれた。
やはり中国製だが、これまでのよりはジッパー部も強そうだ。

さっそく使用開始。


4月17日(水)の記 海岸山脈をゆく
ブラジルにて


朝6時までにはエンジンスタートといきたかったが、少し遅れ。
FMラジオで6時からのブラジル国家を聞きそびれた。

いつものスタンドで満タンにして。
国道116号線をひたすら西に向かう。
・・・こころみにポ語のWikiにあたると「ブラジルで最も危険な街道のひとつ」とある。
なにせ山道で雨・霧がしばしば、大型トラックの走行も多い。
僕の移住当初は「死の街道」と呼ばれていたが、複々線化もすすんで僕でも長時間のハンドルを握るようになった。

クリチーバで静養される佐々木治夫神父のお見舞いだ。
佐々木神父は僕のYouTubeにあげた作品群のなかで、最多登場していると思う。
代表作は、これ。
https://www.youtube.com/watch?v=aBlR8R2e27E

片道の走行距離は500キロに満たないが、ノンストップで6時間弱所要とアプリは提示。
今回も計3回パーキングエリアにとまり、いったん腰を落ち着けるとスマホのチェック・急ぎの返しなどもあってそこそこの時間となる。
けっきょく今回もサンパウロ出家から9時間程度の旅となった。

齢94歳になられた佐々木神父。
懸念していたほどのおとろえはうかがえず、胸をなでおろす。
とはいえ、耳が遠くなられて普通の会話はむずかしい。

再会後さっそくお茶と夕食、テレビ鑑賞をご一緒して神父さんから話しかけがあると口をゆっくり大きく大声で短く応じる。
9時間の運転後のお付き合い5時間。
・・・さあ横にならせていただこう。

夜間に外から怪鳥の鳴き声が響く。


4月18日(木)の記 もてなす人
ブラジルにて


パラナ州クリチーバで秋の朝を迎える。
シスターたちと早朝にカフェをいただき、朝の遅くなった佐々木神父の起床を待ってふたたび朝食のご相伴にあずかる。

神父さんは耳が遠くなり、普通の会話がむずかしくなった。
キッチンでの朝食のあと、ふたりで隣のリビングルームに河岸を変える。

今晩もここに泊めてもらうつもりだが、神父さんは「今日お帰りですか」と何度か尋ねてくる。
これまでもあまり気をつかわせないようにクリチーバには神父さんの見舞いのついでにミュージアムまわりをするのが楽しみ、と伝えてある。
今日も終日、神父さんに寄り添うつもりだが「今日はどこのムゼウ(ミュージアム)に行かれますか?」との質問が始まった。
今日はずっとここにいるつもり、とゆっくり、口を大きく動かして大声で伝える。
すると、近くにいい公園があるから誰かシスターに頼んで連れて行ってもらうといい、とおっしゃる。

神父さんのフマニタス時代もそうだったが、シスターたちもスタッフも自分の本来の仕事だけで精一杯以上をされている。
とてもこっちの勝手でさらにわずらわせることはできない。

はて、ひょっとすると神父さんはオカムラがいるのはウザいと思われているのだろうか?
ウザいことのお嫌いな人である。

そうこうしているうちにようやく話のとばぐちにあたったようで、そのまま聴き手に回る。
あとでシスターに尋ねてみた。
先日、神父さんの親戚が見舞いに訪ねてきた時も、どこそこに(観光に)行くといい、としきりに勧めていたという。

そういう、おもてなしの人なのだなあ。
ウラもなさそうだけど。


4月19日(金)の記 虎の乳の掟
ブラジルにて


遅い朝のカフェの後で佐々木神父に暇乞いをするつもりだった。
が、今日は施設のチャペルでブラジル人の神父が昼前にミサをたてるとのことで、それもあずからせていただくことにする。

クリチーバの町にくだる。
クリチーバの町での「自由行動」が面白すぎて。

30年前の取材時に定宿にしていたホテルの駐車場に車を置いて。
ここから徒歩30分ほどのインディオ美術館というのに行ってみよう。
道中、魚料理屋があるではないか。
思い切って入るが、よろしかった。

