4月11日(木)の記 持参の文庫本 (2024/04/15)
持参の文庫本 ブラジルにて
今日は午後からこちらの身内の老人の付き添い料理人としてお泊り。 先方の手前にあるサンパウロ大学学園都市内で一服していこう。 構内にあるお気に入りのカフェで、何度目かの読み返しをしている石牟礼道子さんの『苦界浄土』文庫の新装版をカフェをすすりながら読もうと思う。
おやー。 学園都市内のメイン通りと交差してお目当てのカフェに向かう道が通行止めになっている。 このあたりは一か所を閉められると、相当の回り道をしなければならない。 ・・・そうもゆっくりできないし。
別の売店を見つけるが、ちょっと書を開く雰囲気のところではない。 向こうに着いてから、夜にでも読むか。
今回はなんだか今までのなかでいちばんよく『苦界浄土』を読み込めている気がする。 文学としては、今どき軽く響くかもしれないが、縄文期まで書き手のシャーマミスティックな心性が垂下していっている感あり。 記録としても傑出していると思う。
この名作が出版されるまでは、かなりの苦労があったそうだ。 同志の上野英信さんが原稿を持って東京の出版社をまわったという。 伝手のあった岩波書店に持ち込むが、岩波の編集会議にかけられたものの誰ひとり一人この本を出版することに賛成しなかったと上野師は書いている。
このエピソードをかみしめる日々である。
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