インディオ美術館はアートという視点からとらえていて、羽飾りなどが充実。
好きな人にはこたえられないだろう。
そのあと、アンチーク店や書店をまわる。
書店のヴォルテージの高さに驚く。

さて、夜の食事は…
イタリアンの評判のいいところをフンパツするか。

おや、セビッチェ専門店というのがあるとスマホ検索で知る。
サンパウロでもそこそこ広まってきたナマの海産物のペルー料理だ。
・・・これにしてみるか。

あら、フードトラックに毛の生えたような。
スマホでの評価はなかなかだったが、金曜夜にもかかわらず、僕の滞在中にテイクアウトの客がひとり来たのみ。

トレイに敷かれた紙やナイフとフォークの包み紙に記されたウンチクが面白い。
いわく、
セビッチェは4000年前からペルーに伝わる伝統料理であり、スシサシミとは別物である。
よってハシを使う必要もなく「虎の乳」と呼ばれる滋養たっぷりの知るにつけてあるのでショウユも不要、うんぬん。

白身魚使用という基本的なのを頼んだが、熱を用いる料理以上の時間がかかった。
ようやく出てきた。
なんのサカナが聞いてみる。
え、ティラピアだと!?

アフリカ原産で、ブラジルで養殖されるようになった淡水魚である。
・・・ペルー4000年の伝統料理が聞いてあきれる。

まあ、こういうのも楽しいクリチーバ自由行動。


4月20日(土)の記 バナナとヤシ芽の山里
ブラジルにて


クリチーバの宿にて。
さあ、今日はできれば暗くなる前にサンパウロにたどり着きたい。
ここのホテルは朝食もあれこれ食べ放題なので、要注意。

午前9時出を目指そう。
少し遅れて、アプリで近くのより安いスタンドを探して、アルコール満タンで。

ようやく国道に出ると、さっそく渋滞。
FMラジオによると州境近くでトラックと乗用車の事故、いまだ1時間以上の渋滞の由。
いやはや。

なんとかサンパウロ州内に入って。
このあたりの名物のパウミット:ヤシの芽の看板が目についてきた。
『ねじ式』だな。

ヤシの芽はアスパラガスとタケノコのあいだのような珍味。 
日本でこれの普及に熱心だった知人がいたが、どうしているかな…
ちなみにこちらでも値段はお安くない。
このあたりでもヘタな店だとサンパウロ市内のスーパーより割高になる。

今日、立ち寄った店はまんざらでもない感じ。
2種類、買ってみよう。
このあたりはバナナの大産地でもあり。
青いバナナの束を、買うべきか…

思い切って日本だとモンキーバナナと呼ぶ種類だろうか、こちらでは「金(きん)のバナナ」と呼ぶ小ぶりのをひと山、購入。
食べきれるかな。

まあ、クルマの旅だからこういう買い物もできる。

おかげさまで日没後、程ない時間に帰還。
携帯電話の充電がうまくいっていないが、ケーブルの問題かな。

さっそく往路に山の売店で買った薬草酒を試飲。


4月21日(日)の記 レタスの友
ブラジルにて


夜はわが家で家族そろっての食事。
今日の台所は連れ合いが担当。

クリチーバでシソをたくさんいただいてきた。
僕はシソ関係の小品と漬け物関係のみ担当。

会食が始まり、わが子の悲鳴。
リーフレタスに体調2センチほどの青虫が。
後で聞くと、これは自分で洗ったものらしい。

今朝、路上市で買ってきたものだ。
数十年、台所を担当してきたが、葉野菜にナメクジ・カタツムリ以外の虫が付着していたのは思い出せないほどレア。

せっかくなので透明容器にレタスの小片とともに移す。
飼ってみよう。

子らが幼いころ、芋虫が羽化するまで飼育したことがある。
この青虫はどんなメタモルフォーゼを遂げることか。


4月22日(月)の記 四年続けたインスタ日記
ブラジルにて


さあ新たな出ブラジルまで、あと一週間。
とりあえず今日は一日断食だ。

どの残務から取り掛かるか。
して、今日の外歩き。

日毎のスマホでの市内アート物件撮りをどうするか。
しばらく歩いていない、そっち方面では不毛気味の下の方を歩いてみるが…
一点、意外な新作グラフィティがあったが、陰になっていてもったいない、
また別の時間帯に撮り直しに来るか。
けっきょく今日はこれにしておく。
https://www.instagram.com/p/C6Flreot8S-/

あらためてヒップホップという語を検索しておく。
そうか、昨日のブラジルはチラデンテスの日の祝日だったんだな。
ブラジルは祝日が日曜と重なっても月曜が振替休日とはならないので、なにか損をしたという思い以上にその祝日のことも忘れてしまいがち。

想えば僕がグラフィティのスマホ撮りを始めたのは、西暦2020年、パンデミックが始まった年のチラデンテスの日だった。

よくもまあ4年間も、とわれながら。
まだ動ける限り続けるつもりだが、自分のなかではソコソコのいわば仕事になったかなという感じ。

これと週に一度の断食。
これらのおかげでパンデミック中の心身を維持できたと思う。


4月23日(火)の記 今宵の見逃し
ブラジルにて


あらたな出ブラジルまで一週間を切って。
自分の動画の編集から原稿書きまで、残務雑務におおわらわである。

だが、今晩サンパウロでブラジルの著名な監督のドキュメンタリー作品数本の上映と討論があるのを知って。
これだけは見ておこうかと決意。
今回、日本で水俣でも上映とトークをすることになったが、それとの絡みもある。

午後から家族の夕食の準備に入る。
いざ出家となって、メトロのパスを忘れているのに気づく。
ついでに次回訪日時の持参必需品を確かめて…
見当たらない。

はて、これがないとややこしい。
家探しを始める…

オチがついてから、あらためて出家。
パウリスタ大通りにある上映会場に到着したのは開演15分前。
今晩の入場券はすでに満員札止めだという。

あへ。
・・・すぐには、帰れない。
近くのスペースたっぷりのカフェテリアに寄っていくか。
持参した佐々木治夫神父訳の小冊子を読み終えよう。

ほう、塩味のパネトーネがあるという。
フンパツするか。

店内の掃除が始まった。
さあ帰るか。


4月24日(水)の記 ナゾのコーンソーセージ
ブラジルにて


東洋人街に訪日土産類の買出しに行く。
さて、最低限のものは買った。

台湾系のカフェで一服していくか。
ここはごちゃごちゃしていなくてよろしい。

ヤクルトのライム割りと…
スナックをなにか…
筆頭にあるソーセージを頼んでみるか。

トウモロコシ味しかないけど、と言われるが、それにしてみる。

さて、ホットドッグにはさむようなソーセージがでてきた。
見た目も色もふつうのソーセージ。
ところが味はトウモロコシなのだ。
珍味。

帰りがけに店のスタッフに聞いてみようと思うが、取り込んでいるので見合わせ。
ウエブ検索してみる。
ポルトガル語、日本語・・・

うーむ、ソーセージをコーンと炒めたもの、コーン入りのタレをかけたものぐらいしか見当たらない。
北海道にはトウモロコシ粒入りのソーセージもあるようだ。

しかし僕が食べたのは見た目も色も肉製品で、味がコーンなのだ。
これは台湾の食材なのかな?

また今度、行った時に聞いてみるか。


4月25日(木)の記 よみがえるむらさき
ブラジルにて


紫蘇のことである。
「よみがえるむらさき」であることをこれまで意識していなかった。
ちょっと検索してみて、実に面白い。

ほう、英名はPerillaか。
ブラジルではShissô ないし Shisô。
当地では日本名がそのまま使われるほどで、日本料理以外では一般的ではない。

クリチーバで修道院の敷地内に雑草化しているのをいただいてきた。
すでに穂が出て花と実がほとんど。

サンパウロに戻ってからシソの花と実のレシピを調べて。
醤油に浸けておくだけ、というのをやってみる。
これがよろしい。
薄口醤油に浸けたので、色もよろしいし。

今日は午後からこちらの親類のところに泊まり込みで炊事当番。
チリ産サーモンを解凍して、刺身用に刻む。

刻んで水にさらしたタマネギを皿に敷き詰めて。
そのうえにサーモンを並べて。
これにシソの穂を浸けておいた薄口醬油を注ぐ。
さらに醤油漬けのシソの花と実を散らし。
水で戻した乾燥ワカメをポン酢しょうゆで味付けして周囲を囲む。

よいお味でした。
もっとシソを収穫してくればよかった。


4月26日(金)の記 ブラジルで読む『山形怪談』
ブラジルにて


昨日からのサンパウロ市内お泊り奉公は一泊のみ。
諸々のリスクをかんがみてノートPCは持参せず。

代わりに読むべき資料をいろいろ持参したが、いじりもせず…
読みかけていた文庫本の『山形怪談』(黒木あるじ著、竹書房)を深夜から早朝までかけて読了。

これは先の訪日の際、山形県寒河江市の松田書店で買ったもの。
店舗ビルにあるこの書店はなかなかの品揃えだが、ほかに客がいることは珍しい。
先回は、訪日時に要購入、と思いつつ控えもせず忘れていた本がよりによってここで目に入り、この本とともに購入。
ご当地本風で全国区で出されたこの本はコンビニにでもありそうなタイトルだが、けっこうしっかりしている。

僕は親類の縁で山形にはそこそこ通い、キライではないのでこの手の話も聞いてきている。
そうした知見からうかがえる「通」ならではの山形の独自性がよく書き込まれているのだ。

たとえば青森恐山のイタコに通じる女性シャーマンの山形ご当地版「オナカマ」など。
それに「残存縄文」研究者のはしくれとしては、今日まで伝わる東北の習俗には縄文期にさかのぼれそうなものがあるとにらんでいるのだが「これはいけるかも」というエピソードもいくつか収録されている。

著者の黒木あるじさんは、山形ではストレンジャーだったが地元の映像制作会社に勤務してこの方面にのめり込んでいった由。
この本は外部の者だからこそ、地元でもないがしろにされている事象によけい興味の持てて成果をあげた好例だ。
「山形新聞」など地元メディアの怪談資料を日付明記で引用されているのもうれしい。

興味津々の参考文献もあり、さっそく入手可能か調べてみた。

さて、帰宅。
いよいよ懸念の原稿のファイナルウオーズ作戦に突入だ。


4月27日(土)の記 ブラジルつけもの考
ブラジルにて


午後、パウリスタ地区で知人とカフェ。
家族との約束があり、そろそろと腰をあげようとしたときに「実は」と思わぬ話が。
この人とも奇縁である。

夜は家族と外食。
本命の店に行ってみると、夜は軽食のみとのことで、断念。
徒歩圏にある、まだ入ったことのないレストランテジャポネ―スに行ってみることにする。
住宅街の広い民家を改造して、住宅内を調理場にして庭と駐車スペースにテーブルを並べた、といったつくり。

幕の内形式になっているのを頼んでみる。
料理の味は悪くはないのだが。
幕の内の4分の一のスペースにはカボチャの煮物が入れられている。
煮物が3個は入るスペースに2個しか入れていないので、かなりの間が開いている。
間の空き弁当だな。

別に茶碗に仏さまへ備えるような盛り付けの白ごはん。
見事なぱさぱさのご飯。
漬け物類がまるでないので、オカズ類をのっけてかっ喰らうしかない。

ブラジルでも国産のたくあんや梅干しなどは売られているのだが。
想えば日本飯屋でも日本人一世を対象にしたような店以外では漬け物類はほとんど出てこないようだ。

これはなぜだか、考えてみると面白そうだ。
多様で深遠な祖国の漬け物文化は、どうやら移民次世代次々世代に継承されていないのでは。

気候風土の故か。
特にガイジンがタクアン類などの臭いを嫌悪するせいか。

独自のブラジルでの日本風漬け物が考案されてもよさそうなものだが。
青パパイアの漬け物なども初期移民どまりではなかろうか。

そのほか、思い浮かぶのは聖母婦人会の福神漬けやグアタパラ移住地のラッキョウの酢漬けぐらいか…
ハイビスカスの一種を梅干し風に漬けた「花梅」などと移民が称した珍味もあるが、一般的ではない。

折に触れてこれを考えていこう。
要するに、その場その場でせっかくのご飯をよりおいしくいただきたいのだが。


4月28日(日)の記 道具というツール
ブラジルにて


今日は聖ユダ・タダイの月例祭の日。
朝のミサに行くと祭壇に飾られているのは…
聖ヨセフではないか。
いろいろな道具が添えられてる。
https://www.instagram.com/p/C6VB3-7N6p7/

聖母マリアの夫である聖ヨセフは、大工や石工を生業としていたという。
そのため道具をつかさどる聖人とされ、労働者の守護聖人とされている。
5月1日の労働者の祝日・メイデーにちなんで飾られたのだな。

さすがに電子機器はこのイメージにそぐわないのか見当たらない。

道具というものに思いをはせるだけで面白い。
まさしく人類史そのもの。
日本の民俗行事に「道具のとしとり」というのがあったな。
考古学なんざ、相当な部分が道具の研究だ。

そもそもカトリックでは、自分を道具としておもちいください、という祈りもある。
少しは使える道具であれるよう、日ごろから手入れをしておかないと。


4月29日(月)の記 横にならせて
ブラジル→


さあ新たに出ブラジルだ。
・・・何十回やっても落ち着かない。

午前中は薬局に行ったり、買い漏らしの土産物を求めてスーパーをハシゴしたり。
日本の知人に頼まれて焼いておいたDVDの再生チェック。
5枚頼まれて、念のため6枚焼いた。
1枚ずつ全篇再生チェックする。
早回しだけど。
うーむ、1枚フリーズのトラブルあり。

これからまた焼き直しとなると、ひと仕事だ。
余分の1枚を他の人に謹呈しようと思ったが、それどころではなくなった。
チェック済みOKのものに手書きでタイトル等書き込む。

もろもろ考慮すると17時には出家したい。
わが昼食、そして家族の夕食となるようにアサリのパスタをつくる。

もうじたばたせずに、少し体を横にするか。
サンパウロ出家から東京の実家にたどり着くまで、ざっと36時間以上はかかろう。
その間、横になれないのはけっこうキツいのだ。

横になれるというありがたさ。


4月30日(火)の記 ダラス時間
→アメリカ合衆国→


グアルーリョス国際空港から、アメリカン航空機でまずはダラスへ。
未明のダラスの空港は入国審査係官がほとんどおらず、時間がかかる。

ここのところトラブルの続いたダラスの乗継だが、今回は4時間あまりのトランジット。
いまのところ到着も出発も時間通りで問題なし。

椅子に座ってスマホを充電しながら短時間の仮眠、トイレで洗面。
なにか食べるか…
あまり混雑していないところで。

僕は知らないチェーンらしいハンバーガー店にしようか。
注文はタップ式の自動販売機。
カードオンリーでドルの小銭が使えないが、ま、いいか。

なかなかややこしい。
こちらの電話番号まで入力しなければならないのか。
まず「1」が表記されてしまい、アメリカ国内限定ということか。
これでつまずくが、1のあとでブラジルの番号を入力してみてようやく次に進めた。
後ろに待ちの人がいないから続けられた。
購入通知はメールで送られてくる由。
メルアドも入力。

有人の注文カウンターに行くと、アフロ系をひくとみられる女性スタッフに注文番号を聞かれる。
・・・覚えようとも思わなかった。
なにを頼んだかを聞かれるが、テキトーにセットで頼んだもののそれがどれだったか英語で説明できない。

彼女はイラつきもあおりもせずに対応してくれた。
・・・ようやくスマホで迷惑メールの方にオーダー時のメールが届いていることを確認、番号を告げる。
先方は僕のようなトロい客にも慣れているのかな。

これまでもアメリカの空港等で白人系ではない店員に丁寧に扱ってもらったことを想い出す。
この人たち、チップをもらえるような労働ではないのにだ。

お、セットのドリンクは空コップをもらって、自動のマシーンでセルフでいれるのか。
よくわからないことが多い。

日本のコンビニだったらMをオーダーしたのにLをオーダーしたとか言われて実名を出されて犯罪者として新聞ネタになってしまうかも。
・・・おかわりは、やめておこうか。




 


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